やられたらやり返す…主義でしたが、笑顔でお礼を言えそうです。

羽月☆

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24 明らかにザワザワしてきた周囲の人たち。

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全然気がついてないらしい。
私は玉城さんにしか言われてない。
だって、玉城さんに言われて気を付けてる、ちょっと緊張もしてたら笑顔も出にくくなって。
他には誰にも何も言われてない。
それなのに・・・・。


「なんだか最近隣の恩田さん、よく来るね。」

「時々ランチは誘われてたけど、このところやたらと誘って来てるよね。」

「どうしたんだろう?なんだか顔がゆるいよね。」

「なんだかクールだと思ってたのに、普通。」

「飲み会来てくれそうじゃない?誘ってみようよ。」

「喋りやすそうな感じになったしね。」

「この間コーヒー持ってぶつかった時、すごく優しかった。いい感じの『大丈夫?』を言われて、眩暈しそうだった。恩田さんの方にかかったのに、大丈夫だからって。」

「本当に偶然?ちょっといいじゃない?」

「なかなか一緒に飲むことないよね。誘ってみようよ。」

「すごい楽しみ!」

「もう一度、あの笑顔向けられたい!」


そんな事を言ってたのは営業の隣の経理の人たち。
目ざとく・・・・・営業部内の動きを察知してるみたい。
そんな反応がちょっとだけ聞こえた。二回くらい。数人が気がついて、倍以上の人が注目してるんじゃないの?
今まで社内の飲み会にも参加せず、クールぶってて距離があったのに、勝手に距離をつめられてるじゃない。
志波さんを誘うふりして、社内にいる時はよく二課に来るし。
全然分かってないじゃない。


気配を感じても視線なんて上げてやらないから。
偶然なんて装う隙は与えないから。
そんな噂教えてやらない。

絶対。


それなのに、金曜日の夜、恩田さんの部屋でくつろいでて、見慣れた笑顔を誰よりも近い距離で見たら、聞いてしまった。

「最近、飲みの誘い増えてませんか?」

「たまに誘われるよ。もちろん断ってるけど。社内の人とは飲まない主義って、例外は一人だけだって教えたよね?」

聞いたし覚えてるけど、今も同じままかどうかは分からない。
たまに・・・・というあたり、やっぱり一回や二回じゃないらしいし。

「そういえば、分かったかも。秘書課の可愛い子。他の先輩と一緒にいるところを見たけど、ちょっと異色ではあるね。確かに可愛かったね。」

やっぱりそれと分かるくらいには秘書課の人が分かるんじゃない。
それに可愛いを二回使うほど可愛いと思ったらしい。
見つけてこの子かあ、納得だなあとか思ったんだ。
友達でイケメンの志波さんが惚れるのも分かるなあって。

「ねえ、眉間にシワ寄ってるよ。」

顔を見られてそう言われた。

「寄せてるんです。」


「何で不機嫌なの?」

そっと手をつながれた。

「コーヒーを持った女性社員にぶつかりましたか?」

顔をあげて思い出してる風だ。

「優しい笑顔で『大丈夫だよ。』って言ったんじゃないですか?」

「どうしたの?」

笑顔も消えて怪訝そうな顔になる。
その後思い出したらしくて、ああ・・・・と言いながら視線を合わせられて、肩を抱かれてくっついた。

「まさか胸を拭こうなんて手は出さなかったし、もちろんわざとでもないよ。こっちが濡れたくらいだから。」

「そんな事疑ってませんっ。」

「じゃあ、何?確かにぶつかった子がいたけど。すごく謝られたから大丈夫だとも言ったよ。」


「私は玉城さんにしか言われてないのに、恩田さん、顔が緩んでるって言われてます。」

「なに、それっ。」

「だからクールっぽかったのに急に笑顔が増えて、女子が騒いでます。だから飲みに誘ったら来てくれて、話しも盛り上がって、優しい言葉と笑顔が返ってくるって思われてるんです。」

ああ、言っちゃった。

「そんな面倒なことはしないよ。」

「ねえ、さっきから不機嫌なのはそのせい?」

黙る。


結局最後まで言ってしまった。


「だから隣の課の子に夢中だって言ってるのに。信じてよ。今日だってすごく楽しみだったんだから。」

「じゃあ・・・・。」

「じゃあ?」

「気を付けてください。無駄な笑顔と言葉で私のライバルを増やさないでください。」

「いないのに。でも、気を付ける。顔が緩んでるって・・・・もっと違う言い方があるのに。」

「私が言ったんじゃないです。そう言われてたんです。」

「わかったから、シワが取れなくなるよ。」

「笑顔と言葉に気を付けて、飲み会は誘われなくて、ちゃんと信頼されるようにする。」

お願いします。

言葉には出さなかったけど、そう思った。
本当に愚痴まで恩田さんに聞いてもらってる。
即時解決。めでたい・・・・・。

恩田さんの指が髪を撫でてくれる。

先週美容室に行って、伸ばしてみたいと初めて相談してみた。
担当の人と一緒にカタログを見て、伸ばす予定でのカットをしてもらった。
少しだけ軽くなったけど、長さは変わってない。

「髪型、似合ってる。」

気がついてくれたらしい。

「少し伸ばしてみようかと思ってます。」

「うん。楽しみにしてる。似合うと思う。」

それは美容師さんに言われるよりもうれしかった。
何の根拠がないとしても。

結局注目されてるという現実より、気を付けるという約束をもらったような。
ただの愚痴ともクレームともつかない感じだった。



さっきの話には続きがあった。


「先輩が言ってたんだけど、結構すぐに別れを切り出すらしいよ。お試しはしてくれるけど、長続きはしないって。そんなのも、もろもろ面倒だから社内の飲み会には参加しないって、そう言ってた。」

「分かる気はするね。涼しい顔で嫌いになったって言われそうだったもんね。甘えたら、冷静に見られそう。」

「どうだろう、今もそんな感じかな?」

「誰か探って欲しい。」

「それでうまくいったら悔しいじゃない。」

「じゃあ、行く?」

「チャンスを見て。」

「そうだよね。」

やはり諦めるには最近の様子が気になるらしい女子先輩。
そんな雰囲気は隠してなかったと言うか、自分でも言ってた。
だって何度か会ってみて違うなって思うことなんてあると思う。

だから取りあえず二人で会って、何度か会って、やっぱり違うと思ったら、別れを切り出される。
それは声をかけるまでにどんなに見つめられてても分からない事はあるから。
むしろ想像してる分イメージが膨らんでガッカリすることもあるかも。


今のところ、そうは言われてない。
じゃあ、この後も言われないかというと、そんな保証はない。
『絶対離さないと思う。』
そう言われたのは初めの頃。
それは今までの人にも思った?

「寝てない?」

「寝てないです。」

「もしかして疲れてる?」


「恩田さん。」

「何?」

そう、やっぱり聞いてしまう。
隠したままずっと悩んでるなんて出来ない。

「さっきの話には続きがあります。」

「何?どの話?」

「恩田さんが社内の人と飲まない理由。お試しで付き合いはしても、すぐに別れるって。面倒で別れるって。それが嫌だから参加しないって。」

「そうだね。」

否定はされなかった。

「そんな人の中には、『絶対離さない。』って思った人もいましたか?」

「いなかった。」

「ちゃんと思い出して答えてもらってますか?」

「思い出すことがないよ。初めての外でのキスも、この部屋への招待も、愛してるって言いたくなって伝えたことも、離さないって思えた事も、初めてだから、一番自分がビックリした。千歳さんに違和感を感じるより、自分に感じてる。どうしたんだ、自分って。」



「ちゃんと答えてるから、顔を見て、見せて。」

そう言われて体を起こして、視線をあげた。

「来年、一緒にあの来賓にお礼を言うんだよ。」

「言いたいです。」

「お礼って言ってるのに、そんな怖い顔しなくてもいいよ。」

頬に感じる大きく暖かい手。その手に自分の手を重ねた。

「すみませんでした。どうしても気になってしまって。」

「隠されるよりはいい。勝手に決めつけれれるよりはいい、そう思う。」

「隠せないです。どうしても確認したくなるんです。」

「どうぞ。」

「・・・・もういいです。」



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