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第二章 奴隷編

第15話 ステータス 魔力の根源

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俺は、毎日の労働を耐えながら、魔法の訓練を積んでいた。

「マザー、ステータス表示。」

『はい。』

氏名 ソウ ホンダ 
年齢 16歳
   種族 人狼
   
   
   魔力    620
     RP     365/368
     BP    


   スキル
      治癒     
        身体回復   LV2 5
        状態回復   LV15
      攻撃魔法   
        火属性 LV 12
        土属性 LV 8
        水属性 LV 10
        闇属性 LV 9
        光属性 LV 7
   
      魔法抵抗 LV 28
      重力操作 LV 3
      物理抵抗 LV 35
                       遠話   LV3

「マザー、俺って強くなったのかな?」

『一般の人と比べれば、ソウ様が強いことは、間違いないです。』

一般の人の基準が判らない。

「マザー、俺以外の人のステータスって判るか?」

『ソウ様が対象に触れている状態なら可能です。』

俺は寝ているピンターに近づき、ピンターの手を握った。

「マザー、ピンターのステータス表示をしてくれ。」

『了解しました。』

氏名 ピンター
年齢 7歳
   種族 人族

   魔力  3

     RP  2/2
     BP  1/1
   

   スキル
     竹馬 LV1

随分と低い値だな、子供だからかな?
スキル「竹馬」って。
少し笑った。

俺は、毎日のように、自分のステータスを確認していた。
だから、それぞれの数値の持つ意味を、ほぼ理解していた。
経験値は、魔法を行使するたびに増加する。

魔力はゲームで言えば「MP」だ。
RPとBPの合算値が魔力=MPになっている。
魔法を行使するにはRPとBPを同時に消費しなければならない。

例えば、
火の魔法を一度使うためには、
RP、2ポイントとBP、1ポイントが必要だ。

RPは、原初の月のパワーポイント、BPは、青い月のパワーポイントだ。

火力を上げるには、火属性のレベルを上げるか、それぞれの必要ポイント数の増加する必要がある。
 
それぞれのポイント数は、時間経過と共に、回復する。
ポイントを全消費して、完全回復するのには、約12時間必要だが、その回復必要時間も、レベルUPと共に少なくなっている。

経験値が増えれば、人狼としてのレベルが上がり、スキル以外の基本的数値が上昇することは確認した。
以前と大きく違うのは、治療スキルの中に

状態回復

という新しい項目が出来たことだ。
これは、ピンターが蜂に刺された時、痺れている患部をヒールしたら、発現した。

おそらく、状態回復は、ドレイモンにも効果があると思う。
これからは、この状態回復を主にレベルを鍛えようと思う。

「マザー物理抵抗レベルが、高いのはなぜだ。」

『毎日、鞭打たれているからです。』

ジグルの野郎め、何かと言うと俺を目の敵にして鞭打ちやがる、いつか見ていろよ。

「よお、あんちゃん、時々空に向かって話しているようだが、『遠話』の加護でも持っているのか?」

長屋の中でマザーと会話していたら、その様子を見たドルムさんが、話しかけてきた。

「ドルムさん、『遠話の加護』って、何ですか?」

「神のお告げとか、虫の知らせって言うのがあるだろ。遠くの人間と意思疎通できる加護だよ。」

俺は、ドルムさんの正面に座りなおした。

「へー、そんな加護があるんですね。俺のは、ただのお祈りですよ。」

「うそ付け、お祈りするようなタマには見えないぜ。まぁいいさ、誰でも隠し玉は持ってるもんさね。」

ドルムさんは、ニヤリと笑った。

マザーと会話する時、声には出していなかったが、ついつい空を向いてしまうので、ドルムさんに気付かれたようだ。

ドルムさん、けっこう鋭い。

「それにしても、ドルムさん、物知りですね。神の加護って、他にも種類があるんですか?」

「ああ、いろいろあるぞ。」

俺はドルムさんから、神の加護、つまりスキルの種類を聞き出した。

物質に触ることなく、目的の物質を移動させるスキル。

多くの混ざりものがある物から、目的の物だけを抽出する、抽出スキル。

物質を融合させる融合スキル。

物質の形を変形する変形スキル。

空間に変化をもたらす空間スキル。

等だ。

もっとも、これらのスキルは、予想できていた。

なぜなら、魔法とは、「自己のイメージを具現化すること。」だから、理論的には、何でも出来てしまうわけだ。

それでも、この世界で魔法が、どのように利用されているのかは、知っておきたかったのだ。
ドルムさんが、俺に近づき、耳元で、囁いた。

「よう、あんちゃん。もしもの話だがな、もしも、あんちゃんが逃げるなら、俺にも声かけてくれよ。」

俺は、少し驚いていた。
ドルムさんは、年季が明けるまで、大人しくしているのだろうと、勝手に思っていたからだ。

「ドルムさん、10年我慢するんじゃなかったんですか?」

ドルムさんは、自分の口に人差し指をあてて。

「最初は、そう思っていたが、いろいろと事情が変わってな。」

と答えた。

事情が変わったって言っても、毎日同じ作業の繰り返しなのにね。
俺は、いずれ強くなって、ここを逃げ出すつもりではいたが、その時は、ピンターだけを連れて逃げるつもりだった。

他の奴隷達も連れて行きたかったが、そこまでは面倒見切れそうにない。

ましてや、赤の他人のドルムさんには何の義理もなかったので、脱走の誘いをかけるつもりはなかった。

「無理ですよ。ここを逃げ出すなんて。」

「ま、もしもの時さ。」

ドルムさんは、そう言うと自分の寝床へ帰った。

翌朝

「おーら、てめぇら、とっとと働きやがれ。」

ジグルの声で目が覚めた。
朝食は、固いパンと水だけ、そのパンをかじりながら、浜へ出た。

いつもなら、海水を運びつつ、重力操作のスキルUPを図るのだが、その日は違った。

昨日、ドルムさんから聞いた「抽出のスキル」を試してみたかったのだ。

海水を汲むときに、海辺の砂を手の平にすくい、砂鉄をイメージした。

最初は出来なかったが、何度か繰り返すうち、掌に載せた砂を地面に落とすと、掌に金平糖より一回り程小さな、鉄の塊が、いくつか残るようになった。

「抽出スキルを獲得しました。」

とマザーが告げてくれると思っていたが、アナウンスは無かった。

マザーは地平線より上に無いようだ。
奴隷用の衣服にはポケットが無いので、できた砂鉄の塊を懐に忍ばせたが、ちくちくして痛かった。

(後でマザーに相談しよう。)

抽出スキルに意識を集中していたので、ジグルが近づくのに気が付かなかった。

「ソウ、てめぇ何ボーっとしてやがる。そんなに鞭が欲しいか。グヘヘ」

ジグルは俺を鞭打った。

「ウガーっ」

俺は悲鳴を上げた。
しかし、それは演技で、本当はあまり痛くなかった。
いつの間にか物理抵抗スキルがUPしていて、鞭打たれても、あまり痛くなくなっていた。

その事をザグルに知られたくなかったので、わざと悲鳴を上げたのだ。

(ジグル、お前が俺を鞭打った回数はこれで217回だ。)

(いつか、必ず、お礼をしてあげるよ。)

俺は、元々怠け者だが、自分に対して酷いことをした奴には、しっかりとお礼をしたいタイプの人間だ。

俺は、3日がかりで、両手の平に一杯位の砂鉄を集めた。
長屋の寝床に座り、砂鉄を掌に載せて

  (塊になれ。)

と念じた。
すると、さほど苦も無く、掌の上の砂鉄が拳大の鉄の塊になった。

『融合スキルを獲得しました。』
『変形スキルを獲得しました。』

マザーのアナウンスがあった。

拳大の鉄の塊を手に持ち、今度は、「ナイフ」をイメージして、念じた。
「変形スキル」で、ナイフを作り出すのは、難しかったが、鉄を粘土だと思い込むようにしてイメージすると、なんとかナイフの形にはなった。

しかし、切れ味は鈍そうなナイフだった。
ナイフを作ったものの、長屋の中には、ナイフを隠す場所が無かった。

そこで思い出したのが、漫画や小説に出てくる、便利アイテム「マジックバッグ」だ。

このアイテムも作成に苦労したが、布で小さな袋を作って、その袋の中が広がることをイメージするとハガキ大の小さな袋に、その容積の数十倍の物品を補完することが、出来るようになった。

『空間操作スキルを獲得しました。』

マザーがアナウンスしてくれた。

「マザー、月が地平線より上に無い時に、マザーと通信する方法は無いか?」

昼間でも月が出ている時は、マザーと会話出来ていたが、原初の月が、地平線より下にある場合は、会話ができなかった。

『遠話スキルがレベルアップすれば、私が地球の裏側にいても通信できるようになります。』

訓練あるのみか

その後、俺は日常生活の全ての行為をレベルアップにつなげるように工夫した。

就寝時に闇属性の「スリープ」を自分とピンターにかけて、熟睡し体力を回復させ、起床時には「眠気」を「状態回復」で吹き飛ばした。

労働中は常に「重力操作」で海水の入った桶の重さを軽減し、自分と仲間の日焼けや疲労を「ヒール」で回復させた。
夕食後は、闇属性の「パラライズ」で自分の体の一部を麻痺させ、「状態回復」で回復させる。
といった訓練を魔力が尽きるまでおこなった。

スキルを発動させるには、頭の中で、そのスキルをイメージするだけでよかったが、イメージをより鮮明にさせるには、身体動作を伴わせた方が効果的だった。

例えば、敵に対して火属性のファイヤーボールをぶつけるには、自分の指を目的の方向に向指を拳銃の銃身に見立てれば、より効果と命中精度が上がるようだった。

治癒スキルを使用するのも、イメージだけで発動はできたが、患部に掌を翳すという身体行動が伴えば、より早くかつ効果的に使用することができた。

「パラライズ」や「ファイヤーボール」といった名称も、俺が勝手に名付けただけで、べつに「麻痺」でも「火の球」という名称でもよかった。

ようするに術者が効果をイメージしやすいように名称を付けただけだった。

こうして俺は、きたるべき日に備えてレベルアップを繰り返した。
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