がさつと言われた私の言い分は。

羽月☆

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2 先輩に憧れ過ぎた後輩君のために。

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そう言ったら恥ずかしそうな顔をした。
でも、やっぱりうれしそうな気もする。

「じゃあ、誘うよ、というか今日は誰に誘われたの?」

視線の先を見た。
ああ、そうか、その先には同期の高田がいた。
確かに同じ課だし、そうだろう。
あいつこそ営業向きなのに化学式が好きな化学オタクなんだ。
文系の私には・・・・適当な私にはさっぱり理解できない面白さがあるんだろう。


「高田に言えばもれなく誘われるよ。大歓迎。」

可愛い顔を赤くして。
もう、素直すぎてペット感が出てくる。

そういえば高田が前に言っていた。
化学式の美しさが世界を作ってると。
うんたらと話し出したのを適当に聞き流していたが最後にはっきり言われた。

『だから規律のないものや、乱れたものには不快感を感じると。』

そのあとうっかりずぼら・・・ガサツじゃない、ずぼらなところを知られた時には『俺は無理。』と笑われた。
別に私だって何も頼んでないのに。

『さぞかし彼女は綺麗好きなんでしょうね。』

そう言ってやったのに。

『普通だ。話を聞いてると多分お前が普通以下なんだ。』

そう言い返された。

ずごい敗北感を感じた。
取り繕ってもやはり無理なものは無理、お互いに。



思い出したら悲しくなった。
恋愛相手に『理系は無理』という条件がつきそうだ。
裕樹は文系よりでしたが・・・・。

グラスに残ったお酒をあおる。
もったいない、味がしない。


「皐月先輩、つぎ飲みますか?」

目の前にも理系男子、秩序が大好きそうな男子がいる。
まあ、別に・・・・・・・いいけど。

「どうする?リュウ君は?」

「一緒に頼みます。」

また一緒に頼んでもらった。

「高田さんとは仲がいいですよね。」

「え?別に・・・同期だし普通かな。口が悪いから気を遣わないでいい分、楽なだけ。」

「僕にも遣わないでください。」

「そうだね、あんまりそんなタイプじゃなさそうだね。」

「今褒められたんでしょうか?」

「うん、もちろん。褒めてるよ。」

うれしそうに笑ってくれる。・・・・犬。
こっちも笑顔になる。

「お邪魔しま~す。」

リュウ君の後ろから声がする。高田だ。

「樋渡~、楽しんでる?」

「高田、本当に邪魔。」

「マジ?」

本気にして私とリュウ君の顔を見る。
手を振って必死に否定するリュウ君、さっきよりもっと真っ赤になった顔をしてフルフルしてる。
・・・・そんなに否定しなくてもいいのに。

「樋渡~、俺さあ会社の近くの蕎麦屋で可愛い後輩とランチしてたら、背後で連敗記録更新の話聞いてさあ。」

何?

「お前もさあ、少し小声で話すか、悲しそうに話さないとさ。同情しようにも出来ない。笑えた。」

何ですと・・・・・。

「高田・・・、あそこにいたの?」

「は~い、お蕎麦は大好きです。」

こいつは酔っている。顔色は変わってないが、明らかに酔ってる、軽い調子だ。

まあ、もともと適当に軽い奴だが。



新人の最初の挨拶で分かった。

「どうも~、『高田淳史』と書いて『じゅんじ』と読みます。もう覚えてもらえたと思います。うれしいです。よろしくお願いします。」

名前の通り軽い挨拶をした。

お酒が入ると余計軽さが目立つ奴。

へらへらとしながらこっちを見る。
手はさっきからリュウ君を撫で回して、真っ赤になりながらされるがままのリュウ君。

払いのければいいのに。鬱陶しくないの?・・・・もしや、うれしそう?

「大丈夫だよ、一緒にいた奴も他にバラしたりはしないから。でも相変わらずなんだな。変わりなく『真正のズボラ』で何よりです、あぁ~、『ガサツ』か。」

お前が今、リュウ君にバラしてるよ。
端の席だったのがせめてもの救い。

「放っといて、盗み聞きなんて失礼過ぎる。」

「お前、あんな楽しそうに話してて、声もデカイし、勝手に聞こえてきたんだよ。」

楽しそうだとぉ~!!そんなわけあるかっ。
心の中で毒づく。

「まあ、その年までそれで来たんだから今更治らないよなぁ~。マメで綺麗好きで、お前に尽くしてくれるような可愛い男を捜すか、ここで自分に真摯に向きあい、性格を180度矯正するかのどっちかだね。まあ、無理だろうけど。尽くし君なら多分いるよ、ずっごい近くにいるんじゃねぇ?」


相変わらずヘラヘラしてる。
そしてされるがままのリュウ君も大人しく頭を撫でられてる。
耳や肩まで触られて、大丈夫かというくらい真っ赤で。
本当にうれしそう?

もしかして、まさか??????

誘われてやってきた。
席は離れてるけど一緒に飲みたかった?
ついでに同期の私を見つけてラッキー、情報収集中?
そういえば私と同期だったら良かったと言ってた。
それはすなわち高田とも・・・・。

いや、高田は彼女がいるノーマルタイプ。
でも出来る・・・らしい上司にあこがれて、それがちょっとだけそっちで。
耳まで触られて恥ずかしいけど、この上なくうれしいという表情?
邪魔だなんて思ってない、やっと先輩と話が出来るって喜んでる?
むしろ邪魔なのは私?

ちょっと席を立とう。
落ち着きたいし、本当に邪魔かも。


「高田、誘ったんならちゃんと楽しんでもらいなさいよ。」

席を指して私の席に誘導する。
一応荷物を持って外に出る。

どう?どう? 一応筋は通る。
無理はどこにもない、間違ってない。合ってそう、正解っぽい。

う~ん、なるほど・・・・・。
でも協力してあげても、奴はストレートというやつです。
分かってるだろうに。
悲しい予感しかしないだろうに。

人生色々。
あんなに可愛かったらもてるだろうに。

高田のセクハラが、まさか至福の瞬間だったとは。


トイレでちょっと休憩して戻る。
高田の席に行こうと思ってたのに、リュウ君の前の席は空いていて。

何でよ!!

こっちを向いてる背中が寂しそうじゃない。

しょうがないので自分の席に戻る。

「あいつは座った?」

自分の席を指す

「いいえ。すぐ戻りましたよ。」

なんて奴だ。
せっかく気を利かせたのに。

「そう。」

特にさっきの高田の話を蒸し返されることもなく。
私は頑張って高田のエピソードを話す。
はっきり言って飲みの場での失敗話のようなどうでもいいような話だけど。
それでもうれしそうに聞いてるリュウ君にとっては貴重な話だったのかも。

お開きになり、帰ろうとすると強引に腕をつかまれた。

「たまには来い、どうせ暇だろう。」

強引に連れて行かれた2次会。
もう片方はリュウ君と腕を組んでる。
完全に捕まったリュウ君。
うつむいてる耳も赤い。

さりげなく高田も罪な奴だ。分かってるの?
わざとじゃないよね、そんな奴じゃないよね。


少し集団は小さくなったけど6人いる。
横にリュウ君が正面に高田がいる。
席を代わってあげたい・・・。
他の三人も交えながら話をしてても、気が付くと会話が三人だけになる。

「そういえばさあ、樋渡って年下と付き合ったことあんの?」

「ない。」

高田、聞くな、そんなこと。

「へえ、どうして?」

まだ食いついてくる。

「別に。同じ年はいても年下は周りにいなかった。」

「ふ~ん、あ、そういえば白石は年下じゃん。」

白石?誰?何のこと?

「誰よ、白石って。」

シーン。高田の顔がそう言ってる。
その視線がリュウ君に向く。
ん?

「お前、酷くないか?二時間も一緒にいて・・・・。」

んんんん?

「えっ、もしかして、リュウ君、・・・白石って名前なの?」

「はい、白石竜です。」

「だって『リュウです。』としか聞いてなかったから、てっきり苗字だと思ってた。」

だから『リュウ君』って普通に呼んでた。
『柳』とか『劉』とか・・・。

「すみません。下の名前を言ってしまいました。」

「ううん、別にいいけど。」

「なに?ずっと『竜』って呼んでたの?」

「何で呼び捨てよ。ちゃんと『君』をつけてたわよ。あんたとは違う。」

「ははぁ~、白石は下の名前で呼ばれたかったと。なるほど。」

またまたマックスで真っ赤になってる。
まったく、後輩の気持ちも分からないなんて、鈍感な奴め。
睨んだ。

「まあ、いいんじゃねぇ、『竜君』で。」

「お前も下の名前で呼ばれてんだろう?」

そういえば最初から『皐月先輩』と呼ばれてた。
・・・・そうだけど。
竜君を見ると、そのままでいいですと言われた。

呼びやすいけど・・・・。
いいのか?まあ、いいか。

「白石も楽しかったなら、せいぜい樋渡に驕ってもらえばいいよ。こいつお酒も強いから、酔いつぶれて面倒見させるパターンにはならないし。」

本当に罪を重ねる奴。
又睨む。

「いいよ、いつでも。それに高田が飲みに行くときは誘われればいいよ。」

情報提供くらいしてあげようじゃない。
竜君もうれしそうに笑う。
本当に素直にうれしそうな顔をするじゃない。

「あんたもちゃんと可愛い後輩を誘いなさいよ。」

「了解、可愛い後輩を誘います。」

ヘラヘラしてる。
竜君、こんなのがいいの?
隣を見るとヘラヘラ顔の高田を見ている竜君。

・・・・・いいらしい。

まあ、それぞれよね。



週末、ぼんやりとテレビを見てたら一日が終わった土曜日。
あまりに自分がかわいそうになった。
会社ではそれなりに隠してるのに。
隠しきれてない部屋をぐるっと見渡す。
ちょっと片付けようか。
頑張ってみようか。

大きなゴミ袋を広げて、とりあえず一ヶ月触ってないものを捨て始めた。
何でこんなにあるんだろう。素朴な疑問。
すぐにゴミ袋はいっぱいになった。
新しいゴミ袋を持ってきて又続けた。
すごくスッキリした。自分では満足。
ゴミ袋3袋分。今度のゴミの日に出そう。

それでもあまった時間。

携帯にメッセージが届いていた。

『金曜日、楽しかった?何かいいことあった?』
遥からだった。

一次会だけでさっさと帰った遥。
そりゃそうだ。猫の世話もあるけど週末だ。
きっと部屋で彼の帰りを待つんだろう。

『なんでよ、別にないわよ。』

『でもちょっと反省して部屋の掃除した。ゴミ袋三つ分捨てる。』

『何々?なんかきっかけあった?』

『だからこの間の事。少しは努力しようと思った。』

『まあね、無駄ではないけど、無理はしないで。きっといいことあるよ。』


そうだといいけど。
遥は私が振られるたびにそう言ってくれる。
亜紀は半分諦めて記録更新を楽しんでる感じだ。

あ~、つまんない。
スッキリした分、心にもスペースが出来ました。
空っぽな気分じゃあ寂しいんですけど。

『さっそく来週飲みに行こう!』

何故か高田から連絡が来た。

『駄目な日は?』

『別にない。仕事次第。』

『そりゃぁ、寂しいなあ。了解了解。』

ムカついたから無視した。



月曜日から長い一週間が始まる。
途中祝日があるとうれしいのに。
今週はない。
会社は創立記念日すら休まない。
逆にイベントをして日ごろお世話になってるクライアントを招待して、面倒なのだ。

水曜日の朝もいつものように仕事をしていた。

お昼に高田から連絡が来た。

『暇だろう?今日どうだ?』

もっと誘い方にも気を遣って欲しい。

『参加。』

シンプルに返した。

「高田が飲み会するみたい。お知らせ来た?」

「ううん、来てない。」

目の前の遥には来ない。
誰を誘うのよ。もう参加と返事したし、断れない。

ニコニコとこっちを見る遥。

「何よう。」

「なんだか楽しそうじゃない?」

「誰と飲むか分からないのに?」

「うん、まあ、そうだね。」







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