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第十四章

嵐がやってきた⑤

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「えっ、はっ!?あっ、ごめんなさい。怜の母です。れ、れ、怜が赤ちゃんを抱っこしてる……。怜の小さい頃にそっくり……」

 目をうるうるさせ涙ぐむ。

「怜の父です……」

 こちらも、目を潤ませている。

「怜さんとの間に子供を授かり、怜さんがどこの誰とも知らずに私の判断で出産しました。驚かれましたよね。申し訳ありません」

 頭を下げたさくらに、三人は慌てる。

「さくらは悪くない」
「そうよ!感謝してるのよ」
「ああ。私達は嬉しいんだよ」
「さくらちゃんって呼んでいいかしら?」
「はい」
「私達は、本当に嬉しいのよ。孫どころか、結婚すら諦めていたのよ。冷酷だと世間で言われている息子が、こんな優しい顔をして赤ちゃんを抱っこしているなんて……。私も抱っこしてもいいかしら?」
「もちろんです」
「桂くん。おばあちゃんよ」

 怜が抱っこしている桂に向って手を出す。するとニコニコしながら母に手を伸ばした。

「天使だわ……」
「おじいちゃんだぞ」

 父が手を出すと、人見知りすることなく抱っこされている。

「ねえ、私達が桂くんの面倒を見たらダメ?さくらちゃんの都合の良い日でいいの。万が一グズっても同じホテルだから困らないし」
「……」

 突然の申し出に、さくらだけでなく怜も驚いている。だが、さくらとの二人の時間は願ってもないチャンスだ。

「さくら、定休日の前夜でいいがダメか?」
「ダメとかじゃなく、人に預けることが今までなかったので……」
「もし、桂が泣き止まないときは、すぐに迎えに行けばいい」
「じゃあ、明後日が定休日なので、明日の夜でよければ」
「本当!ありがとう」

 こうして再会後、初めて二人での時間を過ごす機会がやってきた。

 怜は、今後のことを話し合うチャンスとばかりに、気持ちが焦る。

 両親も、息子に似た孫に、すでにメロメロだ。明日の夜が楽しみで仕方ない。

 
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