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第二章・夫婦の危機?
11・信じがたい現実
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──ど、どうして?あの人がこの店になど、どんな用があるというのだろう。それにここは女性専門のブティックなのよ?それもアノン侯爵家お抱えの…
どうにも可怪しいと思った…いつもは親切で丁寧なオーナーの見たこともないような動揺した姿。そういう訳だったのね…夫が先に来ていることで、鉢合わせては不味いと思ったのだろう。だけど予約してあった筈だわ…それをダブルブッキングなんてあるかしら?きっとクリスティンの方が、予約をせずに現れたに違いない。ということは、急に必要に迫られて?
それにしても相当に慌てているケイトの姿。それが尚更可怪しさを物語っている。もしかして、私に見られてはまずいものを目撃したの!?
未だ激しく動揺しているケイトに、ここで控えているように言い付け、一人部屋から出る。
ほんの数歩ほどの通路も、なんだか果てしなく遠く感じる。私の予想が確かなら、いつもなら迷うことなく通されている一番豪華な仕様の個室…そこにクリスティンは居る筈だわ。
どこか祈る気持ちだった…実際は違う人だったらいいのにと。長年屋敷で働くケイトが見間違える筈はないんだけど…
だけど本当ならば仕事中のこの時間。おまけにこの忙しい時間帯に一緒に来るなんて、よっぽどのことに違いない。そしてその部屋の前に差し掛かると…
「それではアノン侯爵様、それでよろしくお願い致します。フェリシア様も大層お喜びになられるかと」
そんな聞き捨てならない言葉が聞こえきた。おまけにその声…聞き覚えはないように思うけど、誰なの?
──ガチャ。
ドアの音が響いて、咄嗟に壁際へと隠れる。悪いことをしている訳でもないけれど、そのまま身を潜めた。そしていけないと思いつつも、そっと覗くと…あれっ?あの人は…
一人の女性とオーナーのミッシェル、そしてクリスティンが部屋から出て来た。その女性には明らかに見覚えがある。あれは…キャサリン・スコット子爵令嬢だわ!
印象的な波打つ赤毛。そしてスラリとした長身は、長年会ってはいないけれどもキャサリンの特徴そのもの。私と彼女はガセルダムスの同級生で…だから人違いではないと思う。そして一番肝心なことは、彼女は妃殿下の侍女をしているという事実。
──やはりフェリシア絡みだったのね…
ケイトの様子から、クリスティンが女性と一緒なのは明らかだった。私が動揺し嫌がることだとすれば、それしか考えられないもの。それがキャサリンだったなんて…どういうこと?
フェリシアが王太子妃になる際、私に侍女になってくれないかと頼んできた。それが母の体調不良で家業を手伝わなくてはならなくなり、それを辞退することになる。そしてその次に選ばれたのがこのキャサリン令嬢。私達のように親友とは違うけど、彼女はガセルダムス在学中からフェリシアを、まるで女神かのように崇めていて…
そんなことから私は、彼女から邪魔な存在だと陰口を叩かれていた。身分差から直接言われるまではなかったが、明らかに疎まれていたのは間違いない。彼女に対して何かをした覚えなどないことから、フェリシアとクリスティンという理想のカップルを猛烈に応援し、心酔しきっているのが原因なのだろうと思っていたけど…
だけど今キャサリンは、クリスティンの横にピッタリと張り付くように立っており、明らかに熱く見つめている。そのことから、どうも恋心からの行動だったのかも…と思われて。
私なんかがクリスティンと一緒にいるのは許せないけど、フェリシアならば許せる…そんな複雑な感情からの行動だったのだと、今更ながら判明した。
そしてキャサリンは深々と頭を下げ、それからもう一度クリスティンの方へと顔を向け、心底嬉しそうに微笑む。
久しぶり憧れの人に会えて満たされている…ってところかしら?私とクリスティンの結婚は、彼女にとって寝耳に水だったことでしょう。きっと苦々しく思っていた筈。そんなキャサリンが今は夫と共にここにいる。
それは何故?と考えてみれば、先程聞こえたことから考えてみるとクリスティンはフェリシアから何かを頼まれたようだわ。我がアノン家が経営する商会は、宝飾類から調度などの高級品、食品や医療品、そして衣料品まで多岐に渡っている。それこそロードア国のものだけではなく、各国の珍しいものまで…
フェリシアが何を欲しがっているのかは知らないけど、それをここまで来れないフェリシアの代わりに注文しに来たのがキャサリンなんでしょうね。そしてこの店にやって来たのだとすると、うちの商団では扱っていないものだったのだろう。それで紹介したのがこのブティック?そしてそこに偶然居合わせたのが私…
だけど不思議なのは、王家のお抱え商人がいる筈よね?ドレスや装身具まで扱っている店だって沢山出入りしていると思うけど…
そして私はクリスティンから、うちの商団がその中の一つだとは聞いたことがない。もちろん王族の専属になれたら多大な利益に繋がるし、家門としては喜ばしいことなんだけど…王太子殿下がそれをお許しになるかしら?
妃殿下の元婚約者ともいえる者を、おいそれと城に招くとは思えない。それで秘密裏にってことなの?それなら何故それを私に話してはくれないんだろう。疚しいことがないのなら、フェリシアからの依頼があることを話してくれてもいいのに…
それからクリスティンとキャサリン嬢は、私がそんな二人を目撃しているなど気付きもせずに、ブティックから出て行った。私は遠くなって行く夫の背中を唖然と見つめてから、これ以上は見ていられないとクルリと踵を返す。それからおずおずと先程までいた部屋へと引き返して…
部屋では気を揉んでいた様子のケイトが、私の顔を見るなり少し安心した表情をする。きっとケイトはさっき、クリスティンの声を聞いたのだろう。誰と居たのかまでは見ていなかったと思うが、一緒に居たのが女性であったのは分かったよう。このブティックという場所だったことで、浮気や愛人の存在を疑ったのかも知れないわね…
だけどきっとそれはない!そうではないけど…
まだそうだったら、マシだったと思えたかも知れない。結局はフェリシアと完全には切れてはいない…それが今回のことで分かったようなものだから。
そう考えてしまって、ズキリと胸が痛んだ。クリスティンの妻は私なのよ!と大声で言いたい。昔はともかく、今は私が愛されているのだと…
「フッ…本当にそうだったならどんなにか」
それから私は、今夜クリスティンを待とうと心に決める。どんなに遅い時間になろうとも、寝ずに待たなくてはと。そして問いただすわ…今でもフェリシアと会うことはあるのかと。その答えを聞くのが怖いけど…
どうにも可怪しいと思った…いつもは親切で丁寧なオーナーの見たこともないような動揺した姿。そういう訳だったのね…夫が先に来ていることで、鉢合わせては不味いと思ったのだろう。だけど予約してあった筈だわ…それをダブルブッキングなんてあるかしら?きっとクリスティンの方が、予約をせずに現れたに違いない。ということは、急に必要に迫られて?
それにしても相当に慌てているケイトの姿。それが尚更可怪しさを物語っている。もしかして、私に見られてはまずいものを目撃したの!?
未だ激しく動揺しているケイトに、ここで控えているように言い付け、一人部屋から出る。
ほんの数歩ほどの通路も、なんだか果てしなく遠く感じる。私の予想が確かなら、いつもなら迷うことなく通されている一番豪華な仕様の個室…そこにクリスティンは居る筈だわ。
どこか祈る気持ちだった…実際は違う人だったらいいのにと。長年屋敷で働くケイトが見間違える筈はないんだけど…
だけど本当ならば仕事中のこの時間。おまけにこの忙しい時間帯に一緒に来るなんて、よっぽどのことに違いない。そしてその部屋の前に差し掛かると…
「それではアノン侯爵様、それでよろしくお願い致します。フェリシア様も大層お喜びになられるかと」
そんな聞き捨てならない言葉が聞こえきた。おまけにその声…聞き覚えはないように思うけど、誰なの?
──ガチャ。
ドアの音が響いて、咄嗟に壁際へと隠れる。悪いことをしている訳でもないけれど、そのまま身を潜めた。そしていけないと思いつつも、そっと覗くと…あれっ?あの人は…
一人の女性とオーナーのミッシェル、そしてクリスティンが部屋から出て来た。その女性には明らかに見覚えがある。あれは…キャサリン・スコット子爵令嬢だわ!
印象的な波打つ赤毛。そしてスラリとした長身は、長年会ってはいないけれどもキャサリンの特徴そのもの。私と彼女はガセルダムスの同級生で…だから人違いではないと思う。そして一番肝心なことは、彼女は妃殿下の侍女をしているという事実。
──やはりフェリシア絡みだったのね…
ケイトの様子から、クリスティンが女性と一緒なのは明らかだった。私が動揺し嫌がることだとすれば、それしか考えられないもの。それがキャサリンだったなんて…どういうこと?
フェリシアが王太子妃になる際、私に侍女になってくれないかと頼んできた。それが母の体調不良で家業を手伝わなくてはならなくなり、それを辞退することになる。そしてその次に選ばれたのがこのキャサリン令嬢。私達のように親友とは違うけど、彼女はガセルダムス在学中からフェリシアを、まるで女神かのように崇めていて…
そんなことから私は、彼女から邪魔な存在だと陰口を叩かれていた。身分差から直接言われるまではなかったが、明らかに疎まれていたのは間違いない。彼女に対して何かをした覚えなどないことから、フェリシアとクリスティンという理想のカップルを猛烈に応援し、心酔しきっているのが原因なのだろうと思っていたけど…
だけど今キャサリンは、クリスティンの横にピッタリと張り付くように立っており、明らかに熱く見つめている。そのことから、どうも恋心からの行動だったのかも…と思われて。
私なんかがクリスティンと一緒にいるのは許せないけど、フェリシアならば許せる…そんな複雑な感情からの行動だったのだと、今更ながら判明した。
そしてキャサリンは深々と頭を下げ、それからもう一度クリスティンの方へと顔を向け、心底嬉しそうに微笑む。
久しぶり憧れの人に会えて満たされている…ってところかしら?私とクリスティンの結婚は、彼女にとって寝耳に水だったことでしょう。きっと苦々しく思っていた筈。そんなキャサリンが今は夫と共にここにいる。
それは何故?と考えてみれば、先程聞こえたことから考えてみるとクリスティンはフェリシアから何かを頼まれたようだわ。我がアノン家が経営する商会は、宝飾類から調度などの高級品、食品や医療品、そして衣料品まで多岐に渡っている。それこそロードア国のものだけではなく、各国の珍しいものまで…
フェリシアが何を欲しがっているのかは知らないけど、それをここまで来れないフェリシアの代わりに注文しに来たのがキャサリンなんでしょうね。そしてこの店にやって来たのだとすると、うちの商団では扱っていないものだったのだろう。それで紹介したのがこのブティック?そしてそこに偶然居合わせたのが私…
だけど不思議なのは、王家のお抱え商人がいる筈よね?ドレスや装身具まで扱っている店だって沢山出入りしていると思うけど…
そして私はクリスティンから、うちの商団がその中の一つだとは聞いたことがない。もちろん王族の専属になれたら多大な利益に繋がるし、家門としては喜ばしいことなんだけど…王太子殿下がそれをお許しになるかしら?
妃殿下の元婚約者ともいえる者を、おいそれと城に招くとは思えない。それで秘密裏にってことなの?それなら何故それを私に話してはくれないんだろう。疚しいことがないのなら、フェリシアからの依頼があることを話してくれてもいいのに…
それからクリスティンとキャサリン嬢は、私がそんな二人を目撃しているなど気付きもせずに、ブティックから出て行った。私は遠くなって行く夫の背中を唖然と見つめてから、これ以上は見ていられないとクルリと踵を返す。それからおずおずと先程までいた部屋へと引き返して…
部屋では気を揉んでいた様子のケイトが、私の顔を見るなり少し安心した表情をする。きっとケイトはさっき、クリスティンの声を聞いたのだろう。誰と居たのかまでは見ていなかったと思うが、一緒に居たのが女性であったのは分かったよう。このブティックという場所だったことで、浮気や愛人の存在を疑ったのかも知れないわね…
だけどきっとそれはない!そうではないけど…
まだそうだったら、マシだったと思えたかも知れない。結局はフェリシアと完全には切れてはいない…それが今回のことで分かったようなものだから。
そう考えてしまって、ズキリと胸が痛んだ。クリスティンの妻は私なのよ!と大声で言いたい。昔はともかく、今は私が愛されているのだと…
「フッ…本当にそうだったならどんなにか」
それから私は、今夜クリスティンを待とうと心に決める。どんなに遅い時間になろうとも、寝ずに待たなくてはと。そして問いただすわ…今でもフェリシアと会うことはあるのかと。その答えを聞くのが怖いけど…
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