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第十八章

出産と結婚発表①

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 神楽坂リゾートの建設が着工してから、二年の年月が経った。

 すでに、怜の別荘は完成している。

 今も、東京と沖縄を頻繁に往復しているのだ。

 桂は、三歳を過ぎすっかり赤ちゃんではなくなり、成長している。怜が沖縄を離れている間、さくらを守ってくれている。

 怜が沖縄滞在中は、マンションか別荘で過ごす。怜と桂が二人で別荘で過ごすこともある。沖縄の限られた場所で過ごしているからか、まださくらと桂の存在はバレていないが、そろそろ限界だと感じる。

「さくら体調はどうだ?」
「大丈夫よ」

 そう、さくらのお腹の中には、怜の赤ちゃんがいる。7ヶ月のお腹は、はちきれんばかりだ。実は、お腹の赤ちゃんは双子なのだ。

 半年後に、レセプションパーティーが予定され、神楽坂リゾートの全貌が発表される。その時、さくらと桂の存在を世間に発表することが、さくらの妊娠前から決まっていた。さくらの妊娠が分かり、日程変更も検討されたが、大きなプロジェクトをずらすとなると、莫大な費用が掛かってしまう。
  
 神楽坂リゾートのグランドオープンが一年後と決まっているのだ。オープンから一ヶ月分の予約を受け付けたのだが、一瞬で満室になってしまった。

「出産後すぐではないし、大丈夫よ。お母様も臨月からこちらに来てくれて、レセプションパーティーまでずっと居てくれるから」

 今や怜の母は、さくらにとっては本当の母以上の存在だ。

 怜と籍を入れた際に、さくらは疎遠になっている両親に連絡を入れたのだ。だが、両親共に新しい家庭を持ちさくらの結婚にも無関心だった。相手を紹介することもなく終わった。

「無理はしないでくれよ」
「わかってる。怜こそ忙しいのに、東京と沖縄の往復で大変でしょう?無理しないでね。パパにはずっと元気でいてもらわないと」
「ああ。桂の成長も赤ちゃんの誕生も楽しみだ。まだまだ頑張るぞ」

 怜さんから怜と呼ぶようになった。いつ赤ちゃんが出来ても可笑しくない程の溺愛ぶりに、みんなが待っていたくらいだ。

 怜の祖父も年齢を感じさせないフットワークの軽さで、怜以上に沖縄に滞在している。

 この地に来て彩葉に出会い、桂を妊娠していることがわかり、怜の存在がなくても幸せだと思っていた。

 だが、怜と再会し桂の父親として、さくらのダンナ様として、今やいないことが考えられない。



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