61 / 68
番外編
光と闇
しおりを挟む
「国王陛下、危のうございますので、あまりお近づきになりませんように…」
騎士団長のその言葉に、陛下は思わず脚を止める。それに振り返ると厳しい表情が見えて…
「フッ…大丈夫だ。目も見えぬ者に何が出来る?それに最近では、誰のことも分からなくなっていると聞くが。あれにも少しは、心があったということか…」
国王であるスチュワートはそう薄く笑い、そう心配する騎士団長に構わず、塔の長い階段を登り始める。城の北側に位置するこの塔は、王族専用の牢屋で…王族というだけで処刑を免れた者が最期を迎える場所だ。表からは見えぬような鬱蒼とした場所にあり、おまけにその牢までは相当数の階段を登らねばならない。だから交代で食事などを届ける者以外は、ここを訪れる者など一切居ない。例え居たとしても入ることさえ叶わないだろうが…
そして今この塔に収監されているのは唯一人…元王太子妃フェリシア。叩けば叩くほど余罪が多数あったが、その全てで裁こうとすると影響を受ける人達が大勢いて、尚且つその大半が王族や高位貴族ということになる。だから正式に問われた罪は、たった二つだけ。
一つは王太子妃という身分を自分のものにする為に、当時の内定者に対し無実の罪に陥れたこと。それによって相手の令嬢と腹の中に宿っていた王族となるべく子は死亡。その罪は計り知れないことと判断された。その後、亡き辺境伯家の令嬢ラウラは名誉を回復し、王族に準ずる立場で亡くなられたことと訂正される。そしてその名を王家の系図にも記されることになった。
そしてもう一つは、実家であるヒルデブライド公爵家に対して不当に優遇して巨万の富を築かせ、密輸や人身売買などの許し難い数々の悪行を行っていた父親の罪を、知っていながら揉み消すように働き掛けたこと。それによって同罪と見なされることになる。
この二つの罪によって死罪が求刑されたが、王族の母ということで減刑され、この塔から一生出られないことが決まったフェリシア。次にここを出られるのは死んでからのみだ。おまけに父親は即刻処刑され、母親は貴族身分剥奪の上修道院送りになった。だがその後直ぐに自死する。一時は栄華を極めたフェリシアは、刑の決定まで幽閉されていたのが余程堪えたのか、この塔に身柄を移されて直ぐ、原因不明の熱病により視力を完全に失う。そして熱病が完治したと判断された一年後の今日、元夫である国王が初めてここを訪れていて…
「くれぐれもお気を付け下さい。逆上しないとも限りませんので…」
神妙な顔で更にそう注意をしてくる騎士団長に頷いて、扉の前の警備兵に扉を開けるように指示を出す。そして…
──ギギッ、ギィーッ!
扉が開け放たれた途端、錆び臭いような空気が流れてくる。噎せ返るようなそれに、思わず鼻を覆うように手をやる国王が…
そして部屋の中に足を踏み入れると、薄暗く天井近くに小さな窓が一つだけ。まさに牢獄といった感じのその部屋には、奥のベッドの上に眼帯を着けた女が一人。
「フ、フェリシアか?老婆では…」
国王は信じられない思いで目を擦る…片方の目は眼帯で隠し、おまけにもう片方の瞳も既に灰色に濁りきっている。髪も白髪が交じったようなくすんだ色に変化しており、以前のような輝くばかりの姿とはまるで違う初老のような女がポツンと座っている。国王はその余りの変わりように眉を顰めて…
「その声は、ス、スチュワート様…王太子殿下なの?」
その声は少し掠れていて、姿こそは変わり果てているが声でかろうじてフェリシアだと判断出来る。そして…
「もう私は既に国王だ。父の後を継いでな…」
そう告げる国王に一転、フェリシアは狂喜する。
「それなら私が王妃ね!迎えに来てくれたのでしょう?」
そんなことを言うフェリシアに驚き、裁判の記憶がないのか?そう思って訝しく眺める国王。それからもう何も映してはいないだろう瞳を覗き込むと…
「王妃ならば既にいる。隣国からこちらの事情を何もかもを承知の上で、ドルジャンの王女が来てくれたのだ。お前とは違って控え目だが凄く聡明な人だ。だからお前の出る幕などないんだ」
フェリシアをほんの少しだけ憐れに感じた国王は、先程までとは違い極力静かにそう告げる。だけど…
「何故よ…本来なら私の場所でしょう?そんな女など殺してしまえばいいんだわ!そしたら私が王妃になれるわよね?」
そう嬉々として笑うフェリシア。するとその顔を見ていた国王がギョッとして…
笑ったことで見えた口は、病気のせいでなのか歯がかなり抜け落ちている。そして老婆に見えたのは、このせいなのだと愕然とする国王。それから心底哀しい顔をして…
「お前…子供のことは一切気にならないのか?きっと自らの行いによって不幸にしてしまった子供達を、心配して苦しんでいるに違いないと。ハハッ…そうか?気にしてもいないんだな…」
「子供ですって?知らないわ…そんなの。いたのかしら?」
それに国王は、両手で顔を覆ってフルフルと頭を振る。そして搾り出すように声を出して…
「そうか…では、知らない子供のことだが聞いてくれ。王妃は母親と後ろ盾を一遍に無くした子供達のことを、とても気遣ってくれている。そしてその子達には王位継承はさせられないが、私としても精一杯のことはする。だから…安心してくれ!そう言ってもお前は、気にもしていないだろうがな…」
国王はそれだけ言うと、涙で濡らす顔を上げ、もうこれ以上は用もないと部屋を出ようとする。すると…
「シルビア…シルビアはどこ?あの子は優しいから、私のこんな姿を見たら助けてくれるわよね?早くここに呼んでちょうだい!」
国王はそんな声に振り返り、再び憐れんだ視線をフェリシアに向ける。そして…
「お前が自らその手を離したではないか?シルビアはずっとお前の本性など知らず、そして疑いもせずに親友だと思ってくれていたのに。そんな優しい手を離したのはお前だろう?ついでに言うが、お前と共謀していたキャサリン…家門は子爵家から男爵に、そして自身は平民墜ちし、それから程なくして家業は破産。その責任を取らされた形で他国の商人の第四夫人になったそうだ。夫は六十近いという…まあ、相応の罰だな。心を入れ替えればそれなりに暮らせるだろうが…」
それにフェリシアは首を傾げて不思議そうな表情をしている。そしてシルビアのことは覚えていても、自分の一番側で甘い汁を吸っていたキャサリンのことは全く覚えてもいないようで…それに呆れたように溜め息を吐く国王。そして諦めたように一度だけ頷いて…
「もうここには二度と来ない!だけど安心せよ…命ある限りは最低限の世話は命じてある。だけどこんな言葉もお前の心には届かないのだろうな…さらばだ!」
──ギギッ。バターン!
そしてこの部屋には再び静寂が戻る。一人部屋に残されたフェリシアは、どこか夢うつつで…
「シルビア…あの子は光だったのに。なのに私が自分で手を離したの?私は闇で、あの子は光…そう分かっていた筈なのにね。だけどさっきの人って、誰だったかしら…知らない人ね?きっと…」
そして明かり取りの窓から差し込む光を感じたフェリシアは、その方を見上げてか細い腕を伸ばす。
「光だったのにね…」
そう微かに呟いて、そしてもう目は見えないがほんの少しだけ感じる光。それを何とか掴もうと、手を上に伸ばし続けた…
騎士団長のその言葉に、陛下は思わず脚を止める。それに振り返ると厳しい表情が見えて…
「フッ…大丈夫だ。目も見えぬ者に何が出来る?それに最近では、誰のことも分からなくなっていると聞くが。あれにも少しは、心があったということか…」
国王であるスチュワートはそう薄く笑い、そう心配する騎士団長に構わず、塔の長い階段を登り始める。城の北側に位置するこの塔は、王族専用の牢屋で…王族というだけで処刑を免れた者が最期を迎える場所だ。表からは見えぬような鬱蒼とした場所にあり、おまけにその牢までは相当数の階段を登らねばならない。だから交代で食事などを届ける者以外は、ここを訪れる者など一切居ない。例え居たとしても入ることさえ叶わないだろうが…
そして今この塔に収監されているのは唯一人…元王太子妃フェリシア。叩けば叩くほど余罪が多数あったが、その全てで裁こうとすると影響を受ける人達が大勢いて、尚且つその大半が王族や高位貴族ということになる。だから正式に問われた罪は、たった二つだけ。
一つは王太子妃という身分を自分のものにする為に、当時の内定者に対し無実の罪に陥れたこと。それによって相手の令嬢と腹の中に宿っていた王族となるべく子は死亡。その罪は計り知れないことと判断された。その後、亡き辺境伯家の令嬢ラウラは名誉を回復し、王族に準ずる立場で亡くなられたことと訂正される。そしてその名を王家の系図にも記されることになった。
そしてもう一つは、実家であるヒルデブライド公爵家に対して不当に優遇して巨万の富を築かせ、密輸や人身売買などの許し難い数々の悪行を行っていた父親の罪を、知っていながら揉み消すように働き掛けたこと。それによって同罪と見なされることになる。
この二つの罪によって死罪が求刑されたが、王族の母ということで減刑され、この塔から一生出られないことが決まったフェリシア。次にここを出られるのは死んでからのみだ。おまけに父親は即刻処刑され、母親は貴族身分剥奪の上修道院送りになった。だがその後直ぐに自死する。一時は栄華を極めたフェリシアは、刑の決定まで幽閉されていたのが余程堪えたのか、この塔に身柄を移されて直ぐ、原因不明の熱病により視力を完全に失う。そして熱病が完治したと判断された一年後の今日、元夫である国王が初めてここを訪れていて…
「くれぐれもお気を付け下さい。逆上しないとも限りませんので…」
神妙な顔で更にそう注意をしてくる騎士団長に頷いて、扉の前の警備兵に扉を開けるように指示を出す。そして…
──ギギッ、ギィーッ!
扉が開け放たれた途端、錆び臭いような空気が流れてくる。噎せ返るようなそれに、思わず鼻を覆うように手をやる国王が…
そして部屋の中に足を踏み入れると、薄暗く天井近くに小さな窓が一つだけ。まさに牢獄といった感じのその部屋には、奥のベッドの上に眼帯を着けた女が一人。
「フ、フェリシアか?老婆では…」
国王は信じられない思いで目を擦る…片方の目は眼帯で隠し、おまけにもう片方の瞳も既に灰色に濁りきっている。髪も白髪が交じったようなくすんだ色に変化しており、以前のような輝くばかりの姿とはまるで違う初老のような女がポツンと座っている。国王はその余りの変わりように眉を顰めて…
「その声は、ス、スチュワート様…王太子殿下なの?」
その声は少し掠れていて、姿こそは変わり果てているが声でかろうじてフェリシアだと判断出来る。そして…
「もう私は既に国王だ。父の後を継いでな…」
そう告げる国王に一転、フェリシアは狂喜する。
「それなら私が王妃ね!迎えに来てくれたのでしょう?」
そんなことを言うフェリシアに驚き、裁判の記憶がないのか?そう思って訝しく眺める国王。それからもう何も映してはいないだろう瞳を覗き込むと…
「王妃ならば既にいる。隣国からこちらの事情を何もかもを承知の上で、ドルジャンの王女が来てくれたのだ。お前とは違って控え目だが凄く聡明な人だ。だからお前の出る幕などないんだ」
フェリシアをほんの少しだけ憐れに感じた国王は、先程までとは違い極力静かにそう告げる。だけど…
「何故よ…本来なら私の場所でしょう?そんな女など殺してしまえばいいんだわ!そしたら私が王妃になれるわよね?」
そう嬉々として笑うフェリシア。するとその顔を見ていた国王がギョッとして…
笑ったことで見えた口は、病気のせいでなのか歯がかなり抜け落ちている。そして老婆に見えたのは、このせいなのだと愕然とする国王。それから心底哀しい顔をして…
「お前…子供のことは一切気にならないのか?きっと自らの行いによって不幸にしてしまった子供達を、心配して苦しんでいるに違いないと。ハハッ…そうか?気にしてもいないんだな…」
「子供ですって?知らないわ…そんなの。いたのかしら?」
それに国王は、両手で顔を覆ってフルフルと頭を振る。そして搾り出すように声を出して…
「そうか…では、知らない子供のことだが聞いてくれ。王妃は母親と後ろ盾を一遍に無くした子供達のことを、とても気遣ってくれている。そしてその子達には王位継承はさせられないが、私としても精一杯のことはする。だから…安心してくれ!そう言ってもお前は、気にもしていないだろうがな…」
国王はそれだけ言うと、涙で濡らす顔を上げ、もうこれ以上は用もないと部屋を出ようとする。すると…
「シルビア…シルビアはどこ?あの子は優しいから、私のこんな姿を見たら助けてくれるわよね?早くここに呼んでちょうだい!」
国王はそんな声に振り返り、再び憐れんだ視線をフェリシアに向ける。そして…
「お前が自らその手を離したではないか?シルビアはずっとお前の本性など知らず、そして疑いもせずに親友だと思ってくれていたのに。そんな優しい手を離したのはお前だろう?ついでに言うが、お前と共謀していたキャサリン…家門は子爵家から男爵に、そして自身は平民墜ちし、それから程なくして家業は破産。その責任を取らされた形で他国の商人の第四夫人になったそうだ。夫は六十近いという…まあ、相応の罰だな。心を入れ替えればそれなりに暮らせるだろうが…」
それにフェリシアは首を傾げて不思議そうな表情をしている。そしてシルビアのことは覚えていても、自分の一番側で甘い汁を吸っていたキャサリンのことは全く覚えてもいないようで…それに呆れたように溜め息を吐く国王。そして諦めたように一度だけ頷いて…
「もうここには二度と来ない!だけど安心せよ…命ある限りは最低限の世話は命じてある。だけどこんな言葉もお前の心には届かないのだろうな…さらばだ!」
──ギギッ。バターン!
そしてこの部屋には再び静寂が戻る。一人部屋に残されたフェリシアは、どこか夢うつつで…
「シルビア…あの子は光だったのに。なのに私が自分で手を離したの?私は闇で、あの子は光…そう分かっていた筈なのにね。だけどさっきの人って、誰だったかしら…知らない人ね?きっと…」
そして明かり取りの窓から差し込む光を感じたフェリシアは、その方を見上げてか細い腕を伸ばす。
「光だったのにね…」
そう微かに呟いて、そしてもう目は見えないがほんの少しだけ感じる光。それを何とか掴もうと、手を上に伸ばし続けた…
839
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】探さないでください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
私は、貴方と共にした一夜を後悔した事はない。
貴方は私に尊いこの子を与えてくれた。
あの一夜を境に、私の環境は正反対に変わってしまった。
冷たく厳しい人々の中から、温かく優しい人々の中へ私は飛び込んだ。
複雑で高級な物に囲まれる暮らしから、質素で簡素な物に囲まれる暮らしへ移ろいだ。
無関心で疎遠な沢山の親族を捨てて、誰よりも私を必要としてくれる尊いこの子だけを選んだ。
風の噂で貴方が私を探しているという話を聞く。
だけど、誰も私が貴方が探している人物とは思わないはず。
今、私は幸せを感じている。
貴方が側にいなくても、私はこの子と生きていける。
だから、、、
もう、、、
私を、、、
探さないでください。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる