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6 独り立ちした春
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春になって大学生になった。
しおりの大学も聞いた。
春から一人暮らしをすると言って出て行ったしおり。
どうしてだろう?
近い気がするけど。
自分と変わらないのでは?
母親が気の毒そうに言っていた。
「寂しくなるわね。」
きっとそうやってしおりの母親と言い合ってるのだろう。
1人暮らしなんて考えただけでも面倒だ。
お金もかかるし、食事洗濯そのほか諸々を自分でしないといけないなんて。
帰ってくるとご飯もあり、お風呂も入れて、着るものもある。楽なのに。
どうして?
また、一人で遠くにいくんだね。
自分の部屋の中から、向かいの空っぽな部屋に向かってつぶやいた。
暖かくなり、やっと厚いカーテンを開けている時間が増えた。
相変わらずの向かいの部屋の空っぽさには寂しさがつのる。
そして引っ越しの日、母親がしおりに別れを言っていた声が聞こえてきた。
「元気でね、しおりちゃん。あと、気を付けるのよ。」
・・・・最後かもしれないのに。
急いで玄関まで下りたのに。その先靴を履いて出て行くことが出来ず。
車の音を聞いてゆっくり出て行った。
母親の後ろに行って、さっきまでいただろうしおりの影を探す。
「もう、何してるの!行っちゃったじゃない。」
怒られた。
本当に馬鹿な子・・・・・。そう呟かれた。
そうです、意気地のないどうしようもないバカです。
本当に行ってしまった。
きっとこれからどんどん離れていくんだろうなと思う。
いつになったら懐かしいなって笑えるんだろう。
ただ寂しい気持ちがあとからあとから湧き上がってきた。
ただ寂しい日は思ったほど実感がなく。
だって今まで会えなかった期間が長くてすっかり慣れていたのだ。
もう平気だろうとすら思っていた。
大学生になり自分の周りもグルグルっと変わっていったから。
サークルに名前を連ねても、さほど真面目に活動するところでもなく。
バイトで家庭教師をしてお小遣いを稼いだ。
男友達とつるんでちょっとだらけた生活を過ごしていた。
その日も朝までバカ騒ぎして始発で家に帰った。
お風呂に入り服を着替えてベッドに寝て、起きたらすっかり午後になっていた。
自堕落な日々。
それでも小心者だから授業には真面目に出ていた。
「祐、週末にはお家にいなさい。日曜日だと思うけど光輝が大切な人を連れて帰ってくるって。」
7歳年上の兄がいた。
あまりにも年上過ぎて一緒に遊んだ記憶も少ない。
高校を出ると家を出ていたために、ほぼ一人っ子状態だった自分。
しおりの方がよっぽど近くにいて長く一緒に過ごしたと言える。
そしてこれがまた出来た兄で。
頭も自分よりいい、顔も。
ただ就職した会社が大きすぎて遠くの支社勤務だったから、ほとんど家には帰って来ていなかった。
それでも何かと季節のものを送ってきてくれていた。
今は大阪にいる。とうとう彼女が出来たのか・・・というか結婚するの?
「結婚するの?」
「そうよ。子供も出来たみたいなの。」
「マジ、おじさんになっちゃう。」俺オジサン・・・。
「そうね、相手のご両親にもとっくに許可をもらってるみたいで。」
「そうなんだ。へ~。」
さすがに手ごろな年かも。
「どんな人だろう?」
「少し年下のOLさんらしいわよ。違う会社だって。かわいい人らしいから祐も楽しみにしてて。とりあえず日曜日の午後よ、一緒にお昼を食べるのから。分かったわね。」
「了解です。」
楽しみだ。どんな人だろう。
日曜日、兄が連れてきたのは本当にかわいらしい人だった。
やはり面食いだったのか・・・。
第一にそう思ったほど。顔立ちは派手ではないが優しそうで、笑顔も自然で。
絶対かわいい子が生まれるだろう。
いいなあ。
ついつい女の人ばっかり見ていた。
だって兄を今さら見つめる意味もないし。
「祐、お前、人の彼女欲しがるなよ。」
「なっ。」
「さっきから真奈ばっかり見てるだろう。」
そんなこと本人の前で言うな!
「まあ、似てるよな。」
「何だよ。かわいいお嫁さんを自慢したいのかよ。」
「そうだ。参ったか。」
兄に揶揄われた。そんなに見てただろうか。
「確かに似てるわね。なんとなく。」
「誰に?」
「しおりちゃん。」
「へ?」
もう一度まじまじと見てしまって・・・とうとう顔を伏せられた。
すみませんと謝る羽目に。
そうだろうか?一人考える。
思い出せるのは高校生の頃のしおりの顔で。
しおりも化粧したりしたら・・・こうなる?
「分かんない、似てるかどうか。別に似てなくてもすごく可愛らしい人だよ。兄貴にはもったいない。」
「そうかい、そうかい。お前が誰を連れてくるか楽しみにしてるよ。」
「まだ大学生だよ。ずっと先だよ。」
「だろうな。」あっさりそう言われた。
残念だが今のところ全くその手の話には縁がない。
本当にまじめな大学生なのだ。
自分はこんなに人気がないんだろうかと思うほど。
そこそこ普通なのに。優しい奴なのに。
まあ、好きになった子もいないけど。
焦るな焦るな。絶対大好きになるような相手を見つけてやるぞ。
兄貴にも自慢できる子を、いつか。きっと。絶対。・・・・多分。
顔合わせは終わった。
なんと今度は本社に戻れるらしい。もちろん東京だ。
そして子供が生まれて。ずっと東京かもしれないと言っていた。
可愛いだろうなあ。子供。男の子らしい。
何だか弟が生まれる感覚で待ち遠しい。
手を振って駅に向かう二人。
手をつないで歩くその後姿がうらやましかった。
落ち着いた兄なのだ。
もう歯向かう気すらないくらいに。
ライバルにもなり得ないくらいの年の差は尊敬に変わり。
そして今もその気持ちは変わらない。
結婚式は子供が1歳になるころにするらしい。
とりあえず両家の挨拶など済ませて入籍と引っ越しをして、出産準備に入るとのことだった。
お嫁さんも東京出身でその点は良かった。
オジサンになる前に就職活動、卒業と自分も忙しかった。
兄貴ほど大きな会社じゃないので、勤務地はもちろん東京だった。
夏にボーナスをもらったら一人暮らしを始めようかと考えていた。
どっちが楽かといえば実家暮らしが楽なんだが。
ただうっすらと考えていただけなのに、いつまでも甘えるなと父親の言葉が飛んできた。
何で?寂しくないのか?末っ子なのに・・・・。
「お前は楽な方にばかり流れる。少しは自立して一人前になれ。」
そう言われた。
はいその通りです。
就職と同時に一人暮らしに踏み切った。
親から借金をした。出世払いが数カ月続く予定。
手に入れたのは自由。それでも意外に自分がマメだと知った。
なんとなくご飯も作り、こまめに掃除をして、洗濯ゴミ出しなどもまったく苦にならない。
さすがに仕事後は面倒だけど、週末にはせっせと掃除に励んだ。
だって他にすることがなかったんだ。
大学生活ではほとんど男子とつるんだ。男子ばかりと。
それでも彼女のいる奴が多くて、張り切った奴は大学生活で一桁マックスくらいまで彼女が変わっていた。
何故?
何故そう簡単に出来るんだ?
参考までに聞いてみた。
「なあ、声かけるほう?かけられる方?」
「両方だよ。待ってても出会いは来ない、攻める攻める。時々攻められる。いろんなタイプと付き合って見極めるほうがいいじゃん。タスクはどうしてるの?」
話すことは何もなかった。
「もてないはずないけどな。でもあんまりその気なさそうに見えるから。はやりの草食系だな。」
結局平たんに過ごした大学生時代。
結論、やっぱり自分はもてないらしい。
うっすらと詩織の就職先も聞いた。
母親が教えてくれたので耳に入ったんだ。
そしてあまりにも有名なところだったから忘れられない。
大きな駅の大きな老舗デパート。紳士用品売り場。
1階のネクタイやハンカチを売る売り場にいると。
どうせ仕事の営業での外回りの時に通る道。
何度か中に入ろうかと思ったが、実際にショーウィンドウの前で立ち止まっても中に入ることもなく。
『まだまだしおりも慣れないだろうし、忙しいだろうし。』
うだうだと心で言い訳をしていた。
「久しぶりだね、元気?」ただ、そう声をかけるだけでいいのに。
今更ながらそんな簡単なこともできなくなってしまった関係だと、そういうことだろう。
自分は会ってないが母親は実家に帰ってきたしおりに会ってるらしい。
「凄くきれいになったのよ。」そう言っていた。
今日もくるりと背を向けて歩き出した。
熱い中から会社に帰るとみんなにねぎらわれる。
夏も冬も営業はつらい。
雨の日も嫌だなあ。
でも小心者でも何とかやれている。
相手に嫌われることなく、そつなくできてるなんて、自分やるじゃないかと思ったりして。営業成績もずば抜けてはいないけど、そこそこ安定。
事務用品のメーカーに就職して営業に配属されて。
やっと独り立ちを始めたばかりだけど。
すっかり馴染んだつもりのスーツ。
靴も歩いてる距離がすごいのかすぐダメになる。
靴下に穴・・・昨日も発見して買わなきゃなと思った。
でも・・・・そう、しおりのところは高そうだ。
いいんだ量販店のもので。
そう言い訳して、週末に行くのはそんなところだろう。
秋にはとうとう兄と義姉さんと甥っ子の家族結婚式がある。
ちょっと予定より早まった。
なんと最近は多いらしい、子供一緒の式。
短時間でこじんまりして、料金も抑え目で。
それでも美男美女、しかも甥っ子も可愛い。
天気が良ければいいなあ。
もちろん自分も出席する。
服は兄のを借りるし特に準備するものはない。男は楽だ。
式も今更だし、向こうの両親とも仲良くやってるらしい。
義姉のドレス姿を残したい、それに尽きるのじゃないだろうか?
招待状を持ってくるというので合わせて自分も実家に帰る予定だった。
久しぶりに実家に帰る。
当然隣の家にしおりはいないだろう。
販売なら週末休みなんてめったにないだろう。
今、どこに住んでるのか、自分は知らない。
でも、いつでも会える。
あのデパートに入れば、そこにいるはずだ。
多分、いつでも会える。その気さえあれば。
しおりの大学も聞いた。
春から一人暮らしをすると言って出て行ったしおり。
どうしてだろう?
近い気がするけど。
自分と変わらないのでは?
母親が気の毒そうに言っていた。
「寂しくなるわね。」
きっとそうやってしおりの母親と言い合ってるのだろう。
1人暮らしなんて考えただけでも面倒だ。
お金もかかるし、食事洗濯そのほか諸々を自分でしないといけないなんて。
帰ってくるとご飯もあり、お風呂も入れて、着るものもある。楽なのに。
どうして?
また、一人で遠くにいくんだね。
自分の部屋の中から、向かいの空っぽな部屋に向かってつぶやいた。
暖かくなり、やっと厚いカーテンを開けている時間が増えた。
相変わらずの向かいの部屋の空っぽさには寂しさがつのる。
そして引っ越しの日、母親がしおりに別れを言っていた声が聞こえてきた。
「元気でね、しおりちゃん。あと、気を付けるのよ。」
・・・・最後かもしれないのに。
急いで玄関まで下りたのに。その先靴を履いて出て行くことが出来ず。
車の音を聞いてゆっくり出て行った。
母親の後ろに行って、さっきまでいただろうしおりの影を探す。
「もう、何してるの!行っちゃったじゃない。」
怒られた。
本当に馬鹿な子・・・・・。そう呟かれた。
そうです、意気地のないどうしようもないバカです。
本当に行ってしまった。
きっとこれからどんどん離れていくんだろうなと思う。
いつになったら懐かしいなって笑えるんだろう。
ただ寂しい気持ちがあとからあとから湧き上がってきた。
ただ寂しい日は思ったほど実感がなく。
だって今まで会えなかった期間が長くてすっかり慣れていたのだ。
もう平気だろうとすら思っていた。
大学生になり自分の周りもグルグルっと変わっていったから。
サークルに名前を連ねても、さほど真面目に活動するところでもなく。
バイトで家庭教師をしてお小遣いを稼いだ。
男友達とつるんでちょっとだらけた生活を過ごしていた。
その日も朝までバカ騒ぎして始発で家に帰った。
お風呂に入り服を着替えてベッドに寝て、起きたらすっかり午後になっていた。
自堕落な日々。
それでも小心者だから授業には真面目に出ていた。
「祐、週末にはお家にいなさい。日曜日だと思うけど光輝が大切な人を連れて帰ってくるって。」
7歳年上の兄がいた。
あまりにも年上過ぎて一緒に遊んだ記憶も少ない。
高校を出ると家を出ていたために、ほぼ一人っ子状態だった自分。
しおりの方がよっぽど近くにいて長く一緒に過ごしたと言える。
そしてこれがまた出来た兄で。
頭も自分よりいい、顔も。
ただ就職した会社が大きすぎて遠くの支社勤務だったから、ほとんど家には帰って来ていなかった。
それでも何かと季節のものを送ってきてくれていた。
今は大阪にいる。とうとう彼女が出来たのか・・・というか結婚するの?
「結婚するの?」
「そうよ。子供も出来たみたいなの。」
「マジ、おじさんになっちゃう。」俺オジサン・・・。
「そうね、相手のご両親にもとっくに許可をもらってるみたいで。」
「そうなんだ。へ~。」
さすがに手ごろな年かも。
「どんな人だろう?」
「少し年下のOLさんらしいわよ。違う会社だって。かわいい人らしいから祐も楽しみにしてて。とりあえず日曜日の午後よ、一緒にお昼を食べるのから。分かったわね。」
「了解です。」
楽しみだ。どんな人だろう。
日曜日、兄が連れてきたのは本当にかわいらしい人だった。
やはり面食いだったのか・・・。
第一にそう思ったほど。顔立ちは派手ではないが優しそうで、笑顔も自然で。
絶対かわいい子が生まれるだろう。
いいなあ。
ついつい女の人ばっかり見ていた。
だって兄を今さら見つめる意味もないし。
「祐、お前、人の彼女欲しがるなよ。」
「なっ。」
「さっきから真奈ばっかり見てるだろう。」
そんなこと本人の前で言うな!
「まあ、似てるよな。」
「何だよ。かわいいお嫁さんを自慢したいのかよ。」
「そうだ。参ったか。」
兄に揶揄われた。そんなに見てただろうか。
「確かに似てるわね。なんとなく。」
「誰に?」
「しおりちゃん。」
「へ?」
もう一度まじまじと見てしまって・・・とうとう顔を伏せられた。
すみませんと謝る羽目に。
そうだろうか?一人考える。
思い出せるのは高校生の頃のしおりの顔で。
しおりも化粧したりしたら・・・こうなる?
「分かんない、似てるかどうか。別に似てなくてもすごく可愛らしい人だよ。兄貴にはもったいない。」
「そうかい、そうかい。お前が誰を連れてくるか楽しみにしてるよ。」
「まだ大学生だよ。ずっと先だよ。」
「だろうな。」あっさりそう言われた。
残念だが今のところ全くその手の話には縁がない。
本当にまじめな大学生なのだ。
自分はこんなに人気がないんだろうかと思うほど。
そこそこ普通なのに。優しい奴なのに。
まあ、好きになった子もいないけど。
焦るな焦るな。絶対大好きになるような相手を見つけてやるぞ。
兄貴にも自慢できる子を、いつか。きっと。絶対。・・・・多分。
顔合わせは終わった。
なんと今度は本社に戻れるらしい。もちろん東京だ。
そして子供が生まれて。ずっと東京かもしれないと言っていた。
可愛いだろうなあ。子供。男の子らしい。
何だか弟が生まれる感覚で待ち遠しい。
手を振って駅に向かう二人。
手をつないで歩くその後姿がうらやましかった。
落ち着いた兄なのだ。
もう歯向かう気すらないくらいに。
ライバルにもなり得ないくらいの年の差は尊敬に変わり。
そして今もその気持ちは変わらない。
結婚式は子供が1歳になるころにするらしい。
とりあえず両家の挨拶など済ませて入籍と引っ越しをして、出産準備に入るとのことだった。
お嫁さんも東京出身でその点は良かった。
オジサンになる前に就職活動、卒業と自分も忙しかった。
兄貴ほど大きな会社じゃないので、勤務地はもちろん東京だった。
夏にボーナスをもらったら一人暮らしを始めようかと考えていた。
どっちが楽かといえば実家暮らしが楽なんだが。
ただうっすらと考えていただけなのに、いつまでも甘えるなと父親の言葉が飛んできた。
何で?寂しくないのか?末っ子なのに・・・・。
「お前は楽な方にばかり流れる。少しは自立して一人前になれ。」
そう言われた。
はいその通りです。
就職と同時に一人暮らしに踏み切った。
親から借金をした。出世払いが数カ月続く予定。
手に入れたのは自由。それでも意外に自分がマメだと知った。
なんとなくご飯も作り、こまめに掃除をして、洗濯ゴミ出しなどもまったく苦にならない。
さすがに仕事後は面倒だけど、週末にはせっせと掃除に励んだ。
だって他にすることがなかったんだ。
大学生活ではほとんど男子とつるんだ。男子ばかりと。
それでも彼女のいる奴が多くて、張り切った奴は大学生活で一桁マックスくらいまで彼女が変わっていた。
何故?
何故そう簡単に出来るんだ?
参考までに聞いてみた。
「なあ、声かけるほう?かけられる方?」
「両方だよ。待ってても出会いは来ない、攻める攻める。時々攻められる。いろんなタイプと付き合って見極めるほうがいいじゃん。タスクはどうしてるの?」
話すことは何もなかった。
「もてないはずないけどな。でもあんまりその気なさそうに見えるから。はやりの草食系だな。」
結局平たんに過ごした大学生時代。
結論、やっぱり自分はもてないらしい。
うっすらと詩織の就職先も聞いた。
母親が教えてくれたので耳に入ったんだ。
そしてあまりにも有名なところだったから忘れられない。
大きな駅の大きな老舗デパート。紳士用品売り場。
1階のネクタイやハンカチを売る売り場にいると。
どうせ仕事の営業での外回りの時に通る道。
何度か中に入ろうかと思ったが、実際にショーウィンドウの前で立ち止まっても中に入ることもなく。
『まだまだしおりも慣れないだろうし、忙しいだろうし。』
うだうだと心で言い訳をしていた。
「久しぶりだね、元気?」ただ、そう声をかけるだけでいいのに。
今更ながらそんな簡単なこともできなくなってしまった関係だと、そういうことだろう。
自分は会ってないが母親は実家に帰ってきたしおりに会ってるらしい。
「凄くきれいになったのよ。」そう言っていた。
今日もくるりと背を向けて歩き出した。
熱い中から会社に帰るとみんなにねぎらわれる。
夏も冬も営業はつらい。
雨の日も嫌だなあ。
でも小心者でも何とかやれている。
相手に嫌われることなく、そつなくできてるなんて、自分やるじゃないかと思ったりして。営業成績もずば抜けてはいないけど、そこそこ安定。
事務用品のメーカーに就職して営業に配属されて。
やっと独り立ちを始めたばかりだけど。
すっかり馴染んだつもりのスーツ。
靴も歩いてる距離がすごいのかすぐダメになる。
靴下に穴・・・昨日も発見して買わなきゃなと思った。
でも・・・・そう、しおりのところは高そうだ。
いいんだ量販店のもので。
そう言い訳して、週末に行くのはそんなところだろう。
秋にはとうとう兄と義姉さんと甥っ子の家族結婚式がある。
ちょっと予定より早まった。
なんと最近は多いらしい、子供一緒の式。
短時間でこじんまりして、料金も抑え目で。
それでも美男美女、しかも甥っ子も可愛い。
天気が良ければいいなあ。
もちろん自分も出席する。
服は兄のを借りるし特に準備するものはない。男は楽だ。
式も今更だし、向こうの両親とも仲良くやってるらしい。
義姉のドレス姿を残したい、それに尽きるのじゃないだろうか?
招待状を持ってくるというので合わせて自分も実家に帰る予定だった。
久しぶりに実家に帰る。
当然隣の家にしおりはいないだろう。
販売なら週末休みなんてめったにないだろう。
今、どこに住んでるのか、自分は知らない。
でも、いつでも会える。
あのデパートに入れば、そこにいるはずだ。
多分、いつでも会える。その気さえあれば。
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