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16 不器用な姉をやっと任せる人を見つけたと思った弟。

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ちい、馬鹿正直にお願いしたんだろうか?
恩田さんはきっとおかしいと思っただろう、姉を心配する弟、写真で安心するという弟。
きっとバレてるだろう。
ちいはきっとそんな事おかしいと思っても慣れない事ばかりで、『弟との約束を守ること』に一生懸命で考えるのは止めただろう。気がつくくらいの余裕があればいいけど、無理だったような気がする。

携帯には楽しそうな写真が送られてきた。
暗い外で撮られたらしい、自撮りで、ほぼ肩上の二人。
満面の笑顔の恩田さん、いい人そうだ。
ちいはちょっと笑顔が硬い。
それでも会社では愛想なしと言われてるくらいだから、これくらい笑顔が出れば特別な時間だったと恩田さんも思ってくれてるだろうか?

『仕事が終わった後にお酒を飲んで話をしました。』

『楽しかったでしょう?』

『うん。奢ってもらった。』

『明日は、お休みだよ、会わないの?』

『約束した。遊びに行こうって言われた。』

『楽しみだね。』

『そうだね。』

『僕は安心したから、報告はちいが話したい時でいいよ。惚気たいなら明日も聞くけど。』

『いろいろ相談にのってよ。』

『もちろん。』

『恩田さんにお礼を言ってね。弟が安心したって言ってたって。あと、本当に髪伸ばそう、ちい。短く切ったらダメだよ。』

『わからない。』

『そんな事言わないで。じゃあ、お休み。』

『お休み。』

今頃、鏡を覗き込んで自分の髪が伸びた顔を想像してる気がする。
今まで何度も言って来たけど、今度こそ伸ばしてくれればいいのに。
伸ばさない理由は楽だから、美容師さんに短い方がかっこいいと勧められるから。
でも絶対似合うのに。
何ならそこは一緒に行ってもいい。
ちいの代りに、伸ばしたいと、カタログも見てこれでお願いしますと言いたい。

明日も会う約束をしてるんだとしたら、気に入ったんだろう。
いい人だと信じたいし、信じられそうだ。
やっとちいが人並みに楽しく過ごせるかと思うと嬉しい。
週末の買い物も恩田さんにお願いしたい。
僕が選んであげるより、大人っぽい服を選んでくれるかもしれない。
それに本当に下着売り場でも堂々と相談にのってもらえばいいのだ。

本当に世話が焼ける姉だった。

恩田さん、あとはお願いします。


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