14 / 41
14 不思議な距離は優しさの距離だと思う。
しおりを挟む
朝、出勤すると既に郡司さんは来ていた。
いつもと変わりないくらいに元気になってるみたいで。
やっぱりこの部屋の主の側に必要な人だし。
いてもらえるだけでも安心する。
思わず笑顔になった。
「おはようございます。もういいんですか?熱は下がりましたか?」
「ありがとう、すっかり良くなりました。ゼリーと果物は芽衣ちゃんからだよね?」
芽衣、ちゃん・・・・・?
「はい、二日分と言われたので、食欲が落ちてても食べられると思って。心配しました、元気になられて良かったです。」
いつものように郡司さんの近くの席で話をしていたら社長が出勤してきた。
振り返って挨拶をする。
「おはようございます。出張お疲れさまでした。」
「社長すみませんでした。」
「良くなったか?」
「はい。おかげさまで、芽衣ちゃんが手厚く看病してくれました。」
いえ、・・・・別に・・・・・。
ほら、社長がびっくりしてますが。
しばし朝陽さんを見ていた社長がちらりとこちらを見た。
思わず固まってしまう。
とりあえず朝陽さんから離れた。
その後二人が朝礼に行った。
私はもう朝礼には参加していない。
そう言えば古い機械類を隣の部屋に集めてたんだった。
集まっただろうか?後で見に行ってみよう。
それにしても、何に使うんだろう?
いつもより時間がかかって、郡司さんだけが帰って来た。
「芽衣ちゃん、今日のランチはごめんね、休んでた間のしわ寄せで、一人でお願いしていいかな?」
「はい、勿論です。郡司さん、無理しないでくださいね、私で出来ることがあったらお手伝いしますので。」
「ありがとう。」
「ねえ、芽衣ちゃんさあ、僕のことは郡司さんじゃなくて朝陽さんでいいけど。社長の事も外では春日さんでいいよ。社長って呼ぶのはやっぱりね。誰かと仕事で会ってる時だけでいいから。」
「郡司さんと呼ぶのもっていうことですか?」
「僕は、朝陽って名字にも聞こえるから常に朝陽でいいけど。」
「・・・・はい。朝陽さん。」
「じゃあ、よろしく。」
気のせいじゃない、グンと距離が縮まった気がするんだけど。
一通り研修も終わって、仕事も決めてくれて、私が居やすいように。
多分そうしてくれてるんだと思う。
「ぐん・・・朝陽さん、とりあえず研修の続きをしてればいいですか?何かお手伝いすることありますか?」
「大丈夫だよ。続きをしていて。あと、この二日間の追加研修の内容も教えてね。」
「はい。それはまとめてますので。」
いつまで研修が続くんだろうって思ってたけど。
でも昨日友達と連絡をとったら、研修は宿泊で一カ月、その後各課への研修が続くと言っていた。
まだまだ私も研修中なのは不思議ではないらしい。
そう思うことにした。
社長がいない時に朝陽さんが声をかけてきた。
「この間のゼリーと果物は美味しくただきました。すごくありがたかったんだ。その上で言うのもどうかと思うけど、社長に頼まれて、鍵も渡されたから断れないとは思うけど、男の人の一人暮らしの部屋に一人で行ったらだめだよ。それが上司だとしても。」
お母さんと同じようなことを、優しい目で言われた。
「・・・はい。すみませんでした。」
つい謝った。
「ううん、悪いのは社長だし、部屋にいれちゃった自分だし。でも本当に助かったんだけどね。」
「もうすっかり良さそうですね?」
「うん、元気になった。本当にありがとう。さっきの事は社長にも言っとくからね。」
「・・・はい。」
お母さんと同じ視線で見てくれるんだと分かった。
それは教授とも同じかもしれない。
そう思えるだけで安心できる。
ドアが開いて視線を外した。
当然戻ってきたのは社長で。
ゆっくり朝陽さんが自分の席へ戻って行った。
お昼の時間になった。
「芽衣ちゃん、今日はちょっと二人で出て来るんだけど。少し遅くなるかも。芽衣ちゃんもゆっくりランチしていいよ。」
「はい。行ってらっしゃい。」
朝陽さんの後、すぐに社長に視線を動かして。
でもどうせ社長と目が合うことはないと思ってたのに、バッチリ合ってしまって。
そのまま逸らせずに部屋を出て行くのを見ていた。
大きく息をついた
ひとりだとあんまり食べる気はしないけど、お腹が鳴るのも恥ずかしいから。
少し時間をずらして、外に買いに行くことにした。
席を立ち財布を持ってコンビニに行く。
あ、そういえば、鍵を返すのを忘れてた。
今思い出した。
机の引き出しに入れたままだ。
後で忘れずに返そう。
いつもと変わりないくらいに元気になってるみたいで。
やっぱりこの部屋の主の側に必要な人だし。
いてもらえるだけでも安心する。
思わず笑顔になった。
「おはようございます。もういいんですか?熱は下がりましたか?」
「ありがとう、すっかり良くなりました。ゼリーと果物は芽衣ちゃんからだよね?」
芽衣、ちゃん・・・・・?
「はい、二日分と言われたので、食欲が落ちてても食べられると思って。心配しました、元気になられて良かったです。」
いつものように郡司さんの近くの席で話をしていたら社長が出勤してきた。
振り返って挨拶をする。
「おはようございます。出張お疲れさまでした。」
「社長すみませんでした。」
「良くなったか?」
「はい。おかげさまで、芽衣ちゃんが手厚く看病してくれました。」
いえ、・・・・別に・・・・・。
ほら、社長がびっくりしてますが。
しばし朝陽さんを見ていた社長がちらりとこちらを見た。
思わず固まってしまう。
とりあえず朝陽さんから離れた。
その後二人が朝礼に行った。
私はもう朝礼には参加していない。
そう言えば古い機械類を隣の部屋に集めてたんだった。
集まっただろうか?後で見に行ってみよう。
それにしても、何に使うんだろう?
いつもより時間がかかって、郡司さんだけが帰って来た。
「芽衣ちゃん、今日のランチはごめんね、休んでた間のしわ寄せで、一人でお願いしていいかな?」
「はい、勿論です。郡司さん、無理しないでくださいね、私で出来ることがあったらお手伝いしますので。」
「ありがとう。」
「ねえ、芽衣ちゃんさあ、僕のことは郡司さんじゃなくて朝陽さんでいいけど。社長の事も外では春日さんでいいよ。社長って呼ぶのはやっぱりね。誰かと仕事で会ってる時だけでいいから。」
「郡司さんと呼ぶのもっていうことですか?」
「僕は、朝陽って名字にも聞こえるから常に朝陽でいいけど。」
「・・・・はい。朝陽さん。」
「じゃあ、よろしく。」
気のせいじゃない、グンと距離が縮まった気がするんだけど。
一通り研修も終わって、仕事も決めてくれて、私が居やすいように。
多分そうしてくれてるんだと思う。
「ぐん・・・朝陽さん、とりあえず研修の続きをしてればいいですか?何かお手伝いすることありますか?」
「大丈夫だよ。続きをしていて。あと、この二日間の追加研修の内容も教えてね。」
「はい。それはまとめてますので。」
いつまで研修が続くんだろうって思ってたけど。
でも昨日友達と連絡をとったら、研修は宿泊で一カ月、その後各課への研修が続くと言っていた。
まだまだ私も研修中なのは不思議ではないらしい。
そう思うことにした。
社長がいない時に朝陽さんが声をかけてきた。
「この間のゼリーと果物は美味しくただきました。すごくありがたかったんだ。その上で言うのもどうかと思うけど、社長に頼まれて、鍵も渡されたから断れないとは思うけど、男の人の一人暮らしの部屋に一人で行ったらだめだよ。それが上司だとしても。」
お母さんと同じようなことを、優しい目で言われた。
「・・・はい。すみませんでした。」
つい謝った。
「ううん、悪いのは社長だし、部屋にいれちゃった自分だし。でも本当に助かったんだけどね。」
「もうすっかり良さそうですね?」
「うん、元気になった。本当にありがとう。さっきの事は社長にも言っとくからね。」
「・・・はい。」
お母さんと同じ視線で見てくれるんだと分かった。
それは教授とも同じかもしれない。
そう思えるだけで安心できる。
ドアが開いて視線を外した。
当然戻ってきたのは社長で。
ゆっくり朝陽さんが自分の席へ戻って行った。
お昼の時間になった。
「芽衣ちゃん、今日はちょっと二人で出て来るんだけど。少し遅くなるかも。芽衣ちゃんもゆっくりランチしていいよ。」
「はい。行ってらっしゃい。」
朝陽さんの後、すぐに社長に視線を動かして。
でもどうせ社長と目が合うことはないと思ってたのに、バッチリ合ってしまって。
そのまま逸らせずに部屋を出て行くのを見ていた。
大きく息をついた
ひとりだとあんまり食べる気はしないけど、お腹が鳴るのも恥ずかしいから。
少し時間をずらして、外に買いに行くことにした。
席を立ち財布を持ってコンビニに行く。
あ、そういえば、鍵を返すのを忘れてた。
今思い出した。
机の引き出しに入れたままだ。
後で忘れずに返そう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ズボラ上司の甘い罠
松丹子
恋愛
小松春菜の上司、小野田は、無精髭に瓶底眼鏡、乱れた髪にゆるいネクタイ。
仕事はできる人なのに、あまりにももったいない!
かと思えば、イメチェンして来た課長はタイプど真ん中。
やばい。見惚れる。一体これで仕事になるのか?
上司の魅力から逃れようとしながら逃れきれず溺愛される、自分に自信のないフツーの女子の話。になる予定。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
花里 美佐
恋愛
冷淡財閥御曹司VS失業中の華道家
結婚に興味のない財閥御曹司は見合いを断り続けてきた。ある日、祖母の師匠である華道家の孫娘を紹介された。面と向かって彼の失礼な態度を指摘した彼女に興味を抱いた彼は、自分の財閥で花を活ける仕事を紹介する。
愛を知った財閥御曹司は彼女のために冷淡さをかなぐり捨て、甘く変貌していく。
誘惑の延長線上、君を囲う。
桜井 響華
恋愛
私と貴方の間には
"恋"も"愛"も存在しない。
高校の同級生が上司となって
私の前に現れただけの話。
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
Иatural+ 企画開発部部長
日下部 郁弥(30)
×
転職したてのエリアマネージャー
佐藤 琴葉(30)
.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚+.。.:✽・゚
偶然にもバーカウンターで泥酔寸前の
貴方を見つけて…
高校時代の面影がない私は…
弱っていそうな貴方を誘惑した。
:
:
♡o。+..:*
:
「本当は大好きだった……」
───そんな気持ちを隠したままに
欲に溺れ、お互いの隙間を埋める。
【誘惑の延長線上、君を囲う。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる