1 / 23
1 ガサツと言われたラブラブなはずのデート前の時。
しおりを挟む
幸せに慣れたある週末の朝だった。
彼にコーヒーを入れてもらってる間に顔と体の準備をする。
顔はいつもの通りで手馴れたもので。
ただ今日は思ったより風があるらしく寒いらしい。
春の日。外はいい天気なのに。
そしてせっかく買って今日着る予定だったワンピースとカーディガン。
それじゃあ寒いみたいで。
一度出したコーディネートを脱いでタイツの色から全部やり直し。
短いパンツにショートブーツ、薄めのニットに、ライダースジャケット。
これでいい。
クローゼットの前には脱ぎ捨てられた服、テーブルにははずしたピアス。
全部取り替えたら抜け殻が山になるのは当然。
バッグも中身を入れ替えて・・・・。
それでも手早く決めたほうだと思う。
「準備OK。お待たせしましたっ。」
彼氏の裕樹に言う。
「皐月、すぐにでも行けそうだけど・・・・。」
「うん、行ける。裕樹はまだ?」
「これは、このままでいくの?」
クローゼットの前のこんもりした山を指された。
「うん、帰ってきてからでいい。」
裕樹がソファに座ったまま私を見上げる。
「皐月、さすがに酷い、前から思ってたけど酷すぎる。ガサツとしか言えない。」
「そう?帰ってから片付けるよ。」
数日このままかもしれないけど、それなりに、そのうちに。
裕樹が立ち上がり冷たい目をして言う。
「俺、無理。そんなガサツなトコ。何度も思ったけど、我慢してたけど、やっぱ、無理だわ。じゃあ。」
そういって荷物を持って出て行こうとする。
明らかに荷物が多い。
ずっと置いてたボストンバッグがパンパンに膨らんでる。
もしかして、ここに置いてたパジャマやシャツや下着も入ってる?
クールな顔で持ち込んだ荷物のすべてを持って玄関に向かう裕樹。
「なんで、だって裕樹を待たせるのは悪いから・・・・・だから・・・・。」
「まあ、あれだけならね。でもいつもそうじゃん。だらしないよ。よく物を無くしてるよね、当たり前だよ。嫌なんだよ、そんな奴。男も女も。俺とは合わないから。」
そう言うと当たり前のように、あっさりと玄関を出て行った。
見慣れた背中は簡単に消えた。
『ちゃんとしろよ。』そう言われたこともあったけど返事だけだった私。
無理だ・・・嫌いなんだ・・・・、また言われた。
そう『また』。
初めてじゃない。・・・だって仕方ない。
だって母親だってこうだったから。
もっと輪をかけて酷かった。
私は片付けは苦手だけど掃除と洗濯はちゃんとやってる。
毎日とは言わないけど、一日おきに。
干して畳んでいる。
半分はそのまま着る事もあるけど、ちゃんとやってるのに・・・・。
それでも足りない?ごちゃっとした部屋を見渡す。
だって女子なんていろいろと物が多いから。
それに、この部屋収納がなくて。
・・・・だからちょっと見えてるだけ。
始めて裕樹が部屋に来たときに確かに立ち止まって眉間にシワが寄っていた。
それでも前日にいろんなところの掃除をして片づけしたつもりだった。
「ちょっと物が多くて汚いけど。」って言ってたし。
「まあ、そうだろうね。」そういって苦笑いしてたのに。
明らかに想像以上だった、という顔をしていた。
部屋の真ん中でしばらく固まった裕樹。
あの時から思ってた?
何度か来て、とうとう今日、最後になった?
大雑把とか、ガサツとか、女らしくないとか、そんな言葉は聞き飽きた。
言われすぎ。
だからそれなりに頑張って、仕事する場所や通勤着など綺麗にしてる。
生活する部屋がちょっとアレなだけで。
ノロノロとクローゼットの前の山を片付ける。
ハンガーにかけて、引き出しにしまって。
もし風が強くなかったら、選んだ服が着ていけるような天気だったら。
こんな山は出来なかったのに。
でも裕樹は前から思ってたって・・・・我慢してたって。
そういえば食事してる時もよくテーブルを拭かれたり、注意されたり、
一緒に服を見に行っても広げた服を畳まれたり。
丁寧だなあって思ってた。
自分のことは分かってる。
だから、逆にそんな人がいいと思ってた。
でも、そう思ってたのは私だけだったらしい。
・・・・我慢って・・・・・。
だって本当に苦手だから。
母親は一切家事が苦手だった。
掃除洗濯主婦業のもろもろ、全般。
食事だけは作るけど、片付けはしたくないみたいで、冷蔵庫の中もぐちゃぐちゃ。
掃除は埃では死なないからって笑ってるくらい。
洗濯をしても干す時に工夫とか一切考えたくないみたいで、効率悪く乾かないことも多い・・・・。
それでもお父さんが優しい人で、美味しい料理を作ってくれ、片付けをして、時々冷蔵庫の中も整理して、マメに掃除機をかけて、物を整頓して、捨てて、交換して。
洗濯とアイロンまでやってた。
季節が変わるころには衣替えも一緒にやっていた。
私はお母さんに優しいお父さんが大好きだった。
きっと今でも二人は相変わらずだろう。
夫婦二人になったらお父さんも楽になったかも。
娘三人いて長女の彩音はお父さんと一緒に早くから家事をやっていた。
そうなると次女三女はどんどんルーズな感じになる。
私はその次女。
『ルーズ』という言葉、それを裕樹には『ガサツ』と言い換えられた。
他の人もいろいろと言い換えてくれた。
結果、また同じパターン。
お父さんみたいにマメな人がいいよね。
次女三女は優しくてまめな男を好み、長女はその点は相手に求める必要もなかった。
そして長女は結婚して、モデルルームのような部屋で暮らしている。
だって・・・主婦だし。
長女にとって実に反面教師となった母。
三女はサバサバとしていて、『今更ですから、何もかも了解してます。』みたいな同級生と結婚しそうだ。
私にそんな出来た同級生はいなかったと思う。
そして、なかなかお父さんみたいな人は見つからない。
裕樹は掃除洗濯料理まで好きだといった。
でも自分の部屋以外は無理らしい。
本当に好きならこの部屋もどうにかしてよ・・・・そんなこと要求できるわけもなく。
あ~あ、これで同じ理由で振られたのは3人目。
裕樹は短かったなあ、どんどん短くなってる?
でも最高でも数ヶ月。半年まで行かない。本当に短い。
せっかく天気もいいし、外に出た。
確かに風がある。
おなか空いてるし、食事して、ブラブラしよう。
慣れって怖い、なんだか落ち込みも浅い気がする・・・・。
だってそんな予感はあったし。
昨日の夜、大人しく寝た二人。
手をつないだ私に軽く握り返してくれるくらいだった裕樹の手。
顔はずっと天井を向いたままだった。
朝起きた時には手も離されて背中を向けられていた。
あ~あ、一人で時間をずらし、少し空いたランチタイムに滑り込んだ。
パスタをクルクルまきながらため息が出る。
でも明日には笑い話にしてしまうんだろうなあ。
こんな『落ち』のついた話を聞かされるのも三度目だろう。
同期の亜紀には私のこの大雑把なところはとっくにバレてる。
部屋に来たこともある。
そして、亜紀も驚いていた。
「やっぱり、変?」
「う~ん、カオスとカオスがさらに混ざり合い。新しいカオスの誕生の予感。」
そんな感想を言っていた。
さすがに今度は、慰められるより面白がられそう。
「お父さんみたいな人を見つける!」
ファザコンとも思われるそんな台詞で毎回仕切りなおしする。
「次、次、次に行くぞ・・・。」と前向きに。
それでも少しは落ち込むんです。
ランチの後のデザートはパスしようと思うくらいには。
翌日のランチタイム
想像したとおり笑われた。
「何?『ガサツ』って言われたの?」すでに笑顔の亜紀。
「うん、はっきり。今までもずっと思ってたって。我慢してたって。酷くない?」
「う~ん、さすがに毎回言われるってことは、世の中の感覚ではそれが正しいかもね。」
「そんなぁ・・・・、確かに間違ってないけど、なんで、じゃあ手伝ってくれていいじゃない。」
「何を?掃除?片付け?残念だけど、逆ならあるけど。結局そんなのは女性がやって当たり前、女性が得意で当たり前なのよ。」
そう、知ってるよ。でもだからこそ一人暮らしをしていて、そのあたりの家事全般が好きだと言った、苦痛じゃないと言った人を選んでるのに。
「人には向き不向きがあるのに。」
「まあそうだけど、あの部屋は結構パンチが効いてる。」
「・・・・・。」
「ものすごいレベルの『つくし系』の男を見つけるしかないよ。苦手でも皐月のためなら頑張るよって言ってくれる人。」
「いると思う?」
「そうやって仕込む。そう思わせる。そうしてもらう。」
「どうやって?」
「愛情と魅力・・・・、金と体と・・・・あと何だろう。とにかく武器を備えて引力を持つことね。」
さり気なく『体』とか言ってるけど、無理でしょう。
そういつまでもは引き付けられないよ。
せめてお金・・・・と変わらない価値を持つもの、仕事・・・・。
はぁ~、頑張ります、仕事を。
「どこにいるんだろう、お父さんみたいな人。」
「ガサツを卒業するほうが早いとは思うけど。」
「出来てたらそうしてる。多分無理。」
多分と言ったけど、絶対と言えなくもない。
「はぁ~。」
天井を向いて何故か亜紀がため息をつく。
「見かけとのギャップもあるからね。まさかこんな女子力低いなんて思わないのよ。見た目出来そうだから困るね。」
見た目を褒めてもらえた。
それなりに次々と彼氏は出来るから。まあまあです。
ただただ長続きしないだけ。
もしかして、今度は一ヶ月持たないかも?
部屋には連れてこない、その方法もあるけど。
それでは隠し切れないものがあるらしい。
外でも気をつけなくてはいけないなんて、恋愛は気を抜けないものだと言うこと?
自分なりに努力はしてる。
印象が悪いのは嫌だし、普通におしゃれは楽しみたいし。
お化粧も、お出かけも大好き。
精一杯で外には出るから、部屋の中では許して欲しい。
部屋の中、しかも起きたあと一時間以内、デート前のワクワクなとき、ちょっとした油断なんていいじゃない。
そう思ってる時点で無理。ガサツ卒業なんて、無理。
「ねえ、ぶっちゃけ聞くけど、前の夜、普通変だと思わない?泊まったんでしょう?」
「だから思ったって。」
「そうか、さすがに朝に荷造りしてるからね、これ以上ズルズルはしないって思われてたか・・・・。」
そう言うことです。
あの日の天気がどうあれ、裕樹はそのつもりだったんだろう。
コーヒーをいれてくれただけでも感謝すべき?
しばらく週末も一人で過ごす。
クローゼットの前には相変わらず山が出来てる。
それでもお気に入りの格好で出かける。
食事して買い物して、女子を楽しむ。
時々友達に会って、笑い話のように失恋を告げ。
家に帰るとその日のうちに片付けするようにはしてる。
さすがに一ヶ月もすると寂しさが出てくる。
友達ともそうそう予定が合うわけじゃない。
会社仲間の飲み会に参加した。
「遅くなったけど、元気になったでしょう?飲もう!」
そう言われて誘われた。
「ねえ、なんでオール彼氏彼女がいるの?一人ぼっち君は?」
途中トイレに誘われたので幹事の遥に聞いた。
「だから私たちは彼氏いるから、皐月の前だけがフリー君だよ。」
「前の子?」
「うん、2年目だったかな?とりあえず後輩君。」
あれ?記憶にない。どんな子だったっけ?
「もしかして全然ダメ?・・・・う~ん、それはかわいそうなんだけど。」
「だって一言も話してない。」
思い出せないとは言えない。
喋った?声聞いた
「うん、ちょっとシャイって聞いてるから。話しかけてよ。対象外ならそれでもいいし、可愛いじゃない、年下の男の子。」
「いい感じの大人と付き合ってる人の台詞とは思えない。彼氏は元気?」
「うん、急がしいから大変。出張とか多くて心配だし。ネコの世話係みたいだよ。」
一回り近く年上の人と付き合ってる遙。
大人っぽいから違和感はないかも。それでも立派なマンションに行って掃除もして、猫の世話までして、彼氏の相手までこなしてるとは。
尊敬します。
「とりあえず話してみる。」
「うん、今まであんまり参加してないから慣れてないんだって。今日はどうしても来たかったみたい。」
「ふ~ん、だから借り猫だったのね。」
野良猫程に意識もしてない。
せめて猫程に可愛かったらうれしいけど、どうだっただろう?
トイレから出て席に着きながら観察する。
本当に大人しそう。まあまあ、かわいい猫。しかも、ぶさかわじゃないし。
可愛い弟タイプかも。
隣には可愛い彼女が似合いそうな感じ。
『ガサツ』な私とじゃあ合わないわよ。
それでもつまらないとかわいそうなので話をしてみた。
「・・・お酒強いの?」
いきなり話しかけたら、ちょっとビクッとしたみたい。
何よ!
「い、いえ。はい。」
どっちよ。
顔が赤いから弱い?
自分のグラスを持とうとしたら空だった。
「・・・皐月先輩、お代わり頼みますか?」
なかなか気が利く。
「うん、頼む。えっと・・・・・・」
相手のグラスも残り少ない。
一緒にと思ったけど・・・・。
う~ん、名前が出てこない。
「あ、・・・・竜です。」
バレた?
「ごめんね、リュウ君、かっこいい名前ね。何か飲む?」
聞いた記憶がないから初めてかも。
だったらセーフ、失礼じゃないよね。
やっぱり、本当に一言もしゃべってない?
「じゃあ、これを、皐月先輩は?」
「これでいい。」
メニュー表を見ながら指差す。
わざわざ部屋を出て頼んでくれた。
「ありがとう。二年目なんだって?」
年下だから下座か。何故か私もですが。
「はい、よく飲んでるメンバーなんですか?」
「ううん、いつも適当なメンバーが集まるから、違うよ。幹事が誘って寄せ集めたんでしょう。」
「あんまり飲みに行かない?」
「はい、あの、集団でいてもなかなか話に入れなくて。」
「何で?」
「何でといわれても、話の邪魔にならないように。」
邪魔?首をかしげる。
「そんな真剣に話をすることないから。適当なストレス発散。適当でいいの。」
そうそう、適当大好きだから。
「その適当が分からなくて。」
「うん?適当は適当だけど。考えすぎ?もしかしてすごく真面目?」
「すごくかどうか、普通に・・・真面目・・・?」
「部署はどこ?」
「高田さんのところです。実験みたいな一人で黙々とやるのが好きなんです。」
本当に好きらしい。
見せられた笑顔が嬉しそうだ。
「うわ~、絶対私には無理だ。すごい適当だから。」
「実験は実験ですから、普通のときはそんな細かくないです。神経質なイメージ持ちますか?」
「うん・・・・結構そういう人が多い気がする。」
「そうじゃないです。」
「・・・・じゃあ、部屋の中は綺麗?」
「・・・・はい、掃除は好きです。」
やっぱり。
「じゃあ、汚い部屋を見たらどん引きするんだろうね。」
どうでもいいその場限りの話なので、軽く暴露してみる。
「いえ。でも片付けたくてウズウズします。あ、でも細かくないです。リモコンの向きとかはバラバラです。」
私はそもそも定位置もないですが。
よく探します。テレビも歩いていってつけることがあります。
携帯にいたっては着信音を頼りに探すこともあります。
は~、確かに酷いのかなあ。
裕樹が部屋にいる時も何度かそんな事があった。
ちょっとだけ反省してたらお酒が来た。
「乾杯。」
二人で乾杯する。
「初めての参加なのに、残念だけどここからあっちは皆彼氏持ちよ。」
「・・・・皐月先輩は?」
ピクッ。
今、『ここからあっち』ってわざわざ言ったのに。
手で遥との境界も作ったのに。
また言わせるか?
答えてなんてやらない。
「同期の子とは飲みにいくの?」
「いえ、あんまり。女子が多かったんです。男子が少ない上に率先して幹事役するようなタイプもいなくて。だから全然です。」
「それでも何度かあったでしょう?」
「それが全然です。男子だけ、女子だけはあったかもしれないです。男子だけなら二回集まりました。ボーナスあとに。」
そういう感じ?たった二回?
誰も言い出さないの?
会社は割りと有名かもしれない、イメージで言うと水周りにはよく商品がある。
台所、洗面台、浴室、洗濯場。
家庭用と業務用。
名前も商品名も聞けば殆どの人が知ってるくらい。
女性が多いのは毎年のこと。
それでも縦にも横にも仲がいい会社だと思う。
今いるメンバーも数年の幅がある、所属もバラバラ。
ひょっこり紛れ込んだ感のある子。
話しかけられるのを待つ犬みたいな目が可愛い。
ああ、猫より犬か、子犬の目かも。
理系で実験好き。高田の後輩だというのが気の毒だけど。
営業にでも行ったら鍛えられそう。
可愛がられるとは思うのに。
ちょっと赤い可愛い顔を見つめる。
視線に気が付いてびっくりした目も可愛くて見えてきて、思わずにっこりと笑顔になる。
更にびっくりして照れる顔も可愛い。
さっきからなんだかずっと見詰め合ってる状態ですが。
「皐月先輩の年は仲がいいんですか?」
無言の見つめ合いに耐えられなくなったらしい。
「うん、月4以上集まる。でも適当に知り合いつれてくるから、今は純粋に同期だけってないけど。」
「いいなあ、先輩と同じ年が良かったなあ。」
「そんなに飲み会に参加したいの?」
楽しいなら相手してる私もうれしい。
「今度から誘おうか?」
軽く誘うように、そう言ってみた。
彼にコーヒーを入れてもらってる間に顔と体の準備をする。
顔はいつもの通りで手馴れたもので。
ただ今日は思ったより風があるらしく寒いらしい。
春の日。外はいい天気なのに。
そしてせっかく買って今日着る予定だったワンピースとカーディガン。
それじゃあ寒いみたいで。
一度出したコーディネートを脱いでタイツの色から全部やり直し。
短いパンツにショートブーツ、薄めのニットに、ライダースジャケット。
これでいい。
クローゼットの前には脱ぎ捨てられた服、テーブルにははずしたピアス。
全部取り替えたら抜け殻が山になるのは当然。
バッグも中身を入れ替えて・・・・。
それでも手早く決めたほうだと思う。
「準備OK。お待たせしましたっ。」
彼氏の裕樹に言う。
「皐月、すぐにでも行けそうだけど・・・・。」
「うん、行ける。裕樹はまだ?」
「これは、このままでいくの?」
クローゼットの前のこんもりした山を指された。
「うん、帰ってきてからでいい。」
裕樹がソファに座ったまま私を見上げる。
「皐月、さすがに酷い、前から思ってたけど酷すぎる。ガサツとしか言えない。」
「そう?帰ってから片付けるよ。」
数日このままかもしれないけど、それなりに、そのうちに。
裕樹が立ち上がり冷たい目をして言う。
「俺、無理。そんなガサツなトコ。何度も思ったけど、我慢してたけど、やっぱ、無理だわ。じゃあ。」
そういって荷物を持って出て行こうとする。
明らかに荷物が多い。
ずっと置いてたボストンバッグがパンパンに膨らんでる。
もしかして、ここに置いてたパジャマやシャツや下着も入ってる?
クールな顔で持ち込んだ荷物のすべてを持って玄関に向かう裕樹。
「なんで、だって裕樹を待たせるのは悪いから・・・・・だから・・・・。」
「まあ、あれだけならね。でもいつもそうじゃん。だらしないよ。よく物を無くしてるよね、当たり前だよ。嫌なんだよ、そんな奴。男も女も。俺とは合わないから。」
そう言うと当たり前のように、あっさりと玄関を出て行った。
見慣れた背中は簡単に消えた。
『ちゃんとしろよ。』そう言われたこともあったけど返事だけだった私。
無理だ・・・嫌いなんだ・・・・、また言われた。
そう『また』。
初めてじゃない。・・・だって仕方ない。
だって母親だってこうだったから。
もっと輪をかけて酷かった。
私は片付けは苦手だけど掃除と洗濯はちゃんとやってる。
毎日とは言わないけど、一日おきに。
干して畳んでいる。
半分はそのまま着る事もあるけど、ちゃんとやってるのに・・・・。
それでも足りない?ごちゃっとした部屋を見渡す。
だって女子なんていろいろと物が多いから。
それに、この部屋収納がなくて。
・・・・だからちょっと見えてるだけ。
始めて裕樹が部屋に来たときに確かに立ち止まって眉間にシワが寄っていた。
それでも前日にいろんなところの掃除をして片づけしたつもりだった。
「ちょっと物が多くて汚いけど。」って言ってたし。
「まあ、そうだろうね。」そういって苦笑いしてたのに。
明らかに想像以上だった、という顔をしていた。
部屋の真ん中でしばらく固まった裕樹。
あの時から思ってた?
何度か来て、とうとう今日、最後になった?
大雑把とか、ガサツとか、女らしくないとか、そんな言葉は聞き飽きた。
言われすぎ。
だからそれなりに頑張って、仕事する場所や通勤着など綺麗にしてる。
生活する部屋がちょっとアレなだけで。
ノロノロとクローゼットの前の山を片付ける。
ハンガーにかけて、引き出しにしまって。
もし風が強くなかったら、選んだ服が着ていけるような天気だったら。
こんな山は出来なかったのに。
でも裕樹は前から思ってたって・・・・我慢してたって。
そういえば食事してる時もよくテーブルを拭かれたり、注意されたり、
一緒に服を見に行っても広げた服を畳まれたり。
丁寧だなあって思ってた。
自分のことは分かってる。
だから、逆にそんな人がいいと思ってた。
でも、そう思ってたのは私だけだったらしい。
・・・・我慢って・・・・・。
だって本当に苦手だから。
母親は一切家事が苦手だった。
掃除洗濯主婦業のもろもろ、全般。
食事だけは作るけど、片付けはしたくないみたいで、冷蔵庫の中もぐちゃぐちゃ。
掃除は埃では死なないからって笑ってるくらい。
洗濯をしても干す時に工夫とか一切考えたくないみたいで、効率悪く乾かないことも多い・・・・。
それでもお父さんが優しい人で、美味しい料理を作ってくれ、片付けをして、時々冷蔵庫の中も整理して、マメに掃除機をかけて、物を整頓して、捨てて、交換して。
洗濯とアイロンまでやってた。
季節が変わるころには衣替えも一緒にやっていた。
私はお母さんに優しいお父さんが大好きだった。
きっと今でも二人は相変わらずだろう。
夫婦二人になったらお父さんも楽になったかも。
娘三人いて長女の彩音はお父さんと一緒に早くから家事をやっていた。
そうなると次女三女はどんどんルーズな感じになる。
私はその次女。
『ルーズ』という言葉、それを裕樹には『ガサツ』と言い換えられた。
他の人もいろいろと言い換えてくれた。
結果、また同じパターン。
お父さんみたいにマメな人がいいよね。
次女三女は優しくてまめな男を好み、長女はその点は相手に求める必要もなかった。
そして長女は結婚して、モデルルームのような部屋で暮らしている。
だって・・・主婦だし。
長女にとって実に反面教師となった母。
三女はサバサバとしていて、『今更ですから、何もかも了解してます。』みたいな同級生と結婚しそうだ。
私にそんな出来た同級生はいなかったと思う。
そして、なかなかお父さんみたいな人は見つからない。
裕樹は掃除洗濯料理まで好きだといった。
でも自分の部屋以外は無理らしい。
本当に好きならこの部屋もどうにかしてよ・・・・そんなこと要求できるわけもなく。
あ~あ、これで同じ理由で振られたのは3人目。
裕樹は短かったなあ、どんどん短くなってる?
でも最高でも数ヶ月。半年まで行かない。本当に短い。
せっかく天気もいいし、外に出た。
確かに風がある。
おなか空いてるし、食事して、ブラブラしよう。
慣れって怖い、なんだか落ち込みも浅い気がする・・・・。
だってそんな予感はあったし。
昨日の夜、大人しく寝た二人。
手をつないだ私に軽く握り返してくれるくらいだった裕樹の手。
顔はずっと天井を向いたままだった。
朝起きた時には手も離されて背中を向けられていた。
あ~あ、一人で時間をずらし、少し空いたランチタイムに滑り込んだ。
パスタをクルクルまきながらため息が出る。
でも明日には笑い話にしてしまうんだろうなあ。
こんな『落ち』のついた話を聞かされるのも三度目だろう。
同期の亜紀には私のこの大雑把なところはとっくにバレてる。
部屋に来たこともある。
そして、亜紀も驚いていた。
「やっぱり、変?」
「う~ん、カオスとカオスがさらに混ざり合い。新しいカオスの誕生の予感。」
そんな感想を言っていた。
さすがに今度は、慰められるより面白がられそう。
「お父さんみたいな人を見つける!」
ファザコンとも思われるそんな台詞で毎回仕切りなおしする。
「次、次、次に行くぞ・・・。」と前向きに。
それでも少しは落ち込むんです。
ランチの後のデザートはパスしようと思うくらいには。
翌日のランチタイム
想像したとおり笑われた。
「何?『ガサツ』って言われたの?」すでに笑顔の亜紀。
「うん、はっきり。今までもずっと思ってたって。我慢してたって。酷くない?」
「う~ん、さすがに毎回言われるってことは、世の中の感覚ではそれが正しいかもね。」
「そんなぁ・・・・、確かに間違ってないけど、なんで、じゃあ手伝ってくれていいじゃない。」
「何を?掃除?片付け?残念だけど、逆ならあるけど。結局そんなのは女性がやって当たり前、女性が得意で当たり前なのよ。」
そう、知ってるよ。でもだからこそ一人暮らしをしていて、そのあたりの家事全般が好きだと言った、苦痛じゃないと言った人を選んでるのに。
「人には向き不向きがあるのに。」
「まあそうだけど、あの部屋は結構パンチが効いてる。」
「・・・・・。」
「ものすごいレベルの『つくし系』の男を見つけるしかないよ。苦手でも皐月のためなら頑張るよって言ってくれる人。」
「いると思う?」
「そうやって仕込む。そう思わせる。そうしてもらう。」
「どうやって?」
「愛情と魅力・・・・、金と体と・・・・あと何だろう。とにかく武器を備えて引力を持つことね。」
さり気なく『体』とか言ってるけど、無理でしょう。
そういつまでもは引き付けられないよ。
せめてお金・・・・と変わらない価値を持つもの、仕事・・・・。
はぁ~、頑張ります、仕事を。
「どこにいるんだろう、お父さんみたいな人。」
「ガサツを卒業するほうが早いとは思うけど。」
「出来てたらそうしてる。多分無理。」
多分と言ったけど、絶対と言えなくもない。
「はぁ~。」
天井を向いて何故か亜紀がため息をつく。
「見かけとのギャップもあるからね。まさかこんな女子力低いなんて思わないのよ。見た目出来そうだから困るね。」
見た目を褒めてもらえた。
それなりに次々と彼氏は出来るから。まあまあです。
ただただ長続きしないだけ。
もしかして、今度は一ヶ月持たないかも?
部屋には連れてこない、その方法もあるけど。
それでは隠し切れないものがあるらしい。
外でも気をつけなくてはいけないなんて、恋愛は気を抜けないものだと言うこと?
自分なりに努力はしてる。
印象が悪いのは嫌だし、普通におしゃれは楽しみたいし。
お化粧も、お出かけも大好き。
精一杯で外には出るから、部屋の中では許して欲しい。
部屋の中、しかも起きたあと一時間以内、デート前のワクワクなとき、ちょっとした油断なんていいじゃない。
そう思ってる時点で無理。ガサツ卒業なんて、無理。
「ねえ、ぶっちゃけ聞くけど、前の夜、普通変だと思わない?泊まったんでしょう?」
「だから思ったって。」
「そうか、さすがに朝に荷造りしてるからね、これ以上ズルズルはしないって思われてたか・・・・。」
そう言うことです。
あの日の天気がどうあれ、裕樹はそのつもりだったんだろう。
コーヒーをいれてくれただけでも感謝すべき?
しばらく週末も一人で過ごす。
クローゼットの前には相変わらず山が出来てる。
それでもお気に入りの格好で出かける。
食事して買い物して、女子を楽しむ。
時々友達に会って、笑い話のように失恋を告げ。
家に帰るとその日のうちに片付けするようにはしてる。
さすがに一ヶ月もすると寂しさが出てくる。
友達ともそうそう予定が合うわけじゃない。
会社仲間の飲み会に参加した。
「遅くなったけど、元気になったでしょう?飲もう!」
そう言われて誘われた。
「ねえ、なんでオール彼氏彼女がいるの?一人ぼっち君は?」
途中トイレに誘われたので幹事の遥に聞いた。
「だから私たちは彼氏いるから、皐月の前だけがフリー君だよ。」
「前の子?」
「うん、2年目だったかな?とりあえず後輩君。」
あれ?記憶にない。どんな子だったっけ?
「もしかして全然ダメ?・・・・う~ん、それはかわいそうなんだけど。」
「だって一言も話してない。」
思い出せないとは言えない。
喋った?声聞いた
「うん、ちょっとシャイって聞いてるから。話しかけてよ。対象外ならそれでもいいし、可愛いじゃない、年下の男の子。」
「いい感じの大人と付き合ってる人の台詞とは思えない。彼氏は元気?」
「うん、急がしいから大変。出張とか多くて心配だし。ネコの世話係みたいだよ。」
一回り近く年上の人と付き合ってる遙。
大人っぽいから違和感はないかも。それでも立派なマンションに行って掃除もして、猫の世話までして、彼氏の相手までこなしてるとは。
尊敬します。
「とりあえず話してみる。」
「うん、今まであんまり参加してないから慣れてないんだって。今日はどうしても来たかったみたい。」
「ふ~ん、だから借り猫だったのね。」
野良猫程に意識もしてない。
せめて猫程に可愛かったらうれしいけど、どうだっただろう?
トイレから出て席に着きながら観察する。
本当に大人しそう。まあまあ、かわいい猫。しかも、ぶさかわじゃないし。
可愛い弟タイプかも。
隣には可愛い彼女が似合いそうな感じ。
『ガサツ』な私とじゃあ合わないわよ。
それでもつまらないとかわいそうなので話をしてみた。
「・・・お酒強いの?」
いきなり話しかけたら、ちょっとビクッとしたみたい。
何よ!
「い、いえ。はい。」
どっちよ。
顔が赤いから弱い?
自分のグラスを持とうとしたら空だった。
「・・・皐月先輩、お代わり頼みますか?」
なかなか気が利く。
「うん、頼む。えっと・・・・・・」
相手のグラスも残り少ない。
一緒にと思ったけど・・・・。
う~ん、名前が出てこない。
「あ、・・・・竜です。」
バレた?
「ごめんね、リュウ君、かっこいい名前ね。何か飲む?」
聞いた記憶がないから初めてかも。
だったらセーフ、失礼じゃないよね。
やっぱり、本当に一言もしゃべってない?
「じゃあ、これを、皐月先輩は?」
「これでいい。」
メニュー表を見ながら指差す。
わざわざ部屋を出て頼んでくれた。
「ありがとう。二年目なんだって?」
年下だから下座か。何故か私もですが。
「はい、よく飲んでるメンバーなんですか?」
「ううん、いつも適当なメンバーが集まるから、違うよ。幹事が誘って寄せ集めたんでしょう。」
「あんまり飲みに行かない?」
「はい、あの、集団でいてもなかなか話に入れなくて。」
「何で?」
「何でといわれても、話の邪魔にならないように。」
邪魔?首をかしげる。
「そんな真剣に話をすることないから。適当なストレス発散。適当でいいの。」
そうそう、適当大好きだから。
「その適当が分からなくて。」
「うん?適当は適当だけど。考えすぎ?もしかしてすごく真面目?」
「すごくかどうか、普通に・・・真面目・・・?」
「部署はどこ?」
「高田さんのところです。実験みたいな一人で黙々とやるのが好きなんです。」
本当に好きらしい。
見せられた笑顔が嬉しそうだ。
「うわ~、絶対私には無理だ。すごい適当だから。」
「実験は実験ですから、普通のときはそんな細かくないです。神経質なイメージ持ちますか?」
「うん・・・・結構そういう人が多い気がする。」
「そうじゃないです。」
「・・・・じゃあ、部屋の中は綺麗?」
「・・・・はい、掃除は好きです。」
やっぱり。
「じゃあ、汚い部屋を見たらどん引きするんだろうね。」
どうでもいいその場限りの話なので、軽く暴露してみる。
「いえ。でも片付けたくてウズウズします。あ、でも細かくないです。リモコンの向きとかはバラバラです。」
私はそもそも定位置もないですが。
よく探します。テレビも歩いていってつけることがあります。
携帯にいたっては着信音を頼りに探すこともあります。
は~、確かに酷いのかなあ。
裕樹が部屋にいる時も何度かそんな事があった。
ちょっとだけ反省してたらお酒が来た。
「乾杯。」
二人で乾杯する。
「初めての参加なのに、残念だけどここからあっちは皆彼氏持ちよ。」
「・・・・皐月先輩は?」
ピクッ。
今、『ここからあっち』ってわざわざ言ったのに。
手で遥との境界も作ったのに。
また言わせるか?
答えてなんてやらない。
「同期の子とは飲みにいくの?」
「いえ、あんまり。女子が多かったんです。男子が少ない上に率先して幹事役するようなタイプもいなくて。だから全然です。」
「それでも何度かあったでしょう?」
「それが全然です。男子だけ、女子だけはあったかもしれないです。男子だけなら二回集まりました。ボーナスあとに。」
そういう感じ?たった二回?
誰も言い出さないの?
会社は割りと有名かもしれない、イメージで言うと水周りにはよく商品がある。
台所、洗面台、浴室、洗濯場。
家庭用と業務用。
名前も商品名も聞けば殆どの人が知ってるくらい。
女性が多いのは毎年のこと。
それでも縦にも横にも仲がいい会社だと思う。
今いるメンバーも数年の幅がある、所属もバラバラ。
ひょっこり紛れ込んだ感のある子。
話しかけられるのを待つ犬みたいな目が可愛い。
ああ、猫より犬か、子犬の目かも。
理系で実験好き。高田の後輩だというのが気の毒だけど。
営業にでも行ったら鍛えられそう。
可愛がられるとは思うのに。
ちょっと赤い可愛い顔を見つめる。
視線に気が付いてびっくりした目も可愛くて見えてきて、思わずにっこりと笑顔になる。
更にびっくりして照れる顔も可愛い。
さっきからなんだかずっと見詰め合ってる状態ですが。
「皐月先輩の年は仲がいいんですか?」
無言の見つめ合いに耐えられなくなったらしい。
「うん、月4以上集まる。でも適当に知り合いつれてくるから、今は純粋に同期だけってないけど。」
「いいなあ、先輩と同じ年が良かったなあ。」
「そんなに飲み会に参加したいの?」
楽しいなら相手してる私もうれしい。
「今度から誘おうか?」
軽く誘うように、そう言ってみた。
0
あなたにおすすめの小説
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる