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王国編
バニーガールな魔法使い
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「んっ……うっ……」
アルベールは目を開け、身体を起こす。
そこは館の庭ではなかった。
天井も壁も床も赤いレンガに敷き詰められた廊下だった。
後ろを振り返っても、前を見ても、その先は見えないくらい長く、闇に包まれていた。
壁には転々と蝋燭の明かりがついている。
腹を探るが、ケガどころか、貫かれた矢すらない。
(俺は、生きてるのか?)
頬をつねると痛みがあった。
(ゆ、夢じゃない……?)
たしかにレンガや身体の感触をしっかり感じている。
これが現実なら、王直属の近衛騎士たちに館を急襲されたことこそ、夢なのか――。
(ここはどこだ?)
辺りを見回してみても、見覚えはない。
ただ、左右にどこまでも伸びる道をどう進めばいいかが不思議と分かり、そしてこの先に行かなければいけないと思った。
誰に言われるまでもなく、歩き出す。
この先に何があるなんて全く分からない。
それでも歩いていけば、しばらくして視界が広がった。
「いらっしゃ~~~~いっ!」
「っ!?」
ます目に飛び込んできたのは、眩しい明かり。
目がゆっくりと光に馴れ、顔を上げれば、アルベールがいる場所よりも十段は高いであろう台の上、そこに豪華な玉座があった。
その玉座に座る少女がひとり。
頭の上から大きな白いウサギ耳が生えていた。
「……」
「おーいっ」
「…………」
「ねぇー! ちょっとーっ!」
「………………」
むすっとした少女は「とうっ!」と、玉座から、アルベールの目の前に飛び込んできた。
「うわああっ!?」
アルベールは自分でもびっくりするくらいの速度で後ろに下がった。
同時に我に返ることが出来た。
(こいつ、何だ? っていうか、誰だ……?)
頭からウサギの耳(実際のウサギの耳よりも大きい。人間サイズ?かも)を生やした顔を覗き込んできた。
ぎょっとする。
それは少女の耳だけのせいではない。
その格好があまりに露出過多だったのだ。
身体を包むのは、ワンピースのスカートを取り払ったような格好。
今にもこぼれてしまいそうなくらいの豊満な胸、そして胸元には小さなリボン、コスチュームは股が大胆に切れ上がって、網タイツに包まれたむちむちの太ももが露わになって、高いヒールの靴を履いている。
身体は妙にエッチなのに、顔立ちは童顔。
くりくりしたアーモンドのような瞳に、眉や鼻立ちは整い、腰にまで届く銀色の髪は見るだけでサラサラだと分かり、ウサギ耳もふわふわに見える。
(ってことは、お尻にはウサギの尻尾が生えてるのか?)
そんなどうでもいいことを考えてしまう。
「お、お前、誰だ?」
「えー。誰って、アタシはイザベラ。よろしく~っ♪ あなたは~?」
「俺は、アルベール」
「へえ。アルベール君かあ」
「いや、ただのアルベール……って、そうじゃないっ! ここはどこだ!? お前は何なんだ!? 俺は自分の家にいて、それで近衛騎士がうちを包囲してて、火を放って……」
とにかく頭がグチャグチャだ。
イザベラはにこりと微笑む。
「あー。それ、本当♪」
「本当って……」
さらに唖然としてしまう。
「アルベールはお腹に矢を射られて、倒れて虫の息なのよ~」
「……お前、死神なのか?」
「違うよ~。あたしは、実はね魔法使いな~んだ~♪」
「……」
「お~い? どうしたのぉ~?」
「何で俺は殺されなきゃならなかったんだっ!!」
「さあ~。そこまでは分かんな~い」
イザベラは我関せずと、肩をすくめた。
(どうなってるんだ? こいつの言ってることは本当なのかっ? こいつは魔女で、俺は、し、死んだ? ……信じられるわけない)
「もし仮に俺が死んでいたとして、ここはどこなんだ? どうしてお前はここにいる? お前も死んでるのか? ま、魔法使い……」
アルベールは声が険しくなるのを自覚していた。
こんなふざけた奴といつまでも一緒にいていいのか。
逃げる隙を探す。
「ふふ♪ 逃げるってどこに逃げるつもり~?」
「っ!」
「私と一緒にいてもいいのかって考えてもね、駄目だよぉ~。ここは私の世界。アルベール。あなたが私の世界に来たんだからぁ~」
(こ、心が読めるのか?)
「ここは私の世界だから、あなたのことは全て把握できるんだよぉ~? 凄いでしょ~?」
「……どうしてお前の世界に俺は来てるんだ」
ここまで来ると、この魔法使いと名乗る少女と話さざるを得ない。
アルベールが観念したことに、イザベラは満足げ。
「私と波長の合う人間を探していてね。アルベールの魂がちょうど良かったの~。だから呼び出しちゃったんだ~♪」
「……何の為に?」
「私の望みを叶えて欲しいんだ~。要は私をこの世界から出して欲しいの♪」
「魔法使いなのに、そんなことも出来ないのか?」
「実は私、記憶が色々とおかしいのぉ~。どうしてここにいるのかぁ~? ここで何をするのかぁ~? とか、ぜんぜん分からなくって~。外に出れば、記憶がきっと戻ると思うの~!」
イザベラは妙に芝居がかった調子で言う。
「えへへ~もちろんアルベールにも特典をあげちゃう~♪ もし契約してくれるなら、あなたを生き返らせてあげるし、おまけに特別な力も上げちゃう~っ♪」
「断るっ」
「ええ~!? 何で~? どうしてぇ~!?」
「そんな美味しい条件が本当にある訳がないだろ。何を企んでるんだ?」
「企むも何も記憶がないんだからしょうがないの~」
「もういいだろ。俺が死んでて、お前が俺の魂の足止めしてるんだったら、もう解放しろ。お前に利用されるくらいだったら、このまま死ぬっ」
「じゃ~自分がどうして死んだ理由を知らなくっていいの~? 私なら教えてあげられるよ~?」
「……それは」
兄のピエトロの苦しむ顔は今でもはっきり覚えていた。
「館に火を放たれたということは死んだのは、アルベールだけじゃないんだからね~。他の家族も殺されたのよ~? さあ、どうする~?」
イザベラの金色の瞳が、まるで夜の猫のように妖しげに輝く。
(どうして叔父上に殺されなければいけなかったのか。俺だけじゃない。家族みんな、が……)
家族の為。
アルベールは目の前の魔法使い――いや、アルベールからすれば怖ろしい魔女も同然だが――にうなずいて見せた。
イザベラが何かを企んでいるのは分かっていたが。その時のアルベールにはどうでもよかった。
「分かった。お前と契約しよう」
「ふふ、ありがとっ♪」
「おい!?」
いきなり抱きしめられ、柔らかな胸に顔を押しつけられた。
柔らかさといい香りに包み込まれた。
アルベールは目を開け、身体を起こす。
そこは館の庭ではなかった。
天井も壁も床も赤いレンガに敷き詰められた廊下だった。
後ろを振り返っても、前を見ても、その先は見えないくらい長く、闇に包まれていた。
壁には転々と蝋燭の明かりがついている。
腹を探るが、ケガどころか、貫かれた矢すらない。
(俺は、生きてるのか?)
頬をつねると痛みがあった。
(ゆ、夢じゃない……?)
たしかにレンガや身体の感触をしっかり感じている。
これが現実なら、王直属の近衛騎士たちに館を急襲されたことこそ、夢なのか――。
(ここはどこだ?)
辺りを見回してみても、見覚えはない。
ただ、左右にどこまでも伸びる道をどう進めばいいかが不思議と分かり、そしてこの先に行かなければいけないと思った。
誰に言われるまでもなく、歩き出す。
この先に何があるなんて全く分からない。
それでも歩いていけば、しばらくして視界が広がった。
「いらっしゃ~~~~いっ!」
「っ!?」
ます目に飛び込んできたのは、眩しい明かり。
目がゆっくりと光に馴れ、顔を上げれば、アルベールがいる場所よりも十段は高いであろう台の上、そこに豪華な玉座があった。
その玉座に座る少女がひとり。
頭の上から大きな白いウサギ耳が生えていた。
「……」
「おーいっ」
「…………」
「ねぇー! ちょっとーっ!」
「………………」
むすっとした少女は「とうっ!」と、玉座から、アルベールの目の前に飛び込んできた。
「うわああっ!?」
アルベールは自分でもびっくりするくらいの速度で後ろに下がった。
同時に我に返ることが出来た。
(こいつ、何だ? っていうか、誰だ……?)
頭からウサギの耳(実際のウサギの耳よりも大きい。人間サイズ?かも)を生やした顔を覗き込んできた。
ぎょっとする。
それは少女の耳だけのせいではない。
その格好があまりに露出過多だったのだ。
身体を包むのは、ワンピースのスカートを取り払ったような格好。
今にもこぼれてしまいそうなくらいの豊満な胸、そして胸元には小さなリボン、コスチュームは股が大胆に切れ上がって、網タイツに包まれたむちむちの太ももが露わになって、高いヒールの靴を履いている。
身体は妙にエッチなのに、顔立ちは童顔。
くりくりしたアーモンドのような瞳に、眉や鼻立ちは整い、腰にまで届く銀色の髪は見るだけでサラサラだと分かり、ウサギ耳もふわふわに見える。
(ってことは、お尻にはウサギの尻尾が生えてるのか?)
そんなどうでもいいことを考えてしまう。
「お、お前、誰だ?」
「えー。誰って、アタシはイザベラ。よろしく~っ♪ あなたは~?」
「俺は、アルベール」
「へえ。アルベール君かあ」
「いや、ただのアルベール……って、そうじゃないっ! ここはどこだ!? お前は何なんだ!? 俺は自分の家にいて、それで近衛騎士がうちを包囲してて、火を放って……」
とにかく頭がグチャグチャだ。
イザベラはにこりと微笑む。
「あー。それ、本当♪」
「本当って……」
さらに唖然としてしまう。
「アルベールはお腹に矢を射られて、倒れて虫の息なのよ~」
「……お前、死神なのか?」
「違うよ~。あたしは、実はね魔法使いな~んだ~♪」
「……」
「お~い? どうしたのぉ~?」
「何で俺は殺されなきゃならなかったんだっ!!」
「さあ~。そこまでは分かんな~い」
イザベラは我関せずと、肩をすくめた。
(どうなってるんだ? こいつの言ってることは本当なのかっ? こいつは魔女で、俺は、し、死んだ? ……信じられるわけない)
「もし仮に俺が死んでいたとして、ここはどこなんだ? どうしてお前はここにいる? お前も死んでるのか? ま、魔法使い……」
アルベールは声が険しくなるのを自覚していた。
こんなふざけた奴といつまでも一緒にいていいのか。
逃げる隙を探す。
「ふふ♪ 逃げるってどこに逃げるつもり~?」
「っ!」
「私と一緒にいてもいいのかって考えてもね、駄目だよぉ~。ここは私の世界。アルベール。あなたが私の世界に来たんだからぁ~」
(こ、心が読めるのか?)
「ここは私の世界だから、あなたのことは全て把握できるんだよぉ~? 凄いでしょ~?」
「……どうしてお前の世界に俺は来てるんだ」
ここまで来ると、この魔法使いと名乗る少女と話さざるを得ない。
アルベールが観念したことに、イザベラは満足げ。
「私と波長の合う人間を探していてね。アルベールの魂がちょうど良かったの~。だから呼び出しちゃったんだ~♪」
「……何の為に?」
「私の望みを叶えて欲しいんだ~。要は私をこの世界から出して欲しいの♪」
「魔法使いなのに、そんなことも出来ないのか?」
「実は私、記憶が色々とおかしいのぉ~。どうしてここにいるのかぁ~? ここで何をするのかぁ~? とか、ぜんぜん分からなくって~。外に出れば、記憶がきっと戻ると思うの~!」
イザベラは妙に芝居がかった調子で言う。
「えへへ~もちろんアルベールにも特典をあげちゃう~♪ もし契約してくれるなら、あなたを生き返らせてあげるし、おまけに特別な力も上げちゃう~っ♪」
「断るっ」
「ええ~!? 何で~? どうしてぇ~!?」
「そんな美味しい条件が本当にある訳がないだろ。何を企んでるんだ?」
「企むも何も記憶がないんだからしょうがないの~」
「もういいだろ。俺が死んでて、お前が俺の魂の足止めしてるんだったら、もう解放しろ。お前に利用されるくらいだったら、このまま死ぬっ」
「じゃ~自分がどうして死んだ理由を知らなくっていいの~? 私なら教えてあげられるよ~?」
「……それは」
兄のピエトロの苦しむ顔は今でもはっきり覚えていた。
「館に火を放たれたということは死んだのは、アルベールだけじゃないんだからね~。他の家族も殺されたのよ~? さあ、どうする~?」
イザベラの金色の瞳が、まるで夜の猫のように妖しげに輝く。
(どうして叔父上に殺されなければいけなかったのか。俺だけじゃない。家族みんな、が……)
家族の為。
アルベールは目の前の魔法使い――いや、アルベールからすれば怖ろしい魔女も同然だが――にうなずいて見せた。
イザベラが何かを企んでいるのは分かっていたが。その時のアルベールにはどうでもよかった。
「分かった。お前と契約しよう」
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