10 / 17
10 誤解だったらしい
しおりを挟む
遊佐先輩は無事にお母さんになった。
小さな女の子の赤ちゃんを抱く母親の先輩の写真が送られてきた。
旦那さんが撮ったのだろう親子の写真。
幸せそうな笑顔がすごく羨ましい写真。
手を繋いで眠る青野君。ゆっくり横を向いて両手で触れる。
不思議な出来事。
思い返しても何だか偶然とか、あっという間にとか、気がついたらとか。
そんな感じ。
もしあのクリスマスの日、一人で部屋でウジウジしてたら。
今頃一人でぼんやり過ごしてたと思う。
恨み言を言い続けていたかも。
根暗な年末年始を過ごしてただろう。
こんな暖かい手に触れることなんてなかっただろう。
昨日荷物を持ってここに来た。
洗濯すればいつまでもい続けられるくらい。
大掃除はどうしよう。
年賀状は後出しになりそうだ。
私はいつまで居るつもりなの?
実家に連絡もしてない。
青野君はどう思ってるんだろう?
ちょっと強引に決められてここにいるけど。
聞くのは変?
ゆっくり顔をあげたら起きてたみたいで、目が合った。
「あっ・・・・。」
いろいろと考えてて、すぐには言葉が出なくて。
「すごい溜息ばっかりつかれると心配になるんだけど。」
ちょっと困った顔をされた。
「どうかした?」
「・・・・いつまでここに居ていいの?」
「いつまでも、どうぞ。」
そう言われた。
「年越しは一緒にいたいし、初詣も一緒に行きたい。冬休み最後の日も。いつ帰る?」
「・・・わかんない。」
「ため息つきながらそんなこと考えてたの?」
違う・・・・。
「ねえ、遊佐先輩のやめる日。休憩室ですれ違ったの覚えてる?」
「ああ、うん・・・。」
「あの時、私に何か言った?」
「ううん。言ってないよ。」
「本当に?何やってんだよって、呆れたような声が聞こえた。先輩がいなくなるのを寂しがって仕事をさぼって、しょんぼりしてる私にイラついて怒ってるような。それまで優しい所しか見てなかったのに・・・いきなりで。」
「違うよ、それは違うよ。」
いきなり強く言われた。
ほら、やっぱり顔が怖いかも。
「だってその後も時々きつい目で見られてるのに気が付いたの。他の人には相変わらず優しいのに、私にもあいさつの時には笑顔を向けてくれるけど。本当に嫌われてるんだと思ってた。最初の数ヶ月はそんなこと感じたこともなかったのに。いつの間にかすごく嫌われてたんだって・・・・。」
「待って・・・・、勝手に決めないでよ。」
目を見る。やっぱり怒ってる。
その目が怒ってるって言ってる。
夜よりは少し明るい室内。
狭いベッドに二人で肌が触れていて、息もかかるくらい近くにいる。
遠くで見ていたきつい目は・・・今も怒ってるみたいで。
「違うよ、あの時は自分に言ったんだ。」
手に力を入れられて話が続いた。懐かしいあの日の事。
トイレに行こうとして通りかかった時だったんだ。
遊佐さんが出てきた時に丁度そこにいて、お互いびっくりして。
立ち聞きしてたのがバレたかなって思って。
少しして振り向いたら向こうも振り向いていて、笑顔を返されて、全部バレてるかもしれないって思って。
だから勇気をもって入って行って声をかけて、今日こそ食事に誘いたいと思ってた。
でも挨拶したらすぐ出て行ったよね。
誰もいなくてせっかくのチャンスだったのに。
結局引き留めることもできなくて。
だから自分に言ったんだ。
せっかくのチャンスだったのに何やってんだよ、自分。って。
確かに笑顔を消すと表情が怖いって言われることもある。
考え事をしてたりすると、きつい表情をしてるらしい。
自分ではぼんやり見てるつもりだった。
いつも・・・遠くから見てるだけでも満足しようと思って。
睨んでるつもりはない。
本当に、そう見えたならごめん。でも全然そんなつもりはない、なかったから。
そう言われた。
そうだったの?勘違い?
「この間も楽しかったのに、時々すごく呆れたような表情になってる時があって。申し訳ないなあってそのたびに思ってた。だからごめんねって何度も言ったの。」
「あの日ここに来てから、私に怒ったことあった?呆れたり、イラっとしたりしたことあった?」
「無いよ・・・・・・・でも、誤解して、一度だけちょっと。『自由にしていいよ』って言われて。てっきり『抱きたいなら抱けばっ。』って言われたと思って。でもそんな意味じゃなかったって、すぐに違うと分かって謝ったよね。」
確かに記憶にある気がする。そんなやり取り。
「その他は呆れたりもイラついたりもしてなかったよ。微妙な、変な気分だったし、立場だったけど、一緒にいれて、たまに笑ってくれるのはうれしかったし。」
「なんで月曜日に誘ったのにすぐに断ったの?誰もいないところでお礼が言いたかったし、誘いたくて早起きしたのに。」
「それは・・・なんだかお礼だからって強調されると自分がなんだか可哀想に思えて。それだけだったら・・・無理には誘わなくてもいいのにって思って。」
そんな事思ってない。そんな無理なんてしない。
「ごめん。自分を守ろうとした。傷つきたくないって思ったんだ。」
「ううん、ずっと誤解してた。優しい人が自分にだけきつい視線をするのが悲しくて。だからさりげなく避けていたの。ごめんなさい。」
「いつも笑ってるのも変でしょう?きつい顔になってたら・・・聞いて。絶対怒ってもないし、不機嫌でもないから。勝手に誤解しないで。僕もできるだけ気を付ける。」
「本当に聞いていいの?本当に聞くよ。」
「いいよ。」
耳元で答えられた。
取りあえず聞きたいことは聞けた。
『誤解』それだけだった。
小さい事でも重なると事実だと思い込んでしまう。
すごくホッとした。嫌われてたんじゃないと分かって、ホッとした。
「今どんな顔してる?」
「すごく優しそうな顔してるよ。」安心する見慣れた笑顔。
「本当?」
「うん。」
「それは・・・おかしいなあ?」
キスをされて・・・・。
・・・・・・また繰り返された。
小さな女の子の赤ちゃんを抱く母親の先輩の写真が送られてきた。
旦那さんが撮ったのだろう親子の写真。
幸せそうな笑顔がすごく羨ましい写真。
手を繋いで眠る青野君。ゆっくり横を向いて両手で触れる。
不思議な出来事。
思い返しても何だか偶然とか、あっという間にとか、気がついたらとか。
そんな感じ。
もしあのクリスマスの日、一人で部屋でウジウジしてたら。
今頃一人でぼんやり過ごしてたと思う。
恨み言を言い続けていたかも。
根暗な年末年始を過ごしてただろう。
こんな暖かい手に触れることなんてなかっただろう。
昨日荷物を持ってここに来た。
洗濯すればいつまでもい続けられるくらい。
大掃除はどうしよう。
年賀状は後出しになりそうだ。
私はいつまで居るつもりなの?
実家に連絡もしてない。
青野君はどう思ってるんだろう?
ちょっと強引に決められてここにいるけど。
聞くのは変?
ゆっくり顔をあげたら起きてたみたいで、目が合った。
「あっ・・・・。」
いろいろと考えてて、すぐには言葉が出なくて。
「すごい溜息ばっかりつかれると心配になるんだけど。」
ちょっと困った顔をされた。
「どうかした?」
「・・・・いつまでここに居ていいの?」
「いつまでも、どうぞ。」
そう言われた。
「年越しは一緒にいたいし、初詣も一緒に行きたい。冬休み最後の日も。いつ帰る?」
「・・・わかんない。」
「ため息つきながらそんなこと考えてたの?」
違う・・・・。
「ねえ、遊佐先輩のやめる日。休憩室ですれ違ったの覚えてる?」
「ああ、うん・・・。」
「あの時、私に何か言った?」
「ううん。言ってないよ。」
「本当に?何やってんだよって、呆れたような声が聞こえた。先輩がいなくなるのを寂しがって仕事をさぼって、しょんぼりしてる私にイラついて怒ってるような。それまで優しい所しか見てなかったのに・・・いきなりで。」
「違うよ、それは違うよ。」
いきなり強く言われた。
ほら、やっぱり顔が怖いかも。
「だってその後も時々きつい目で見られてるのに気が付いたの。他の人には相変わらず優しいのに、私にもあいさつの時には笑顔を向けてくれるけど。本当に嫌われてるんだと思ってた。最初の数ヶ月はそんなこと感じたこともなかったのに。いつの間にかすごく嫌われてたんだって・・・・。」
「待って・・・・、勝手に決めないでよ。」
目を見る。やっぱり怒ってる。
その目が怒ってるって言ってる。
夜よりは少し明るい室内。
狭いベッドに二人で肌が触れていて、息もかかるくらい近くにいる。
遠くで見ていたきつい目は・・・今も怒ってるみたいで。
「違うよ、あの時は自分に言ったんだ。」
手に力を入れられて話が続いた。懐かしいあの日の事。
トイレに行こうとして通りかかった時だったんだ。
遊佐さんが出てきた時に丁度そこにいて、お互いびっくりして。
立ち聞きしてたのがバレたかなって思って。
少しして振り向いたら向こうも振り向いていて、笑顔を返されて、全部バレてるかもしれないって思って。
だから勇気をもって入って行って声をかけて、今日こそ食事に誘いたいと思ってた。
でも挨拶したらすぐ出て行ったよね。
誰もいなくてせっかくのチャンスだったのに。
結局引き留めることもできなくて。
だから自分に言ったんだ。
せっかくのチャンスだったのに何やってんだよ、自分。って。
確かに笑顔を消すと表情が怖いって言われることもある。
考え事をしてたりすると、きつい表情をしてるらしい。
自分ではぼんやり見てるつもりだった。
いつも・・・遠くから見てるだけでも満足しようと思って。
睨んでるつもりはない。
本当に、そう見えたならごめん。でも全然そんなつもりはない、なかったから。
そう言われた。
そうだったの?勘違い?
「この間も楽しかったのに、時々すごく呆れたような表情になってる時があって。申し訳ないなあってそのたびに思ってた。だからごめんねって何度も言ったの。」
「あの日ここに来てから、私に怒ったことあった?呆れたり、イラっとしたりしたことあった?」
「無いよ・・・・・・・でも、誤解して、一度だけちょっと。『自由にしていいよ』って言われて。てっきり『抱きたいなら抱けばっ。』って言われたと思って。でもそんな意味じゃなかったって、すぐに違うと分かって謝ったよね。」
確かに記憶にある気がする。そんなやり取り。
「その他は呆れたりもイラついたりもしてなかったよ。微妙な、変な気分だったし、立場だったけど、一緒にいれて、たまに笑ってくれるのはうれしかったし。」
「なんで月曜日に誘ったのにすぐに断ったの?誰もいないところでお礼が言いたかったし、誘いたくて早起きしたのに。」
「それは・・・なんだかお礼だからって強調されると自分がなんだか可哀想に思えて。それだけだったら・・・無理には誘わなくてもいいのにって思って。」
そんな事思ってない。そんな無理なんてしない。
「ごめん。自分を守ろうとした。傷つきたくないって思ったんだ。」
「ううん、ずっと誤解してた。優しい人が自分にだけきつい視線をするのが悲しくて。だからさりげなく避けていたの。ごめんなさい。」
「いつも笑ってるのも変でしょう?きつい顔になってたら・・・聞いて。絶対怒ってもないし、不機嫌でもないから。勝手に誤解しないで。僕もできるだけ気を付ける。」
「本当に聞いていいの?本当に聞くよ。」
「いいよ。」
耳元で答えられた。
取りあえず聞きたいことは聞けた。
『誤解』それだけだった。
小さい事でも重なると事実だと思い込んでしまう。
すごくホッとした。嫌われてたんじゃないと分かって、ホッとした。
「今どんな顔してる?」
「すごく優しそうな顔してるよ。」安心する見慣れた笑顔。
「本当?」
「うん。」
「それは・・・おかしいなあ?」
キスをされて・・・・。
・・・・・・また繰り返された。
0
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】堅物な婚約者には子どもがいました……人は見かけによらないらしいです。
大森 樹
恋愛
【短編】
公爵家の一人娘、アメリアはある日誘拐された。
「アメリア様、ご無事ですか!」
真面目で堅物な騎士フィンに助けられ、アメリアは彼に恋をした。
助けたお礼として『結婚』することになった二人。フィンにとっては公爵家の爵位目当ての愛のない結婚だったはずだが……真面目で誠実な彼は、アメリアと不器用ながらも徐々に距離を縮めていく。
穏やかで幸せな結婚ができると思っていたのに、フィンの前の彼女が現れて『あの人の子どもがいます』と言ってきた。嘘だと思いきや、その子は本当に彼そっくりで……
あの堅物婚約者に、まさか子どもがいるなんて。人は見かけによらないらしい。
★アメリアとフィンは結婚するのか、しないのか……二人の恋の行方をお楽しみください。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる