紹介し忘れましたが、これが兄です。

羽月☆

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4 はじめてじゃなくて。

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一緒に外を歩く。駅向こうってあんまり行くことがなかった。
何故か駅から離れるように歩く。
どこかお店を決めてる?

さっき遠くないって言ってたけど、住んでるところがここじゃないのは知ってる。
路線は一緒だけどもっと都内に近い駅でこの間は降りたから。
なんだかもやもやとした疑問。
ちょっとした言葉に相変わらず振り回されてる気もする。
やっぱり揶揄われてる?
それでも、自宅から離れてるのに大人しくついて行く自分。
足元を見ながらだったので止まるのが少し遅れた。
あっと、危うくぶつかるところだった。


「奈央さん、ここでいいですか?」

「はい。」

そう言って地下に続くバーにつれていかれた。
1人じゃ絶対入らない。地下のお店ってかなりの冒険です。

手を取られて店内へ。
出された手に素直に手をのせてしまう自分。
そして意味を考える、素直なのか、他はというと・・・なんなのか。
広い店内は低い音量の音楽と、思ったより賑やかな雰囲気があった。
昼はカフェをやってるらしいが夜はぐっと照明が落とされているみたい。
窪んだ場所にあった席が空いていてそこに落ち着く。


「春日さん、ここにいらしたことあるんですか?」

「はい。」

にっこり。
ゆかりのある駅なの?
もうずいぶんこの駅には住んでるけど初めて知りました。
実家があるとか?

取りあえずお酒を注文する。あとはおつまみを少々。

「気に入ってるんです。いつも一人で来てたんですが、ご一緒できてよかったです。」

いつも?1人で・・・・カウンターでしょうか?
オーダーのお酒などが届いた。
またしても乾杯。
さっきのお酒とは違う、やっぱり美味しい。

テーブルの手に手を重ねられた。
案内されるように手をつなぐのとは違う、びっくりして思わずひいてしまった。
私が抜けたまま、春日さんの手はテーブルに残ったまま。

「すみません、びっくりして。」

まさか手を戻すのは正解じゃないだろう。
そのまま膝の上に乗せる。
慣れない、春日さんの・・・・揶揄うような言動に。

「春日さん・・・・何か・・・私は揶揄われてるんでしょうか?」

「そんな・・・・どうしてですか?心外です。」

視線が厳しくなる。

「すみません、さっきから・・・・・なんだかさり気なく言われることに心が落ち着かなくて。」

「さりげなく・・・・・って、はっきり言ってます。奈央さんが・・・奈央さんこそ、思わせぶりです。」

何が?さっぱりわからない。それこそ心外です。
見返す私の表情で何か気が付いたのかもしれない。
春日さんの表情がハッとなった。

「この駅は・・・・たまたまこの駅にいたんですか?」

「いいえ、違います。ここに来たかったんです。返事がもらえず、どうしようかと思って。つい、ここに来たんです。」

「どうして・・・・?私の最寄り駅ですが、ご存知でしたか?」

「・・・・はい、知ってました。」

そう答えた春日さん。はっきり言われてもなぜ?としか思えない。教えましたか?

「どうして・・・・・。」

ふぅっと春日さんが肩の力を抜くようにして困った顔になる。

「あの日、あの博物館で奈央さんを見つけたのはもちろん偶然です。でもその前に二度お会いしてます。挨拶もしました。覚えてませんよね。」

ビックリするのは私。
改めて顔を見る。
同級生や上下級生じゃない、二度挨拶・・・一番考えられるのは患者様の家族。
でもそんなところまでは覚えてない・・・・。二回じゃ無理

「すみません、ちょっとすぐには思い出せなくて。」

「いえ、そうかもしれません。」



「春日・・・と聞いてもですか?」

春日さん・・・・・まったく。そんな患者さんに記憶がない。
そんな表情を読まれた。

「一度目は去年の春、そして二度目は冬に。一方的ですが他にもいろいろ知ってます。顔を見てわかりましたが、名前が珍しいので間違ってないと確信したんです。」

まったく・・・・・・。失礼ながら思い出せない。
無理そう。

「妹がお世話になってます。」

妹・・・・・春日・・・・・。
じわじわと記憶が呼び起こされる。
あ・・・・すっかり違う呼び名で呼んでたから・・・・。




確かに去年の春の頃だった。

「あの隣に越してきた春日です。さっきは突然ですみませんでした。よろしくお願いします。これどうぞ。」

可愛いパッケージのお菓子をもらった。
手を出して受け取りお礼を言う。さっき彼氏と一緒にいるところを見かけてあいさつした。
2人で住むのだろうか?ちょっと狭いかも?

「社会人?学生さん?」

「春から大学3年生になります。思い切って実家を出てきました。」

「そうなの。」

大学生だと、とりあえずは1人暮らしか。

「何か分からないことがあったら聞いてね。1人暮らし初めてでしょう?」

「はい。よろしくお願いします。あの、さっそくちょっとだけいいですか?」

そう言っていろいろとお店を聞かれて教えた。

「ありがとうございます。あのもし夕飯まだでお時間あるようでしたらご一緒してもらえませんか?もちろんお礼なのでごちそうします。初日から何だか寂しくて。」

そうでもないような笑顔で言われた。
作るつもりだったけどいいかなと思って一緒に夕食を取りに出かけた。
とても人懐っこくて、誰にでも好かれそうな子。

「ハルヒと呼んでください。割と好きなんです、自分の名前。」

明るくそう言われた。次の瞬間からハルヒちゃんと呼んでいた。
だから・・・・本当に記憶がなくて。
そういえば時々『兄が』という言葉を聞いた。
優しくて甘えられるというような話を、そして今分かった。
ハルヒちゃんと会った時に横にいた人。てっきり彼氏だと思っていた。
だからあんまり顔を見ることもなく軽く会釈した。
よく考えれば年が離れてたかも。変じゃないけど。
まさかお兄さんと一緒に買い物したりするとは思わなくて。
確かに引っ越しの日と、その後もう一度会った。
たまたま勉強会で出かけて帰ってきた休日。
廊下でばったり会った。私は部屋へ入るところ、ハルヒちゃんが出かけるところ。
一緒に男の人もいて先に廊下で待っていた。
すぐにハルヒちゃんが出てきて、いつものようにあいさつした。
でも、それだけで。

『兄です。』と紹介されていたなら分かってただろうけど、紹介もなく、ずっと彼氏だと思っていて。
いいなあ、って思ってたりもして。
あれから何度かハルヒちゃんとはご飯に行っている。
いろんな話をしている。

そして、私が失恋をして・・・・・本当に大人げなく泣き崩れたこともある‥‥一度だけ。
もしかしてハルヒちゃんはそんなことも春日さんに?

春日さんを見る。
私が気が付いたのには気が付いてるみたい。
私を見る視線に特に変わりはない。

でも、私は・・・・、だってさっき言った。
いろいろ知ってるって。

ハルヒちゃん・・・・・・何を教えたの?


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