堕ちた貴族の復讐譚~バニーガールな魔術師から与えられた能力は、何度もで生き返る力だった

101

文字の大きさ
2 / 20
王国編

主人公死す!

しおりを挟む
 燃えさかった炎が渦巻く。

 アルベールが部屋の扉を蹴り破った時、目に染みる黒煙が吹き付けてきた。

 ゲホゲホと咽《む》せ、口を覆いながら身体を低くして移動する。

 アルベールは寝起きということもあり黒髪は寝癖が、髪よりも深い色の瞳はどこか眠たげ。
 一体いつ火の手が上がったかは分からないが、ベッドに入ってから一時間ほどしか経っていない。

 それにしてはあまりに火の回りが早い。
 アルベールの部屋は館の奥にある。
 それまでには絶対誰が気付くはず。

 どういう状況なのか分からない。
 アルベールが偶然起きたのは腹に響くほどの爆発を感じたからだ。
 この状況を考えれば、恐らく火薬庫が爆発したのだろう。

(父上、母上、兄上……!)

 涙がにじむ目をゴシゴシと右手の袖で拭いながら、生存者を見つけようとする。
 しかしアルベールが目にしたのは瓦礫の下敷きになった使用人たちの変わり果てた姿ばかり。
 さらに廊下を進んだその時、呻きを聞いた。

 自分以外の生存者。
 ワラにもすがる想いで駆けていく。
 そこには。

「兄上!!」

 瓦礫の下敷きになって頭から血を流す兄、ピエトロの姿。
 苦悶に歪んでいた兄が、アルベールを見る。

「あ、アル……。無事だったのか。父上と、母上は……?」
「分からない。兄上、これは一体どうしたんだ?」
「……突然外から攻撃をされて、気付けばこのザマだ」
 ピエトロが苦笑する。
「兄上、今助けるっ!」
 瓦礫を持ち上げようとするが、びくともしない。
「や、やめろ。もう手遅れだ……。お前だけでも逃げろ」
 その時天井がピキピキと音がした次の瞬間、
「逃げろ!」
 突き飛ばされ、尻もちをつくのと同時に、天井が落ちてきてたちまちピエトロの姿を包み込んだ。
「兄上……!!!」
 こうしている間にも家を灼き尽くす炎は迫ってきていた。

 瓦礫の山に背を向け、窓ガラスを破って外に飛び出す。
 熱気と離れ、冷えた外気が気持ちいい。
 だがそんな場合ではない。

(今は状況把握を――)

 そう思った矢先、館のあちらこちらから噴き上げる黒煙の向こうではためく軍旗が目に飛び込んできた。
 それは蛇を食らう鷲が刺繍された、ベルストラーザ王国の近衛騎士のもの。
 何より、近衛騎士を動かせるのはアルベールの叔父、この国を統べる国王だけ。

(そ、そんな馬鹿な!)

 拳を握りしめ、兵士たちの目の前に飛び出した。

「私はアルベール・リュート・アマルティ・ベルストラーザだっ!!」

 兵士たちに向かって叫んだ。
 しかし次の瞬間、飛んできた矢に身体を貫かれ、仰向けに倒れた。

「ぐっ……」

 顔を歪め、腹に突き刺さった矢に触れると、身体を裂かれるような痛みが走った。
 血が流れていく。

(……どうして、叔父上……)

 全身から力が消えていく。
 鈍くなった聴覚に、多くの人間が走る足音が聞こえたが、次第にそれも聞こえなくなった。
 やがて視界が真っ黒に塗り潰された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

処理中です...