【完結】あなたの妻(Ω)辞めます!

MEIKO

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第一章・思ってもみない結婚

10・父の恋人

 これから直哉さんのお父様にお会いする。
 父の恋人だった人に…

 どんな顔して会ったらいいんだろ?って思う。
 もしかして自分の義父ちちになるかもしれない方だし…
 取り敢えずは感情に任せようと思う。
 考えれば考えるほど堂々巡りになるだけだ。

 直哉さんは今、マンションで一人暮らしをしているそうだ。
 だから今は父親と共に暮らしてはいないそうだけど、今日は一緒に実家の方に行く事になっている。

 ──もうすぐ迎えに来てくれるハズなんだけど。あの車かな?…わあ、すごい高級車!

 「お待たせしましたか?さあ、乗って下さい。」と車のドアを開けてくれる。

 わざわざ降りて来てドア開けてくれるなんて…男ですけど?と思いながらも、そのスマートさに感心するし嬉しくなった。

 こんなカッコイイ人がエスコートしてくれて迷惑な人なんていないよね?
 スーツ姿しか見た事なかったけど、普段着も洗練されててとっても素敵だ。

 そして走り出して暫くして直哉さんが話し出す。
 「涼さん、父は病気とはいえ話す上では何の問題もありません。何か聞きたい事などあったら質問していただいて結構ですから。」

 ──質問ですか…
 
 聞きたい事は沢山あるけれど、結局はこちらから質問…とはならないと思っている。
 父も母もとっくに亡くなっている今、聞かなければならないのは私達の結婚の事だけだろう。

 写真を見て今回のお見合いに…というのは叔父から聞いているけど、それだけなのかな?
 何か他にも理由ある気がするんだけど…

 走り出して1時間ほど、意外にも郊外の場所にその邸宅は建っていた。
 経済界の大物だし、都内の一等地に家があるのかと勝手に思っていたけど。
 
 門塀もんぺいが開き、中に入ると数寄屋造すきやづくりの大きな屋敷が見えてきた。

 やっぱり凄いな…緊張しちゃう。

 直哉さんは玄関前で車を止め、先程と同じく私が乗っている助手席のドアを開けてくれる。
 
 思わずどこか可怪おかしくないかな?と自分の格好をチェックしていたら、笑われてしまった…

 「涼さん、大丈夫です。どこから見ても完璧ですよ!それに緊張しなくても良いですし。」

 その言葉に、本当に?とは思うが、ここまで来て会わない訳にもいかず、案内されるまま屋敷の中に入っていく。

 大きな客間に通され、お手伝いの方がお茶を出してくれる。
 直哉さんは、では父を呼んで来ますと部屋を出ていった。

 一人になった私は緊張がピークで、ほんの少しお茶を飲んで喉を潤す。
 
 ──ドキドキするな…

 すると──廊下から車椅子に乗った初老の男性が現れる。

 見た瞬間、何故か時間が止まるような感覚が…
 同時に、泣きたいような笑いたいようなそんな不思議な感覚に包まれる。

 この人が父の愛した人なんだ…そう思ったら、今まで感じたことがないような気持ちになった。

 ──お母さん、ごめんね!
 私、この人は嫌いになれないと思う。
 お母さんがどう思っていたのかは今はもうよしもないけど、例え憎く思っていたとしても私もそう思うのは無理!何故だかそう感じる…

 「涼さんだね?本当にお父さんとそっくりだね…」そう言ってその人の頬につーっと涙が流れる。

 そんな涙を見た瞬間、思わず駆け寄り抱き締めてしまっていた。
 自分で自分の感情が理解出来ない!だけどそうしなければならないという思いに駆られた…そしてその人を見つめて、泣きながら微笑んだ。

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