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4話 ストーカー その1
しおりを挟む「ラウツ王子……」
明らかに歓迎していない雰囲気を醸し出しているエリス。しかし、無視するわけにもいかないので、彼に視線は合わせていた。
「マルクスと随分仲良さそうだね。まったく……勝手に婚約破棄はするし、俺の手紙は無視してるみたいだし……君には失望しているよ」
「は、はあ……」
エリスからすれば、乾いた笑いしか出て来ない。この人は自分を棚に上げて何を言っているのだろうかと。そんな感情がエリスを渦巻いていた。
「しかも買い物袋をマルクスに持たせるとか……君は一体何様のつもりなんだい?」
そろそろ言い返してもいいだろうか? エリスは真剣に考えていた。荷物のことを彼にとやかく言われる筋合いはない上に、おそらく後ろから見ていただけでは、事情もわかっていないだろう。適当に言っている感がすごかった。
「ラウツ王子、お久しぶりです。お元気そうですね」
「マルクスも壮健そうでなによりだ」
マルクス的には皮肉で言ったつもりだが、ラウツは意味を理解していなかった。自業自得で婚約破棄をされ、よくそこまでの元気さで身勝手なことを言えるな。マルクスが言いたいことはそれであった。
「本日は何用でしょうか?」
マルクスはなるべく冷静な口調で言う。本音で言えば怒りの言葉の一つや二つでも言ってやりたいところではあるが、今は大人になった彼であった。
「そんなことわかっているだろ? ヨリを戻してくれ……と言いたいところではあるが……エリス」
「な、なんですか?」
勿体ぶるラウツ王子の態度ですら、今の二人にとっては不快だった。デートを邪魔された時点で怒りは満ちているのだから……。しかし、この段階でも冷静な二人は大人な対応と言えた。
「君がヨリを戻す……婚約破棄を解消するまで諦めるつもりはないから、覚悟していてくれ」
「えっ……? どういうことですか……?」
本当に目の前に居るのは、王位継承権第12位の人物なのだろうか? エリスもマルクスも別人なのではないかと思ってしまうほどだった。それほどにラウツ王子の言動は常軌を逸していたのだ。
「具体的にはどういうことをするのですか……?」
「んん? さてね……まあ、しばらくは考えて楽しんでいてくれ。それじゃあね、今日はこのくらいで帰ってあげるよ」
明らかに優位には立っていないラウツ王子だったが、根拠が不明の自信を携えながら、その場を去って行った。流石に周囲の騎士たちもざわついている様子だ。エリスとマルクスの二人にも気付いているのかもしれない。
「……戻りましょうか」
「そうだね……」
ラウツ王子によって台無しにされた二人のデート。こんなことが何度もあってはたまったものではない。彼らは今後の王子の行動をとても危惧していた。
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