【R18】初恋やり直しませんか?

夢乃 空大

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第一章

第8話 白詰草

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 聖達に遅れること数分、漸く私と優もみんなと合流して、聖の向かいになるように少し離れた場所にぺたんと腰を下ろした。
 座って見ると目線の先一面の真っ白なシロツメクサが絨毯のように見えて心が躍り、私は1本、2本と摘んではクルクルっと花冠を編み始めた。

 私のその様子を見た聖は何故か優しく微笑んでから、妹達に声をかけた。


「この、もう編み始めてるの?じゃあ俺達も作ろっか。チビ達でわからないやつは俺が編み方教えてあげるからこっちおいで。」

 そう言うと、聖が手招きすると、みんな聖の横に集まって行く。
 聖が穂乃果に花冠の編み方を教えているのを見て、優もおずおずと聖の隣に座って一緒に編み始めた。
 渉も聖の横で一生懸命に見様見真似で編んでいたが、元々そんなに器用じゃない渉は上手く編めないのか、逆さまに編んでしまったり、手に持っていた花を落としたり、なかなか上手く行っていないようだった。
 そのもたもたした様子がどうにも気になってしまい、私はつい横から少し口を出してしまった。

 そうして、あれこれと苦戦しながら漸く出来上がった渉の花冠はお世辞にも上手とは言えない程、ぐちゃぐちゃで不格好だった。


「で、できた……」


 それでも出来上がった花冠をみて、頬を紅潮させて嬉しそうに言う渉に、私もなんだか嬉しくなって渉の頭をぽんぽんと撫でた。

 すると、渉はビクッと身体を強張らせると、瞳に涙を滲ませた。


「え…?わ、たる……?どした…」

「ご、ごめんなさい…叩かないで……」

「え…私が渉を?叩かないよ、大丈夫だよ?」


 その様子を見た穂乃果が渉と私の間に入って私に食ってかかってきた。


「お姉ちゃん、わっくんのこといじめないで!」

「え?私、渉のこといじめてなんか……」

「わっくんの花冠、お姉ちゃんが教えたの、ぐちゃぐちゃじゃない。ちゃんと教えてないでしょ。」

「そんなことしてない!ただ渉がぶきっちょで……」

「だってさ、大事な人にあげるためにって言ってたのに、こんな下手くそなの穂乃果貰ってもうれしくなんかないもん!」


 そう言うと穂乃果は渉から花冠を強引に引っ張り、取り上げるとあろう事か花冠を地面に投げ捨てて踏みつけた。
 目前でぐちゃぐちゃな花冠が更にぐちゃぐちゃになっていくその様子を、渉は呆然と見ていた。


「ちょっと!ほの、辞めて!」


 そう言って花冠を踏みつけている穂乃果の足元から花冠を拾い上げると呆然としている渉の目の前に差し出した。すると、渉はそれを受け取ると辛そうに眉根を寄せてボロボロと泣き出してしまった。


「渉…大丈夫……?」

「あ、あぁ…このちゃん……ひ、酷いよぉ……」


 不器用ながらも一生懸命編んだ花冠を踏みつけられた事が悲しくかったのだろう、渉は大粒の涙をポロポロと零しながら声を出して泣いていた。
 そんな渉を見ていられなくて私は立ち尽くしていると、穂乃果が横から私に向かって大きな声を出した。


「お姉ちゃん、謝りなよ!」

「え?なんで私?穂乃果こそ、謝りなさいよ!」

「ほ、ほのは悪くないもん!…だって、こんなぐっちゃぐちゃなの絶対にいらないんだから!!!」


 穂乃果は渉の手にあった花冠を叩き落として鼻息荒くそう怒鳴ると、出来上がった花冠を持って、先に向かっていた聖と優を追いかけて母親達の所に走って行った。
 残された私は泣き崩れている渉とぐちゃぐちゃの花冠を呆然と眺めていると、ぐすぐす言いながら渉が花冠を拾い上げた。


「これ……どうしよ……このにごめんなさいしてあげようと思ってたのに……」


 なんと一生懸命不器用ながら編んだ花冠は私のためだったのだ。あの日の事が渉も気になっていて、そして、渉も私と同じ気持ちだった事が嬉しかった。
 ぐちゃぐちゃの花冠をそのまま受け取ると、ふとさっきのかくれんぼの時に見つけたピンクのお花の事を思い出した。


「渉、ありがとう。そうだ、あっちにきれいなお花が咲いてるよ。いこ?」


 私は涙を零して泣いている渉の手を引いて歩きだした。
 やがて、少し開けた所に出ると、私はパッと手を離して駆け出した。


「ほら、みてみて!」

「うわぁ…きれい…。」

「ね、きれいだね!渉もおいでよ!」


 そう言うと、私はお花の絨毯にペタンと座って渉を手招きした。
 ぽかんと立ち竦んでいた渉は私の手招きに応じて駆け出してきた。
 そして、おずおずと私の隣に腰を降ろした。私は渉から花冠を受け取ると、待っている間に摘んでいたピンクの花をぐちゃぐちゃで不格好な花冠に刺していった。
 ボコボコに穴の空いた箇所に、ひとつ、またひとつとピンクのお花が咲いていき、あっという間に白とピンクの可愛い花冠が出来上がった。
 穴が埋まりなんとか修復出来ると、最初よりも随分と綺麗に出来上がった花冠を渉に差し出した。


「渉のがいちばんかわいくなったね。」

「これはこのの方が似合うから、このにあげるよ。代わりに俺には、このが作ったのちょうだい。」


 そう言って、渉はにっこり笑うと私の頭に手渡された花冠を載せた。
 その渉の笑顔にドクンと心臓が早鐘を打った。渉から花冠を貰えたことが嬉しすぎて、顔が熱くなってドキドキが止まらない。


「渉、ありがとう……あの時はごめんね。ねぇ、渉、大きくなったら私を渉のお嫁さんにしてね。」


 私も手に持っていた花冠を渉の頭に載せたと同時に、気が付くとポロリと言葉が零れていた。

 渉は満面の笑みで、わかった、とそう言った。


 それなのに……


 あれから数年経った今、渉は笑顔を見せてくれる事が少なくなっただけでなく、顔を合わせると突っかかってくるようになり目も合わせてくれなくなった。


 そして、渉はいつも私ではない誰かを見ていた。
 その誰か…渉の目線の先にはいつも妹の穂乃果がいた。


 渉との関係を改善しようと私なりに努力をしてきたが、からまわるばかり……

 冷たく突き放されてもいつかは元に戻ってくれる、一過性のものだと信じてきたが、遂には「距離をおこう。」と言われてしまった。

 いつから拗れてしまったのだろうか。
 どうして?なんで?疑問ばかりが頭を占めるが、理由は皆目見当もつかない。

 拒絶され接点も無くなった今、このまま関係が戻らないかもしれない。
 考えただけで、ぶるりと身が震える。

 だけど……解決方法が見つからない。
 今無理矢理渉との距離を詰めても逆に関係が悪化するだけなのはわかっている。
 わかっているからこそ、受け入れなきゃいけないという事も……

 それでも私は渉が好きだったから嫌われていても傍にいたかった。
 傍にいられるだけで良かったのに、もう傍にいることすら許して貰えない。

 心が引き裂かれるように痛いかった。
 いっそ、嫌いになれればいいのに、浮かんでくるのは幼い日の渉の笑顔と一緒に過ごした幸せな気持ちだった。

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