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10 言いたいことも上手く伝えられない相手と出会った征四郎。
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愚痴は遠慮もなく、表現も控えることなく、思いっきりハゲ呼ばわり。
本当に碌な大人じゃない!と力が入ってる。
昨日と同じつぶやきがお酒の力に煽られてパワーアップした感じだろうか?
やはり無感動そうな表情ながらも眉間には嫌悪をはっきり知らせるシワ。
その深さが余計なアクセントになって・・・怖いくらいだ。
仕事終わりの金曜日、お酒の勢いのまま、昨日の記憶を共有するふたり。
そこには思ったより壁がない気もする。
実際自分が連れて来たお店もそんな感じだった。
二人の作る距離感と、照度。
いい雰囲気ではある、話の内容はともかくとして。
ひとしきり吐き出したらしくお酒を煽るように喉を潤し、心を静めたらしい。
そして心配するまでもなくお酒は強そうだ。
次のお酒を頼んでメニューを閉じた。
パタンと閉じたメニュー表の風に綺麗な前髪が揺れた。
「スッキリした?でもそんな正直なとこがギャップがあって可愛い・・・ってあの彼氏も、そう思うんだろうね。」
ちょっと言葉を間違えそうになって慌てた。
ただ自分の言葉に、やっと緩んだ眉間のシワがまた現れた。
「ちょっと前のことだけど、相手の買い物を待っててぼんやりしてたら、目の前に仲良くじゃれあう二人がいて。ビックリしたよ、知ってる顔のはずなのに、なかなか記憶の中の顔と結びつかなくて。」
「会社でもあんな感じてもいいのにって余計なお世話だな。ちゃんと縦横仕事も問題なくやれてるし、それこそ余分な男を引き寄せるだけかもしれないしね。」
「二人でじゃれ合ってるのも馬鹿っぽいはずだけど、そうは見えなかったよ。」
そんな相手がいることも知ってるから、構えなくても大丈夫だよと・・・・言いたかった気がした。だから最後まで一気に言った。
ちらりと見ると
照れるでもなく、相変わらずの無感動な顔だった。
眉間は少し緩んだらしい。
「それは弟です。いつも買い物に付き合ってもらって、ご褒美になにか買ってあげてます。仲良しで一緒にいると確かに彼氏彼女に間違えられます。」
しばらくしてそう言われた。
「この間は私が彼氏で弟が彼女に間違えられました。」
「身長は私のほうが高いですし、弟の髪は私より少し長いくらいで、姉の私が見ても、可愛いんです。」
弟・・・・?
確かにそう言われると、恋人のじゃれ合いにありがちな何かドロリとした濃いものはなかったかもしれない。そう、そんな二人だった。
じゃあ、カラッと爽やかな感じだったのも当然だったのか?
その後の自分の腕に纏わりついたものと比べてしまい、鬱陶しいとまで思ったのに。
初めて、ちょっとだけ反省した。
「きっとその時は恩田さんも同じくらいの笑顔をしてたんじゃないですか。本当の彼女ならそれ以上です。」
別にその時に彼女と一緒だったとは言ってないが。
さすがにそう思っただろうか?
男友達より、彼女と一緒にいたと。
それでも自分に笑顔はないと思う。
あの時、単純に羨ましかったのだ。
自然に距離を詰めて笑い合っている二人が。
急に自分が嫌になったのだ。
自分にまとわり付いていたものも丸ごと。
やっぱり碌な大人じゃないんだ、俺だって。
あのエロ親父のことは何も言えない。
「あの日、すぐに・・・・別れたんだ。」
「むしろ自分は向いてないんだと思うんだ、そういうのに。」
何の告白だ。
『好きでもない適当な女と付き合い、やっぱり鬱陶しいと思った途端捨てた。』
それだけのことなのに。
反省してるようで、ただただ誤魔化してるだけじゃないか。
「じゃあ、きっと、相手が、違ったんです。もしくは二人のバランスがちょっとだけ偏ってただけです。」
慰めてる言葉だろう、彼女自身そんな思いをしたことがあるのかもしれない。
「そうだといいけど。ずっとボッチでいろとか言われないだけいいか。」
彼女の言葉を使いわざと言い返すようにして、雰囲気を緩める。
「言いません、そんな失礼なことは。助けてもらった人です。」
その顔は怒っているようにも、いつもの無感動のままにも見える。
それが普通なんだと、あの顔を知らなきゃ思うけど。
じっとその顔を見ていたら、話を振られた。
「恩田さんは兄弟は?」
「姉が一人いるよ。」
「仲いいですか?」
「大人としての挨拶程度、買い物に付き合ったことはないよ。」
あんなじゃれ合いはもちろんない。
「小さい頃からずっと小さくて弱くて、私が守って来たんです。強くて頼りになる姉が私の役割でした。今更弟がいなくなって困るのはきっと私です。もし彼女のほうが大切だって言われたら、絶対寂しいです。」
眉間も表情もそのままでも、その定まらない視線が本音だと言ってる気がする。
「好きな人は?」
「さあ、聞いてません。いつ電話しても出てくれるし、週末も前もってお願いすればいつでも付き合ってくれます。」
好きな人・・・今、弟の好きな人はどうでもいいのに。
言い方が曖昧だったらしい。
でも、彼氏も、彼氏候補もいないみたいだ。
「俺で良かったら付き合うよ、買い物でも、何でも、いつでも。」
思わず口にしたセリフ。
何の目的で?そう思われるだろうに。
「じゃれ合いたいんですか?」
そう思われたのだろう、冗談のように返されて。
「あぁ、そうだなぁ。」
そのままの雰囲気で冗談のように返す。
「ありがとうございます。」
淡々としたやり取りに少しは意味を持たせたいけど、そっと見た顔は、やはり変わりなかった。
むしろ冗談のように言い返した分、弟離れできなくて気を遣わせましたね、とお礼を言われたんだろうか?
普通に提案してみたんだけど。
無理だったか、気がつかなかったか。
その差は大きい、知りたいけど、同じようには聞けない、言えない、今は。
「一人でも行けます。」
大分時間がたってから言われた。
やっぱりハッキリ断られたらしい。
まあ、そうだよな。
初めて話をする先輩とじゃれ合うことは考えられないだろう。
ただ、買い物に付き合って、食事をするくらいだと思うのだが。
それも考えてはもらえないんだろうか?
考えてもらいたいと思ってる自分を意識する。
グラスを手にして視線を落とした。
本当に碌な大人じゃない!と力が入ってる。
昨日と同じつぶやきがお酒の力に煽られてパワーアップした感じだろうか?
やはり無感動そうな表情ながらも眉間には嫌悪をはっきり知らせるシワ。
その深さが余計なアクセントになって・・・怖いくらいだ。
仕事終わりの金曜日、お酒の勢いのまま、昨日の記憶を共有するふたり。
そこには思ったより壁がない気もする。
実際自分が連れて来たお店もそんな感じだった。
二人の作る距離感と、照度。
いい雰囲気ではある、話の内容はともかくとして。
ひとしきり吐き出したらしくお酒を煽るように喉を潤し、心を静めたらしい。
そして心配するまでもなくお酒は強そうだ。
次のお酒を頼んでメニューを閉じた。
パタンと閉じたメニュー表の風に綺麗な前髪が揺れた。
「スッキリした?でもそんな正直なとこがギャップがあって可愛い・・・ってあの彼氏も、そう思うんだろうね。」
ちょっと言葉を間違えそうになって慌てた。
ただ自分の言葉に、やっと緩んだ眉間のシワがまた現れた。
「ちょっと前のことだけど、相手の買い物を待っててぼんやりしてたら、目の前に仲良くじゃれあう二人がいて。ビックリしたよ、知ってる顔のはずなのに、なかなか記憶の中の顔と結びつかなくて。」
「会社でもあんな感じてもいいのにって余計なお世話だな。ちゃんと縦横仕事も問題なくやれてるし、それこそ余分な男を引き寄せるだけかもしれないしね。」
「二人でじゃれ合ってるのも馬鹿っぽいはずだけど、そうは見えなかったよ。」
そんな相手がいることも知ってるから、構えなくても大丈夫だよと・・・・言いたかった気がした。だから最後まで一気に言った。
ちらりと見ると
照れるでもなく、相変わらずの無感動な顔だった。
眉間は少し緩んだらしい。
「それは弟です。いつも買い物に付き合ってもらって、ご褒美になにか買ってあげてます。仲良しで一緒にいると確かに彼氏彼女に間違えられます。」
しばらくしてそう言われた。
「この間は私が彼氏で弟が彼女に間違えられました。」
「身長は私のほうが高いですし、弟の髪は私より少し長いくらいで、姉の私が見ても、可愛いんです。」
弟・・・・?
確かにそう言われると、恋人のじゃれ合いにありがちな何かドロリとした濃いものはなかったかもしれない。そう、そんな二人だった。
じゃあ、カラッと爽やかな感じだったのも当然だったのか?
その後の自分の腕に纏わりついたものと比べてしまい、鬱陶しいとまで思ったのに。
初めて、ちょっとだけ反省した。
「きっとその時は恩田さんも同じくらいの笑顔をしてたんじゃないですか。本当の彼女ならそれ以上です。」
別にその時に彼女と一緒だったとは言ってないが。
さすがにそう思っただろうか?
男友達より、彼女と一緒にいたと。
それでも自分に笑顔はないと思う。
あの時、単純に羨ましかったのだ。
自然に距離を詰めて笑い合っている二人が。
急に自分が嫌になったのだ。
自分にまとわり付いていたものも丸ごと。
やっぱり碌な大人じゃないんだ、俺だって。
あのエロ親父のことは何も言えない。
「あの日、すぐに・・・・別れたんだ。」
「むしろ自分は向いてないんだと思うんだ、そういうのに。」
何の告白だ。
『好きでもない適当な女と付き合い、やっぱり鬱陶しいと思った途端捨てた。』
それだけのことなのに。
反省してるようで、ただただ誤魔化してるだけじゃないか。
「じゃあ、きっと、相手が、違ったんです。もしくは二人のバランスがちょっとだけ偏ってただけです。」
慰めてる言葉だろう、彼女自身そんな思いをしたことがあるのかもしれない。
「そうだといいけど。ずっとボッチでいろとか言われないだけいいか。」
彼女の言葉を使いわざと言い返すようにして、雰囲気を緩める。
「言いません、そんな失礼なことは。助けてもらった人です。」
その顔は怒っているようにも、いつもの無感動のままにも見える。
それが普通なんだと、あの顔を知らなきゃ思うけど。
じっとその顔を見ていたら、話を振られた。
「恩田さんは兄弟は?」
「姉が一人いるよ。」
「仲いいですか?」
「大人としての挨拶程度、買い物に付き合ったことはないよ。」
あんなじゃれ合いはもちろんない。
「小さい頃からずっと小さくて弱くて、私が守って来たんです。強くて頼りになる姉が私の役割でした。今更弟がいなくなって困るのはきっと私です。もし彼女のほうが大切だって言われたら、絶対寂しいです。」
眉間も表情もそのままでも、その定まらない視線が本音だと言ってる気がする。
「好きな人は?」
「さあ、聞いてません。いつ電話しても出てくれるし、週末も前もってお願いすればいつでも付き合ってくれます。」
好きな人・・・今、弟の好きな人はどうでもいいのに。
言い方が曖昧だったらしい。
でも、彼氏も、彼氏候補もいないみたいだ。
「俺で良かったら付き合うよ、買い物でも、何でも、いつでも。」
思わず口にしたセリフ。
何の目的で?そう思われるだろうに。
「じゃれ合いたいんですか?」
そう思われたのだろう、冗談のように返されて。
「あぁ、そうだなぁ。」
そのままの雰囲気で冗談のように返す。
「ありがとうございます。」
淡々としたやり取りに少しは意味を持たせたいけど、そっと見た顔は、やはり変わりなかった。
むしろ冗談のように言い返した分、弟離れできなくて気を遣わせましたね、とお礼を言われたんだろうか?
普通に提案してみたんだけど。
無理だったか、気がつかなかったか。
その差は大きい、知りたいけど、同じようには聞けない、言えない、今は。
「一人でも行けます。」
大分時間がたってから言われた。
やっぱりハッキリ断られたらしい。
まあ、そうだよな。
初めて話をする先輩とじゃれ合うことは考えられないだろう。
ただ、買い物に付き合って、食事をするくらいだと思うのだが。
それも考えてはもらえないんだろうか?
考えてもらいたいと思ってる自分を意識する。
グラスを手にして視線を落とした。
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