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4 一人で歩き出した春
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冬の朝、休みの日だった。
ふとポストを開けると小さな封筒が入ってるのを見つけた。
自分の名前が見覚えのある字で、大きさで書かれていた。
直接ポストに入れたのは切手も住所もないので明らかで。
やっぱりタスクからだと思う。間違いはないと思う。
中を見ると封もしてなく出てきたのはお守りだった。
懐かしい近くの神社のお守り。
何度も遊びに行って、いろんな思い出があるけど、お守りを手にしたのは初めて。
なんで直接渡してくれないんだろう。
話が出来ない。
そう思ってもじゃあ自分がお礼を言いに部屋に行くか?
窓を開けて名前を呼ぶか?
無理。やっぱり無理。
ただの隣の子でも幼馴染だからお守りくらい買ってくれると思う。
だからそんなに特別じゃない・・・・・・。
封筒に入れて玄関に戻った。
さっきお母さんが郵便物を取りに来たのに取り忘れたの?
まさかわざとじゃないよね。
部屋に戻ってカーテン越しに窓に向き合う。ありがとう、タスク。
封筒に書かれた自分の名前ごとバッグに入れた。
今日も図書館に行くつもりでバッグを手にした。
ここでもいいけど・・・カーテンを開けて勉強してたらびっくりするかな?
でもまたくるりと向きを変えられるように、今度はタスクが部屋を出るかもしれない。もうそんな背中は見たくなくて。
見ないためには自分が背を向けるしかなくて。
やっぱり出かけた。
潮野君とはメールで励まし合ってる。一日一回くらいメールしてる。
今は違う塾に変えたらしく、会わなくなった。
『春に無事に合格したら会いたい』とメールをもらった。
『そうだね、頑張ろうね。』と返信した。
あと少し。
でもさっき、力強い味方を得たようで・・・心強くもありうれしくもあって。
そして三月。春、桜ももう少し。
無事に合格して大学も決まった。
もう一つどうしてもお願いしたいことがあった。
「お母さん、お父さん。私一人暮らしがしたいんだけどダメですか?」
ふたりともビックリする。だって十分通える大学だった。
校舎も4年間今のところ動くこともなさそうで。
だけど、この家から出たくて。
すれ違いのまま、タスクとは喋らないまま。
このままだったら、いっそ離れて・・・忘れたい。
受験が終わってしばらく、空っぽになった自分の心にはそんな悲しい思いしかなくて。
とりあえずこの家を出たい。
でも、そんな理由は話すことが出来る訳もなく。
バイトしていろんな経験したい。
無駄遣いしないから、真面目な大学生になるから。
そんな事の心配はしてないと思うけど、お願いした。
そうしてお母さんとお部屋を見に行って決めた。
自分で決めたのに、泣けてしまった。
「何かあったらいつでも帰ってきて、電話して、とにかく相談して。心配なの。」
「我儘ばかりでごめんなさい。」
「我儘は初めてよ。今までいい子だったし。素直でいい子で、自慢の娘だから。後悔しないようにね、いろいろと。大切なものをたくさん見つけてね。」
もしかして全部分かってるの?
そんな気がしないでもないけど、ただうなずいた。
あっという間に春になり、大学生活の始まりはバタバタと落ち着かなかったけど。
友達が出来て少し余裕が出てきた。
バイトも決めてきた。
近所のカフェで店員さんをすることになった。
夜も遅くならないし、お客さんも女の人が多そうなお店だし。
いいところが見つかったと思う。
そういえば引っ越しとかあって潮野君とはあれっきり会えなかった。
合格したよね?
ふと思い出したけど、もうずいぶん遠くの話のことのようで。
そして、タスクの事も。
小さく小さく、思い出は出来るだけ小さくまとめて心の奥の方へしまった。
そして空いたスペースが出来たら・・・・新しくて、楽しくて、笑っていられることをたくさん入れられるようになったと思う。
タスクの事を小さくまとめてしまうと、本当にたくさんの隙間が空いた気がした。
良かった・・・・。
溢れかえるような楽しい思い出を、思い出すたびにそうやって小さく小さくしてた。
小さくても本当は心の半分くらいを占めてるかもしれない。
そして何かきっかけがあったら、一気に膨らんで溢れて・・・・・。
だからちゃんと鍵をする。
懐かしく思って開けようとした時には、錆びついて開かないかもしれないけど。
閉じ込めるように押し込んで、鍵をかけた。まだ、しばらくは開けないから。
そして、少しずつ思い出さない日々に慣れていった。
初めてのバイトにも慣れた。
店員さんはみんな年上でかわいがってもらえた。
試験の前とかは考慮してくれて、代わりに連休は出たりした。
でもご飯は作れない私。
つい家ではお母さん任せできた。
ここでは美味しい食事が出るからうれしい。
居心地のいいお店で、長く働きたいし、役に立ちたくて。
基本の基本から教わって、少しづつ料理も覚えた。
サークルは活動の緩そうなものに入った。
『コケ盆栽部』
時々山奥に苔を取りに行くと聞いたけど、そんなところに行かなくてもお店で買えるので、ひたすら自宅で愛でるくらい。
活動と言ってもほとんど女子会。一緒におやつを食べて喋るだけ。
それでも先輩と友達が出来るので色々と助かる。
試験期間前は自習室になるくらい静かでひっそりとしたサークルだった。
その代り試験あとは飲み会がある。
そしてお酒もちょっとだけフライングしたけど部屋で飲んだりした。
甘いお酒。かわいいものをちょっとだけ。
先輩が買ったお酒の残りをもらったりするから。
自分の周りが少しづつ変わっていく。
置いて行かれないように立ち止まってる暇はなくて。
ゆっくり、一人でもゆっくり歩きだしていた。
ふとポストを開けると小さな封筒が入ってるのを見つけた。
自分の名前が見覚えのある字で、大きさで書かれていた。
直接ポストに入れたのは切手も住所もないので明らかで。
やっぱりタスクからだと思う。間違いはないと思う。
中を見ると封もしてなく出てきたのはお守りだった。
懐かしい近くの神社のお守り。
何度も遊びに行って、いろんな思い出があるけど、お守りを手にしたのは初めて。
なんで直接渡してくれないんだろう。
話が出来ない。
そう思ってもじゃあ自分がお礼を言いに部屋に行くか?
窓を開けて名前を呼ぶか?
無理。やっぱり無理。
ただの隣の子でも幼馴染だからお守りくらい買ってくれると思う。
だからそんなに特別じゃない・・・・・・。
封筒に入れて玄関に戻った。
さっきお母さんが郵便物を取りに来たのに取り忘れたの?
まさかわざとじゃないよね。
部屋に戻ってカーテン越しに窓に向き合う。ありがとう、タスク。
封筒に書かれた自分の名前ごとバッグに入れた。
今日も図書館に行くつもりでバッグを手にした。
ここでもいいけど・・・カーテンを開けて勉強してたらびっくりするかな?
でもまたくるりと向きを変えられるように、今度はタスクが部屋を出るかもしれない。もうそんな背中は見たくなくて。
見ないためには自分が背を向けるしかなくて。
やっぱり出かけた。
潮野君とはメールで励まし合ってる。一日一回くらいメールしてる。
今は違う塾に変えたらしく、会わなくなった。
『春に無事に合格したら会いたい』とメールをもらった。
『そうだね、頑張ろうね。』と返信した。
あと少し。
でもさっき、力強い味方を得たようで・・・心強くもありうれしくもあって。
そして三月。春、桜ももう少し。
無事に合格して大学も決まった。
もう一つどうしてもお願いしたいことがあった。
「お母さん、お父さん。私一人暮らしがしたいんだけどダメですか?」
ふたりともビックリする。だって十分通える大学だった。
校舎も4年間今のところ動くこともなさそうで。
だけど、この家から出たくて。
すれ違いのまま、タスクとは喋らないまま。
このままだったら、いっそ離れて・・・忘れたい。
受験が終わってしばらく、空っぽになった自分の心にはそんな悲しい思いしかなくて。
とりあえずこの家を出たい。
でも、そんな理由は話すことが出来る訳もなく。
バイトしていろんな経験したい。
無駄遣いしないから、真面目な大学生になるから。
そんな事の心配はしてないと思うけど、お願いした。
そうしてお母さんとお部屋を見に行って決めた。
自分で決めたのに、泣けてしまった。
「何かあったらいつでも帰ってきて、電話して、とにかく相談して。心配なの。」
「我儘ばかりでごめんなさい。」
「我儘は初めてよ。今までいい子だったし。素直でいい子で、自慢の娘だから。後悔しないようにね、いろいろと。大切なものをたくさん見つけてね。」
もしかして全部分かってるの?
そんな気がしないでもないけど、ただうなずいた。
あっという間に春になり、大学生活の始まりはバタバタと落ち着かなかったけど。
友達が出来て少し余裕が出てきた。
バイトも決めてきた。
近所のカフェで店員さんをすることになった。
夜も遅くならないし、お客さんも女の人が多そうなお店だし。
いいところが見つかったと思う。
そういえば引っ越しとかあって潮野君とはあれっきり会えなかった。
合格したよね?
ふと思い出したけど、もうずいぶん遠くの話のことのようで。
そして、タスクの事も。
小さく小さく、思い出は出来るだけ小さくまとめて心の奥の方へしまった。
そして空いたスペースが出来たら・・・・新しくて、楽しくて、笑っていられることをたくさん入れられるようになったと思う。
タスクの事を小さくまとめてしまうと、本当にたくさんの隙間が空いた気がした。
良かった・・・・。
溢れかえるような楽しい思い出を、思い出すたびにそうやって小さく小さくしてた。
小さくても本当は心の半分くらいを占めてるかもしれない。
そして何かきっかけがあったら、一気に膨らんで溢れて・・・・・。
だからちゃんと鍵をする。
懐かしく思って開けようとした時には、錆びついて開かないかもしれないけど。
閉じ込めるように押し込んで、鍵をかけた。まだ、しばらくは開けないから。
そして、少しずつ思い出さない日々に慣れていった。
初めてのバイトにも慣れた。
店員さんはみんな年上でかわいがってもらえた。
試験の前とかは考慮してくれて、代わりに連休は出たりした。
でもご飯は作れない私。
つい家ではお母さん任せできた。
ここでは美味しい食事が出るからうれしい。
居心地のいいお店で、長く働きたいし、役に立ちたくて。
基本の基本から教わって、少しづつ料理も覚えた。
サークルは活動の緩そうなものに入った。
『コケ盆栽部』
時々山奥に苔を取りに行くと聞いたけど、そんなところに行かなくてもお店で買えるので、ひたすら自宅で愛でるくらい。
活動と言ってもほとんど女子会。一緒におやつを食べて喋るだけ。
それでも先輩と友達が出来るので色々と助かる。
試験期間前は自習室になるくらい静かでひっそりとしたサークルだった。
その代り試験あとは飲み会がある。
そしてお酒もちょっとだけフライングしたけど部屋で飲んだりした。
甘いお酒。かわいいものをちょっとだけ。
先輩が買ったお酒の残りをもらったりするから。
自分の周りが少しづつ変わっていく。
置いて行かれないように立ち止まってる暇はなくて。
ゆっくり、一人でもゆっくり歩きだしていた。
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