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第十一章

冷酷王子の溺愛①

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 朝方まで抱き合った二人は、深い眠りについていた。桂の泣き声が朝を知らせる。

「ウ、ウッ」

 しゃくりあげるような可愛い泣き声に、先に気づいたのは怜だ。まだぐっすりと眠るさくらを起こさないように、桂を抱っこして寝室を出た。

 怜が抱っこするとすぐに機嫌が直る。賢いわが子にメロメロだ。

 桂に何を食べさせたらいいかはわからないが、さくらをもう少し寝かせてあげたい。

 怜自らフロントに連絡を入れた。

「おはようございます。神楽坂様。朝食のご準備をさせていただいてもよろしいですか?」
「あ、ああ。子供が何を食べるのかが……」
「昨日、辻様よりご注文をいただいております。アレルギーの有無なども確認させていただいております」

 いつの間にと思うが、今までも陸斗の仕事は完璧だった。さくらに確認してくれたのだろう。

「じゃあ、準備を頼む」
「畏まりました」

 程なくして、豪華な朝食が運ばれてきた。桂も匂いにつられ手を出している。

 セッティングをして、ホテルの従業員が出ていくと、怜は桂を膝に乗せ座る。

 子供用のお皿に盛られていて、一目で桂の食事だとわかるのがありがたい。

 怜が口元にもっていくと、素直に口を開ける姿が愛らしい。父と子の時間はのんびりと流れていく。子供を食べさせながら、自分も食べることがどれほど大変かも実感する。

 ずっと沖縄の地に滞在出来る訳ではない怜は、今後のことに思いを馳せる。

 愛しのさくらと桂とは離れたくない。だが、都会での生活を強いることは出来ない。

 神楽坂を背負う者としての生活と、愛する人との生活。立場上簡単な話ではない。

 でも、今は何も考えず幸せに浸りたい。

 両親に報告したら、きっと喜んでくれるだろう。全く女性を寄せ付けない冷酷王子と言われる息子に、いつしか結婚も孫も諦めていたはずだ。

 弟のように、孫は期待しているだろう。まだ結婚はしていないが、人当たりがよくおっとりした陽の周りには、いつも人が集まっているイメージだ。

 人を引っ張るよりは、纏めるタイプで跡取りとしては、優しすぎるのだ。祖父に陽と共に神楽坂を継ぐために厳しく育てられたが、祖父も早々に陽には怜のサポートが向いていると見抜いていた。
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