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第1章

第15話 幼馴染みとの再会と奴隷の腕輪 ②

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 俺の疑問をよそに委員長はさらに話を続けるから耳を傾けながらまわりのみんなの様子も見ておく。

「その為に僕達召喚者は強力な精神耐性の魔道具を嵌めておかないとやっていけないそうですよ、僕達は神様から『精神耐性弱』をもらってはいるけれど、やはり沢山の血なんかを見るとね」

「そ、そう言うことか」

「それに神様に言ってもらえなかったアイテムボックスも付いてるようです、まあ、それほど大きな容量ではないみたいですけどね」

「おお! それは欲しいよな、鑑定も必要だったけど、鑑定は付いてないのか?」

 委員長は首を振り、無いんだと分かった。

 森辻と国分が話している間も、みんなは次々と腕輪の魔道具を受け取り、ついに俺の手にも渡され、嵌め方の説明をしてくれるそうだ。

 ふと、握った魔道具から顔を上げると、テーブルの対面にいた幼馴染みの西風にし あかねの姿に目がいった。

 他のみんなは受け取った腕輪を『かっけー』とか『可愛い~』などと、一つひとつ形やガラの違いをキラキラした目で見ているのではなく、青ざめた顔で手に持つ腕輪の魔道具を見つめている。

 なぜすぐに茜ちゃんと気が付かなかったんだろうと思ったら、あるべき物がなかった……。

 産まれてから毛先を整えるだけで、バッサリと切ったことがないと言ってた真っ黒で艶々で、触ると凄く手触りが良かった腰まで伸ばしていた髪の毛が、無理矢理切ったばかりと思える段違いの髪型だったからだ。

 その小顔で色白な肌にうっすら桜色の小さな唇に、真っ黒な大きい瞳がわなわなと震えている。

 そんな姿で青白い顔色をして何を見ているんだろうと思ったら何か口を動かしたのと同時に茜ちゃんの頭の上にあの文字が浮かび上がった。

 ――――――――――――――――――――

 うそ……これって精神耐性とアイテムボックスはついてるけど、奴隷の魔道具じゃない……。

 こんなの嵌めちゃったら……ど、どうしよう、みんなに教え……駄目ね、友里ゆうりくんが学校に来なくなってからいじめられていたのは私だもん、誰も話なんて聞いてくれないよね。

 ――――――――――――――――――――

 くそ、髪の毛はそのせいか……茜ちゃんが……俺の代わりにだなんて森辻の奴……そ、それもだけど、奴隷の魔道具なのかこれ……。

 まずいぞ、やっぱり召喚の部屋で騎士達が言ってた通り、奴隷にするつもりだ。

 俺が受け取った腕輪を鑑定したが、やはり奴隷の魔道具のようだ。

 ――――――――――――――――――――

 奴隷の腕輪 精神耐性(中)、アイテムボックス(小)付き、取り外し不可
 ※奴隷主 ビスマス王

 ――――――――――――――――――――

 国分が言ってた精神耐性とアイテムボックスの機能は付いてるけれど、取り外し不可で奴隷主が王様だ。

 茜ちゃんを鑑定すると、やっぱり看破のスキルを持っている。

 鑑定じゃないけど、俺も持っていた看破のスキルを使うと奴隷の魔道具ということだけが分かった。

「茜ちゃん、これ」

「ゆ、友里くん。さっきは見当たらなかったけど友里くんも召喚されちゃったんだ」

 うんと頷き今度は念話を飛ばしてみる。

『茜ちゃん、返事は頭で考えてね、声に出さなくても通じるはずだから』

「へ?」

『あっ、こ、こうかな? もしもし茜です、友里くん聞こえますか?』

 一瞬声を出しかけたけど、すぐに念話で話しかけてくれた。

『聞こえているよ、今は時間がないからその腕輪を違う物に交換しちゃうね』

 それだけを念話で飛ばし、自分用の王冠と、茜ちゃんが持っている腕輪を一瞬で取り替えておいた。

 もちろんイルが持っていた腕輪もだ。

『うそ! 腕輪が変わったよ! それに身体強化の腕輪だよ!』

『うん、みんなの分は手持ちがないから無理だけど、俺と茜ちゃんの分だけは交換しておこう』

 まわりは一番後ろの席の俺達には見向きもしてないから、気付かれてはいないだろう。

 みんなは次々と魔法使いの格好をした爺さんに言われるがまま腕輪を嵌めてしまっている。
 俺が持つ腕輪の数も足りないが、半分以上が既に嵌めてしまっているから今さら交換も間に合わない。

『茜ちゃん、なんとかここから抜け出すことを考えないとまずいんだ』

『で、でもみんなは――ああ、もう嵌めちゃってます』

 俺から視線をはずして、奴隷の腕輪をなにも考えずに嵌めてしまったみんなの事を見て、オロオロしだした。

 このままではまずいな……考えろ俺……。

 ――――っ! そうだ!

『茜ちゃん、とりあえず嵌めて、その腕輪なら問題ないから。後、ステータスは誰にも言ってない? 知ってる人がいたらこれも難しいんだけど』

 俺は茜ちゃんの返事を待たずにイルのステータスを擬装しておく事にした。
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