クモ使いだとバカにしているようだけど、俺はクモを使わなくても強いよ?【連載版】

大野半兵衛

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026_家に帰るぞ

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 026_家に帰るぞ
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「キュ」
 俺が新しいアイテムを組み立てていると、ミネルバが窓から入ってきた。その背には小さなクモが10匹。
 まさか子供か? ん、違うらしい。
「そのクモを俺にテイムしろと言うのか?」
「キュキュ」
「お前たちは俺にテイムされたいか?」
 ミネルバの背に乗る10匹がピョンピョン跳ねて同意した。その瞬間に10匹のクモとパスが繋がった感覚があった。

「それじゃあ、周辺の虫などを狩って、最初の存在進化をさせてきてくれるか」
「キュキュ」
 10匹はミネルバの背中に乗ってお出かけした。ミネルバが居れば、心配ない。
 さて、アイテムの組み立てに戻るか。

 組み立て作業が終わり、俺は肩をポンポンと叩く。
 パッドとモニターがあり、そのモニターの横に赤、青、黄のスイッチがあるだけのシンプルなアイテムだ。
「さて、ちゃんと動くかな」
 赤色のスイッチを押すと、モニターが起動した。
 その状態でパッドに左手を置いて、青のスイッチを押すとモニターに文字が浮かび上がった。

 ─────────
 スピナー・ボルフェウス(9歳)
【加 護】 クモ使い
【体 力】 100
【魔 力】 100
【攻撃力】 100
【防御力】 100
【素早さ】 100
【素 質】 大発明家 大実業家 大魔導師 武人
【称 号】 奇人変人 天邪鬼 資産家
【眷 属】 ミネルバ クモ10匹
 ─────────

 これは俺の能力だ。
 俺を基準にしているから、全能力が一定になっている。
 このアイテムは以前からコツコツ作っていたものだが、興が乗ったから完成させてしまった。
「名づけて『加護ミエール』ってのはどうかな」
「センスないですね」
「うっへい」
 ロックの奴は、俺のスーパーなネームセンスが分かってない。
 そんなことはどうでもいいが、これをロックにも試させてみよう。
「おい、ロック。ここに手を置け」
「いいですが、痛いのは嫌ですよ」
「俺がそんなことするわけないだろ」
「今まで何度もされましたけど?」
「そんな昔のことは忘れた」
「………」
 光を失った目のロックは、渋々パッドに手を置いた。俺に何もするなよと目で訴えてくる。

 ─────────
 ロック・ザンバー(9歳)
【加 護】 騎士
【体 力】 70
【魔 力】 2
【攻撃力】 60
【防御力】 70
【素早さ】 60
【素 質】 武人
【称 号】 苦労人
 ─────────

 む、称号が苦労人? ドルベヌスが厳しいから、そんな称号がついたんだな。(自分のせいだとはまったく考えていない)
「なんですか、これ?」
「人の加護や能力が見えるアイテムを作ってみた」
「作ってみたって……そんなに簡単に言うようなものではないですよね?」
「大したことはないぞ」
 俺がクモ使いの加護を得たあの石板の古代文字を解読したことで、この加護ミエールを作ってみた。半分以上は俺のオリジナルだが、あとは石板の古代文字の応用だ。
 能力を数値化するところが少し難しいが、大したものではない。

「よし、家に帰るぞ」
「本当ですか!?」
「ロックの不味い飯にも飽きたからな」
「そんなこと言うならスピナー様が作ってくださいよ」
「主人に飯を作らせるとか、お前はそれでも従者か」
「こういう時だけ主人風吹かせないでくださいよ」
「ああ言えばこう言う。お前は小姑か」
「小姑の気苦労を察してくださいよ」
 打てば響く鐘のような奴だ。

 家に帰ると、すぐにパパに呼ばれた。
「ただいま帰りました」
「……言葉はそれだけか?」
「それ以外にどんな言葉を望まれているのですか?」
「まったくお前は……」
 そんなに呆れること?
「可愛い息子がこうやって元気な顔を見せているのですから、もう少し喜んでくださいよ」
「可愛い息子なら、私の気苦労を考えてくれ」
「何を仰っているのですか。婚約話などささと蹴ってしまえば、スッキリするんですよ。それをしないパパが自分で気苦労を背負っているのです」
「それができたら、とっくの昔にしているわ。まったくお前は、親の心子知らずもいいところだ」
「その気苦労、俺が解消しましょうか?」
「リーン様を妻に迎えてくれるのか!?」
 そんなにキラキラした期待の目で見られると、国王を暗殺すると言いにくいじゃないですか。国王が悪の根源だからさっさと始末すればいいのですよ、パパ。

「はっ!? 今、悪寒がした。それ以上何も言うな! もういいから大人しくしていろ!」
「心外です。俺はいつも大人しいじゃないですか」
「どの口が言うか……。リーン様に暴言は吐くわ、そのリーン様の学友に法廷闘争をけしかけるわ、教師が隷属魔法を使っていると言うわ、主任教師を真っ裸にするわ……。学園に入学して数える程しか登校してないのに、どれだけ問題を起こすんだ」
「リーン様のことは少しだけ反省してますよ。俺も大人げなかったと思ってます」
「お前でも反省するのか!?」
「そんなに驚かなくてもいいんじゃないですか?」
「お前の口から反省なんて聞いたことがないからな。驚きすぎて、髪が100本は抜けた気がするぞ」
 自虐ギャグは回答に困るから止めてくださいよ。

「しかしその他の3人は反省も後悔もしてませんよ。そもそも俺とリーン様の間の話に割って入ってくる奴が悪いのだし、教師に至っては隷属魔法まで使っている始末。そう言えば、その教師はどうなったのですか?」
「彼奴めはワイバーンの死体を処分し、証拠を隠蔽しおった」
「死体を処分させるとか、あの学園はどこまで腐っているのか。あんな学園に通う意味はありませんよ」
「今、騎士団が調査をしている。その結果を待てばいい」
 さらっと俺の言葉を受け流したよね。パパのそういうところ、嫌いじゃないよ。

 
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