【死に役転生】悪役貴族の冤罪処刑エンドは嫌なので、ストーリーが始まる前に鍛えまくったら、やりすぎたようです。

いな@

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第二章 原作開始

第102話 魔王って……

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「お か え り な さ い ま せー」

『ねえドライ。教皇とか聖騎士たちを捕まえてる間に凄く増えてない?』

 魔牛の群れの真ん中あたりで、リズがぶんぶんと手を振り出迎えてくれた。

 イスの言う通り、百頭をゆうに越すだろう魔牛がひしめきあってる。いや、数百か?

「どうなってんだよこれ……」

「ドライ様とイス様がお出掛けのあと、高原中から集まってきているようです。いかがいたしましょう」

 そしていつの間にか隣にいるカイラさん。

「いっそのこと、このままフェリル村につれていこうか……」

「生息地が二ヵ所に増えてしまいますが、フェリル村も高原。こちらとそう環境の違いはなさそうですので大丈夫かと」

 カイラさんの言う通り、標高も気候もそう変わらないかも。

 でもそうすると、この高原の魔牛がいなくなって……ならないな。

 まだまだこちらに来ようとしてる魔牛が遠くに見える。

『これ、早く決めないと一度に転移できなくなるわよ』

「そうだな、まだこれくらいなら俺とイスの転移で行けそうだし。数が増えるのはなんとか村人に頑張ってもらおう」

『じゃー決まりね。ささっとやっちゃいましょ』





「――と、言うわけで魔牛を連れてきました」

「…………」
「…………」
「…………」

 放牧中の村人たちの前に、魔牛と共に転移してきたあと、簡単に説明したんだけど……。

 みんな固まったまま魔牛の群を見つめている。村人たちが正気に戻るまで、数分かかったけど、問題なく魔牛は受け取ってもらえた。

「いやはや、とんでもない人たちに頼んでしまったようですな。ささ、食べてくだせえ」

「まったくだ。これは出稼ぎに行ったものたちを呼び戻さなければなりませんな。こっちの料理もどうぞどうぞ」

 と、突然始まった歓待の料理をすすめる大人たちと――

「魔牛さんいっぱーい」
「私も魔牛さんに乗りたい!」

 村の柵越しに集まった魔牛たちを見て、喜ぶ子供たち。

 うん。村人より魔牛の方が圧倒的に多い。数えてくれたみたいだけど、もといた魔牛もあわせて五百匹ほどになったらしい。

 ミルクはもちろん、チーズは作れる数は少なかったそうだけど、人気だそうで、これからは増産するそうだ。

 お土産に少しいただいて、帰ろうとしたその時。

『なにか飛んで来たわね。連れてきた魔牛が襲われるかも?』

『飛んできた? またワイバーン?』

『違うわね。これ、どっかで感じた魔力なんだけど…………どこだったかしら?』

 いや、聞かれても知らないけど……。

 んー、でも俺が感じる魔力量だ、と……俺たちの中で一番少ないアンジーよりちょっと上くらいの魔力量かな。

 結構強そうだ。

『んー。わかんないけど、攻撃してくる感じじゃないわね』

『だね。人みたいだし、降りて……落ちてくるしね』

「お主ら息災であったか! またチーズを買いに来たのじゃー! ぬぬ! 魔牛どもが! 危ないのじゃ! そこどくのじゃ!」

『ドライ、このままじゃ魔牛にぶつかるわね』

『だね、って、駄目でしょ!』

 柵の外に集まっている魔牛のところに落下してくる。

「転移!」

 落ちてくる子の手前まで転移して、受け止める。

 ドスン!

「おっと!」

 勢いで魔牛の背中ギリギリまでに押されたけど、被害は無しだな。

 というか、腕の中で体を縮こまらせてる女の子。……魔王の現身うつせみって……。

 魔王じゃん!

「……ぬ? なんじゃ? 落ちておらん?」

「……えっと、魔牛の上に落ちる前に受け止めたんだけど……」

 どうすりゃいいのこれ! 魔王だよ!

「おお! それはすまんかった。わらわは――」

「あっ! マオーちゃんだ!」

 え?

「マオーちゃんまた来た! 遊ぼー!」
「お兄ちゃん浮いてる!」
「マオーちゃん、また冒険のお話聞かせてー!」
「すごーい!」

 んー。お知り合い?

「任せるのじゃ! たんと遊んでやろうではないか!」

『あー、魔王だったのね』

 魔王だったのね、じゃないよ!

「お主、すまぬが下ろしてくれんかの?」

「えっと、そう、だね……」

 礼儀正しいし、村の子供たちとも顔見知りみたいだし、とりあえず、危険はないのか?

 飛行スキルで魔牛の上から移動して、柵の内側に着地。

 抱きかかえていた魔王をそっと下ろすと――

「ふむ。すごいのお主。飛行スキルを使えるとは中々やるのう」

 真っ赤な髪の毛と同じくらい赤い目をした、女の子が見上げてくる。

 白いワンピースを着てるし、普通の子にしか見えない。

 うんうんと頷き、笑いながらぽすぽすと肩を叩いてくる魔王。

 ………………イメージと違うんですけど!

「村長よ! チーズを買いに来たのじゃ! 子供たちと遊んでおるから準備を頼む!」

「いつも通り十日分ですね、用意しておきます」

 村の人に話を聞くと、だいたい十日に一度、チーズを買いに来るそうだ。

 買いに来ては子供たちと遊んで帰るらしい。

『ねえイス。あの子、魔王だよね』

『そうね。封印はどうしたのかしら。それに、あんな性格じゃなかったんだけど……ま、この村に実害は無いみたいだし、いいんじゃない?』

『いい、のか?』

 村の子供たちを軽々と持ち上げ、ジャンプしながら魔牛に乗せてやってる魔王。

 魔物だから魔王が復活すれば凶暴化するはずなんだけど、大人しいままの魔牛。

 どうしたらいいんだこれ……。
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