婚約破棄したはずの王子様が復縁を求めて来てちょっと怖い~ストーカー気質があるので、成敗する必要がありそうです~

あめり

文字の大きさ
2 / 4

2話 忍び寄る影 その1

しおりを挟む
 エリスとマルクスの二人は、エルド王国の首都、パンゲアの街に繰り出していた。中央に位置するプーハット宮殿から、お忍びでデートを行っているのだ。

「お互い侯爵家の家柄だし、護衛もなしに街に繰り出したのは不用心だったかしら?」

「いや、大丈夫だと思うよ。首都のパンゲアなら特にね。ほら、街には騎士の者たちも居るんだし」

 喫茶店のテーブルに腰を掛けている二人は軽い変装は念のためにしていた。しかし、そこまで警戒している様子はない。目の前にある噴水広場や時計塔には、騎士たちの姿が多くあったからだ。

 エルド王国は強国であることも知られている。暴漢に襲われたとしても、周囲の騎士たちに助けを求めれば万事解決してしまうだろう。


「それでさ、エリス」

「なに? マルクス」

「ラウツ王子とは、あれから特に何もないかい?」

 婚約破棄から1か月以上が経過している。王子の方に非があったとはいえ、第12位王位継承権を持つ相手だ。果たして、そう簡単に引き下がるのかと、マルクスは心配になっていた。

「それがさ……」

「どうしたの?」

「あれから何度か、手紙が来るのよね。会ってくれないか? って……話の内容は不明なんだけど、無視してるわ」

 なるほど……やはり諦めてはいないのか、マルクスから見てもエリスは非常に可愛らしい。女癖が悪く、いい加減なラウツ王子が簡単に手放すとは考えていなかったのだ。

「とりあえず気を付けるに越したことはないよ。王子とは会わない方がいいだろうし」

「そうよね、あなたにも余計な心配はかけたくないし」

 二股などと妙な噂が出てしまうのは困る。貴族連中は資金面に余裕があるせいか、他人の事情に関心が強い傾向にあった。出来るだけ、誤解を招く行動は避けた方がいい。マルクスは信用してくれても、他の貴族たちはわからないのだから……。

 二人の喫茶店デートはしばらくの間、続けられていった。


--------------------


「いたいた……エリス。マルクスの奴とデートをしているなんて、許せないな。あんな婚約破棄、俺は絶対に認めないからな……!」

 彼らのデートを影から見ているのはラウツ・コンターチ王子だった。とても恐ろしいその瞳は、エリスを手中に収めることのみを考えているかのようであった……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

地味な私では退屈だったのでしょう? 最強聖騎士団長の溺愛妃になったので、元婚約者はどうぞお好きに

reva
恋愛
「君と一緒にいると退屈だ」――そう言って、婚約者の伯爵令息カイル様は、私を捨てた。 選んだのは、華やかで社交的な公爵令嬢。 地味で無口な私には、誰も見向きもしない……そう思っていたのに。 失意のまま辺境へ向かった私が出会ったのは、偶然にも国中の騎士の頂点に立つ、最強の聖騎士団長でした。 「君は、僕にとってかけがえのない存在だ」 彼の優しさに触れ、私の世界は色づき始める。 そして、私は彼の正妃として王都へ……

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました

ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」  その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。  王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。  ――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。  学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。 「殿下、どういうことでしょう?」  私の声は驚くほど落ち着いていた。 「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」

後悔などありません。あなたのことは愛していないので。

あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」 婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。 理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。 証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。 初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。 だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。 静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。 「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

処理中です...