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26 嬉しさから寂しさまでの距離
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「なんだか綺麗になった気がする。お守りマンのお陰だと思うけど、どう?」
「そんなことないです。変わらないです。でも響さんに言われたら嬉しいです。」
「私は変わらない?」
「はい、相変わらず綺麗なままです。」
「おかしいな私もそろそろ綺麗になってもいいはずなんだけど。」
「え?・・・・・もしかして・・・?」
「はい、少しの間は様子見で内緒にしてましたが、まあまあいい奴そうなので情報公開します。」
そう言われて、写真を見せてもらった。
明らかな隠し撮り。
横顔じゃわからないけど素敵な感じ。
「社外の人ですよね?」
「う~ん、お守りマンよりは近くにいる。」
「もしかして、ビル内の会社の人?」
「うん、そう。」
「どうやって知り合ったんですか?」
「ナンパ。」
ええ~、絶対無視しそうな、そんな方法で?
そう思った。
多分顔に出た。
「お守りマンとそうは違わないでしょう。向こうはこっちの会社も知ってたらしいし、偶然会った時に同じように声をかけられたんだから。一緒よ。」
今初めて自分と安達さんの出会いが『ナンパ』というくくりに入ると知った。
まさか。そんな・・・・
改めて言うと『偶然を一隅のチャンスと、声をかけられた。』出会い編。
ナンパ・・・・?
「聞いてる?」
「は、はい、ごめんなさい。で、何階の人ですか?」
「二個下の階。」
「すごく近いです。羨ましいくらいに。」
一個ずつ階段を上り下りすれば非常階段で簡単に会える距離。
「どの会社もあんまり残業する人が少ないって聞きましたが。」
「そうだね。あんまり遅くはならないみたい。さすがに定時じゃないみたいだけど、一時間くらいで済んでるみたい。」
「それなのに週末は一緒にお休みなんですか?」
それは羨ましい、ずるい。
「いいでしょう?」
あっさりとそう言われた。
とても綺麗な笑顔で、もう、それ以上綺麗になりようがないです。
「良かったです。いい人なら。」
夕方、夜勤を終えてひと眠りした安達さんと食事をする。
久しぶりに榎君のお店に行こうと言って、電話をして空いてるのを確認して向かった。
「安達さん、最近サボってますよね。いいんですか?メタボになって操さんに脇肉をつままれたりしますよ。」
「大丈夫だよ。榎君と会ってないだけで、ちゃんと行ってるから。」
「え~、余計にひどいです。時間合わせてくださいよ~。」
「何で?」
「最近おばちゃんたちに安達さんに振られて可哀想にって、・・・・全部情報を共有して、慰めてもらってます。」
「なんでもかんでも言っちゃダメだよ。それなら余計にドンと胸を借りて泣いて、慰めてもらえばいいよ。」
「操さん、酷いですよね。僕が寂しがるって知ってるのにね。」
それは何とも、最近すっかり会うパターンを決めて、ちょっと会い過ぎてるかも。ジムに行く暇はないかも。
「榎くん、お仕事してね。お酒お酒。」
「はいはい。」
「クリスマスに向けて作ってるのがあるんですけど、女性向きなんです、ちょっと感想頂けますか?」
「はい。喜んで。」
そういって差し出されたのはベリーを使った赤いカクテル。
飲みやすい、控えめな甘さ、と思ったらしっかりお酒が利いていて、一瞬クラッとするくらい。
「美味しいです。私は甘さもちょうどいいと思います。でもお酒強いですね。最後にくるんでびっくりですね。」
「男性が女性に勧めるパターンなので、すこしは酔っていただいたほうがね。」
「強さは調整できますから。」
「すごくいいです。飲みたいです。色もきれい。」
「もし他の色を出すとしたら、白とブルーと緑どれがいいですか?」
「きれいなグリーン、二色に分けられるなら、ブルーとホワイトも綺麗かな?あんまり詳しくないのでわからないけど、白のイメージがなくて。」
「まだまだ錯綜中です。そういえばクリスマスはどうするんですか?」
そう聞かれたので隣の安達さんを見た。
「まだ決めてない。」
「まさか、海辺のホテルとか言います?そんな気取ったことします?」
「まだ決めてない。」
同じように答えてる。
「どうせ平日だし、操さん、是非ここで会いましょうよ。それまでにはちゃんとクリスマスカクテル仕上げておきます。美味しいのを作りますから。」
「はい、楽しみです。」
「操ちゃん、勝手にクリスマスの予定いれるの?それは冷たくない?」
「だって安達さんが仕事だったら、一人だし・・・。」
「榎君のファンがたくさんいて席が無いよ、きっと。」
「あ・・・・・ああ、そうですね。」
「電話貰えれば一つの席くらい取っておきますよ。安達さんは仕事だし、そうしましょう。」
「榎君、何で勝手に決めるのさ。」
「だって週末休みにするでしょう?そうしたら、どっちかは泊りでしょう?」
「まだ決めてない。」
また同じ返事をする安達さん。
もう、本当に1人でなんて来るわけないのに。
今日も途中からテーブル席に移った。
カウンターは榎君目当てなのか、気が付いたら女性で埋め尽くされて、楽しそうに盛り上がっていた。
テーブル席に離れてから響さんの事を教えた。
『私の美人の友達に彼氏が出来た。』ニュース。
ふんふんと聞いていた安達さん。
「響さんにきっかけを聞いたら、『ナンパ』と言われました。そのあと『お守りマンと一緒』って。」
「えっ?何が一緒なの?」
「だから出会いがナンパって事です。」
さすがに驚いて唖然としてる安達さん。
気持ちはわかります。
「なんぱ・・・・・?」
聞いたことがない言葉のようにつぶやく安達さん。
まあ、私も同じ気持ちでしたから。
「操ちゃんもあれをナンパだと思ってるとか?」
「思ってません。そんな風には。だから響さんの出会いも違うと思います。相手は響さんに一目ぼれした同じビルの会社の人だし、働いてる階も一緒にエレベーターで降りればわかりますよね。必然会社名も。そのあと二個だけ階段を降りればいいんです。そして嬉しい偶然があったから、思い切って声をかけた・・・・とほとんど同じですが、ナンパに入るんでしょうか?」
「う~ん、入れたくない。入らない事にしよう。」
「はい、そう言ってみます。」
「二つ下のフロアの会社員か。近いね。」
「そうなんです。羨ましいです。すぐに会えますよ。隠し撮りの写真を見る限りではかっこいい人です。」
嬉しそうに話をする響さんの顔を思い出す。
「さて、帰ろう。」
最初のクリスマスカクテルが強くて、あとは弱めのを数杯飲んだ。
食事も終わってる。
後をついて会計を済ませる横に立ちながら、ぼんやりして一緒に手を引かれて外に出る。
駅から歩いて部屋まで戻る。すっかり馴染んだ安達さんの部屋。
疲れた体をソファに沈めて、脇にバッグとコートを置いた。
静かに横にきた安達さんの重みをソファの沈みで感じた。
「操ちゃん、一人で行くの?」
「まさか、榎君のところですか?もう、本気にしないでください。榎君も来ないと分かってて、安心して安達さんを揶揄ってるだけですよ。」
「お守りマンは基地を離れられないから、美人のお友達カップルみたいに仕事中には会えないよ。寂しいの?それともそっちのイケメンの方がいいとか?」
「なんで?どうしたんですか?」
「すっごくうらやましそうだったよね。」
冗談じゃなくて、本気ですか?
「それは・・・・だって響さんは週末は一緒、相手の人は残業も少ないって・・・・安達さんも言ってたじゃないですか、あのビルの会社の人はいつまでも残業してる会社は少ないって。羨ましいと言えば羨ましいです。なんだか嬉しそうに話をしてる響さんが、ちょっとだけ。」
「嬉しそうに、俺の話をすれば?」
「それは散々聞かれて答えてるので、たっぷりとしてます。」
「そう?」
「安達さん、大丈夫ですか?飲み過ぎましたか?」
「うん、大丈夫。」
そう言って目を閉じてくっついたまま。
程よくお酒がまわる。
目が閉じそうになるけど、やっぱりそんなもったいないことはしたくない。
「安達さん、寝たくない、私が寝そうになったら起こしてくださいね。」
「うん。了解。」
それでも少し目を閉じた。
本当に数分だったと思う。
目を開けた時には安達さんにもたれてて、部屋は暖房で暖かくなっていて。
背中に回された腕と体にくっついた胸もあったかかくて心地よかった。
目を開けて見上げると気が付いたらしい。
「シャワー浴びる?ゆっくり入って来てもいいよ。」
「すぐに出てきます。」
「うん、じゃあ、あっちも暖めとく。」
すっかり自分の荷物を洗面台の籠から取り出して、バスタオルも借りてシャワーを浴びる。
熱いお湯が体に当たって気持ちいい。
さっぱりしたら目も覚めて。
リビングはいつものように照明が落とされてて。
寝室で大人しく待った。
明日は日曜日。
ゆっくり寝坊したい。でもデートもしたい。
布団にもぐりこんで、本当に待たずに安達さんがやってくるのもいつもの事。
抱き合い暖め合い、くっついて、邪魔なものはベッドの脇に落としていく。
キスをされながら、きつく首にしがみついて。
耳元でお願いした。
「安達さん、たくさん、お願いします。」
一度離れた体を布団と一緒に抱き寄せられた。
喉が痛い。
涙をながして欲しがって。
体が離れることも許さないようにしがみついた。
「どうしたの?」
途中にさすがに心配して聞かれた。
首を振って答えた。
どうしてだろう。
それは私も知りたい。
息を整えながらまだ鼓動が落ち着かない。
でも心は満足したように手足の力を抜いた。
抱き寄せてくれたのに全く力をいれない私。
体の上に乗せられて背中をさすられる。
広い胸はゆっくり私を乗せたまま上下する。
さすがです。
背中にあった手がお尻に行き、太ももを撫で上げて腰を掴むように動く。
動かされた。
ずり上げられて当てられた。
「・・・・安達さん。」
「寝ちゃんダメだよ。約束したし、起こすよ。寝たらダメだからね。」
寝てない・・・・休憩中。
ゆっくり腰を動かされて、落ち着こうとしていた息がまた上がる。
何で、・・・・・・早い。
声にならない喘ぎ声が漏れる。
足を閉じて自分でも両手をついて体をずらした。
喘ぎ声ははっきり声になって、快感を伝える。
一緒にスピードを上げて声を重ねる。
のぼりつめる手前で急に動きを止められて目を開ける。
「ダメだよ、まだ。」
体から降ろされて離される。
枕の下から安達さんが取り出したものを私がとりあげて破る。
ビックリしたように見られた。
自分でもびっくりしたけど、勢いよく取り出してみても、よくわからなっくて結局おとなしく安達さんに返した。
ちょっと笑われた気がした。
諦めて目を閉じて横になった私にかぶさってくる。
「何かあったのかな?友達に大切な人が出来て寂しいの?」
「そうじゃない。」
「そう?」
「でも、分からない。寂しいのか悔しいのか羨ましいのか負けたくないのか。」
「負ける気はしないけど?するの?」
「したくない。」
「了解。」
そう言いながらも優しくて。また涙がでる。
なんだか情緒不安定。
やっぱり寂しいんだと思う。
すっかり響さんという友達の存在に慣れていて。
だからって安達さんを欲しがるのもどうかと思う。
そこはやっぱり負けたくないと言うことで。
私にも大切な人がいるんだと再確認したくて。
甘えたらしい。
さすがに起こされなかった。
ゆっくり胸に抱えられるようにくっついて眠る私をそのまま寝かせてくれた。
それはそうだ。
安達さんの体力にはついて行けるわけがないから。
「そんなことないです。変わらないです。でも響さんに言われたら嬉しいです。」
「私は変わらない?」
「はい、相変わらず綺麗なままです。」
「おかしいな私もそろそろ綺麗になってもいいはずなんだけど。」
「え?・・・・・もしかして・・・?」
「はい、少しの間は様子見で内緒にしてましたが、まあまあいい奴そうなので情報公開します。」
そう言われて、写真を見せてもらった。
明らかな隠し撮り。
横顔じゃわからないけど素敵な感じ。
「社外の人ですよね?」
「う~ん、お守りマンよりは近くにいる。」
「もしかして、ビル内の会社の人?」
「うん、そう。」
「どうやって知り合ったんですか?」
「ナンパ。」
ええ~、絶対無視しそうな、そんな方法で?
そう思った。
多分顔に出た。
「お守りマンとそうは違わないでしょう。向こうはこっちの会社も知ってたらしいし、偶然会った時に同じように声をかけられたんだから。一緒よ。」
今初めて自分と安達さんの出会いが『ナンパ』というくくりに入ると知った。
まさか。そんな・・・・
改めて言うと『偶然を一隅のチャンスと、声をかけられた。』出会い編。
ナンパ・・・・?
「聞いてる?」
「は、はい、ごめんなさい。で、何階の人ですか?」
「二個下の階。」
「すごく近いです。羨ましいくらいに。」
一個ずつ階段を上り下りすれば非常階段で簡単に会える距離。
「どの会社もあんまり残業する人が少ないって聞きましたが。」
「そうだね。あんまり遅くはならないみたい。さすがに定時じゃないみたいだけど、一時間くらいで済んでるみたい。」
「それなのに週末は一緒にお休みなんですか?」
それは羨ましい、ずるい。
「いいでしょう?」
あっさりとそう言われた。
とても綺麗な笑顔で、もう、それ以上綺麗になりようがないです。
「良かったです。いい人なら。」
夕方、夜勤を終えてひと眠りした安達さんと食事をする。
久しぶりに榎君のお店に行こうと言って、電話をして空いてるのを確認して向かった。
「安達さん、最近サボってますよね。いいんですか?メタボになって操さんに脇肉をつままれたりしますよ。」
「大丈夫だよ。榎君と会ってないだけで、ちゃんと行ってるから。」
「え~、余計にひどいです。時間合わせてくださいよ~。」
「何で?」
「最近おばちゃんたちに安達さんに振られて可哀想にって、・・・・全部情報を共有して、慰めてもらってます。」
「なんでもかんでも言っちゃダメだよ。それなら余計にドンと胸を借りて泣いて、慰めてもらえばいいよ。」
「操さん、酷いですよね。僕が寂しがるって知ってるのにね。」
それは何とも、最近すっかり会うパターンを決めて、ちょっと会い過ぎてるかも。ジムに行く暇はないかも。
「榎くん、お仕事してね。お酒お酒。」
「はいはい。」
「クリスマスに向けて作ってるのがあるんですけど、女性向きなんです、ちょっと感想頂けますか?」
「はい。喜んで。」
そういって差し出されたのはベリーを使った赤いカクテル。
飲みやすい、控えめな甘さ、と思ったらしっかりお酒が利いていて、一瞬クラッとするくらい。
「美味しいです。私は甘さもちょうどいいと思います。でもお酒強いですね。最後にくるんでびっくりですね。」
「男性が女性に勧めるパターンなので、すこしは酔っていただいたほうがね。」
「強さは調整できますから。」
「すごくいいです。飲みたいです。色もきれい。」
「もし他の色を出すとしたら、白とブルーと緑どれがいいですか?」
「きれいなグリーン、二色に分けられるなら、ブルーとホワイトも綺麗かな?あんまり詳しくないのでわからないけど、白のイメージがなくて。」
「まだまだ錯綜中です。そういえばクリスマスはどうするんですか?」
そう聞かれたので隣の安達さんを見た。
「まだ決めてない。」
「まさか、海辺のホテルとか言います?そんな気取ったことします?」
「まだ決めてない。」
同じように答えてる。
「どうせ平日だし、操さん、是非ここで会いましょうよ。それまでにはちゃんとクリスマスカクテル仕上げておきます。美味しいのを作りますから。」
「はい、楽しみです。」
「操ちゃん、勝手にクリスマスの予定いれるの?それは冷たくない?」
「だって安達さんが仕事だったら、一人だし・・・。」
「榎君のファンがたくさんいて席が無いよ、きっと。」
「あ・・・・・ああ、そうですね。」
「電話貰えれば一つの席くらい取っておきますよ。安達さんは仕事だし、そうしましょう。」
「榎君、何で勝手に決めるのさ。」
「だって週末休みにするでしょう?そうしたら、どっちかは泊りでしょう?」
「まだ決めてない。」
また同じ返事をする安達さん。
もう、本当に1人でなんて来るわけないのに。
今日も途中からテーブル席に移った。
カウンターは榎君目当てなのか、気が付いたら女性で埋め尽くされて、楽しそうに盛り上がっていた。
テーブル席に離れてから響さんの事を教えた。
『私の美人の友達に彼氏が出来た。』ニュース。
ふんふんと聞いていた安達さん。
「響さんにきっかけを聞いたら、『ナンパ』と言われました。そのあと『お守りマンと一緒』って。」
「えっ?何が一緒なの?」
「だから出会いがナンパって事です。」
さすがに驚いて唖然としてる安達さん。
気持ちはわかります。
「なんぱ・・・・・?」
聞いたことがない言葉のようにつぶやく安達さん。
まあ、私も同じ気持ちでしたから。
「操ちゃんもあれをナンパだと思ってるとか?」
「思ってません。そんな風には。だから響さんの出会いも違うと思います。相手は響さんに一目ぼれした同じビルの会社の人だし、働いてる階も一緒にエレベーターで降りればわかりますよね。必然会社名も。そのあと二個だけ階段を降りればいいんです。そして嬉しい偶然があったから、思い切って声をかけた・・・・とほとんど同じですが、ナンパに入るんでしょうか?」
「う~ん、入れたくない。入らない事にしよう。」
「はい、そう言ってみます。」
「二つ下のフロアの会社員か。近いね。」
「そうなんです。羨ましいです。すぐに会えますよ。隠し撮りの写真を見る限りではかっこいい人です。」
嬉しそうに話をする響さんの顔を思い出す。
「さて、帰ろう。」
最初のクリスマスカクテルが強くて、あとは弱めのを数杯飲んだ。
食事も終わってる。
後をついて会計を済ませる横に立ちながら、ぼんやりして一緒に手を引かれて外に出る。
駅から歩いて部屋まで戻る。すっかり馴染んだ安達さんの部屋。
疲れた体をソファに沈めて、脇にバッグとコートを置いた。
静かに横にきた安達さんの重みをソファの沈みで感じた。
「操ちゃん、一人で行くの?」
「まさか、榎君のところですか?もう、本気にしないでください。榎君も来ないと分かってて、安心して安達さんを揶揄ってるだけですよ。」
「お守りマンは基地を離れられないから、美人のお友達カップルみたいに仕事中には会えないよ。寂しいの?それともそっちのイケメンの方がいいとか?」
「なんで?どうしたんですか?」
「すっごくうらやましそうだったよね。」
冗談じゃなくて、本気ですか?
「それは・・・・だって響さんは週末は一緒、相手の人は残業も少ないって・・・・安達さんも言ってたじゃないですか、あのビルの会社の人はいつまでも残業してる会社は少ないって。羨ましいと言えば羨ましいです。なんだか嬉しそうに話をしてる響さんが、ちょっとだけ。」
「嬉しそうに、俺の話をすれば?」
「それは散々聞かれて答えてるので、たっぷりとしてます。」
「そう?」
「安達さん、大丈夫ですか?飲み過ぎましたか?」
「うん、大丈夫。」
そう言って目を閉じてくっついたまま。
程よくお酒がまわる。
目が閉じそうになるけど、やっぱりそんなもったいないことはしたくない。
「安達さん、寝たくない、私が寝そうになったら起こしてくださいね。」
「うん。了解。」
それでも少し目を閉じた。
本当に数分だったと思う。
目を開けた時には安達さんにもたれてて、部屋は暖房で暖かくなっていて。
背中に回された腕と体にくっついた胸もあったかかくて心地よかった。
目を開けて見上げると気が付いたらしい。
「シャワー浴びる?ゆっくり入って来てもいいよ。」
「すぐに出てきます。」
「うん、じゃあ、あっちも暖めとく。」
すっかり自分の荷物を洗面台の籠から取り出して、バスタオルも借りてシャワーを浴びる。
熱いお湯が体に当たって気持ちいい。
さっぱりしたら目も覚めて。
リビングはいつものように照明が落とされてて。
寝室で大人しく待った。
明日は日曜日。
ゆっくり寝坊したい。でもデートもしたい。
布団にもぐりこんで、本当に待たずに安達さんがやってくるのもいつもの事。
抱き合い暖め合い、くっついて、邪魔なものはベッドの脇に落としていく。
キスをされながら、きつく首にしがみついて。
耳元でお願いした。
「安達さん、たくさん、お願いします。」
一度離れた体を布団と一緒に抱き寄せられた。
喉が痛い。
涙をながして欲しがって。
体が離れることも許さないようにしがみついた。
「どうしたの?」
途中にさすがに心配して聞かれた。
首を振って答えた。
どうしてだろう。
それは私も知りたい。
息を整えながらまだ鼓動が落ち着かない。
でも心は満足したように手足の力を抜いた。
抱き寄せてくれたのに全く力をいれない私。
体の上に乗せられて背中をさすられる。
広い胸はゆっくり私を乗せたまま上下する。
さすがです。
背中にあった手がお尻に行き、太ももを撫で上げて腰を掴むように動く。
動かされた。
ずり上げられて当てられた。
「・・・・安達さん。」
「寝ちゃんダメだよ。約束したし、起こすよ。寝たらダメだからね。」
寝てない・・・・休憩中。
ゆっくり腰を動かされて、落ち着こうとしていた息がまた上がる。
何で、・・・・・・早い。
声にならない喘ぎ声が漏れる。
足を閉じて自分でも両手をついて体をずらした。
喘ぎ声ははっきり声になって、快感を伝える。
一緒にスピードを上げて声を重ねる。
のぼりつめる手前で急に動きを止められて目を開ける。
「ダメだよ、まだ。」
体から降ろされて離される。
枕の下から安達さんが取り出したものを私がとりあげて破る。
ビックリしたように見られた。
自分でもびっくりしたけど、勢いよく取り出してみても、よくわからなっくて結局おとなしく安達さんに返した。
ちょっと笑われた気がした。
諦めて目を閉じて横になった私にかぶさってくる。
「何かあったのかな?友達に大切な人が出来て寂しいの?」
「そうじゃない。」
「そう?」
「でも、分からない。寂しいのか悔しいのか羨ましいのか負けたくないのか。」
「負ける気はしないけど?するの?」
「したくない。」
「了解。」
そう言いながらも優しくて。また涙がでる。
なんだか情緒不安定。
やっぱり寂しいんだと思う。
すっかり響さんという友達の存在に慣れていて。
だからって安達さんを欲しがるのもどうかと思う。
そこはやっぱり負けたくないと言うことで。
私にも大切な人がいるんだと再確認したくて。
甘えたらしい。
さすがに起こされなかった。
ゆっくり胸に抱えられるようにくっついて眠る私をそのまま寝かせてくれた。
それはそうだ。
安達さんの体力にはついて行けるわけがないから。
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