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34 番外編 大根のひとりごと(大根視点)
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何かと謎の多い畑の妖精、大根。そう、瑞々しく真っ白つやつやでアスリート走りが得意な大根だ。頭上の葉っぱだってわっさわっさである。
実はこのたび、念願の“自分だけの主人”を手に入れたのだ。つやつや新鮮な自分の額にはそのご主人様との絆である錬成陣なるものが刻ませているのだが、これはもう契約以外のなにものでもない。自分を畑から誕生させてくれた前のご主人様も言っていたので、返品は不可なのだと新しいご主人様にも念押し済みだ。
つまり、大根はルンルンだった。なにせ明日は新しいご主人様の新専属妖精としてウルトラデビューするのだ。元ご主人様がすごい薬を完成させたらしい。さすがは森の魔女である。ということは明日こそ、この大根が活躍するちゃぁんす!である。なにせ畑の妖精は地味だ。活躍出来るならしてみたい。そして「さすが大根」と褒められたい……大根だってそのくらいの出世欲はあった。
しかし、大根にはひとつだけ悩みがあった。元ご主人様であるアリアは自分を畑から生み出してくれた魔女だが正式な契約はしてもらえずにいた。だから伝えることが出来なかった“秘密”があるのだ。なぜならばこの秘密は、名前をつけてもらって専属妖精にならないと伝えられない秘密だからである。
それはなぜかと言えば、大根が妖精として本領発揮するには契約者の魔力がいるからだ。
アリアの魔力はダダ漏れていたのを勝手に拾いぐ……吸収していたが、ある意味で“生みの親”であって契約者ではない。生存の為の魔力なら吸収することが出来るが、その魔力を変換する事は出来ないでいた。だから、大根は小さな穴を掘るかアスリート走りが出来るくらいのただの大根でしか無かったのだ。
そんな大根の秘密……それは大根妖精が先祖の記憶を受け継いでいることだった。
大根の先祖はすごい先祖だったと大根はひとり頷く。そのたびに青々と茂った頭上の葉っぱがわっさりと揺れた。なにせ先祖大根は────畑から引っこ抜かれるととんでもない叫び声をあげたらしいのだ。しかものっぺりつやつやな大根とは違い顔もあったのだとか。憧れ大根だ。
かっこいいなぁ。と、大根は思っていた。受け継がれた記憶とはいえだいぶ薄らいでいる。しかし、手足をバタつかせて泣き叫ぶ先祖大根の雄姿だけはちゃんと知っているのだ。
さらに言えば先祖大根は魔法薬の材料として重宝されていたらしい。そのせいで大量に刈り取られてしまい、先祖大根の数はぐっと減った。遠いどこかで養殖されているらしいなんて聞いたり聞かなかったりするが、どのみち野生の先祖大根はほとんどいなくなってしまった。野良大根は貴重なのである。
そんな中で、先祖返り的存在として生まれたのが自分であった。大根は自分の先祖大根を誇りに思っていたが、もしも自分にとんでもない薬効能力があるかもしれないと知られればきっとアリアの薬の材料にされるだろうと、生まれたばかりの頃に追いかけ回された事を思い出していた。なんて恐ろしい。なにせ、絶対に美味しい自信があるのだ。たぶん薬効成分もありそうな予感がしていた。
大根は、すりおろされるのが嫌だった。真っ二つに切られたくらいならくっつけるが、すりおろされたら痛そうだからだ。おろし金も嫌いだ。おろし金を振り回していたオスの人間も未だに嫌いだ。
しかし、ルルーシェラなら決して自分をすりおろしたりしない。まだ名前はつけてもらっていないがこの額の印が我々の絆の証なのだ。だから、自分のご主人様に全てを打ち明けようと決意した。
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「……大根さん、どうしたんですか?」
首を傾げるルルーシェラに、そっと自分の頭を差し出した。ルルーシェラはアリアにもわからなかった大根妖精の言葉がわかるようだった。ならば自分の言いたいことも伝わるはずだと、大根は確信していた。
「じぶん、だいこんあしなんで!!」
さぁ、この青々と茂った瑞々しい葉っぱを取ってくれと。きっとルルーシェラの役に立つはずである。そしてすごい効果があったとしても、自分を切り刻んで美味しく煮込んだりしないと信じて……。
「あ……この葉っぱ、土で汚れてますよ」
ぷちっ。
ルルーシェラは差し出された葉っぱの中で土まみれになっていた1本を何気なく千切った。しかも根元から千切った。容赦なく千切ったのである。
「…………!!」
確かに葉っぱを取ってくれと懇願したが、まさか何の戸惑いもなくいきなり千切られるとは思ってもいなかった大根は衝撃を受けた。というか、「そんなこと出来ない!」と、もっと躊躇されるかも。なーんて思っていたのだ。
そして、初めて葉っぱを千切られた大根は……。
「じ、じぶ、ん、だいこんあしな、んで……!」
あまりの衝撃にすくっと立ち上がった大根だったが、すぐに異変が起きた。
フラフラフラ……ぽてり。
立ち上がったはずの大根は左右に揺れたかと思うと、すぐにバランスを崩して倒れてしまったのだ。
これは何事かと、再び大根はすぐに立ち上がった。足にしっかりと力を込めて、大地に立つが……。
ヨロヨロヨロ……ぽてり。ころりん……。
倒れた上に転がってしまった。これではただの新鮮な大根ではないかと、大根はショックを受けた。
「た、大変!大根さんが……!」
さらに何を思ったのか、ルルーシェラが手に持っていた千切った葉っぱを大根の頭にぶっ刺したのである。
脅威の回復能力で葉っぱの千切れた部分はみるみるとくっついていき……そして。
てってれーん!という謎の効果音と共に大根のバランスが戻ったのであった。立ち上がった大根は手足を動かし、フラフラしない事を確認して喜んだ。
「じぶん、だいこんあしなんで……!」
「大根さんは葉っぱが減るとまっすぐ歩けなくなるんですね。気を付けないと!」
それから、大根の葉っぱはとても大切にされたのだとか。
実はその葉っぱには魔女界隈でいうところの国宝級の希少価値があるのだが……ルルーシェラには“大根がまっすぐ歩くために必要なもの”としてしか認識されなかった。
大根自身も気付いていないその“価値”と“効果”が判明するのは、まだもう少し先の話である。
ちなみに大根はルルーシェラに「大根さん」と呼ばれているが、それが正式に名付けになっているのかどうかは不明だ。専属妖精になる道のりは目の前のようで遠いのであった。
実はこのたび、念願の“自分だけの主人”を手に入れたのだ。つやつや新鮮な自分の額にはそのご主人様との絆である錬成陣なるものが刻ませているのだが、これはもう契約以外のなにものでもない。自分を畑から誕生させてくれた前のご主人様も言っていたので、返品は不可なのだと新しいご主人様にも念押し済みだ。
つまり、大根はルンルンだった。なにせ明日は新しいご主人様の新専属妖精としてウルトラデビューするのだ。元ご主人様がすごい薬を完成させたらしい。さすがは森の魔女である。ということは明日こそ、この大根が活躍するちゃぁんす!である。なにせ畑の妖精は地味だ。活躍出来るならしてみたい。そして「さすが大根」と褒められたい……大根だってそのくらいの出世欲はあった。
しかし、大根にはひとつだけ悩みがあった。元ご主人様であるアリアは自分を畑から生み出してくれた魔女だが正式な契約はしてもらえずにいた。だから伝えることが出来なかった“秘密”があるのだ。なぜならばこの秘密は、名前をつけてもらって専属妖精にならないと伝えられない秘密だからである。
それはなぜかと言えば、大根が妖精として本領発揮するには契約者の魔力がいるからだ。
アリアの魔力はダダ漏れていたのを勝手に拾いぐ……吸収していたが、ある意味で“生みの親”であって契約者ではない。生存の為の魔力なら吸収することが出来るが、その魔力を変換する事は出来ないでいた。だから、大根は小さな穴を掘るかアスリート走りが出来るくらいのただの大根でしか無かったのだ。
そんな大根の秘密……それは大根妖精が先祖の記憶を受け継いでいることだった。
大根の先祖はすごい先祖だったと大根はひとり頷く。そのたびに青々と茂った頭上の葉っぱがわっさりと揺れた。なにせ先祖大根は────畑から引っこ抜かれるととんでもない叫び声をあげたらしいのだ。しかものっぺりつやつやな大根とは違い顔もあったのだとか。憧れ大根だ。
かっこいいなぁ。と、大根は思っていた。受け継がれた記憶とはいえだいぶ薄らいでいる。しかし、手足をバタつかせて泣き叫ぶ先祖大根の雄姿だけはちゃんと知っているのだ。
さらに言えば先祖大根は魔法薬の材料として重宝されていたらしい。そのせいで大量に刈り取られてしまい、先祖大根の数はぐっと減った。遠いどこかで養殖されているらしいなんて聞いたり聞かなかったりするが、どのみち野生の先祖大根はほとんどいなくなってしまった。野良大根は貴重なのである。
そんな中で、先祖返り的存在として生まれたのが自分であった。大根は自分の先祖大根を誇りに思っていたが、もしも自分にとんでもない薬効能力があるかもしれないと知られればきっとアリアの薬の材料にされるだろうと、生まれたばかりの頃に追いかけ回された事を思い出していた。なんて恐ろしい。なにせ、絶対に美味しい自信があるのだ。たぶん薬効成分もありそうな予感がしていた。
大根は、すりおろされるのが嫌だった。真っ二つに切られたくらいならくっつけるが、すりおろされたら痛そうだからだ。おろし金も嫌いだ。おろし金を振り回していたオスの人間も未だに嫌いだ。
しかし、ルルーシェラなら決して自分をすりおろしたりしない。まだ名前はつけてもらっていないがこの額の印が我々の絆の証なのだ。だから、自分のご主人様に全てを打ち明けようと決意した。
「じぶん、だいこんあしなんで!」
「……大根さん、どうしたんですか?」
首を傾げるルルーシェラに、そっと自分の頭を差し出した。ルルーシェラはアリアにもわからなかった大根妖精の言葉がわかるようだった。ならば自分の言いたいことも伝わるはずだと、大根は確信していた。
「じぶん、だいこんあしなんで!!」
さぁ、この青々と茂った瑞々しい葉っぱを取ってくれと。きっとルルーシェラの役に立つはずである。そしてすごい効果があったとしても、自分を切り刻んで美味しく煮込んだりしないと信じて……。
「あ……この葉っぱ、土で汚れてますよ」
ぷちっ。
ルルーシェラは差し出された葉っぱの中で土まみれになっていた1本を何気なく千切った。しかも根元から千切った。容赦なく千切ったのである。
「…………!!」
確かに葉っぱを取ってくれと懇願したが、まさか何の戸惑いもなくいきなり千切られるとは思ってもいなかった大根は衝撃を受けた。というか、「そんなこと出来ない!」と、もっと躊躇されるかも。なーんて思っていたのだ。
そして、初めて葉っぱを千切られた大根は……。
「じ、じぶ、ん、だいこんあしな、んで……!」
あまりの衝撃にすくっと立ち上がった大根だったが、すぐに異変が起きた。
フラフラフラ……ぽてり。
立ち上がったはずの大根は左右に揺れたかと思うと、すぐにバランスを崩して倒れてしまったのだ。
これは何事かと、再び大根はすぐに立ち上がった。足にしっかりと力を込めて、大地に立つが……。
ヨロヨロヨロ……ぽてり。ころりん……。
倒れた上に転がってしまった。これではただの新鮮な大根ではないかと、大根はショックを受けた。
「た、大変!大根さんが……!」
さらに何を思ったのか、ルルーシェラが手に持っていた千切った葉っぱを大根の頭にぶっ刺したのである。
脅威の回復能力で葉っぱの千切れた部分はみるみるとくっついていき……そして。
てってれーん!という謎の効果音と共に大根のバランスが戻ったのであった。立ち上がった大根は手足を動かし、フラフラしない事を確認して喜んだ。
「じぶん、だいこんあしなんで……!」
「大根さんは葉っぱが減るとまっすぐ歩けなくなるんですね。気を付けないと!」
それから、大根の葉っぱはとても大切にされたのだとか。
実はその葉っぱには魔女界隈でいうところの国宝級の希少価値があるのだが……ルルーシェラには“大根がまっすぐ歩くために必要なもの”としてしか認識されなかった。
大根自身も気付いていないその“価値”と“効果”が判明するのは、まだもう少し先の話である。
ちなみに大根はルルーシェラに「大根さん」と呼ばれているが、それが正式に名付けになっているのかどうかは不明だ。専属妖精になる道のりは目の前のようで遠いのであった。
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