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第十一話
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「あ……れ?」
ふと意識が覚醒して目を開けると、見慣れた自宅の天井だった。
「副社長、ただの過労です。栄養失調気味とも言われました」
田野倉が目覚めたばかりの俺に、淡々と呟いて教えてくれる。
「あ……ああ。そうか」
「陽真さまの家の前で盛大に倒れられたら、おちおち駆け落ちもできない」
「……それは、申し訳ない」
「ま、それでも行くようにお伝えしておきました。結果報告は唯さんのほうから、陽真さまに入れてくれるそうです」
「悪かったよ。そんな顔で睨むな、田野倉」
「睨みたくもなりますよ! 食欲がないだの。これは違う、思った味じゃないと散々、ケチつけておいて、自分のせいで栄養失調になって、過労で倒れるなんて。迷惑です」
「悪かったって言っただろ」
「唯さんがこれからずっと、副社長のお食事と体調管理をしてくれるそうですよ」
にやあ、と気持ち悪いくらいに顔を緩ませて田野倉が笑うと、立ち上がった。
「田野倉?」
「私は帰ります。社長には、過労死一歩手前だったので、二日間ほどの休暇をいただきますと伝えてありますので、明日と明後日、お休みください」
「過労死一歩手前なのに、休みはたった二日かよ」
「最初は一週間って言ったんですけどねえ。私が怒られたので、二日にしました」
「はいはい。どうも」
父さんから休みをもらえるだけ、ありがたいと思え……か。
田野倉が部屋を出ていくと、覗き込むようにドアの隙間から様子を伺う唯が見えた。
「唯、おいで」
「あの……大丈夫、ですか?」
「ろくなもんも食べずに、睡眠削って、陽真の移住の準備と仕事をしてたから。もう大丈夫。これからは唯の料理を食べられるんだろ?」
「え……はい。おかゆ、作ったんですけど、食べますか?」
「今はいいや。唯、隣にきて」
俺に言われるがまま、唯がベッドに入って横になる。
「唯の匂いが好きなんだ。仕事から帰ってきたら、微かに残る唯の匂いと料理したあとの匂いが嬉しかった。これがずっと続けばいいのに……って、唯が個人宅で働くのが嫌だって知ってたのに、無視してた。ごめん」
「いえ、全てを話したあとも僕を雇ってくれたのは嬉しかった。会わないっていう約束で仕事してましたけど……実は、『おかえりなさい』って言ってみたいな、って思ってたんです。料理をしながら、どんな顔で食べてくれてるんだろうって想像して作るのが楽しかった」
「ありがとう」
俺は隣で横になった唯を抱きしめた。
「……怖かった。神保さんが倒れたのを見たとき……。もっと早くに、会ってきちんと気持ちを伝えておけば良かったって後悔した。だからもう……後悔したくない。傍にいたい、ずっと……」
「ありがとう。俺も傍にいてほしい」
この温もり、ホッとする。唯の匂いが、俺に安心感を与えてくれる。
俺は唯を愛している。誰よりも――。
ふと意識が覚醒して目を開けると、見慣れた自宅の天井だった。
「副社長、ただの過労です。栄養失調気味とも言われました」
田野倉が目覚めたばかりの俺に、淡々と呟いて教えてくれる。
「あ……ああ。そうか」
「陽真さまの家の前で盛大に倒れられたら、おちおち駆け落ちもできない」
「……それは、申し訳ない」
「ま、それでも行くようにお伝えしておきました。結果報告は唯さんのほうから、陽真さまに入れてくれるそうです」
「悪かったよ。そんな顔で睨むな、田野倉」
「睨みたくもなりますよ! 食欲がないだの。これは違う、思った味じゃないと散々、ケチつけておいて、自分のせいで栄養失調になって、過労で倒れるなんて。迷惑です」
「悪かったって言っただろ」
「唯さんがこれからずっと、副社長のお食事と体調管理をしてくれるそうですよ」
にやあ、と気持ち悪いくらいに顔を緩ませて田野倉が笑うと、立ち上がった。
「田野倉?」
「私は帰ります。社長には、過労死一歩手前だったので、二日間ほどの休暇をいただきますと伝えてありますので、明日と明後日、お休みください」
「過労死一歩手前なのに、休みはたった二日かよ」
「最初は一週間って言ったんですけどねえ。私が怒られたので、二日にしました」
「はいはい。どうも」
父さんから休みをもらえるだけ、ありがたいと思え……か。
田野倉が部屋を出ていくと、覗き込むようにドアの隙間から様子を伺う唯が見えた。
「唯、おいで」
「あの……大丈夫、ですか?」
「ろくなもんも食べずに、睡眠削って、陽真の移住の準備と仕事をしてたから。もう大丈夫。これからは唯の料理を食べられるんだろ?」
「え……はい。おかゆ、作ったんですけど、食べますか?」
「今はいいや。唯、隣にきて」
俺に言われるがまま、唯がベッドに入って横になる。
「唯の匂いが好きなんだ。仕事から帰ってきたら、微かに残る唯の匂いと料理したあとの匂いが嬉しかった。これがずっと続けばいいのに……って、唯が個人宅で働くのが嫌だって知ってたのに、無視してた。ごめん」
「いえ、全てを話したあとも僕を雇ってくれたのは嬉しかった。会わないっていう約束で仕事してましたけど……実は、『おかえりなさい』って言ってみたいな、って思ってたんです。料理をしながら、どんな顔で食べてくれてるんだろうって想像して作るのが楽しかった」
「ありがとう」
俺は隣で横になった唯を抱きしめた。
「……怖かった。神保さんが倒れたのを見たとき……。もっと早くに、会ってきちんと気持ちを伝えておけば良かったって後悔した。だからもう……後悔したくない。傍にいたい、ずっと……」
「ありがとう。俺も傍にいてほしい」
この温もり、ホッとする。唯の匂いが、俺に安心感を与えてくれる。
俺は唯を愛している。誰よりも――。
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