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第六章

二年の歳月④

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 次の一週間は、中部から西海岸リゾートと言われる観光客に人気の地域を回る。

 面倒だが、毎日違うホテルを転々としている。観覧車のある地域の側のホテルは、沖縄の雰囲気を最大限に出し、海と南国リゾートを感じる。

「どうだ?」
「ああ。リゾート感はいいが、もうすでにあるものを真似ても仕方ないだろう?」
「雰囲気と食事と施設。すでにどこもある程度は充実している」

 中部から西海岸に向かって車を走らせる陸斗と、何を考えているのか無言で外を見ている怜。

「さくら!?」
 
 静かな車内に、突然怜の叫び声が響く。

「えっ!?ええっ??」
「止めろ!」
「はあ?待てすぐには無理だ」

 陸斗は、車を路肩に止め数台の車をやり過ごし、Uターンさせる。

 先程怜が叫んだところ辺りに戻り車を止めた。

 怜が車を飛び出していく。周辺を探しているが見当たらない。

 この辺りは、リゾートホテルが点在し、観光客が立ち寄りそうなお店も点在する。

「見間違いじゃないのか?」
「絶対さくらだった」
「観光に来てるのかな?」
「分からない」
「今日宿泊するホテルがこの先だから、チェックインしてからこの辺りを探そう」
「ああ」

 怜の必死の様子を見て、陸斗は見間違いとは思えなかった。間違いでもいい。今何もしないと後悔すると思った。沖縄に到着後から、怜の口からたびたび出るさくらの名前に、何かあるのではないかとは思っていた。

 この辺りでは有名なホテルにチェックインをする。やはり怜の姿を見て、慌てるホテルのフロント。直ぐに支配人が姿を現す。

「神楽坂様。本日は、ご利用いただきありがとうございます」

 仰々しく頭を下げる。

 居合わせた観光客たちも、目立つイケメンに年配の支配人が頭を下げている姿に何事かと見ている。

「支配人、目立つので」陸斗が慌てる。
「すみません」

「お伺いしたいのですが、この辺りで地元の人や観光客がよく行くお店とか教えてもらえますか?」

「はい」

 地図を広げ何店舗か印をしてくれる。

「ありがとうございます」
「とんでもないことです。何かこの辺りのことを詳しく知りたいのでしたら『ちゅらかーぎー彩』というお店に行かれてみてはいかがでしょうか?うちの従業員もよく行っているようですが、いつも賑わっているようです」
 
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