悪女の取り扱いには注意してください。

羽月☆

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36 今度は本気のオッズがつきます。

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だからといって別に見せつけたいわけじゃない。

電車を降りた会社の駅を出ても手をつないでくる。
何で朝から手つなぎ出勤?
そんなことはしません!

手を振りほどき、自分のバッグを抱きしめる。

そうしたら腰に手を置いてくる。

その手から離れるように急ぎ足になったり、体をねじったり。

くっついたり離れたり、喧嘩中のカップルのような、後は・・・とりあえず変なふたり。

真面目に仕事に向かう人波の中、そんな二人はもしかして目立っていただろうか?

その中に私の悪評を聞いて、顔まで知ってる人がいないことを祈るのみ。


そもそも隣も誰だかは分からなかったのかもしれない。
コウヨーのことはもっと知らないだろう。


何とか他人のふりでエレベーターに乗り、当然別々の階で降りて、席に着いて仕事を始めた。


ランチの後、席で浩美と話をしていたら、早めに戻ってきた林が嬉しそうだった。


「やるなあ、お前と相棒。朝から随分と仲良く出勤してたらしいじゃないか?」

「何?何?」

私の言葉を浩美が代弁。でもそんな喜色を乗せて聞くつもりはない。

「誰かが見てたらしいよ、二人のことを。」

「何?今朝同伴だったの?」

浩美それは違うプロの言い方じゃない?

「なかなか楽しそうないちゃつきぶりだったって。残念だが相手が誰なのかは伝わって来てない。相棒、影薄いなあ。」

「亜弓、やるぅ。そんな噂が昼に広まってるなら、午後の休憩室で続報仕入れてくる。」

「浩美広めないでよ。」

「仕入れて来るだけだよ。拡散具合と尾ひれの確認。」

「聞かれてペラペラと喋りそう。」

「大丈夫だよ。知らないって事で。」

「相手の特定も時間の問題かもな。一気に有名人だよ、相棒。」


「いいらしい。もう・・・・いい。バレた時はその時でいい。」


「ほう、今回はまた、いろいろと違いそうだなあ。」


しょうがない。
隠して不自然に意識するくらいなら自然で、そのままで。
そう言うことになったから。

でもまさか次の日に噂になるなんて、コウヨーのせいだ。
あんなにあからさまで。


「やっぱ、怖いもの知らずなのか?完全にお手つきにしたいのか?初心者の勢い恐るべし。まさかの初恋実らせてパワーアップってところか?」」

「何、初恋なの??」

林がさり気なく『初心者』とかバラしてる。
でも気にしてないみたいな浩美。
でも『初恋』には食いついて来た。
それだとバレそうなんだけど・・・・。


浩美が私を見る。

「私も知りませんでした。」

「ええ~、知りたい、聞きたい、何?本物の初恋だったの?」

偽物はないだろう。

そろそろお昼時間も終わる。
皆がチラチラと帰ってくる。

「だから知らないってば。」

そう言って仕事を始めた。
これ以上は危険。

それでも頭の上で会話は飛んでいた。

「じゃあ、金曜日の夜。」

「OK。言っとく。」

「楽しみ。いろいろ聞き出そう。」


なんだかかなりドラマのような話でも期待してる?

知らない。
あんなちょっとした出来事なんだけどガッカリされない?
全部言ったよ。あれだけだよ。それ以外の展開なんてないから。

『それだけ?』そう聞く浩美の声が今にも聞こえてきそう。




昼が終わり、人が戻ってきて、何となく視線を感じないでもないけど。
気のせいかも。

午後の仕事を真面目にしていた私を置き去りに、一人で休憩に行った浩美が約束通り休憩室で噂の断片を拾ってきた。

拾ってきただけど信じたい。
まさか追加してないよね、余計な口ははさんでないよね。


「面白かった~。ラブラブ同伴出勤って話。悪女が照れて普通の女になっていたらしい。」

「がっかりするだろう?」

「それが、なんか好感度上がってるらしいけど。」

「何でだよ。相棒の方が上がるなら分かるけど。まあ、地を這ってたくらいだから上がるしかないとは思うけど。」

「私が足せる話がないのが惜しい。相手を知らないと言ったから、広める要素もない。」

「やめてくれる、本当にしょうがないとは思っても広めたいわけじゃないから。」

「今度から横に並んで歩いただけで彼氏候補になるよな。俺嫌だなあ、まだ噂の男候補一番らしい。相棒には悪いけど、早くバレて欲しい。」

何っ? 林を見る。

「まあ、当然。いつもそう囁かれてて、ようやくか、とか言われたよ。そこは違うって言っておいたから。あり得ないって。」


「なんだかタイプが違うって話は伝わってて、やっぱり違ったんだって分かってもらえた気もするけど。良かった~、やっとこれで一抜けの希望が見えた。」

毎回そう思われてたって?

何で?知らないし。どう見られてたのよ?

浩美が林におめでとうと言っている。ご苦労とも言っている。
知ってたらしい。なぜ教えてくれなかったの?


「ついでに今回もやるみたい。」

「インサイダーっぽいけど、どうする。」

「自分たちが賭けた方に乗っけられるよね。」

「まあな、名無しじゃ無理だから、意見を分けてみるとか?」

「いいね。いっそ相棒の名前でかけるってのはどうかな?」

「怒らないかな?」

「楽しみつつ、ムキになりそうだよな。ちょっと面白かったりして。」

「でもさすがにね。今回は不参加で傍観しよう。」

「そうしよう。」


何の話だ?

「今回は賭けにはのらないけど、うまくいくことを祈ってる。三ヶ月持たせて皆の期待を裏切ってね。」

賭け・・・・・。
まさかの賭け?
そう言うこと?
今までも????

「それはよくある事なの?」

「まあまあ社内の噂にはほとんどね。亜弓の周りは特に。でもいつも賭けにならないんだよね。今回は特別になりそうな予感がして皆が本気。」

「明日が締め切りだから、ここが判定日ね。」
目の前のカレンダーを手にして勝手にハートマークを書いてる浩美。

ちょっと待った~。

「なんてことしてるのよ。おかしい、ここの人、皆おかしい。」

「お前が言うな。」

林が言った。

「まあ、ちょっとした社内の娯楽だから、気にするな。俺も不参加だからどうでもいいけど、その場合はまた噂が飛ぶな。引き際は美しく、予想を裏切るくらいの素早いフィニッシュとかでもいい。ああ、ハッピーな方な。」

何よそれは?
どうしようもない奴らめ、地獄に落ちろ!


無視した。一切無視した。


集中して仕事をして。
終わってからメッセージを送った。

『噂になった。まだ特定はされてないらしいけど。』

『あと、初めて会った日のエピソード異様に期待されてるよ。』



  
『もろもろ了解です。金曜日楽しみ。』

『今日は自分の部屋に帰ります。残りのバナナどうぞ。』



あんまり何とも思ってない?

危機感が伝わらないらしい。


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