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1 あの夏の日から始まる物語
しおりを挟む幼馴染の有効期限を知っていますか?
物心ついたときからいつも一緒にいたタスク。
いつも一緒に遊んでいた・・・みたい。
アルバムを開くと一人っ子のはずの私の隣にちょいちょい映り込んでいる。
兄とも弟とも思ってなかったけど、じゃあ何って言われても。
何と思ってたのだろう。お父さんとお母さんとタスク。
タスクにお母さんと呼ぶ人がいるとすぐに気がついたけど、意味もよく考えず。
もともと隣同士になったお母さん同士が意気投合して、生まれた時から子供同士も仲良くしていたらしい。
二人とも元気に育ち、部屋に一緒にしておけば仲良く二人でご機嫌で。
子供なりに会話をして、その辺のおもちゃで遊んでたらしい。
効率的に母親二人が楽できる方法。
正直細かいことの記憶はない。
写真で分かるのはおままごとの様にお揃いの服を着たり、お揃いの持ち物で出かけたり、ずっと一緒だった事。
手をつないで二人で並んでいることが当たり前だった。
さすがに小学生になるころにはお隣の家の男の子、大切な友達と認識できる。
自分の部屋は一軒家の二階。窓を開けると向かいにはタスクの部屋の窓があって。
ちなみに両家が家を買ったのが妊娠中。だから本当は妊娠中からの付き合い。
建売住宅を買ったら同じような間取りの家、でも普通こんなに接近したりするならどっちかが壁なるはずなのに。
声をかけると窓が開いて良く話をした。
一緒に勉強を教え合ったり、ゲームをしたり、本を読んだり、お菓子を食べたり。
だってすごく近い距離、玄関を通らなくてもひょいって部屋同士を行き来できるから。
そうして小学生から中学生になったふたり。
タスクは部活をしていてもそんなに強くない学校で、練習も甘々。
だから放課後も毎日顔を見れた。学校での話の続きが出来た。
ときどきお母さんに怒られたり、喧嘩した時に部屋に押しかけて怒って文句を言って泣いて慰められて諭されて。
部屋に戻るころにはスッキリしていたりして。
でも高校に入ってからはなんとなく学校では話しかけることもなくなった。
中学の時よりクラスも増えて校内で会うことも少なくなったから。
新しい友達もどんどんできて女の子同士で話をするのは楽しくて。
クラスも一度も一緒にならないまま三年になったから。
でも家に帰ると窓を開けていろいろと話はしていた。
すっかりお互いの部屋を行き来することは無くなっていたけど。
ちょっとそれは寂しかったけど、いつでも呼べば必ず出てきてくれたから。
やっぱり一番に近くて大切な存在だったと思う。
高校生になると外で寄り道をしたり、好きな人の話をしたり、おしゃれをして出かけたり。相変わらず部活にも入らずに放課後は友達と過ごすことが多かった高校生の頃。人並みに色気をだして色付きのリップを塗ったり、スカートの短さにこだわったり、髪型を工夫したり。
まあ、それくらいだったけど。
でも憧れた先輩も先生もいなくて、好きになった男の子もいなくて。
やっぱりタスクと話すことが多かった、夜、窓辺で。
学校での背伸びした自分じゃなくて、だらだらとした楽な姿で。
中学が一緒の子は知っていたと思う。
私とタスクが隣同士で仲がいいこと。
幼馴染だけど、その先の気持ちは、何故か誰にも聞かれることはなかった。
タスクがもっとモテる男の子だったとしたら、私の事が噂に上がったり、別な噂が流れて私に届いたりしたんだろうけど。
残念ながらその頃タスクの名前が噂に上ることもなく・・・・。
特に目立った存在でもなかったということで。
もちろん私も同じく。
深く考えなくてもずっと一緒だと思ってた、と思う。
タスクもそう思ってると。
あの日までは。
最後の夏休みの前の日だった。
教室に忘れ物をしてしたことに気が付いて、取りに戻った。
友達には校門のところで待っていてもらい、ひとり廊下を小走りで。
「もう、何で大切なもの忘れるの?でもタスクに借りればよっかたのかな?いっそ一緒にやれば早いし。」
宿題に必要な本だったから急いで引き返したけど。
そう思ってタスクの事を思い出してた。
その時、閉じられた教室から声が聞こえた。
「なあ、タスク、真田と仲いいんだろう? もしかして彼女?」
「何言ってるんだよ、違うよ。」タスクの声も聞こえた。
『マダ』と『タスク』当然私とタスクの事だとすぐに分かった。
その会話が耳に入ったのは、あたりには誰もいなくて静かだったから。
廊下に面した窓も閉まっていて、私がいるのは分かってないはず。
ちょっとだけ足取りが遅くなった。
「マジ?真田とはまだ?なんて。ほら、夏休みにやるやつ多いんだよ。キスとか、その先とか。なあ、やったら教えてくれよ。マジ興味あるし。どんな声出すんだろうなあ。胸もいい具合だよな。顔も可愛いし。」
「馬鹿なこと言うなよ、そんなんじゃないって。た・だ・の隣の家の子。」
「じゃあさ、俺が真田とそうなっても怒らないか?結構好みなんだよ。かわいいよ、全体的にいい感じだよな。」
「はぁ?何だよ、いい感じって。それにしおりがいいって言うんなら、俺は別に何も言わないよ。」
「マジかよ。俺誘う。でもさあ、一回目はお前も一緒に行こうぜ。そんで途中はぐれようぜ。」
「なんで俺だけ置いてかれるんだよ。」
「誰か一人連れてきてもらって、タスクにはそっちの子あげるし。」
「何だよそりゃ。」
そんな会話がはっきりと聞こえた。
何で・・・何でそんなこと言うの・・・・。
急いでその場を離れて、机の中の宿題の本を握りしめて逆方向の非常階段を走って降りた。
あの廊下は通りたくなかった。
本を握りしめた指が白い。
酷いよ、タスク。あんな話するなんて。
知らなかった。自分がそんな風に見られてたなんて。
タスクに・・・・、その話相手にも。
ただの隣の子。それ以外、何でもない。
本当にそうなの?タスクにとって私って・・・。
ただ悲しくて。
待っていてくれた友達のところに走っていく頃には涙も流れていたけど。
「どうしたの?泣いてるけど?」
「え、本当?急いで走って、目に変なもの入ったかな?」
痛い心は今にも叫びだしそうだったけど、なんとかごまかした。
あんな言葉に自分だけ傷つけられるなんて・・・・絶対許さないから。
タスクなんて、私も大嫌いなんだから。
家に帰って部屋に直行。
カーテンを閉めて電気もつけずにジッとしていた。
しばらくして向かいの部屋の網戸が開く音がした。
「帰ってないのかな?」
つぶやいたタスクの言葉も聞き取れたけど絶対電気はつけたくなかった。
しばらくじっとしてたけど網戸越しの向かいの部屋からは音楽とタスクの鼻歌が陽気に聞こえて来て、イライラしてきた。
階段を下りて一階のキッチンへ。
「お母さん、手伝おうっか?」
「あら、珍しいのね。夏休みだから?」
「うん、まあ。」
不思議そうに、でもうれしそうな母の横に並んで料理を手伝った。
お父さんもいつもより早く帰ってきて話をしながら一緒にテレビを見た。
部屋には戻りたくなかった。
結局部屋に戻ったのは寝るために歯磨きをしてから。
そのまま布団をかぶり目を閉じた。
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