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第二十章

エピローグ③

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 怜がシルバーのモーニングコートを身に纏い、スタッフに先導されやって来た。

 この場にいるものは、見惚れ息を飲む。童話に出てくる『王子様』だ。怜は周囲をしっかりと見回し、丁寧に頭を下げて感謝の気持ちを伝える。

 そして、チャペルの中に入って行った。

 チャペルの中には、愛する子供達と怜の両親、弟の陽と秘書の陸斗、さくらの姉のような存在の彩葉が座っている。怜の母が蘭を抱っこし、彩葉が椿を抱っこしている。

 チャペルでの式は身内で行い、披露宴はオープンパーティーに兼ねている。オープンパーティーの全ての出席者には、新郎新婦より引き出物が用意されているのだ。

 閉じられたチャペルの入口の前に、正装した怜の祖父が現れた。経済界に顔が利き世界的にも有名だが、最近では表舞台に立つことがあまりなく、前回は半年前のレセプションパーティーだった。

 そんな、祖父の横に現れたのが――

 純白のオーダードレスを身に纏い、子供が三人もいるようには見えない天使のようなさくらの姿だ。

「「「ホゥ……」」」

 感嘆の息が周囲から漏れる。

「しげちゃん、いえお祖父様。至らぬところばかりですが、よろしくお願いいたします」
「さくちゃん、こちらこそよろしくな。怜を支えてやってくれ。あっ、お祖父様はもうなしじゃ」
「はい。しげちゃん」

 とびきりの笑顔のさくらに、祖父だけではなく周囲も皆赤面する。「こりゃ、怜も気が気じゃないな」とボソッと呟いた言葉は、さくらには聞こえていなかった。

「では、準備が整いましたのでご入場です」

 スタッフに促され、さくらは祖父の腕をそっと掴む。

 バージンロードを誰と歩くかとなり、さくらの両親が結婚式の出席を辞退したため、さくらがしげちゃんがいいと言ったのだ。指名された祖父は大喜びだった。

 さくらと祖父が一歩一歩と怜に向かって進む。眩しいものでも見るような、優しい表情で目を細めた怜がさくらが近づいてくるのを待っている。

 そして――

「怜、しっかり守るんだぞ」
「はい」

 祖父からの言葉と、託された美しい花嫁。

 ふたり揃って牧師様の前に立つ。
 
 


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