幼なじみの有効期限は?

羽月☆

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16 二人になった週末の過ごし方

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まずは花火。
今年も花火シーズンが始まっていた。
ギリギリ間に合った。
雑誌のイベント特集を買ってきて、カレンダーのハートマークを見ながら書き出す。
今からだとやっぱり離れた場所から見ることになるだろうけどしょうがない。
シフトがあって早く終われる日は6時過ぎには帰れるという。
おやすみの前の日は早いらしい。それに合わせて見ていくと都内でもいくつか見れそうだった。
早速しおりが帰ってきたら相談しよう。

ハートマークを数える。今月はあと半月、それでも6個あった。
もしこれ全部・・・ダメな日が3回位・・・2個を・・・。

勝手に想像してたらしおりに怒られそうだけど、無くなったと言って無言になられると怖い。
なんてひとりでブツブツ言いながら。
そんなに使うつもりなのかと『正』の字を見ながら、あきれながら。



夕方まで掃除をして洗濯をして。
買い物に行こう。タオルとシーツとパジャマと。
狭い部屋の中をスキップするように移動してあっちへ、こっちへ。
携帯にメッセージが来て飛びつくと。

兄からだった。
文章もシンプルに。
『で?』
『うるさい。』
それでもその後『ありがとう』と送ってしまった素直な自分。
これで伝わっただろう。
真奈さんにもみせて、母親にも見せたかも。
今日は父親もいるから、もしかして・・・・・。


そういえば、何であの時子供の話をしたんだろう?
何、話してたっけ?
琉輝の話だと思う。かわいいと。

自分もしおりの子供が欲しいと言ったも同然で。
プロポーズ・・・。
夜くっついてると本当に思い余って言いそうになってしまう。
外とか、昼じゃ言えなさそうなことも、言ってしまったかも。

恥ずかしい。

でも本当に恥ずかしい事なんて小さい頃からお互い知っていて。
おねしょした朝も干された布団でバレるし、親に内緒にしたい事もお互い相談してたりしたし。
でもそれはとても小さなことで、かわいい事で。
ふたりだけの世界を大切にしてきた思い出はたくさんある。
一緒にいると何かのはずみでちらっと思い出が姿を見せる。
そこから一気に色付きの映像があふれ、音声まで伴って脳内に再現される。

懐かしいと思ってると、ふと我に返った時に大人になったしおりが目の前にいて驚いたりもした。

普通の恋人が作る思い出の何倍も持っているから。
だから4年以上の時間、その会えなかった空白の時なんてなんてことない。
昨日一日でもとっても密度の濃い時間を過ごせたし。
明かりの下でしおりと抱き合って本当に・・・俺のものだと思ったから。
誰にも渡さないって。

ハートマークの日を大切にしよう。
カレンダーを見ながらそう思った。


落ち着かない日曜日の午後。
洗濯物を取り込んで、アイロンかけて。
夕飯について考える。
ちゃんと便利な料理サイトで調べて必要なものは書きだしている。
麺類以外。
野菜をたくさん使って彩りよく、パスタを作ることにした。
・・・・全然麺類意外じゃなかった。
自分のレパートリーはそんなものだ。
ニンニクを避けた和風のパスタ。スープ。
パスタに使った野菜の皮や切れ端もきれいに洗い、出汁として利用。
こんなマメなことも苦にならないなんて。しおりに褒めてもらいたい。
夕方にはすっかり下ごしらえも終わり。
何だか徐々に緊張してきたような気がする。


何度も携帯の電源を確認した。
大丈夫入ってるし、切れることはない。
少しうとうととしていたらいつの間にか夕方も過ぎていた。
しゃっきりと起きてタオルや着替えの準備をする。
食器も出しておく。お酒も冷やしてある。甘さ控えめの梅酒を用意した。
炭酸で割ってもいい。

あとベッドも交換したシーツをきれいにして昨日買ったものをピリピリと破り枕の下に忍ばせておく。三個。
自分がリアルに想像して暴走気味なのに気がついて、座り込んで反省した。
しおりは疲れて帰ってくるのに。

こんな事、何度か繰り返せば慣れるのだろうか?
自分が休みの日はこうして迎えたい。
しおりが休みの日、平日だと自分の帰りは遅くなる。
ランチタイムを合わせられるかと言っても・・・無理だし。
やっぱり週末が休みじゃないとなかなか会えないのだろうか?

でも会える日を大切に過ごせば、今はそれでいいと思ったはずで。

結局頭の中にはしおりがいて、いろんな表情のしおりに話しかけていた。

携帯が着信を知らせる。ゆっくりと立ち上がり駅に迎えに行く。
改札で疲れも見せずに笑顔で手を振るしおりを迎えに。




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