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第九章

家族に向けての一歩②

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 二人がランチを食べていると、裏から彩葉が出てきた。

「どう?さくらちゃんの味付けはお口に合うかしら?」
「めちゃくちゃ美味うまいです」

 口に入った状態で陸斗が返事をする。

「陸斗汚い。でも、本当に美味い」
「さくらちゃんは料理のセンスがあるのよ。見ていてわかったと思うけど、常連さんの胃袋を掴んでる。更にはさくらちゃんの人柄で、毎日大繁盛よ」
「それは、あなたもでしょう?夜も繁盛していた。それでお願いがあったんだ」
「何?」
「神楽坂が沖縄の北部に一大リゾートを建設する」
「ネットで見たわ」

 彩葉の言葉に、二人は頷く。土地を購入した時点で、神楽坂グループが沖縄に新たなリゾートを建設するのではないかと話題になった。

「その視察で今回来たんだ」
「そこで偶然さくらちゃんに再会するなんて……。それで?」
「ああ。まだ計画段階でオープンは先になる。だが、飲食店の候補はある程度決めている。そこでだ。ここの二号店を検討してもらえないだろうか」
「はあ??」

 思っていた以上の内容に、今度は彩葉がポカンとしてしまう。
 
「理由は、もちろん料理の味もだが、あなたの人柄がこの店の雰囲気によく出ている。俺達が計画しているリゾートに、高級店ばかりじゃ飽きられる。長く通ってもらえる地元密着の魅力が必要だ」
「……。褒めてもらってるみたいだけど、私のおばあが始めた本当に素朴な沖縄料理の居酒屋よ?神楽坂のリゾートに出店して、高い値段は取りたくないの」
「もちろんだ。今のままでいい。まだ先の話になるから一度考えてみてくれ。両方を仕切るとなると、人材も必要だろう?今からなら、まだ育てる時間は充分ある」
「わかりました。検討します」
「今更だが、名前を聞いてもいいか?」
「あっ、比嘉彩葉です。みんなには彩姉と言われてますが、お好きに呼んで下さい」
「さくらが彩姉と呼んでいるから、俺も彩姉にするかな」

 二人の会話を黙って聞いていた陸斗は、驚きしかない。女性に対しては特に厳しく、名前で呼んだこともなければ、自分から仕事をお願いするなんて聞いたこともない。

 でも、怜が自分でお願いするくらいだから、彩葉に何かを感じたのだとわかる。

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