悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

文字の大きさ
16 / 37

16 恩人からの本音の仕打ち。

しおりを挟む
漫画喫茶とか、カラオケルームとか、そっちでも良かったと思わないでもないけど、本気で眠そうで。
昨日も私込みで先輩たちに付き合わされて疲れてる、そう思うことにした。

引っ張るように立たせてタクシー乗り場に連れて行って、部屋までタクシーで帰った。

今後飲む機会があったとして、近くに居たら絶対グラスを取り上げようと思った。

タクシーで普通に寝てしまい、当然・・・料金は払った。

何とか二割ほど・・・・目を開けてもらって部屋まで引きずり込んで、ソファまで連れて行った。


疲れた。
食が細いから、体も細いのに。
自分でしっかり歩いてくれないと本当に疲れる。

放り投げるようにソファに転がらせて、一息つくと寝息が聞こえてきた。

自分のバッグを枕にしてる。
明日顔にファスナーの後がついてるんじゃないだろうか?
ちょっと愉快な想像をしてしまうが。


しょうがないのでタオルをかぶせたクッションを顔の下に敷きこんであげた。
眼鏡も顔からもぎ取った。
ひざ掛けを背中にかけて、ペットボトルの水を見えるところにおいて、使い捨ての旅行用の歯ブラシと小さいタオルも置いて。


私は日常を取り戻す。
寝室から着替えを持って普通にお風呂に入った。
私は入りたい、寝るよりはお風呂だった。

化粧も落として、歯磨きもして、寝室に引っ込んだ。

ちらりとのぞくと同じ姿勢のまま動いてない。
明日びっくりするだろうか?
ちょっと楽しみでもあった。
絶対、からかってやろう。

寝室で夜に眺めていた本の続きを見て、眠くなって電気を消した。


どうせ朝は食べないだろう。
コーヒーくらいいれてもいいが、水でもいいのかも。
・・・・それはそれで楽だと思ったりして。
でもきっと楽しくないんだろうと思う。

これからも、そう言った意味では一緒に楽しめないのは残念だ。



目を開けて、携帯を引き寄せて少し調べてみた。

『味覚障害』

亜鉛不足や他の病気の可能性とか、きっとその辺は調べてるだろう。
じゃあ、ストレス?
分からないけど、そうは思えない。

昔からってことは、先天的なものとか原因にあるんだろうか。

私が聞いて調べても役に立つことはきっとない。


『今日は何食べる?』
『これ、美味しいね。』


そんな楽しみがなかったとしたら。
勝手に気の毒になんて思ったらいけないけど、一緒に食事をしてても、がっかりするんだろうなあ。

携帯を頭の上において、そのまま目を閉じた。




目が覚めていつも思う、今日は何曜日、今日は何をする日?

何も予定のない日曜日。
外は晴れてるみたい。

ぐっすり眠って気持ちがいい。
窓を開けて、カーテンも開けて。

トイレを済ませて、うがいをしてからキッチンに行こうとして、足が止まった。
すっかり忘れてた。
何もない静かな週末に慣れ過ぎていて、すっかり忘れていた。


急いで寝室に戻り着替えをして、洗面をして、軽く化粧をする。
予定のない日はすっぴんでいることが多いのに。
眉を書いて、リップも少しだけ塗った。
髪もなでつけるようにして調える。


こっそりソファをのぞく。
昨日の姿勢のまま。
腕が落ちてるくらい。

大丈夫だっただろうか?

どこか痛くなったりしてないだろうか?

ペットボトルが開けられた気配はない。
当然歯ブラシも未使用で。


もう十分寝たと思うけど、起こすのもどうかと思って。


コーヒーをいれて、壁際の机のほうでパソコンを開く。
いつも見てるサイトをめぐり、適当に時間をつぶす。



本当に起きない。


少し心配になって声をかけた。


「佐々木君、大丈夫だよね。」

体が反応した気がするけど目は開かず。

しばらく見てたらバッグの中から携帯の音がした。
ソファから落ちた手がゆっくりと携帯を探る。
バッグを渡す頃には着信音はやんでいた。

少し目が開いて起きた。

眼鏡もないし、よく見えてないだろうか?


「佐々木君、大丈夫?」

少し距離をとった。さすがに寝顔を覗き込まれていたと知ったら恥ずかしいだろう。



「亜弓さん・・・・。」

そんな呼び方も初めてだが。

「覚えてる?電車、途中で降りて『眠い』を繰り返して、『寝かせて欲しい。』って言って私の部屋に来たんだけど。」

ゆっくり脳が活性し始めたらしい。一度目を閉じて大きく息をつく。

「水飲んだら?歯ブラシもあるけど。」

一歩近寄ったらぼんやりした目のまま見上げられて。

「・・・・全然評判と違う、ベッドに寝かせてくれると思ってた。一緒に隣で目を覚をさましてくれると思ってた。」


うつ伏せでごにょごにょと言う感じで言われたけど、ちゃんと内容は分かった。

そんな評判は知らない。
そんな事したことない。



大体そんなこと考えて、噂を検証したかったとか?
その結果を林に言いたいとか?
それとも他の誰かに。

視界に入る、変わらずうつ伏せのままのその姿に、猛烈に腹立たしさが募ってきた。

「目が覚めたら帰って。水はあげるから。じゃあ。」

ホントにそんな評判知らない。
林も、浩美も、先輩たちもそんな事は言ってない。
誰がそんなことを言ったの?
まったく身に覚えがない事。

一人寝室に引き返して、どうしようもない怒りと恥ずかしさを味わった。



ばっかじゃない。
同期なのに、そんなことするわけないし。
しかも、友達の友達に。

だいたい佐々木君こそが、そんな思考とは正反対にいると思ってた。
全然想像できなかった。
まったく興味なさそうだと思ったし。

・・・ああ、でも彼女はいるみたい?

そうよ、昨日も彼女を呼べばよかったのに。
何も馬鹿正直に私が面倒をみなくてもよかったのに。


二度とみない。
もう、二度と飲みに行くこともないだろう、行かないから。


味も分からないまま酔っぱらって一人で駅で寝てればいい。
駅員さんに冷たく追い出されればいい。


私は知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】泡になった約束

山田森湖
恋愛
三十九歳、専業主婦。 夫と娘を送り出し、静まり返ったキッチンで食器を洗う朝。 洗剤の泡が立っては消えるその繰り返しに、自分の人生を重ねながら、彼女は「ごく普通」の日常を受け入れている。 愛がないわけではない。けれど、満たされているとも言い切れない。 そんな午前中、何気なく出かけたスーパーで、背後から名前を呼ばれる。 振り返った先にいたのは、かつて確かに愛した男――元恋人・佐々木拓也。 平穏だったはずの毎日に、静かな波紋が広がり始める。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)

スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」 唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。 四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。 絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。 「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」 明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは? 虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!

フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛

春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

春燈に咲く

naomikoryo
恋愛
春の名をもらいながら、寒さを知って育った。 江戸の外れ、貧しい百姓家の次女・うららは、十三の春に奉公へ出される。 向かった先は老舗呉服屋「蓬莱屋」。 そこで出会ったのは、何かとちょっかいをかけてくる、 街の悪ガキのような跡取り息子・慶次郎だった―― 反発しながらも心に灯る、淡く、熱く、切ない想い。 そして十五の春、女として、嫁として、うららの人生は大きく動き出す。 身分の差、家柄の壁、嫉妬と陰謀、 愛されることと、信じること―― それでも「私は、あの人の隣に立ちたい」。 不器用な男と、ひたむきな少女が織りなす、 時代小説として風情あふれる王道“和風身分差ラブロマンス”。 春の灯の下で咲く、たったひとつの恋の物語を、どうぞ。

処理中です...