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第十九章

準備と邪魔者④

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 連絡を受けた警備員が駆けつけ、すぐに男を取り抑える。

「離せよ」
「大人しくして下さい」
「はあ?その女に用があるんだよ」

 そこへ――

 当初の予定より早い飛行機に乗った怜が、ホテルに到着したのだ。

「何があった?」
「あっ社長。奥様が、男性に詰め寄られてまして」
「さくら!大丈夫か?」
「ええ……」
 すぐにフロントの男性の後ろにいたさくらの無事を確認し抱きしめる。さくらを腕の中に抱きしめたまま、改めて男を確認した。

「お前は!田崎か!?今更何の用だ!」

 怜は腹の底から怒りの声を上げた。

「神楽坂先輩こそ、どういう事ですか?」
「何がだ?」
「俺のさくらを……」

 警備員に囲まれ、自由に動けはしないが、虚ろな目で二人を睨む。

「さくらは俺の妻だ。お前が、さくらを裏切ったんだろう?勝手なことを言うな」
「あの女は失敗だった。さくらがあの時、突然辞めていなくならなければ、会社も困ることはなかったんだ」
「何を言ってるんだ!?お前は、さくらと付き合ってたくせに、見合いをして裏切ったんだろう?」 
「結婚と恋愛は別でしょう?まさか、神楽坂先輩程の男が、さくら一人?もったいない」
「お前とは考え方が違う。俺にはさくらしかいないんだ」
「フンッ。綺麗事は聞きたくないですよ。でも、もうどっちでもいい。俺は、俺を見捨てたさくらに責任を取ってもらえれば」
「ふざけるな」
「俺にはもう怖いものはない」

 警備員を振り払い、フラフラとしながら近寄ってくる。ポケットに手を入れ何か出そうとしているように見えた。

 この場にいる者全員が、危険だと感じ息を飲んだ。

 瞬間――

 悠太の後ろから気配を消して近づいていた陸斗が、悠太に飛び蹴りをしたのだ。

「グエッ、誰だ!?」
 
 全く気づいていなかった悠太は、倒れながらも必死に体制を立て直そうとしている。その隙を与えず陸斗をはじめ、警備員が一斉に抑え込んだ。

 陸斗がポケットを確認すると、折りたたみのナイフが出てきた。

「これをどうするつもりだったんだ?」
「ただ持ってただけだ」
「そんな言い訳通用するか!警察で素直に話してもらおう」

 すぐに駆けつけた警察官に悠太は連れて行かれたのだった。

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