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21 謝るのはやっぱり僕で
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今日、タコ飯の下ごしらえをして鮭は臭みを抜いておく。
明日、帰ったらすぐできるようにセットしておくところまで。
本当に自分はマメなんだなって思えてきた。
父親にも教えたい。
絶対父親よりも兄よりも主婦力はある。
自慢していいかは微妙だけど。
しおりに明日の予定を聞いてみる。
『タコ飯作ろうかと思うんだけど来る?』
『タコ飯なくても行くつもりだよ。なんでタコ飯先に書くの?ご飯につられていく行くみたいな返事すると思う?』
『一応書いてみただけ。帰ったらすぐ作れるように下ごしらえしたんだ。鮭汁も作る。食べてね。』
『うん。遅いよ。』
『うん、僕は今のところ早い予定。すごく楽しみ、会いたい。』
『タコ飯込みで楽しみにしてる。私も同じ、会いたい。』
『おやすみ。明日ね。』
『うん、明日。』
そうして翌日も楽しく仕事をして定時に終わる。
ハロウィーンの粘土は進まなかったけど、またにしよう。
『月見』のニス塗りは終わった。
9時にしおりが帰ってくる頃にはご飯も完璧、鮭汁も完璧に。
駅まで迎えに行って一緒に帰ってきた。
ちょっと暗くなる道は心配だ。
しおりがお風呂の間に準備をして待つ。
「タスクはお腹空いてないの?」
「空いた~、でも一緒に食べたい。うたた寝して空腹をやり過ごしたよ。」
「ありがとう。最初っからあんまり無理しないでね。」
「しおり、全然してない。楽しいもん。」
「・・・・ありがとう。」
「この間撮った写真あったでしょう?」
「うん。」
「いろいろ隣のひらりさんに報告したの。ひらりさんも彼氏ができたの。私がハッピーになったから打ち明けられるって言って2人で発表会したの。」
「・・・うん。」
話には聞いてる隣の部屋のきれいなお姉さん。
「それでひらりさんを好きだと言ってくれたのは同じ会社の人で、すっごいイケメンさんなの。話を聞いてる限りじゃちょっと違うタイプだと思ったのに。で、私の話を聞いてしおりさんが想像したタイプはタスクそのものだった。私ちゃんと伝えられてたの、凄いでしょう?写真見せたら思った通りだって。可愛いを連発してた。でもあの写真私が膝に乗ってるのがばれちゃった。他の写真撮ろうね。」
急いで自分も携帯の写真を見る。そうかなあ?
「年上の女の人には見せちゃんダメな写真みたいだよ。まさか光輝さんに・・・」
「見せてないよ。だってしおりスッピンじゃん。2人ともパジャマじゃん。」
「あ、そっか。それでそう考えたのかも。」
「もう、しおりがいきなり撮るから。」
「いいじゃん、だって欲しかったんだもん。」
食事を終えてまたコーヒーを落としながら片づけをする。
余ったものは冷蔵庫へ。ご飯は冷凍しよう。
一度作ると結構ずっと食べるようになるのか・・・・・。
「タスク、料理も特技に入るみたいね。」
「そう?しおり、うれしい?」
「うん、うれしい。帰ってくるのが楽しみ。」
しおりの隣に座り聞く。
「この間ね、同期の女の人が粘土みたいなので動物作るのがすごくうまいって分かって。今度の販売提案のサンプルも作って欲しいってお願いしたんだ。その夜同期四人で飲んでた時にその人が言ったんだけど。どうやらお願いするときに『ダメ?』って何度か言ったみたいなんだ。『女の人が誤解するから言わない方がいい』って言われたんだけど、しおりどう思う?」
しおりが考えたあと、無表情になってこっちを向いた。
「もしかして初めて飲んだの?」
「うん、仲良く話すようになったのは初めてなくらいだから。そういえば、同期だけ4人では初めて。男の同期とはよく話したり飲んだりしてたけど。」
「彼氏彼女いるいないの話にはならなかったの?」
「それが・・・・堺って同期の男の方にはしおりの事を相談してたから、月曜日の朝に教えた。そしたら夜にみんなの知るところになった。ごめん。」
「じゃあ、その最後にさっきのセリフ言われたの?」
「うん、飲み会が終わってから。堺がトイレに行って待ってるとき。・・・どうしたの?」
相変わらず表情がない。怖い。
聞くべきじゃなかった話だった?
言うべきじゃなかった話だった?
飲みに行ったのも打ち上げみたいなノリでしたが。
ダメですか?
いきなり顔を両手で挟まれた。
「悩んでるの?」
しおりがそのまま聞いてくる。口が動かないです。
「別に・・・ちょっと気になっただけ。」
なんとか言葉になった。
「じゃあもう忘れれば。」
なんでみんな同じことを言う?
「皆にもそう言われた。なんだかすごく怒られた気がして、本人もきつい言い方したって言って、次の日も元気なさそうな怒ってそうな。だからもう一人の女の子に聞いてみた。堺もその子も忘れてって言った。それに午後には普通になったみたいだったから忘れたふりしてるけど。」
「気になるの?」
「やっぱり甘えすぎたのがいけなかったのかな?僕が言い出した提案で新人4人同じように動いてもらったんだ。展示の仕方を工夫してもらおうって案をだしてみたんだけど。僕、図画工作の類はまったく才能ないから。」
しおりは知ってるだろう。
一緒に夏休みの課題もやった。
かなり手伝ってもらってたし。
「ねえ、タスク、・・・・触って。お願い。・・・ダメ?」
いきなりしおりが膝に乗ってきた。どうしたの?
でもふざけてないし。
しおりの頬に手をやってゆっくり胸に動かして・・・。
そうしたら、いきなり手を掴まれた。
「しおり?」
「ねえ、タスク。今どう思った?」
しおりは膝から降りて僕の手を離す。
え?何?何ごっこ?罰ゲーム?
「何?わかんない?どうしたの?怒ってる?」
「私がお願いしたのに途中で手を止めさせたりしたことを、タスクはどう思ってるのかって聞いてるの。」
「やっぱり怒ってる?怒ったから・・・・。」
無表情で見つめ合う。
「ダメだ。タスクは全然女心が分からないんじゃない?」
「分かんないよ。男だから。」
しおりだって分からないだろう?
男の気持ち、僕の気持ち。
さっきみたいに途中でやめたりして・・・・・、何って・・・・。
「タスクが一人だけ鈍感だっていうのは分かってる。」
「何だよ。ひどい言い方ばかりして。しおりが何に怒ってるのか分からない。」
しおりがこっちを向いた。困った顔をする。
困ってるのはこっちなのに。
何が悪かったのか言って欲しいのに。
「タスク、もう寝よう。明日仕事でしょう。」
1人でバスルームに行って歯磨きをするしおり。
まだ大丈夫だよ、眠れないよ。疲れてないもん。
さっきのが何だったのか分からない。
なんであんな平気なふりで僕を振り回すんだろう?
何がしおりを怒らせたんだろう?疑問ばかりだ。
歯磨きを終えてこっちを向いたしおり。
それでも何も言わずに一人で寝室に向かった。
1人残されてドアが閉まるのを見ていた。
大きくため息をつく。
楽しみにしてたのに。
あんなに会いたくて会いたくて、楽しみにしてたのに。
同じようにして歯磨きして片づけをして、電気を消した。
寝室の前で立ち止まり息を吐く。
ゆっくりドアを開けてしおりの隣に潜り込む。
目覚ましをセットしてあるのを確認する。
「しおり、疲れてる?」
「別に普通だよ。」
腹ばいで肘をつきまだ寝ないアピールをする。
それでもしおりは半分だけ背中を向けて顔も壁を向いている。
「しおり、こっちを向いてよ。」
そう言って肩を少し強引にこっちに向ける。
「何が悪かった?俺はしおりに酷い事をした?してないよ。まったく思い当たらない。しおりが怒るところが分からない。あんな事されて平気で寝れるの?俺はできないよ。悪いけど。」
体は天井を向いてその上に覆いかぶさるようにしても顔は相変わらず壁を向いていて。
「触るよ、お願いしたよね。今更無しにはしないでよ。」
キスをしないでわざと胸から手を這わせていく。
しおりだけが傷ついてると思ってるの?なら間違いだよ。
しおりだけ勝手に怒ってるけど、俺も分からなくて困ってるし、ちょっとは怒ってるから。
ゆっくり肌に触れる。声も聞こえない。
止めた方がいいと分かってるのに、でも意地になったようにやめられない。
いつもなら声を出して縋りついてくるのに。全然微動だにせず。
感じてない?
馬鹿らしくなって手の動きを止める。
しおりから離れて横になって背中を向ける。
何でなんだよ。
まだほんのちょっとだけの恋人で、数年間のブランクがあるし、分からないことがあっても普通だし。
ちゃんと教えてくれなきゃ。
自分から言い出すのも負けたようで嫌だった。
ゆっくり起きて寝室から出る。
テーブルのところに行って座り込む。
あんなにくっついて笑ってたのに。絶対離れないって言ったのに。
何でだよ。
寝室からしおりが出てきた。
「タスク、私は言えない。皆がタスクには言わないことを私が言うべきじゃないのに。さっき分かるようにしたのに、タスクが気づかないのよ。」
隣に座ってそう言うしおり。
だから何を気づけと言うんだよ。分からないよ。皆って誰だよ。
「分からないよ、ずっと分からないよ。でも、ずっとわからないでいろって事なんだろう、教えないってことはそういうことなんだろう。」
「皆、そういうことにしたいの、誰かを傷つけないために。でも私は嫌なの。タスクの近くにそんな人がいるって分かったら、本当は言いたくないけどちゃんとタスクに大丈夫だって言って欲しいから。しおりだけだって言って欲しいから。」
「そんなの何度も言ったじゃない。触ってって言われたから触ったよ。しおりが欲しがることしたいし、喜ばせたいくて一生懸命なのに。」
「私が言ってもいいの?怒らない?」
「何を?・・・・何を言うの?」
「だから・・・『ダメ?』って何度も甘えるように言って、タスクはその子をその気にさせたのに、彼女が出来ましたって聞かされて、その子はショックだったのよ。だから、あんな言い方したら誤解するからってタスクに言ったのよ。何であんな風に自分に甘えたようないい方したの?って言いたかったのよ。彼女の気持ちに周りが気がついて忘れろって言われたでしょう?」
???
「もっと、わかりやすく言ってくれる?」
「だからそんな風に言うと女の子は誤解するって言ったのは何て女の子?」
「友永さんって言う人。」
「その人はタスクの事が好きになったの。いつからか分からないけど。タスクが甘えるように自分に言ってきたから、その友永さんはもしかしてって思ったの。なのに、タスクに彼女が出来たってバラしたのは堺さんでしょう。男の人よね。無神経に言ったのよ。友永さんの前で。知らなかったかもしれないから、しょうがないけど。友永さんの気持ちに気がついた女の人がいたでしょう。忘れてって言ったのもその人でしょう?」
「うん、でも堺もそう言った。」
「だから堺さんも後で気がついて、悪かったって思ったの。反省したの。」
そう言われても・・・・理解はできたけど・・・・。
「どう?合ってる?それとも私の方こそ勘違いしてる?」
「わ、分からない。そんなこと。」
分からない。
いきなり友永さんの気持ちを聞かされても自分にはわからない。
「本当にそう?よく考えて。そう思えてくるでしょう?」
「それは・・・・。」
「皆がタスクには忘れてって言う、私もそうしてもらいたい。でもそれでも嫌なの。もしその人がずっと忘れなかったら、諦めなかったら。タスクを取られるかもしれない。ずっと一緒にいるのよ。どちらかがやめるまで、ずっと一緒の会社に。毎日会うのよ。私は嫌よ。諦めて欲しい。タスクの事なんか嫌いになればいい。」
「何で、僕にはどうしようもないのに。ただ好きなのはしおりだけだから。」
「だって、分からないじゃない。」
「分かるよ。絶対離さないって言ってるよ。仕事中もお月見も、ハロウィーンもしおりと過ごしたいって思ってたら、堺にバレて馬鹿って怒られて。しおりだけだよ。」
「そんな言葉で未来まで言い切れるの?」
「しおり、こっち向いて。俺を信じないの?しおりを選んだ俺も、しおりが選んだ俺も、信じられないの?」
「そんなの・・・信じたいけど。」
「じゃあ信じてよ。未来なんて遠くを見るから駄目なんだよ、今とちょっと先を見てれば、そのずっと先もそんなに変わることなんてないよ。今が続いて未来につながるんだから。天変地異が起こっても離れないって。」
「ごめん・・・ごめんなさい。」
「しおりが何を怒ってるのかずっと考えてた。」
「怒ってなんかない、ちょっと不安だっただけ。」
「じゃあ、怒ってないって言ってよ。さっきも全然感じてなかった。」
「・・・・やっぱり怒ってたかも。だってタスクが甘いこと言うからいけないんじゃない。彼女が言ったように誤解させたタスクが悪い。やっぱりタスクが悪いのよ。馬鹿で鈍感でどうしようもないんだから。」
「やっぱり最後に謝るのは僕?」
「そうタスクよ。偉そうに俺俺って言ってたのに。やっぱり悪いのはタスクなの。」
「・・・ごめん、しおり、許して。」
さっきあんなに避けていたキスをする。
ほとんど暗闇の中。
でも間違えない。
「許して。」もう一回キスをする、長く。
体を抱き寄せてしおりの手が首に回るまで引き寄せて。
「許す。」
やっと許してもらえた。
「でも、そんなに甘い事は言ってないよ。全然違うよ。しおりが聞いたら何でって思うくらい普通の言葉だよ。しおりに言うのとは違うんだから。」
グダグダと言い訳をしながらキスをして、さっきと同じように肌に触れていく。
ゆっくり胸に這わせると甘く声を出してくれた。
もっと聞きたくて大きく膨らみに手を置いて揺らす。
「しおり、気持ちいいよ。やわらかくて。」
「うぅう・・・・ん。」
体を揺らしながら答える声こそ甘い。
結局眠くない夜は無理に寝る必要もないと分かった。
だって一人じゃないから。
一緒に起きてれば話も出来るし、愛し合うことだってできる。
それでも寝室のベッドの上には行こう。
同じ暗闇でも枕の下にあるものは必要だから。
明日、帰ったらすぐできるようにセットしておくところまで。
本当に自分はマメなんだなって思えてきた。
父親にも教えたい。
絶対父親よりも兄よりも主婦力はある。
自慢していいかは微妙だけど。
しおりに明日の予定を聞いてみる。
『タコ飯作ろうかと思うんだけど来る?』
『タコ飯なくても行くつもりだよ。なんでタコ飯先に書くの?ご飯につられていく行くみたいな返事すると思う?』
『一応書いてみただけ。帰ったらすぐ作れるように下ごしらえしたんだ。鮭汁も作る。食べてね。』
『うん。遅いよ。』
『うん、僕は今のところ早い予定。すごく楽しみ、会いたい。』
『タコ飯込みで楽しみにしてる。私も同じ、会いたい。』
『おやすみ。明日ね。』
『うん、明日。』
そうして翌日も楽しく仕事をして定時に終わる。
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『月見』のニス塗りは終わった。
9時にしおりが帰ってくる頃にはご飯も完璧、鮭汁も完璧に。
駅まで迎えに行って一緒に帰ってきた。
ちょっと暗くなる道は心配だ。
しおりがお風呂の間に準備をして待つ。
「タスクはお腹空いてないの?」
「空いた~、でも一緒に食べたい。うたた寝して空腹をやり過ごしたよ。」
「ありがとう。最初っからあんまり無理しないでね。」
「しおり、全然してない。楽しいもん。」
「・・・・ありがとう。」
「この間撮った写真あったでしょう?」
「うん。」
「いろいろ隣のひらりさんに報告したの。ひらりさんも彼氏ができたの。私がハッピーになったから打ち明けられるって言って2人で発表会したの。」
「・・・うん。」
話には聞いてる隣の部屋のきれいなお姉さん。
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「年上の女の人には見せちゃんダメな写真みたいだよ。まさか光輝さんに・・・」
「見せてないよ。だってしおりスッピンじゃん。2人ともパジャマじゃん。」
「あ、そっか。それでそう考えたのかも。」
「もう、しおりがいきなり撮るから。」
「いいじゃん、だって欲しかったんだもん。」
食事を終えてまたコーヒーを落としながら片づけをする。
余ったものは冷蔵庫へ。ご飯は冷凍しよう。
一度作ると結構ずっと食べるようになるのか・・・・・。
「タスク、料理も特技に入るみたいね。」
「そう?しおり、うれしい?」
「うん、うれしい。帰ってくるのが楽しみ。」
しおりの隣に座り聞く。
「この間ね、同期の女の人が粘土みたいなので動物作るのがすごくうまいって分かって。今度の販売提案のサンプルも作って欲しいってお願いしたんだ。その夜同期四人で飲んでた時にその人が言ったんだけど。どうやらお願いするときに『ダメ?』って何度か言ったみたいなんだ。『女の人が誤解するから言わない方がいい』って言われたんだけど、しおりどう思う?」
しおりが考えたあと、無表情になってこっちを向いた。
「もしかして初めて飲んだの?」
「うん、仲良く話すようになったのは初めてなくらいだから。そういえば、同期だけ4人では初めて。男の同期とはよく話したり飲んだりしてたけど。」
「彼氏彼女いるいないの話にはならなかったの?」
「それが・・・・堺って同期の男の方にはしおりの事を相談してたから、月曜日の朝に教えた。そしたら夜にみんなの知るところになった。ごめん。」
「じゃあ、その最後にさっきのセリフ言われたの?」
「うん、飲み会が終わってから。堺がトイレに行って待ってるとき。・・・どうしたの?」
相変わらず表情がない。怖い。
聞くべきじゃなかった話だった?
言うべきじゃなかった話だった?
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ダメですか?
いきなり顔を両手で挟まれた。
「悩んでるの?」
しおりがそのまま聞いてくる。口が動かないです。
「別に・・・ちょっと気になっただけ。」
なんとか言葉になった。
「じゃあもう忘れれば。」
なんでみんな同じことを言う?
「皆にもそう言われた。なんだかすごく怒られた気がして、本人もきつい言い方したって言って、次の日も元気なさそうな怒ってそうな。だからもう一人の女の子に聞いてみた。堺もその子も忘れてって言った。それに午後には普通になったみたいだったから忘れたふりしてるけど。」
「気になるの?」
「やっぱり甘えすぎたのがいけなかったのかな?僕が言い出した提案で新人4人同じように動いてもらったんだ。展示の仕方を工夫してもらおうって案をだしてみたんだけど。僕、図画工作の類はまったく才能ないから。」
しおりは知ってるだろう。
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かなり手伝ってもらってたし。
「ねえ、タスク、・・・・触って。お願い。・・・ダメ?」
いきなりしおりが膝に乗ってきた。どうしたの?
でもふざけてないし。
しおりの頬に手をやってゆっくり胸に動かして・・・。
そうしたら、いきなり手を掴まれた。
「しおり?」
「ねえ、タスク。今どう思った?」
しおりは膝から降りて僕の手を離す。
え?何?何ごっこ?罰ゲーム?
「何?わかんない?どうしたの?怒ってる?」
「私がお願いしたのに途中で手を止めさせたりしたことを、タスクはどう思ってるのかって聞いてるの。」
「やっぱり怒ってる?怒ったから・・・・。」
無表情で見つめ合う。
「ダメだ。タスクは全然女心が分からないんじゃない?」
「分かんないよ。男だから。」
しおりだって分からないだろう?
男の気持ち、僕の気持ち。
さっきみたいに途中でやめたりして・・・・・、何って・・・・。
「タスクが一人だけ鈍感だっていうのは分かってる。」
「何だよ。ひどい言い方ばかりして。しおりが何に怒ってるのか分からない。」
しおりがこっちを向いた。困った顔をする。
困ってるのはこっちなのに。
何が悪かったのか言って欲しいのに。
「タスク、もう寝よう。明日仕事でしょう。」
1人でバスルームに行って歯磨きをするしおり。
まだ大丈夫だよ、眠れないよ。疲れてないもん。
さっきのが何だったのか分からない。
なんであんな平気なふりで僕を振り回すんだろう?
何がしおりを怒らせたんだろう?疑問ばかりだ。
歯磨きを終えてこっちを向いたしおり。
それでも何も言わずに一人で寝室に向かった。
1人残されてドアが閉まるのを見ていた。
大きくため息をつく。
楽しみにしてたのに。
あんなに会いたくて会いたくて、楽しみにしてたのに。
同じようにして歯磨きして片づけをして、電気を消した。
寝室の前で立ち止まり息を吐く。
ゆっくりドアを開けてしおりの隣に潜り込む。
目覚ましをセットしてあるのを確認する。
「しおり、疲れてる?」
「別に普通だよ。」
腹ばいで肘をつきまだ寝ないアピールをする。
それでもしおりは半分だけ背中を向けて顔も壁を向いている。
「しおり、こっちを向いてよ。」
そう言って肩を少し強引にこっちに向ける。
「何が悪かった?俺はしおりに酷い事をした?してないよ。まったく思い当たらない。しおりが怒るところが分からない。あんな事されて平気で寝れるの?俺はできないよ。悪いけど。」
体は天井を向いてその上に覆いかぶさるようにしても顔は相変わらず壁を向いていて。
「触るよ、お願いしたよね。今更無しにはしないでよ。」
キスをしないでわざと胸から手を這わせていく。
しおりだけが傷ついてると思ってるの?なら間違いだよ。
しおりだけ勝手に怒ってるけど、俺も分からなくて困ってるし、ちょっとは怒ってるから。
ゆっくり肌に触れる。声も聞こえない。
止めた方がいいと分かってるのに、でも意地になったようにやめられない。
いつもなら声を出して縋りついてくるのに。全然微動だにせず。
感じてない?
馬鹿らしくなって手の動きを止める。
しおりから離れて横になって背中を向ける。
何でなんだよ。
まだほんのちょっとだけの恋人で、数年間のブランクがあるし、分からないことがあっても普通だし。
ちゃんと教えてくれなきゃ。
自分から言い出すのも負けたようで嫌だった。
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あんなにくっついて笑ってたのに。絶対離れないって言ったのに。
何でだよ。
寝室からしおりが出てきた。
「タスク、私は言えない。皆がタスクには言わないことを私が言うべきじゃないのに。さっき分かるようにしたのに、タスクが気づかないのよ。」
隣に座ってそう言うしおり。
だから何を気づけと言うんだよ。分からないよ。皆って誰だよ。
「分からないよ、ずっと分からないよ。でも、ずっとわからないでいろって事なんだろう、教えないってことはそういうことなんだろう。」
「皆、そういうことにしたいの、誰かを傷つけないために。でも私は嫌なの。タスクの近くにそんな人がいるって分かったら、本当は言いたくないけどちゃんとタスクに大丈夫だって言って欲しいから。しおりだけだって言って欲しいから。」
「そんなの何度も言ったじゃない。触ってって言われたから触ったよ。しおりが欲しがることしたいし、喜ばせたいくて一生懸命なのに。」
「私が言ってもいいの?怒らない?」
「何を?・・・・何を言うの?」
「だから・・・『ダメ?』って何度も甘えるように言って、タスクはその子をその気にさせたのに、彼女が出来ましたって聞かされて、その子はショックだったのよ。だから、あんな言い方したら誤解するからってタスクに言ったのよ。何であんな風に自分に甘えたようないい方したの?って言いたかったのよ。彼女の気持ちに周りが気がついて忘れろって言われたでしょう?」
???
「もっと、わかりやすく言ってくれる?」
「だからそんな風に言うと女の子は誤解するって言ったのは何て女の子?」
「友永さんって言う人。」
「その人はタスクの事が好きになったの。いつからか分からないけど。タスクが甘えるように自分に言ってきたから、その友永さんはもしかしてって思ったの。なのに、タスクに彼女が出来たってバラしたのは堺さんでしょう。男の人よね。無神経に言ったのよ。友永さんの前で。知らなかったかもしれないから、しょうがないけど。友永さんの気持ちに気がついた女の人がいたでしょう。忘れてって言ったのもその人でしょう?」
「うん、でも堺もそう言った。」
「だから堺さんも後で気がついて、悪かったって思ったの。反省したの。」
そう言われても・・・・理解はできたけど・・・・。
「どう?合ってる?それとも私の方こそ勘違いしてる?」
「わ、分からない。そんなこと。」
分からない。
いきなり友永さんの気持ちを聞かされても自分にはわからない。
「本当にそう?よく考えて。そう思えてくるでしょう?」
「それは・・・・。」
「皆がタスクには忘れてって言う、私もそうしてもらいたい。でもそれでも嫌なの。もしその人がずっと忘れなかったら、諦めなかったら。タスクを取られるかもしれない。ずっと一緒にいるのよ。どちらかがやめるまで、ずっと一緒の会社に。毎日会うのよ。私は嫌よ。諦めて欲しい。タスクの事なんか嫌いになればいい。」
「何で、僕にはどうしようもないのに。ただ好きなのはしおりだけだから。」
「だって、分からないじゃない。」
「分かるよ。絶対離さないって言ってるよ。仕事中もお月見も、ハロウィーンもしおりと過ごしたいって思ってたら、堺にバレて馬鹿って怒られて。しおりだけだよ。」
「そんな言葉で未来まで言い切れるの?」
「しおり、こっち向いて。俺を信じないの?しおりを選んだ俺も、しおりが選んだ俺も、信じられないの?」
「そんなの・・・信じたいけど。」
「じゃあ信じてよ。未来なんて遠くを見るから駄目なんだよ、今とちょっと先を見てれば、そのずっと先もそんなに変わることなんてないよ。今が続いて未来につながるんだから。天変地異が起こっても離れないって。」
「ごめん・・・ごめんなさい。」
「しおりが何を怒ってるのかずっと考えてた。」
「怒ってなんかない、ちょっと不安だっただけ。」
「じゃあ、怒ってないって言ってよ。さっきも全然感じてなかった。」
「・・・・やっぱり怒ってたかも。だってタスクが甘いこと言うからいけないんじゃない。彼女が言ったように誤解させたタスクが悪い。やっぱりタスクが悪いのよ。馬鹿で鈍感でどうしようもないんだから。」
「やっぱり最後に謝るのは僕?」
「そうタスクよ。偉そうに俺俺って言ってたのに。やっぱり悪いのはタスクなの。」
「・・・ごめん、しおり、許して。」
さっきあんなに避けていたキスをする。
ほとんど暗闇の中。
でも間違えない。
「許して。」もう一回キスをする、長く。
体を抱き寄せてしおりの手が首に回るまで引き寄せて。
「許す。」
やっと許してもらえた。
「でも、そんなに甘い事は言ってないよ。全然違うよ。しおりが聞いたら何でって思うくらい普通の言葉だよ。しおりに言うのとは違うんだから。」
グダグダと言い訳をしながらキスをして、さっきと同じように肌に触れていく。
ゆっくり胸に這わせると甘く声を出してくれた。
もっと聞きたくて大きく膨らみに手を置いて揺らす。
「しおり、気持ちいいよ。やわらかくて。」
「うぅう・・・・ん。」
体を揺らしながら答える声こそ甘い。
結局眠くない夜は無理に寝る必要もないと分かった。
だって一人じゃないから。
一緒に起きてれば話も出来るし、愛し合うことだってできる。
それでも寝室のベッドの上には行こう。
同じ暗闇でも枕の下にあるものは必要だから。
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結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
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