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〈31〉 なんだか突然に急展開なのだが

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 ばっしゃーーーーん!!


「ふぇっ?!」


 パーティー会場の入口の入口。つまりは王城の門なのだが。今まさに、馬車から降りてルーファスにエスコートされたまま門を潜ろうとした瞬間にそれは起こった。

 突然の衝撃と、ポタポタと滴る雫。なぜか私(とルーファス)はびっしょりとずぶ濡れになってしまった。ついでに私達の招待状を確認した門番もびっしょびしょだ。

「……」

「……」


「あらぁ、大変だわぁ!」

 何が起こったかわからないままでいると、突如門を彩る花壇の茂みから人影が姿を現す。その姿に私とルーファスはギョッとした。

 そこにいたのは……赤みを帯びたふんわりとした長い茶髪と、同じく赤茶の瞳をしたエリオットに瓜二つの少女だったからだ。

「あ、あなたは……」

 まさしくエリオットが女の子だったならばこんな姿にだったに違いない。それくらいにそっくりなその少女は身につけている豪華なドレスとは不釣り合いな古びたバケツを背中に隠しながらにこりと笑った。

「ごめんなさい、花壇に水をあげようと思って……そうしたらあなた達に水がかかってしまったの!そんな水浸しのドレスではパーティーに参加は無理よね……。そうだわ、よかったらわたくしの部屋に来てくださらない?新しいドレスとタキシードをご用意しますわ!あ、そこの門番の方?この方たち……メルキューレ侯爵家の方たちはわたくしが責任を持ってパーティー会場にお連れするから少し遅れると、殿下にお伝え下さいな」

「え、あ、は、はい!」

 その少女の姿を確認して、門番はびしょびしょのまま慌てて敬礼をした。

「うふふ、お願いしますね。さぁ、お二人ともこちらにおいでなさって?」

 もはや隠す気もないバケツを手に持ったままその少女が私達に手招きをする。私は無意識にごくりと唾を飲んだ。だって、わざわざ確認するまでもない。エリオットと同じ年頃で瓜二つな少女が高位貴族しか身に着けないような豪華なドレスを着て王城内にいるのだ。

 もしかしなくて、この子がエリオットのーーーー。

 ちらりとルーファスの方に視線を動かすが、複雑そうな顔のまま何も言わずに少女の後ろについていくようだ。たぶんルーファスも彼女の正体に気付いているのだろう。


 そう。彼女こそがユリアーナ・ラファエ。ラファエ公爵家の令嬢でサリヴァン王太子の婚約者。

 そして、エリオットの父親違いの姉なのだからーーーー。


 私が戸惑っていると、ユリアーナがこちらを向いてにこりと笑い……目を細めた。


「あなたに会えるのを待っていたわ。エレナさん」と。
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