小さな鈴を見つけた日 

羽月☆

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5 揺れる尻尾を見つめて歩いた週末

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テラス席は誰も来なくて。
店内も一つくらいは席が空いていた。

のんびりと食事をして、当然かみ締めるように味わった。

話の流れが昨日の散歩に行き着き。

「天気もよかった散歩日和でしたね。一人で往復10キロ以上と言うのも根性ありますね。トニーがいなければ、僕は歩かないです。」

「はい・・・・。実は来週から会社の食事モニター当番なんです。二週間で前後の体重や血圧、採血結果を比較したりするんです。その間は会社の治療食のお弁当を食べなくてはいけなくて。」

「そんなのがあるんですか?」

「はい、一応味とか食べた感想も細かく書くんです。」

「失礼ながら・・・美味しいんですか?味が薄いとか?」

「もちろんそうです。普通の食生活からしたらかなり減塩です。男の人にも1週間の当番が回ってきますが、かなり体重も落ちるらしいです。」

「はあ・・・・。1週間ならなんとか、でも終ったとたんに居酒屋へ行きそうです。」

「確かにそうです。でも奥さんには好評なんです。食事の世話は要らないし、食費と飲み代が浮くので。」

「なるほど。」

「私はすごく太ってしまって、後輩の当番を押し付けられたと言うか、譲ってもらったと言うか。だから少しでも減らそうと思って久しぶりに歩きました。2週間で5キロ落としたら食事を奢ってもらえる約束です。」

「じゃあ、今日も歩くんですか?」

「はい、平日は運動できないので、今日も反対側にでも歩いてみようかと思ってます。」

「じゃあ、トニーの散歩もあるし、途中までお付き合いしましょうか?一人だとつまらないですよね。」

「いいんですか?」

「喜んで。」

「ありがとうございます。一緒に歩いていただけたら楽しくなります。」

「反対側も少し行くと広場があるんです。そこで遊ばせたりしてるので。」

そういって食後しばらくし公園を散歩してから歩き出した。

話を聞いてたかのようにトニーは迷いなく歩き始める。
昨日とは逆のほうへ。

今日も七尾さん親子は遊びに来てるだろうか?
トニーを探してるだろうか?

ちょっと向こうを見たりして。

「そっちにしますか?」

「いえ、昨日はよく歩いたなって思っただけです。今日はこっちでいいです。」

尻尾が左右に揺れている。
本当にやわらかそうで、見てるだけで気持ちいい。

ずいぶん歩いたところで、よく遊ばせると言う広場に出た。
ここでも小学生が寄って来て、いろんなところを触られてる間大人しくしているトニー。

その後ボールを目いっぱい投げたのを追いかけて拾って持ってくる。
うれしそうに咥えて、川瀬さんに渡すと自分から遠くに走る。
その方向にボールが投げられる。
同じことを繰り返し、オヤツをもらったら終わりの合図だと思ってるらしくお座りをする。

「本当に賢いんですね。」

「そうですね。逆に遊んでやってるみたいに思われてるかもしれません。子供には大体そんな感じですよ。」

「癒されますね。悲しいことがあっても元気になれそうです。」

「小鈴さん、そんな悲しいことあるんですか?」

「えっと・・・ないですかね?」

「そうですよね。なんだかおなかいっぱい食べて、忘れそうですよね。」

「それは・・・あまり褒められた気がしませんが。」

「なんとなく想像してみました。」

確かにその通りなんだけど。

「さて、もう少し歩きますか?」

「いいえ、もう帰ります。」

又来た道を歩いた。

「じゃあ、ありがとうございました。」

お昼までご馳走になってしまった。

「来週、又誘っても良いですか?お食事は無理でも、コーヒーをあの店で。散歩が必要ならお付き合いします。」

又誘われた。うれしくて。
視線をトニーに落とす。
こっちを見上げてくれる。

「いい?」

一応トニーにも確認して。
ワンとは鳴いてくれなかったけど。

「じゃあ、その時はお誘いください。」

「はい、前日に連絡します。」

「はい、待ってます。」

手を振って別れた。

私は自分の部屋に。
川瀬さんとトニーはもう一つ先の駅まで。

一度部屋に戻って手を洗いトイレを済ませる。
レモン水を作り飲む。

又、あそこまで歩こうかとちょっとだけ思ってる。
何でそう思うのか。それも分かってるけど。

ただそれはまったくの好奇心だと自分に確認して、やっぱりやめた。
もしかしたら二人じゃなくて、三人かもしれない。
それは見たい光景かどうかわからない、なかなか想像できなくて。


ジーンズを軽く水洗いして干す。
ずいぶん埃をあびた。

洗濯物を取り込んで少し汗をかいた服も取り替える。

来週また会える。
どうしてなんだろう。
期待してる自分もいるのに、どこかで冷静になってる自分もいた。

そう、又勝手に失恋を繰り返すようなことはしたくない、・・・・だから。

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