第二王子に婚約破棄されたと思ったら、第一王子様から求婚されていた件

21話 支え

「それではアレンお兄様、リオナ様……。わたくしはここで一旦、失礼いたします」

「ああ、それではまたな」

「また、お会いしましょう」

「畏まりました。それでは……」

　用事を思い出したのか、シャルロッテはそう言うと二人の前から姿を消した。

「……ふう」

「大変なことになってしまいましたね」

「ああ」

　シャルロッテが姿を消した直後、アレンは深く溜息を付いていた。いままでは腹違いの妹の手前、気丈に振る舞ってはいたが……いくら彼とはいえ、動揺は小さいものではなかったのだ。

　王位継承権争い……自らの弟と争う。それ自体に問題があるわけではないが……シャルロッテを除く、家族にここまでの問題点があったことに驚いていた。グレン、ヨハン国王、リズリット王妃……それぞれ抱える問題点は国家を根底から破壊しかねない危うさがあった。

「……まさか、最近までこんな重要なことに気付けないとはな。私も大した人物ではないな」

「アレン様……」

　家族のことは出来る限り信用してきたアレン・ハンフリー。弟のグレンの素行はともかく、父と母に対しての信頼は大きかった。それが今は崩れてしまっており、少し精神的にも辛い状態だ。この状況で、王位継承権を争うことができるのか……彼の不安はそこにもあった。


「アレン様」

「……リオナ？」

　そんな時、アレンの手を優しく包むのはリオナだ。満面の笑みを浮かべており、そこには控えめな彼女の姿はなかった。

「ご安心ください、アレン様。今はお辛い気持ちが渦巻いていらっしゃるかと存じます。ですが、私が誠心誠意お仕え致しますので」

「リオナ……君は」

「いえ、私程度ではご安心いただけないことは、重々承知しておりますが……」

　リオナは出過ぎたことを言ってしまったと感じたのか、いつもの控えめな表情に戻ってしまった。しかし、アレンにとっては、とても心に響いた言葉だ。

　彼は無意識の内に、リオナを強く抱きしめていた……。

「ありがとう、リオナ……君にまで心配をかけるとは、済まない……。しかし、ありがとう」

「アレン様……私は、貴方様の婚約者です。王位継承権争いだろうと、貴方様の傍にお仕えし、支えになれるよう尽力いたしますわ」

「リオナ……君は……」

　一切の淀みのないリオナの発言。アレンにとって、どれだけの救いになったのか言い表すのは難しい。アレン一人では難しい現状……二人で力を合わせ、王位継承権を乗り越えていく。そのような強い意志が、彼らの間には芽生えていた。