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13 いい奴に、いい友達に、びっくり敏い後輩に。
しおりを挟む「砂羽、今日飲みに行こうよ。」
直接誘いに来た來未。
それは意味があるんだろうか?
とても楽しそうな表情が気になる。
すごくいい報告があるんだろうか?
前ほどそれを気にしてうかがうようにしなくなったけど、何だか本当に嬉しそう。
『聞いてよ、いいことがあったんだ。』そう顔が言ってるみたい。
「いいよ。」
「じゃあ、決まり。友成君、今日は砂羽を借りるね。」
またわざわざ友成に断る。
「だから何でわざわざ友成に断るのよ。」
いつものように私はそこに疑問を呈するように言う。
ただ、隣を見たら・・・顔が赤い。
おいおい・・・・。
「それじゃあ、夕方ね。楽しみだね。」
やっぱり楽しい時間にするつもりらしい。
私も楽しみたいとは思ってるよ。
一応おめでとうと言う気持ちを持って、びっくりしてもすぐにおめでとうが言えるように・・・・。
そう、難しくないと思いたい。
來未がいなくなった後に隣を見た。
「顔が赤いけど、暑いの?」
わざとらしく言ったらじっと見られた後「知らないから。」そう言われた。
何よ・・・。そんな態度じゃバレるじゃない。
もっと普通にしてよ。
とりあえず今日は急遽飲みに行くことになった。
楽しい夜が待ってるらしい。
まさか、また誰か紹介するとかじゃないよね。
平日だし、そうだとしても打ち合わせだよね。
断るよ。
詳しくは言えなくても断るよ。
チラリと隣を見て、何だろうといろんなことを考えて。
でもやっぱり嬉しい報告が一番かもしれないと思った。
仕事が終わって連絡をする。
來未も終わってるというのでエレベーターの前で会って、一緒に降りて会社を出た。
「友成君は残業?」
「友成?あと少しだって言ってたけど、なに?誘いたかったの?」
「う~ん・・・とりあえず砂羽だけでいいや。」
友成は同期で飲むときはあんまり参加してない。
三人で一緒にってないのに、どうしたのよ?
これで三木さんの事を思い出さなきゃ友成のモテ期到来って思ってあげるところなのに、残念・・・・まったく好みじゃないだろう。
そもそも友成が好みのタイプだって言う人と今まで出会ってない。
友成も出会ってないんだから、私が出会うはずがない。
言わせてもらうと私だってイケメン志向だったし・・・じゃあ、何で・・・こうなったんだと。
世の中には事実は小説よりも妄想よりも二次元漫画よりも奇なりってことはあるらしい。
そんな説明付かない事はままあるから。
「最近どう?」
「・・・・別に。」
もしかして本当に紹介??
ちょっと前なら飛びあがりたいくらいうれしい事だっただろうに。
どんなイケメンか興味はあるけど・・・今はいい・・・・かな・・・。
適当に空いてるお店に入ってお酒を頼んだ。
平日でも飲んで帰りたい人は多い。
そんな塊の中に紛れ込んで。
「ねえ、もういいと思うんだけど。」
やはり紹介だったか・・・・。
「うん・・・。」
「教えて。どんなきっかけ?どっちから?」
???
「お隣くん。そうなんでしょう?なんとなく気がついたんだけど。そろそろ情報公開してよ。」
「なに?」
背中にうっすらと汗がにじむ感覚・・・・もしかして??
「だから金沢さんの事、はっきり断ったって言ったじゃない。その後も全く愚痴もなく、焦るでもなく、なんとなく楽しそうな顔をしてるし。お隣君も巻き込んで元気づけようと揶揄おうとしたら、ちょっと雰囲気違うから・・・。今日もびっくりしてから『しまった。』って顔をしてたよ。お隣君はなんか言ってた?」
なにか、とは?
もしかしてあのつぶやき?
「どっちから?そこ一番興味あるの。」
小さく声を潜めて聞かれた。
「・・・お隣君からです!!」
「おおっ、思い切った行動したんだ。よっぽど追い詰めたんじゃないの?」
まるで『窮鼠猫を噛む、ついでに告白』みたいな表現じゃない?
「・・・別に。」
追い詰めてはいない。逆だと思うけど・・・・。
視線を外した。
「もう、ほら、話して話して。誰にも言ってないんでしょう?言いたいでしょう?何ならちょっとした愚痴も聞くけど、喧嘩はしてない?」
正直に話した。
お互いの部屋に送り合った事。
二度目の私の部屋の事。
そのまま時系列に沿って、そこまでは話した。
「なかなか・・・・・なんだろう、既定路線走った感じ?ずっとそうだったんだ、しかも努力もして、やっと男の切れ目を見つけて思いをぶつけたんだ。」
切れ目って何よ。一応金沢さんと微妙な時でした。
「よくは知らない・・・・それに喧嘩はしてない。いい奴だから。」
「ふ~ん。穏やかに過ごしてるんだ。良かったね。」
「もっと面白い話が聞けると思ったの?」
「思ってる。もっと聞いていい?どんな感じ?初めての相手でしょう?」
もっと声を潜めてきた。
「そんなこと聞かないで。」
さすがに赤くなる。
「だって、そこは本人には聞けないじゃない。砂羽がリードするんでしょう?」
「・・・それは思ったより器用だと思う。」
本当の事でもあるし、友成の名誉のためにもちゃんと言った。
「わお、それはそれは・・・良かったね。」
もういいから。恥かしい。
もう話題を変えよう。
「今日は來未がうれしい報告があるんだと思ったのに。」
「報告?なんだろう?別にないよ。」
「だって急じゃない。なんだろうって、楽しみだっていうし。」
紹介してもらえるかも、なんて期待したことは隠す。
ただ、はっきりした進展はないと分かった。
「そうか、そうか・・・本当にそうだったか・・・・。感無量!!本当にいい組み合わせだよね・・・・良かったなあ。」
「そんなにお隣君が気に入ってたの?」
「二人は気が合うんだなあって思ってたのよ。だけどお互いに明らかにタイプが違うし、無理だと思ってた。本人もそう思ってたんじゃない?散々色んな話を聞かされただろうし。」
「そんな・・・感じじゃなかったけど・・・・。」
やっぱり誘えばよかったかなあ、なんてつぶやく來未。
ここにいたとしたら真っ赤になってただろう、でも良かったと思ってくれてるのを知って喜ぶだろう。
「伝えとく。」
「どうぞ。でも今度三人で飲もう。二人の感じを間近で見てみたい。」
「特に変わりません。」
「そうなんだ。じゃあ二人きりの時どうなのか聞いてみたい。どっちが変わるんだろう?やっぱ、向こうだよね。」
そうかも。そこはそうかも。私は普通だと思う。
「あ~、楽しみ。今度誘いに行くから。」
「はいはい。あんまりいじめないでね。」
「感謝して祝福してよろしくお願いするだけだよ。いじめるわけないじゃない。」
他人事なのに嬉しそうで楽しそうな表情だった。
「だって、ばれちゃったみたい。」
夜、友成に電話して教えた。
それでも驚きも照れもしてないらしい。
『だから言ったのに。そんな気がしてた、最近ずっとそんな視線だった。』
「友成が変だったんじゃないの?」
『それって、竜胆さんがそう言ってたんじゃないんでしょう?』
來未は何となく二人が・・・と言っていた。
「まあ、いっか。來未ならいいか・・・・。」
『他に何か言われた?』
「・・・何か?」
いろいろ言われたけど、教えられないこともある。
『面白がって褒めてたよ。祝福の言葉がほとんどだったよ。本当に一緒にって誘いたいみたい。』
「なんだか観察されそう。」
「そうだろうね。」
まあ、そのつもりらしいし。
それでも誘われることもなく、他の誰かから探りを入れられることもなく。
いつの間にか隣の机の上から留守番の彼女たちが消えた。
まさか捨てないよね?
カレンダーも途中だったのに、どうしたの?
ときどき転がる普通の地味なボールペンを見てそう思ったりした。
マグカップはまだ残ってる。
時々使ってる、でも前ほどの愛用度じゃない。
なんだろう、あんなに気になってたのに、ちょっと寂しい気がする。
それはもちろん視界に入れたいなんて私の気持ちじゃなくて、すっかり『無し』にした友成の気持ちを考えてる。
別にいいよ。
ベッドの中には連れてきてほしくないけど、あとトイレとお風呂場・・・・・。
でも別にいいよ。もしちょっとでも悲しいとか寂しいと思うくらいなら、別にいいよ。
でも会社では言えないから、週末に聞いてみた。
隣に座って一緒にテレビを見ていた。
ちょうどゲームのCMになったから変じゃないと思う。
「ねえ、机の上の小物はどこに行ったの?」
「使い終わったら捨てるよ。やっぱりちょっと傷がついてくるしね。」
「だってカレンダーはまだ途中だったじゃない。」
「だって別に今迄みたいに書き込む予定はないし。あそこに書いてくれてれば別にいいよ。」
私の部屋のカレンダーを指してそう言う。
普通のカレンダーだ。
私が美容院や飲み会予定を書きこんでるだけで、なんとなく目にして楽しむためのカレンダーだ。
携帯にもいれるけど、なんとなく目に入るとそれだけでも楽しいから、毎年シンプルなものを買って同じ場所にある。
最近は友成が特別のお出かけを嬉しそうに極太マジックで書いている。
もちろん二人のお出かけだ。
本当にあんなに週末に参加していたイベントをゼロにしてる友成。
「いいの?無理してない?」
「してないよ。もういいって思ったんだから。仲間とは時々連絡とってるし、皆すごいって祝福してくれてるし、いい。今は別に必要ないよ。」
「皆祝福って・・・・何?」
「だって急に参加しなくなって、仕事が忙しいとか貧乏になったとか言ってたけど、誤魔化すのも悪くて。この間いいかなって思って教えたんだよ。こんな美人ですって。」
嬉しそうに目の前に写真を出された。
いつ撮ったのか分からない写真、この部屋で、既にメイクと着替えは終わってる。
だけど持ってることも知らない写真を見せたと言う・・・・・怒っていいと思う!!
そう思って睨んだ顔はただの人のいい笑顔で、嬉しそうにしか見えなくて。
ああ・・・・喧嘩にならない。
自分が『イケメン』より『いい奴』に弱いなんて知らなかった。
取り上げて携帯を見た。
『初めての彼女です。美人です。すごい人です。』
そうつぶやいた友成にどやどやとコメントがついていた。
悲喜と褒貶と交じり合ってる。
本当に祝福されてる?
まあ、いい。
机の上が寂しくなっても本人がいいって言うなら別にいい。
私が考えることじゃないし。
そしてやっぱり気になるらしい後輩もいた。
「友成先輩、本当に机の上がスッキリしましたね。やっぱり二次元より三次元ですよね。砂羽先輩も今度は長続きしそうで何よりです。やっぱり落ち着くのは一番自然な形でしたね。」
梢ちゃんが友成の机を見ていよいよ消滅した女の子達の事を言い、その後に私にも話を振りながらいなくなった。
『今のは何?』
二人で見つめ合って問いかけ合う。
そういうこと???
やっぱり観察してた?バレたの?
梢ちゃんの口が誰より堅い事を祈りたい。
静かに見守るという後輩力を持ち合わせてることを願いたい。
まだまだ仲良し同期の二人として存在したい。
相性は最初から良かったのは確かだから、半分は嘘じゃない。
ね、お願いね。
真剣にパソコンを見つめる振りをしながらも、心で願った。
あの春の配属から5年が経ちました。
ずいぶん長い付き合いの隣人は本当にいい奴なんです。
もう少し長い付き合いになるでしょう。
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