悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

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33 ・・・知らないことがたくさんあった。

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バッグの持ち手をぎゅっと握りしめて、ずんずんと歩く私の腕をまた引いた。

「もっとゆっくり歩こうよ。散歩よりは早いペースでもいいけど。」

そう言われてそのまま手をつなぐ。

数日前にこうして歩きました、覚えてますよ。
ご町内散歩×2で時間を過ごしました、出来立てカップルでしたよ。

普通のペースに落として手をつながれて歩く。

さっき自分は怒ってたのだろうか?
でも後ろから見ていてそう見えたかもしれない。

横に並んだコウヨーの顔を見上げる。

別に普通だった。


「いつ泊まるって決めたの?」

「誘われた時。」

「誘った時の間違いでしょう?」

私が誘ったのは週末のことだし。

「ああ、・・・・そうかも。」



「いいの?」

「いいよ。」

「ありがとう。」

手に力が入った気がした。


部屋に着いて荷物を下ろす。
色んな所の窓を開けて空気を入れ替える。

「先にお風呂入る?」

「どっちでも。」

「ねえ、果物買ってきてないよ。あとパジャマもない。」

「うん、別にいいや。」

バスタオルを渡して先に入ってもらう。

姿が消えてシャワーの音が聞こえたら大きくため息をついた。



「おかしい、やっぱりおかしい。普通じゃない、油断できない。」

声に出した。

「大体、いきなり泊まるほどの情熱らしきものがあるなら、何で普通に連絡がないの?何、それとも本当に素泊まりのつもり?飲んで帰るの面倒だし、泊めてもらえ~みたいな?林に教えてもらう前に、一言くらい返事してくれて、その上で誘ってくれればいいじゃない?あんな待ち伏せして、私が一人じゃなかったらどうするつもりよ。私にだって社内に誘ってくれる女友達がいる・・・・浩美くらいだけど。それに会話がかみ合わないから『何?』って聞いてるのに、呆れたように言うのは私が悪いって事?何で伝わらないんだろうって、こっちのセリフよ!」


シャワーの音がする間ブツブツと言ってしまった。

最後に『裏無天然、裏無天然。』
そう唱えて終わりにしてやった。


下着とTシャツ姿で出てきた。


「冷蔵庫のお水を適当に飲んでていいよ。」

一応言った。

自分の着替えを持って交代で入る。
ハンガーをバッグのところに置いておいたから分かるだろう。


手早く入り、肌を整えて。

そういえば脱いだ服は・・・・どうした?

髪を乾かして、軽く整えて出る。


「ねえ、脱いだ服はどうしたの?」

「洗濯機に放り込んでしまいました。ネットに入れて・・・・。」

そう手ぶらだった。
下着と靴下、Tシャツまでも。

「明日必要なものは?」

「無いです。」

そうでしょうね。全部買ってましたね。
しっかりちゃっかりそのつもりで。

バスタオルをいれて洗濯を始めた。

明日の朝バタバタするくらいなら、夜に浴室に干しておこう。
明日の朝、ベランダに出そう。


冷蔵庫から水を取り、ソファに座る、普通の距離はとる。

「迷惑じゃない?」

「大丈夫。その辺はハッキリします。迷惑なら入れないから。」

「良かった。」

本当にうれしそうな顔をされた。
やっぱり少しは酔ってるんだろう。


「会いたかった。」

水を持ったまま近寄って来て、肩に顎を乗せられて言われた。
手が私に巻き付くより先に顎をのせてきたコウヨー。

「ちょっと待って。疑うわけじゃないけど、まったく伝わってこなかったけど。」

「ええっ。」

どうしてそこで驚く?

「まったく連絡もないし、逆に気のせいだったのかと思えるくらいだった。」

「だって、文字より実際に会えた方がいいと思って、何度か休憩しに行ったのに、全く会えなかった。驚いてくれると思ってたのに。」

はぁ?口が開く。


「林君が寂しそうだぞって教えてくれたから、今日終わり時間を教えてもらった。」

「だったら、昼のメッセージに返事くれてもいいじゃない。」

「気がついたのは仕事が終わってからだったから。バッグに入れてて、ほとんど見ないから。ごめん。今度から見るよ。」

「今度からちゃんと・・・・・。」

しかりつけるように言いそうになった。

「連絡ください。適当な話題でもいいし、お疲れとか、お休みとかでいい。」


「うん。分かった。」

よし・・・・って、なんだか切ないお願いをしたみたいじゃない。
不倫カップルみたいな感じですが。
もっと思ってる事をちゃんと伝えて欲しい。
私の普通はそんな感じです。
それでも特に否もなく、合わせてくれるらしい。


「泊まりたいと思ったらその時に言って欲しい、帰り時間は林に聞かなくても私が教えるし。別に普通にコーヒー飲んで少しの時間話をするくらいだけでもいいから、気が向いたら、誘って。」

・・・またお願いした。

「話がかみ合わないのは、努力するけど、もっとはっきり言ってもらった方がいい。本当にわからない。」

・・・・さらなるお願いのダメ押し。
さっきブツブツと一人で吐き出していた勢いなんて全然ないじゃない。

どうしてこうなる?


「分かった。だから、こういうのもいいなあって思ったって言ったじゃない。平日に待ち合わせて一緒に食事して、そんなに遅くはなれないって分かってても、そういう時間の使い方もいいなあって。それなのに『お店が気にいったの?』って頓珍漢なことを聞いてくるから。」

頓珍漢????
そこまで言う?

さっき反省したように言ったから、こっちが悪いと思ってる。

間違った、絶対間違った。

あの流れでそんな事思ってるなんて、分かるわけない!!

「あ、頓珍漢ってちょっとかわいいから似合うって思っただけで、そんなに眉間にシワよせないでよ。」

伸ばされた指が眉間を軽くなぞる。

思わず顔を引いた。ビックリした。

「冗談冗談。でも可愛いよね、頓珍漢。」

気にいったのか繰り返す。
そんな言葉が似合うと言われても喜ぶ人はいない。
そんなのは本当に頓珍漢な奴だけだ。


また肩に顎をのせてきてニコニコしてご機嫌だ。

「酔ってる?」

「うん、ちょっとね。だって飲め飲めって言うから、それなのに眠いなんて言ったら許さないって、勝手だよね。」

酔ってるな。
もしくは、天然で誤解してる?

重たい口を軽くしたかっただけだし、眠いと言われて歩かなくなるのを予防したかっただけなのに。最初から泊まる気だったら自分でも気を付けてただろうけど。

今になって、普通の陽気な男になった。

「でもやっぱり部屋はいいなあ。くっついてても誰も見てないから自由だよね。」


そこの良識はあるらしい。

「ねえ、亜弓さん、いいよね。」

「どうぞ、ご自由に。」

顎乗せ腕回しくらい、どうでもいい。

だいたいその恰好じゃ冷えるだろうし。

「パジャマ持ってきていいよ。」

「うん、どうかな、すぐ脱ぐし。でも、一応今度買おうね。」

誘ってるようだけど、私は間に合ってます。

「ねえ、デザート食べなかったよね。」

「もしかして、食べたかった?」

「うん、食べる。」

「冷蔵庫の中に何かあるよ。」

「そっちじゃないよ。」

耳元で言われた。

そうでした。私は『甘い』味でした。
こうなってくると『御しやすい』みたいな意味合いも含まれてるように思えてくる。
どうなんだ?


胸元にいる頭を抱えながら見下ろす。

ごそごそとやってると思ったら、器用に口でボタン外したみたいだ。
本当に不器用じゃないらしい・・・・。

何て特技!いつそんな練習をしたのか聞きたくなる。

二つ外されてデコルテにキスされて。

洗濯が終わるのがあと20分くらいあと。

忘れないようにここにいたい。


胸元が涼しくなって顔が目の前に来た。
ビックリ。油断してバスルームと時計の方を見ていた。


「もっとお酒飲んで欲しかった。」

変りません。洗濯は洗濯です。

「気分が乗らない?」

返事はしないけど、頬をに手を当ててキスをした。
おでこをくっつけられて聞かれて。
ここまで自由にさせて、断るわけないのに。

体を強く抱きしめられて、キスが深くなる。

「亜弓さん、もっと・・・・会いたい。」

「じゃあ、四時半ごろ。その頃休憩室にいることが多いから。」

「そんな、会社の中じゃ挨拶しかできないじゃない。もっと触れたいのに。林君ばっかり、ずるい。」

それは誤解のある言い方だ。
あいつと触れ合ってるような言い方じゃない。

「また、手伝いに降りて来てくれたらいいのに。」

「それじゃあ休憩室と変わらない。」

「いい、林君みたいに隣にいたい。見ていたい。」

「バレるよ、先輩たちが変に思う。」

「とっくにバレてるから、今更だよ。」

首筋にキスをされて少しのけぞってたけど・・・・・。

「ちょっと、ちょっと待って・・・。」

「何?」

「ねえ、何でバレてるの?あの部屋の人全員?」

「そうだよ。言ったじゃない。」

知らない。

「だって、亜弓さんがいる間だけ黙々と仕事して残業して、二人で残って、お昼も二人きりになってることが多くて。」

一言もしゃべってなかったじゃない。
実際、そんな雰囲気みじんもなかったし。
先輩達だってそんなこと感じてないと思う。

「だから、そんな普通じゃないのを見てたら大体気がつくって。だからいつも二人にしてくれて、さっさと先に帰ったんだよ。それでもあんまり亜弓さんが楽しそうじゃないから、見かねてランチに連れ出したり、お疲れ飲み会をしたりしてくれて。」

平気でそう言う。
そんなバレてる中であんな平然と仕事してたの?
私はどんな目で見られてたの?

普通だったよね、普通だった。
あの時はそんな気持ち知らなかったし、辛そうに仕事してるって言われたくらいだし。


「もしかして、今週になって馬鹿正直に報告した・・・・とか?」

「一応お礼も兼ねて。友達が間に入ってくれて付き合うことになりましたからって、ありがとうございましたと。」

「だから週二のランチは経過報告会みたいな・・・・・。」

待って・・・・・。
そんなの勝手に報告しないで。
おかしい、やっぱりおかしいよ、この人。

「だからランチに来たら大変だよって言ったのに。」

そこにつながる?知らないし。ちゃんと分りやすく言ってよ。

疲れた、ぐったりした気分。
確かに私がヘルプで来てるのに先輩達は本当にさっさといなくなった。
昼も、夕方も。
『お気の毒に。』
先に帰る先輩にそう言う目で見られてると思ってた。
違った意味があったの?

『ちょっとずれてるけど、いい子なのよ。』とか、『変な子だけど、分かってあげてね。』とか?

天井を向いてため息をつく。

丁度洗濯が終わったらしい音楽が聞こえた。

スクッと立ちあがりバスルームに行く。

洗ったものをネットから出して広げながら、浴室に干していく。
黙々といつもの手順で。
二度目だし、コウヨーの下着もパンパンとしてピンチで挟む。

短い時間乾燥をかけて後にした。


浴室を出た、すぐそこにいて、ありがとうとお礼を言われる。

「うん。」

リビングを見ると既に電気も消されていた。
手をつないで寝室に入るとすっかり窓もカーテンも閉められていて、フットライトだけがぼんやりと明かりがついていた。
やっぱり器用らしい。きっちり覚えてる。


「亜弓さん、僕はバレてもいい。でも亜弓さんが嫌ならしょうがない。僕の恋人だってみんなが知れば、もう誰も近寄ってこないかも、変な噂も立たないよ。」


それだと両隣二人の楽しみを奪うことになるだろうか?
それよりも・・・・。


「分かってるの?評判が悪い私の相手って、皆が興味を持つんだよ。陰でこそこそ言われるんだよ。とっても嫌な気持ちになるよ、そんなのは味わわなくていいよ。」

さすがに味覚とは違う嫌な味わいだから、本当に後悔すると思う。

「・・・・もしかしたら嫌になるかもよ。別れても噂になるんだよ。やっぱり捨てられたとか、酷い事言われるんだよ。悪者にはならずに被害者にしかならないだろうけど。」

「全然平気。そんな事言いながら、今まで耐えてたんでしょう?それに、その内飽きるでしょう?さすがの亜弓さんも75日も主役ではいられないからね。」

首を振る。

「ごめん、やっぱり嫌なの。お願い。」

これは本当のお願い。

「うん、いいよ。先輩達にも内緒だって言ってる。」

顔を見た。

「そう言ったらね、誰も信じないからって・・・ひどくない?」

冗談だろうけど、・・・・やっぱり先輩達と仲良くしてるじゃない。


「内緒は内緒でいいよね。」

キスをしながらお互いの服を剥ぐ。

「亜弓さん、あれどこ?」

「枕の下。」

さっき置いておいた。準備が良すぎる私。

「さすがだね。」

そう言って褒めてくれたのかと思ったら、耳たぶに思いっきり噛みつかれた。

「痛い。」

「本当に慣れ過ぎてるみたい。嫌な感じ。」

お返しに同じことをしてやった。

アホです。

今なら『出来立てカップル感』出てますよ。
見せられませんが。
『ただの同僚』じゃないですよね。


『甘い』と言われて、暗闇でおでこをくっつけて見つめ合う。
普段からそんなに何でも分かりやすく言ってくれたらいいのに。

操られるように動かされて、目を閉じながら、本当に器用だと思った。
もう何度目か分からないけど、そう思った。


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