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11 その距離を、すごく遠く感じてる ~エンヤ~
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土曜日のデートは残念だったらしい。
食事が終ったときに彼女が人混みに誰かを見つけて追いかけていったと。
矢上さんが葉山君にわざわざ報告してきた。
それを隣で聞いていた。
誰だろう?『ナナオ』って、誰?
すごく焦ったように追いかけたらしい彼女。
『家出中の弟』説が出てる。
でも妹しかいないのを知ってる。
だから自分もそれが誰だかは分からない。
どうやら追いかけてちゃんと捕まえられたらしい。
そんな報告まで来たんだろう。
それは特別な誰かだったということしか分からない。
会社ですれ違うこともなく顔も見てない日々。
時々外に出て、時々社内の打ち合わせもあり。
会うことはなかったけど、金曜日はもともと予定してた飲み会だった。
葉山君がマメに連絡を取っていたらしい。感謝したい。
四人だと思ってたのに、人数が増えてしまって八人になった。
絶対隣・・・は無理でも向かい合う位置に座ろうと思っていたのに、端に座ってしまった。振り向いたときにはみんなが自分の席に手をかけていた。
そして正面には彼女と同じ企画の領国さん。
この間もたくさん話しをして、最後には酔い覚ましの役まで任された。
そして遥かというくらい向こうに彼女がいた。せめてと思った斜めでもなかった。
それを残念に思った。
せっかく話がしたいと思ったのに。
この間もあんまり話が出来なかった。
もうすぐ連休なのに、その予定も教えてもらってない。
その話もぶらんと宙に浮いたまま。
どうなるのか分からない。
結局まったくだった。
しかも楽しそうに向こうの四人で盛り上がって、明らかに稲田君にアプローチされてる感じだった。
本人が気がついてるんだか、どうだか、二人を見る隣の柳下さんの視線がなんとなく意味ありげだった。
そして自分もまたこの間と同じように前に座った領国さんと半分四人のメンバーで話をしていた。
聞きたいことをどう聞けばいいのか分からず。
聞いて答えてくれるかどうかも分からない。
『ナナオ』って誰なの?
お開きになって葉山君の会計を待つ間、思い切って話しかけてみた。
最悪だった。
最初からびっくりするほど愛想もなかった。
何で?って思うくらい低い声だった。
どこで嫌われたんだろうか?
まったく分からない。
つい、自分もきつく言ってしまった。
当然彼女の返事も。
作用と反作用。でもそれは彼女がそうだったからだ。
そう思ってはいけないんだろうか?
お互い話は終ったとばかりに距離をとった。
葉山君が出てきて、皆で駅に向かう。
稲田君が葉山君にお願いしてるのを聞いていた。
日疋さんたちと飲むときは誘って欲しいと。
『たち』って誰だろう。
やっぱりだった。すごく分かりやすい。
お願いされた葉山君も気がついただろう。
「連絡先交換してたじゃない。直接誘えばいいのに。」
「それが出来たら頼まないよ。後二回くらい、そしたらもっと仲良くなるし。」
「いいよ。」
端っこでされた小声のやり取りを自分の耳はちゃんと拾った。
静かな田舎で育つと耳も目もいいし、おなかも壊さないし、体力もある。
そんな自慢できるポイントが今は少し恨めしかった。
誰よりも先に話しかけて自分が一番手だと思ったのに。
最初から他の人より絶対近くにいるんだと思ってたのに。
そう思ったのは自分だけで、彼女は平等主義だった。
誰にでもチャンスはある。先着順なんてルールはなかったらしい。
一番にはなれたのに、直ぐに二番になり、三番になりそうで。
さっきの愛想もない感じでは三番も怪しい。
ずっと遠くにいるような気がする。
すごく距離を感じる。
そこにいるはずなのに。
「高森君、週末は何するの?」
「友達と会うんだ。そろそろ皆愚痴を言いたいだろうし。」
「そうだよね、そんな感じだよね。」
領国さんが笑って同意してくれる。
「領国さんは?」
「私も同じ。日曜日は映画でも見に行こうかなあ。天気もいいみたいだし外には出たい。」
「いい天気だといいよね。」
「そうだね。」
「リリカちゃん、どんな映画好きなの?」
ずっと隣にいた弦巻さんが入ってきてくれた。
本当にいろいろな話をした。
二人の会話になる時もあったりしたけど、今日は四人で。
弦巻さんはもともと彼女と仲が良かったし、領国さんは配属が一緒だ。
そうなるとちょっとは彼女の話題もでる。
本当に少し。
でもその断片で自分が初耳なことはきちんと自分の中に取り込む。
今度何かの時に話のきっかけにと思ったりして。
でもそんな作業も無駄だったのかもしれないと、今すごく落ち込んでいる。
帰ったら連絡してみようか?
連休の予定はどうなったの?って。
『別に・・・・高森君には関係ないと思うけど。』
そう言われたら本当に立ち直れない。電話したい。出てくれるだろうか。
ちゃんと話がしたい。
それはこの後でも全然かまわないと思ってる。
駅についてそれぞれ分かれる。
さり気なく後ろから彼女が改札をくぐるのを見る。
ちょっとだけ後に続こうかと思って迷った隙に稲田君が駆け寄って二人が並んだ。
稲田君がどこに住んでるのか知らない。
同じ方向だろうか?
送っていくよというより途中まで一緒に帰ろうと言われた方が誘われやすい。
二人が並んで階段を上がるのを見て、自分の電車のホームを目指した。
眠るまで携帯を手に取ったり、置いたりして悩んだ。
それでも何も打ち込めず、電話マークを押すこともできず。
週末友達に会う予定なんてない。
1人部屋にいてぼんやりと過ごした。
やっぱり遠いんだよ。
食事が終ったときに彼女が人混みに誰かを見つけて追いかけていったと。
矢上さんが葉山君にわざわざ報告してきた。
それを隣で聞いていた。
誰だろう?『ナナオ』って、誰?
すごく焦ったように追いかけたらしい彼女。
『家出中の弟』説が出てる。
でも妹しかいないのを知ってる。
だから自分もそれが誰だかは分からない。
どうやら追いかけてちゃんと捕まえられたらしい。
そんな報告まで来たんだろう。
それは特別な誰かだったということしか分からない。
会社ですれ違うこともなく顔も見てない日々。
時々外に出て、時々社内の打ち合わせもあり。
会うことはなかったけど、金曜日はもともと予定してた飲み会だった。
葉山君がマメに連絡を取っていたらしい。感謝したい。
四人だと思ってたのに、人数が増えてしまって八人になった。
絶対隣・・・は無理でも向かい合う位置に座ろうと思っていたのに、端に座ってしまった。振り向いたときにはみんなが自分の席に手をかけていた。
そして正面には彼女と同じ企画の領国さん。
この間もたくさん話しをして、最後には酔い覚ましの役まで任された。
そして遥かというくらい向こうに彼女がいた。せめてと思った斜めでもなかった。
それを残念に思った。
せっかく話がしたいと思ったのに。
この間もあんまり話が出来なかった。
もうすぐ連休なのに、その予定も教えてもらってない。
その話もぶらんと宙に浮いたまま。
どうなるのか分からない。
結局まったくだった。
しかも楽しそうに向こうの四人で盛り上がって、明らかに稲田君にアプローチされてる感じだった。
本人が気がついてるんだか、どうだか、二人を見る隣の柳下さんの視線がなんとなく意味ありげだった。
そして自分もまたこの間と同じように前に座った領国さんと半分四人のメンバーで話をしていた。
聞きたいことをどう聞けばいいのか分からず。
聞いて答えてくれるかどうかも分からない。
『ナナオ』って誰なの?
お開きになって葉山君の会計を待つ間、思い切って話しかけてみた。
最悪だった。
最初からびっくりするほど愛想もなかった。
何で?って思うくらい低い声だった。
どこで嫌われたんだろうか?
まったく分からない。
つい、自分もきつく言ってしまった。
当然彼女の返事も。
作用と反作用。でもそれは彼女がそうだったからだ。
そう思ってはいけないんだろうか?
お互い話は終ったとばかりに距離をとった。
葉山君が出てきて、皆で駅に向かう。
稲田君が葉山君にお願いしてるのを聞いていた。
日疋さんたちと飲むときは誘って欲しいと。
『たち』って誰だろう。
やっぱりだった。すごく分かりやすい。
お願いされた葉山君も気がついただろう。
「連絡先交換してたじゃない。直接誘えばいいのに。」
「それが出来たら頼まないよ。後二回くらい、そしたらもっと仲良くなるし。」
「いいよ。」
端っこでされた小声のやり取りを自分の耳はちゃんと拾った。
静かな田舎で育つと耳も目もいいし、おなかも壊さないし、体力もある。
そんな自慢できるポイントが今は少し恨めしかった。
誰よりも先に話しかけて自分が一番手だと思ったのに。
最初から他の人より絶対近くにいるんだと思ってたのに。
そう思ったのは自分だけで、彼女は平等主義だった。
誰にでもチャンスはある。先着順なんてルールはなかったらしい。
一番にはなれたのに、直ぐに二番になり、三番になりそうで。
さっきの愛想もない感じでは三番も怪しい。
ずっと遠くにいるような気がする。
すごく距離を感じる。
そこにいるはずなのに。
「高森君、週末は何するの?」
「友達と会うんだ。そろそろ皆愚痴を言いたいだろうし。」
「そうだよね、そんな感じだよね。」
領国さんが笑って同意してくれる。
「領国さんは?」
「私も同じ。日曜日は映画でも見に行こうかなあ。天気もいいみたいだし外には出たい。」
「いい天気だといいよね。」
「そうだね。」
「リリカちゃん、どんな映画好きなの?」
ずっと隣にいた弦巻さんが入ってきてくれた。
本当にいろいろな話をした。
二人の会話になる時もあったりしたけど、今日は四人で。
弦巻さんはもともと彼女と仲が良かったし、領国さんは配属が一緒だ。
そうなるとちょっとは彼女の話題もでる。
本当に少し。
でもその断片で自分が初耳なことはきちんと自分の中に取り込む。
今度何かの時に話のきっかけにと思ったりして。
でもそんな作業も無駄だったのかもしれないと、今すごく落ち込んでいる。
帰ったら連絡してみようか?
連休の予定はどうなったの?って。
『別に・・・・高森君には関係ないと思うけど。』
そう言われたら本当に立ち直れない。電話したい。出てくれるだろうか。
ちゃんと話がしたい。
それはこの後でも全然かまわないと思ってる。
駅についてそれぞれ分かれる。
さり気なく後ろから彼女が改札をくぐるのを見る。
ちょっとだけ後に続こうかと思って迷った隙に稲田君が駆け寄って二人が並んだ。
稲田君がどこに住んでるのか知らない。
同じ方向だろうか?
送っていくよというより途中まで一緒に帰ろうと言われた方が誘われやすい。
二人が並んで階段を上がるのを見て、自分の電車のホームを目指した。
眠るまで携帯を手に取ったり、置いたりして悩んだ。
それでも何も打ち込めず、電話マークを押すこともできず。
週末友達に会う予定なんてない。
1人部屋にいてぼんやりと過ごした。
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