いつか、いつかは、追いつける気がして

みょ~じ★

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第一章:ゼス、ゲヘゲラーデンの論文を王宮に届けに行くのこと。

第八節:ゼス一行、命の危難を王宮の近衛隊長に救われるのこと。(後)

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「さて……、ゼス」
「はい」
「王宮まで向かうのならば一緒に行ってもいい。報酬はこの際、子供から巻き上げるほど俺は子供じゃない」
「え、でも……」
 戸惑うゼス。ゲヘゲラーデンの名をロクに知らぬ彼のような次世代者にとっては、豹変した戦士の態度が不思議で仕方なかった。
「大人ってのは子供の役に立つもんなんだよ。それに……そうだな。どうしても報酬を払わなければ不安だというのならば、あのお方がゼスの村で何をしていたのかも知りたい。その情報を報酬という形でどうだ」
 それは、単なる王宮までの護衛に対しての報酬としてはかなり高額な情報報酬であり、同時にゼスたちにとっては安い情報であった。何せ、彼らの住んでいる村でにこにこぼんやりとしているゲヘゲラーデンがかつては戦場で知らぬ者などいない程の名をはせた魔導士であるということは彼らにとって想像の範囲外であった。
「はいっ、ありがとうございます!」
「それじゃ、向かうか」
「あ、待ってください!」
「どうした?」
「クヴィェチナちゃんとルーチェちゃんが……」
 クヴィェチナとルーチェはまだ気を失ったままであった。無理もあるまい、彼らは出血を伴う生傷こそ負っていなかったが、彼女たちにとっては初めて見るモンスターであったし、同時に明らかに疲弊していた。また、敵であり魔物とはいえ生き物が目の前で切り殺されたのである、感受性の豊かな子供がいっぺんに多くの情報を処理しきれず意識を失うのも無理はなかった。
「ああ、そうだったな。
 ……意識を失っているということは……」
 謎の薬を二人に投与する戦士。見る人が見れば即座にわかるであろうその薬は、しかしながらゼスには分かろうはずもなかった。
「「!」」
「クヴィちゃん!ルーチェちゃん!」
 たまらず二人に駆け寄るゼス。
「ゼスくん!」
 ゼスと抱き合うクヴィェチナ。普段「クヴィ」と呼ばれたら指摘するのだが、その余裕すらなかったようだ。
「よかった、生きてた……」
 胸を撫で下ろすルーチェ。彼女に関しては実はまだ問題が残っていたのだが、それを今彼女が知ることはできなかった。
「この人が助けてくれたんだ!」
 と、謎の戦士を紹介するゼス。彼達からしてみれば、命の恩人であるから当然とも言えた。
「これはこれは、ありがとうございます」
 深々とお辞儀をするルーチェ。対照的に
「ありがとーございます!」
 にこっとした笑顔で手を上げて礼を言うクヴィェチナ。それは礼儀云々ではなく、二人の性格の違いの現れとも言えた。
「何、旅は道連れ世は情け、だ。そんなことより王宮へ行くんだろ?ついてこい」
「「「はいっ!」」」
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