25 / 29
25 あの頃の夏の日からつながる今
しおりを挟む昨日は近くを通って、立ち寄ろうと思ってたのに行けなかった。
待っててくれただろうか?
一応無理そうと、途中でメールは入れたんだけど。
「残念だった。」と書かれてただけだった。
「しおり。ご飯食べる?」
「何かあるの?」
「炊き込みご飯作ったから、温めればすぐ出せるよ。あとお味噌汁。」
荷物を、せんべいも入った袋も床に置いてしおりがうれしそうな顔をする。
「タスクはもう食べたの?」
「うん、お昼が時間なくて少しで済ませて、お腹空いたから食べちゃった。それに僕が待つとしおり気にするでしょう?」
「うん、ね、少しだけご飯食べたい。味見したい。タスクのご飯美味しいし。」
「お味噌汁は?」
「それも食べる。お風呂先でいい?」
「どうぞ。」
しおりの荷物を持ってリビングへ運ぶ。
明日は珍しく土曜日休みのしおり。
ふたりの休みが重なる貴重な日。
楽しみで仕方がない。
支度はすぐできるから、まだのんびりとテレビを見ていた。
気が付くとドライヤーの音が聞こえてて、慌てて支度する。
ご飯とお味噌汁。
テーブルに乗せるとすぐにしおりが出てきた。
しおりが持ってきたせんべいの袋。
これが噂のひらりさんからのお裾分けらしい。
とてもきれいな人だと聞いた。
化粧品関係の会社にいるらしく、その彼氏さんもとてもかっこいいと。
美男美女の大人のカップルだと。
ついでにため息をついて、しおりがうらやましいとこぼした。
どういうことだ?
どこに羨望を感じてるのかによっては、ちょっとイラっと来るけど。
大人の女性か?かっこいい彼氏か?大人カップルというところか?
聞けなかった。
天井を見てそう呟いた後の顔は普通で。
「タスクにも紹介したいけど、しない。」
とあっけらかんと言われた。
「ちょっと会いたい。噂の人に。僕、褒められたんだよね?」
そう言ったら嫌そうな顔をした。
「子犬みたいって言われたのを褒められたというならね。ひらりさんが美人じゃなかったら興味ないくせに。」
ぶすっと分かりやすい表情で言うしおりが可愛くて。
うらやましいのは大人カップルということだろう。
自分たちとは年齢も違う。タイプも違う。
年を重ねればそうなれるのか?
自信はないが目指してみてもいい。
「しおりが美人だって言うなら美人だろう?僕の可愛い彼女がお世話になってますって、僕も彼氏ぶりたい。」
そう言うと思いっきり照れた。
最近しおりのツボが分かってきた。
最初は慣れなくてオロオロしてたけど、怒らせないように、無表情にさせないように、どう思っているのか、どういえば安心するのか分かるようになってきた。
きっとしおりもそうだろう。
最初に覚悟したよりも一緒にいる時間は多い。
それがほとんど夜だとしても。
くつろいで部屋でくっついて話をする。
外でデートするよりいっそう分かり合えるじゃないか。
「しおり、なんかいいことあった?」
「う~、別に。どうして?」
「そう、なんとなく、すごくうれしそう。」
「うれしいよ、だって明日は2人でお休みだから。」
「あ、もちろん僕もうれしい。そうか・・・・。」
それであんな嬉しそうな顔してくれるんだ。
それを聞いた自分がもっと嬉しい顔をしたと思う。
本当にずっと一緒にいるのに、いつも一緒が嬉しい。
空気のような存在なんていい事か悪い事か分からないけど、まだまだ質量を持って僕の視界の大部分を占めている。
ずっと見ていたから。
なんて思って一人で照れるけど。
「美味しかった、ごちそうさまでした。」
お湯が沸くのを待たずに食べ終わったらしい。
「ご飯足りた?まだあるよ。」
「ううん、冷凍するでしょう?またでいい。せっかくだからおせんべいも食べてほしいんだ。」
「うん、お茶淹れてるから。」
二人分のお湯のみを持ってテーブルへ。
代わりにしおりの分のお茶碗を片付けて洗っておく。
床に座ってテレビを見ているしおり。
「タスク、テレビ見てたの?」
「うん、暇だったから。」
「いつもは?一人の時は?」
「時々見る。あんまりドラマは見ないけど。なんとなくバラエティ番組がついてる感じ。」
「ね、私、ここに来すぎてる?なんだか同棲してるみたいでしょう?洗濯して掃除して。タスクの時間ないでしょう?それに下着まで洗ってもらって、色気ないなあって、すごく反省したの。」
「下着の事。」
「もう、それだけじゃない。いろいろ。タスク、ねえ・・・・。」
「何?どうしたの?」
しおりがなかなか言い出さない。
「しおり、昨日行けなくてごめんね。すごく楽しみにしてたんだけど。会議が入って予定が早まったんだ。」
「うん、それは仕方ないよ。またね。」
「じゃあ、何?」
「あんまり一緒にいると・・・なんだか新鮮じゃなくなって、なんだか飽きられそうで。下着まで洗ってもらってるなんて、色気もなくて。ねえ、ドキドキする?」
「しおりはそうなりそうな気がするの?僕はしない。いつもしおりが帰ってくるのをドキドキして待って、しおりがいる部屋にワクワクして帰ってくる。一緒にいてもドキドキするよ。色気もあるよ。可愛くても、すごく、変わるし。それがすごく色っぽいし。だから一緒にいたいよ、もっと。しおりは?」
「うん、いたい。」
「良かった。」
頬を挟んてお風呂とご飯で温まった熱を感じる。
「やっぱりかわいいよ。」
キスをする。軽く。
「でも、ドキドキの続きは後でいい?せんべい食べたい。」
せっかくのお土産だし。
「嫌だ・・・。もう少し。」
抱きついてきたしおりを受け止めてキスを繰り返す。
「ねえ、どうなったの?同期の女の人。」
今、それ?なんで?
「えっ、どうもならないよ。」
「全然、普通なの?」
「うん。普通。あんまり二人だけでしゃべることもないけど。」
「ねえ、気にならないの?潮田君のこと。」
「しおり、何でそういうこと言うの・・・・。忘れたいのに。それにもう会わないでしょう?」
「そうだけど、全然気にしてくれないから寂しくて。」
「だって、断ったって言ったし。全然しおりは変わらないし。内緒にしたらもっと違う風に変わるかなあって思ってるけど。」
「うん。内緒ごとは難しい。」
「上手に隠されたら嫌だけどね。」
そんなスキルの向上は望まない。
「ねえ、あと五回。」
「何で五回?」
「なんとなく。」
ゆくっりキスをしながら聞いたら、もう何回だか分からなくなった。
「最後かな?」
「あと1回追加。」
最後をゆっくり深くする。
離れないまま、離れそうでもどこかくっついて。
長く、手を滑らせて腰を引き寄せ合い、しばらくくっついたままゆっくりと最後の1回を堪能した。
「今のカウント、1回でいいの?」
「うん、いいよ。」
「せんべいは明日でもいいよ。」しおりが言う。
「うん、そうする。」
開けてなくてよかった。袋は未開封のまま明日食べることにした。
「ねえ、しおりはすごく色っぽくなるけど、僕は?あんまり変わらない?」
「なる。すごく男らしくなる。照れるくらいかっこいいよ。最初の頃よりずっと大人っぽい声とか顔にもなった。」
「そう?」
「うん。」
ベッドの上で抱き合う。
汗まみれで、触れ合った体から落ちるしずくはどちらの汗か分からない。
小さい頃麦わら帽子をかぶって手をつないで遊んでた。
暑くても手を離さずに。
今は大人になったしおりと体をつなげて。
「しおり、手をつないで。」
「ん?」
両手を指を絡めてつなぐ。
「しおり・・・・忘れて、潮田君は。」
「ごめん、ただ・・・・自分だけ焼きもち焼くのが嫌だから、聞いただけ。忘れてたよ。」
「俺だけだからね。絶対。誰ともつながらないで。」
「もちろんだよ。タスクもね。」
もちろん。
これ以上なく深くつながるように腰を寄せ合い揺れる。
色っぽい声を聴きながら、暗いなかでもその表情を見る。
自分も声が出る。
しおりしか聞いたことない声。しおりにしか反応しないから。
手をつないだまま一緒にのぼりつめる。
あの夏のころ、こんな未来を想像しただろうか。
可愛かった子供のころ。
自分たちが大人になるなんて思いもしなかったけど。
一緒にいることが当たり前になった今、思う。
大人になってよかった。なんでも許される2人。
遊びに行く!って言っても何所にと聞かれることもない、何時までに帰ってきなさいとか言われる事もない。
朝でも昼でも夜で、自由につながりたいときにつながれる2人になった。
止められることはない。
誰にも何も言われない二人になった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる