呪文のような名前が気になって・・・・もしかして本当に幸せの呪文でしたか?

羽月☆

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8  水鳥 ~目覚めた朝からの時間~

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朝ごはんの面倒も見てあげたんだから良くない?
モーニングが美味しいと評判のお店を教えた。
これまた友達からの情報。
あのホテルを出て、そのお店に行く、そのコースをそのまま教えられて、そのままお兄ちゃんに渡した。

いろいろとお金を出してもらった分は働いたよね。
だって昨日の飲み会の不発分のエネルギーも注ぎ込んだよ。

邪魔をした分も取り戻して、いい感じになったよね。
結果みんなハッピーじゃない?
結果良かったんじゃない?

だって初対面のお泊りって、滅多にないから。
あのままコーヒー屋で酔いをさますより、良かったんじゃない?
なんて自分の存在意義をしっかりと再確認。

なんだか私ったら、昨日からすごく努力の人じゃない。
自分にもいつかいい事が返ってくるって信じないと悲しい。

とりあえず家に帰って週末ゆっくりしよう。

奢られた分の仕事はこれで終了。




ああ、でもあのホテルはいい。
一人暮ししてない子と付き合うことがあったら使いたい。
広いベッド、最高!

そう思って、現実味もまったくないのに、つい赤くなった。

だって、いつよ・・・・というか、誰と?



深呼吸する。
お兄ちゃんと一緒にホテル泊。
嘘はちょっとだけ、だけど全然後ろめたくないよね!


「ただいま。」

「お帰り。お兄ちゃんのところにいたの?」

「そう、本当に偶然見つけたの。お兄ちゃんの事を好きな女の人も一緒だったから仲良くしてきた。」

「ねえ、それはお兄ちゃんの部屋に彼女がいたって事?」

「違うよ、街中で、ちょうどお兄ちゃんの会社の駅で友達と飲んでて、別れた時にお兄ちゃんを発見したの。女の人が酔っぱらってたから一緒にコーヒー飲んで帰るつもりだったって。お兄ちゃんがいない間にいろいろ聞いたの。」

「それで?」

「なんと、雨の日に傘を貸してもらって、それがうれしくてずっと一緒に飲みたかったんだって。」


「まあ。」


「傘はいらないって言われてたから、なかなか返せなかったらしい。で、友達が仕組んでくれて初めて飲み会で一緒になったって。」


「どんな人?」

「大人しそうな可愛い人。5個下だって。いい人っぽかったから協力してあげたの。いいことしたでしょう?」


「そうね。邪魔じゃなければね。」

「違うよ。ちゃんと連絡先交換までさりげなく誘導してさせたんだから。」

「ふ~ん。でもこれで彼女が出来たら、水鳥はお兄ちゃんの部屋に泊まるなんて言えないじゃない。」


「・・・・まあね。」

いきなりじゃなきゃちなみさんなら許してくれそう。
懐かしの三人酒盛り出来るじゃない。

お兄ちゃんの事をいろいろ聞けるかも。
だって知らない女の人に傘をあげる?
本当にいらなくて捨てたかったの?

名前まで書いた傘を?

「とにかく楽しかった。」


そう言って洗面所で洗顔をして、だらりとした服に着替えた。
良く寝たから眠気はない。

携帯をだしたら連絡が来てた。

お兄ちゃんだろうと思ったら違った。


同級生の有田君だった。
昨日のもう一人の幹事だ。
さっさと酔っぱらって、盛り上げることもせずにじっとしてた幹事の相棒。

当然謝罪だった。

『新藤さん、昨日はごめんなさい、本当にさっさと酔っぱらって半分寝てしまいました。反省してます。』

『友達にいろいろ聞きました。ちょっと怒ってたって。会って謝りたいです。お詫びにご飯を奢らせてください。今日か明日は忙しい?』


お詫びにご飯を奢ってくれるらしい。
怒ってると誰かが言ったらしい。
そこは否定したい。


返事をした。


『昨日は本当に途中まで大変だったよ。みんな大人しくて、盛り上げてもあんまりで。』

『でもみんな美味しかったし、お金も余分に出してくれたしって、誰も怒ってないよ。勿論私もね。ただ、ちょっと空回りに疲れただけ。』

さて、今日出かけるのも面倒で。
やっぱり今日はゆっくりしたい。

『明日は予定がないです。お昼奢ってくれるの?』

堂々と聞いちゃう聞いちゃう。
優しいのは知ってるし。

すぐに読んでくれた。
返事もすぐに来て。


『じゃ、明日、ランチしませんか?もちろん奢ります。お詫びです。お店は好きなお店でいいです、時間も任せます。』

そこまで言うなら予算も言って欲しい。
昨日もたくさん出してもらったから予約するようなお店はやめてあげよう。

お互いの住んでるところから真ん中を考えて、駅と時間を決めた。


だいたいあの飲み会は誰かと誰かをって目的はなかったんだよね。
ただ友達同士を集めた感じだった。

特定の人を呼んでも上手くいく確率はどうなんだろう?
お兄ちゃんとちなみさんは隣同士で上手くいったけど、ちなみさんも席が離れてたらなかなかお兄ちゃんのところには行けなかっただろう。

やっぱり席って大切。
席かあ・・・・今度からちゃんと考えよう。
でも喋ってもない人は分からないしなあ。

まったく目の前でさっさと寝てくれて・・・・ご馳走してくれるなら遠慮はしないよ。


あ、朝ごはんを食べてない。
思い出した。

ホテルのコーヒーを飲んだだけ。


リビングに行って食べ物を見つける。
パンとヨーグルトでいい。

「お母さん、明日は友達がランチご馳走してくれるって。」

「何かいい事あったの?」

「ううん、お詫び・・・じゃなくてお礼。お世話になったからって。」

「そう。夕飯は?」

「もちろん家で食べます。」

あんまり詳しくは聞いて来ない。
それは信頼の証。
今まで嘘をついて何かを誤魔化すなんてこともしてないし。

昨日のことだって半分以上本当の事で、全部言ってないだけ。
明日のことも本当。友達が男の子だって言ってないだけ。
友達には違いない。
もう随分顔見知りのはずだった。期間だけは長い。
あんなにお酒弱かったはずもないのに。
疲れてたのかな?じゃあ許そうかな?


その日はダラダラと過ごした。
お兄ちゃんからお礼の連絡でもあるかと思ったのに、無言。
夜になったら聞いてみよう。
もしかしてまた邪魔する?
まさかね・・・・。

傘の話は聞いたかな?

その話を元にイメージが過剰に膨らんでなければいいけど。
さり気なく振られるなんて、可哀想な事はやめて欲しい。

前に付き合ってた人とは長かったらしい。
それなりに先を見ていたらしいのに、それでもダメになることはあるらしい。

冗談で聞いたのに、真面目に答えられて、半分泣きそうなお兄ちゃんを見たのはあの時だけだ。本当に好きだったんだと思う。
二年くらい付き合って、相手もお兄ちゃんを一番だと思ってくれてたはずなのに。
なんでなんだろう?

他に好きな人が出来たんだろうか?
もっとお兄ちゃんより自分に合うって思う人がいて、その人もそう思ってくれて。
そんな事があったんだろうか?

友達だってちょっとくらいムッとしたり、喧嘩したり、合わないと思ったり。
でもやっぱりずっと一緒にいる訳じゃないと、少し位はいいかとも思う。
結婚はそれとは違うんだろう。
もっとぴったりと『合う』って思う人がいるって信じて探すしかないんだろう。

お父さんとお母さんを見ても、よくわからない。

お父さんはお兄ちゃんと似てる。
逆か、お兄ちゃんはお父さんに似てる。
あんまり前のめりに生きていない、って小娘が言うことじゃないけど。
お母さんと私は似てる。
その場全力投球タイプ。
どっちが頼りになるって、それはお母さん。
私の小さな悩みくらいだったらお母さんの方が元気をくれる。

でもお母さんはお父さんにも相談してるんだと思う。

そうじゃなかったらお父さんの出番がない。

お兄ちゃんだって甘えられるから、お父さんも優しい。
だから静かに考えてくれてると思う。
誰よりも大切な家族の事を。



夕飯を食べて夜の時間、すっかりお兄ちゃんの事は忘れてあげることにした。
ああ、ちなみさんと連絡先交換しておくんだったなあ。
就職の相談にも乗ってもらえたかもしれないのに。


そして昼前に連絡を取った有田君に約束の確認をした。

『美味しいもの食べようね。楽しみ!』

なんだか奢られる気満載って感じかな?
まあ、いいや。
疲れるほどの悩みがあるなら、お礼に聞いてあげよう。




ランチランチ!

待ち合わせの場所でぼんやりとしてる有田君を見つけた。

後ろに回って耳元で声を出して驚かせたら、本当にびっくりして。
周りに迷惑をかけるくらいで、二人でぺこぺことお辞儀して謝った。
もう私まで恥ずかしいじゃない。

だから、ぼんやりしすぎ。

そう言って歩き出した。
大丈夫?なにか悩み事?愚痴なら聞くよ!

フラフラとお店のあるあたりにたどり着く。

「何食べる?」

「お詫びだし、新藤さんが食べたいものでいいよ。」

ぼんやりからは覚めてくれたらしい。

「じゃあ、ここは?」

ハチミツの料理らしく、ハチの看板が可愛かった。

「いいよ。」

言いなりだった。
普通に答えられて、空いてたので入った。


席について飲み物と料理を適当に頼んだ。

「この間大丈夫だった?結構酔ってたよね。」

「・・・うん。」


「今まで弱いとは思ってなかったけど。」

「うん、多分飲み合わせかな?」

「そう?疲れてたとか、悩み事があるとか?」


「大丈夫。ほんとにゴメン。」

「まぁ、いいよ、ごちそうになって忘れてあげる。」

お酒が届いて乾杯した。


「あの後ね、面白かったの!帰るの面倒だなぁって思ってたら、飲み会帰りのお兄ちゃんに会って・・・・。」

珍しい出来事を話した。


「二次会は二人が酔ってて、楽しかったし、ほんとに寝心地よくて、もう朝までぐっすり。」

「三人で、その・・・ホテルに?」

あえて、その辺はあんまり深く考えないでよ!!

「うん。お金はお兄ちゃんに出させた。近くのおすすめのモーニングも教えてあげたから、ちなみさんと行ったと思う。」

ぼんやりしながらうなずく有田君。
想像してるんだろう。

「傘のご縁。なかなか返せなかったから半年も持ってるみたい。そんな話だけで可愛いの。」

またぼんやりしてる有田くん。反応なし。
もっと楽しく聞いてもらえる話題だと思うのに。



「そうなんだ。」

やっと、ポツリと言われた。

もう、大丈夫?いつもはもっと普通だよね。
じっと見た。私の視線も感じないみたいで、グラスを手にしたまま。

「ねえ、この間の飲み会はなにか意味があったの?もしかして誰かに話しかけたかった?」

そう聞いたら、ちょっとの間を空けて慌てて否定した。

もっとヘルプになる人を参加させないと、あのメンバーじゃ頼りない。
もしくは先に私に匂わせてくれてもいいのに。
でも少しは自力で行かないとね、とりあえずは一番に酔ってちゃダメじゃん。


目の前のお皿の料理を褒めて、お酒を2杯飲んで、やっぱり盛り上がらない中、なんとか会話をつないだ。

そんな感じだった? もう、面倒!ってちょっとだけ思った。


せっかくお兄ちゃんにいい事してあげたご褒美だと思ってたのに。何なのよって気分でため息が出た。


結局そのまま会計はお願いして、お礼を言って。

「ほんとに何かできる事があったら相談してね。」

最後にそう言ってみた。

「週末は空いてるの?」

「うん、平日にバイト入れてるから、週末は約束がなければダラダラしてるよ。」

約束って・・・・。

その声は小さくて、聞かれたのかどうかも分からなかった。

「たまにはみんなで遊ぶから。来年はそうも言ってられないしね。」

一応答えた。


「ありがとう。」

「ご馳走になったのは私だよね、ありがとう、じゃあまたね。」


手を振って終わりにした。

デザートまで食べてお腹いっぱい。
お腹は満足した。2杯もお酒飲んでそれじゃあ可哀想かな?

よく考えたら悩み事は違う友達にするよね。

そう思って忘れた。


そして恩知らずなのかお兄ちゃんからもなんのお礼も来ない。


えぃ、どいつもこいつも。


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