異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ

文字の大きさ
58 / 67

第56話:善さん誘拐!? 歌声を封じよ! 目覚めるダンジョン・マスター

しおりを挟む
「……上野発のぉ~……夜行列車降りた時からァ~……」

地下数百メートル。青白く輝く結晶洞窟に、こぶしの効いた歌声が響き渡る。 板東善次郎。 普段は気弱なこの男の唯一の特技。それは、プロ歌手も裸足で逃げ出すほどの「演歌」の歌唱力だ。

そして今、彼の極限の恐怖と、「家に帰りたい」という切実な想いが、ダンジョンに充満する高濃度の魔力と化学反応(共鳴)を起こしていた。

「……な、なんだ!? 何が起きている!?」

黒竜会のボス、黒崎がたじろぐ。 善さんの口から放たれるのは、ただの歌声ではない。 可視化された「音圧」の衝撃波だ。

ビシィッ! パリーン!!

洞窟内の巨大なクリスタルが、歌声の周波数に共振し、次々と砕け散っていく。

「……青森駅はァ~……雪の中ァァァ~!!」

ドゴォォォォン!!!

善さんのビブラートが高まるにつれ、地面が激しく隆起し、黒竜会の部下たちが衝撃波で吹き飛ばされる。

「ぐわぁぁぁ!? 耳が、耳がぁぁ!」 「悲しい! なぜか分からんが、猛烈に故郷の母ちゃんに会いたくなってきたぁぁ!」

屈強な半グレたちが、善さんの歌に込められた「情念(ソウル)」に当てられ、武器を捨てて泣き崩れる。 これは精神攻撃(マインド・ブラスト)だ。しかも広範囲・無差別級の。

「……す、すげぇ」 レオナルドが耳を塞ぎながら呆然としている。 「あれは……古代の『吟遊詩人(バード)』の奥義、『鎮魂の歌』……いや、『絶望の絶唱』か!?」

「違うよ。ただの演歌だよ」 私は耳栓(アイテムボックスに常備)を装着しながら冷静に突っ込んだ。

「……良いこぶしじゃ」 ルシファーだけは、腕組みをして深く頷いている。 「魂の叫び……。魔界の歌姫にも引けを取らぬ。……だが、ちと『魔力』を乗せすぎじゃな」

そう。善さんは無意識に、ダンジョンの魔力を吸い上げ、増幅して放出している。 このままでは洞窟が崩落する。

「黒崎! パパを離しな! このままだと全員生き埋めだよ!」

私は叫んだが、黒崎もパニック状態だった。

「ふ、ふざけるな! 黙れ! 歌うなジジイ!!」

黒崎が魔導銃の引き金を引こうとする。

「……あああああ~!!」 善さんが銃を見てさらに恐怖し、サビの最高音へ突入した。

「……北へ帰る人の群れはァァァァァ!!!!」

ズズズズズズズズ…………ッ!!

その瞬間。 洞窟の最奥。 今まで誰も立ち入ったことのない「封印区画」の岩盤が、音波によって粉砕された。

『……ウルサイ……』

地底の底から、腹に響くような念話が聞こえた。

『……我ガ眠リヲ……騒音デ妨ゲルノハ……誰ダ……』

砕けた岩盤の向こうから、巨大な影が姿を現した。 全長50メートルを超える巨躯。 全身がダイヤモンドのような透明な結晶で覆われた、美しくも恐ろしい竜。

「……クリスタル・ドラゴン……!?」 鏡が絶句する。 「伝説の『ダンジョン・マスター』……実在したんですか!?」

『……人間ドモ……。我ガ庭ニ侵入シ、カラオケ大会トハ……イイ度胸ダ……』

ドラゴンが大きく息を吸い込んだ。 その口元に、青白い光の粒子が収束していく。

「……ブレスが来るぞ!!」 レオナルドが叫ぶ。

「黒崎! 逃げな! 死ぬよ!」

「くっ、くそぉぉぉ!」 黒崎は善さんを突き飛ばし、岩陰に飛び込んだ。

『……消エ失セロ。【結晶の吐息(クリスタル・ブレス)】!!』

カッ!!!!

ドラゴンが放った極太のレーザーが、洞窟を薙ぎ払った。 黒竜会の部隊がいた場所が、一瞬で結晶化し、砕け散る。

「ひぃぃぃぃぃ!」 突き飛ばされた善さんが、腰を抜かしてへたり込んでいる。 ドラゴンの次なる標的は、目の前にいる善さんだ。

「……パパッ!!」

私は杖を構えて走り出した。 間に合わない。ブレスの充填が早すぎる。

「レオくん! アリス! 援護頼む!」

「はいッ! でも距離が!」

その時。 二つの影が動いた。

「……仕方あるまい。あの歌い手を失うのは、魔界の損失じゃ」

ルシファーがマントを翻し、一瞬で善さんの前に移動した。 そして、もう一人。

「……僕も行きます! ここで彼を見捨てては勇者の名折れ!」

レオナルドもまた、【縮地】でルシファーの隣に並び立った。

「……小僧。足手まといになるなよ?」 「貴方こそ。おじいちゃんは下がっていてください」

魔王と勇者。 本来なら相容れない二人が、善さんを守るために並び立つ。

『……死ネ!!』

ドラゴンの第二撃が放たれた。

「……【暗黒結界(ダーク・シールド)】!」 ルシファーが片手をかざし、漆黒の壁を展開する。

「……【聖剣技・光の防壁(ライト・ガード)】!」 レオナルドが聖剣を地面に突き刺し、光の壁を展開する。

闇と光。 相反する属性の防御が重なり合い、ドラゴンのブレスと衝突した。

ドゴォォォォォォン!!!

凄まじい衝撃波が洞窟を揺らす。

「ぐっ……! 重い……! 全盛期なら指一本で弾けるものを……!」 ルシファーが歯を食いしばる。

「くそっ……! S級ドラゴンのブレス、生身で受けるのはキツい!」 レオナルドの膝が震える。

防いでいる。だが、ジリ貧だ。

「……ヒナ! 早くしろ! 長くは持たんぞ!」

「分かってるよ!」

私はバッファローの背中に飛び乗った。

「バッファロー! 突撃だ! あのトカゲの懐に潜り込むよ!」

「御意! 社長、しっかり捕マッテテ下サイ!」

バッファローが地面を蹴り、ブレスの余波をかいくぐってドラゴンへ肉薄する。

「黒崎! あんたも手伝いな!」

私は岩陰で震えている黒竜会のボスを一喝した。

「は、はぁ!? なんで俺が!」

「ここでパパが死ねば、あんたもドラゴンに食われるだけだ! ……生き延びたければ、その魔導銃で援護射撃しな!」

「……クソッ! 覚えてろよ!」

黒崎が破れかぶれで銃を構え、ドラゴンの目に向かって連射を開始した。 バン! バン!

『……小賢シイ!』 ドラゴンが鬱陶しそうに顔を背ける。

その隙に、バッファローがドラゴンの足元に到達した。

「……回収!」

私はアイテムボックスを開き、へたり込んでいる善さんを「収納」しようとした……が、生き物は収納できない仕様だった。忘れてた。

「バッファロー! パパを担げ!」

「了解!」 バッファローが善さんを米俵のように担ぎ上げる。

「よっしゃ、退避ッ! ……ルシファー! レオくん! 撤収だ!」

私の合図で、二人は防御を解き、爆風を利用して後方へ跳躍した。

「……助かったよ、二人とも」

私たちは安全圏まで後退し、体勢を立て直した。 目の前には、激怒するクリスタル・ドラゴン。 そして、こちらの戦力は……。

私(支援職)、ルシファー(魔力枯渇気味)、レオナルド(勇者)、アリス(聖女)、バッファロー(重機)、リオ(アタッカー)、鏡(ハッカー)。 さらに、一時休戦中の黒竜会(半グレ)。

「……カオスだねぇ」

私は状況を見て、ニヤリと笑った。

「でも、これだけのメンツが揃えば……狩れない獲物はいないよ」

私は杖を高く掲げた。

「作戦変更! ……これより『レイドバトル』を開始する!」

「ターゲットは、あのクリスタル・ドラゴン! ……ドロップアイテム(素材)は山分けだ! やるよ!」
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界転移したら、神の力と無敵の天使軍団を授かったんだが。

猫正宗
ファンタジー
白羽明星は気付けば異世界転移しており、背に純白の六翼を生やした熾天使となっていた。 もともと現世に未練などなかった明星は、大喜びで異世界の大空を飛び回る。 すると遥か空の彼方、誰も到達できないほどの高度に存在する、巨大な空獣に守られた天空城にたどり着く。 主人不在らしきその城に入ると頭の中にダイレクトに声が流れてきた。 ――霊子力パターン、熾天使《セラフ》と認識。天界の座マスター登録します。……ああ、お帰りなさいルシフェル様。お戻りをお待ち申し上げておりました―― 風景が目まぐるしく移り変わる。 天空城に封じられていた七つの天国が解放されていく。 移り変わる景色こそは、 第一天 ヴィロン。 第二天 ラキア。 第三天 シャハクィム。 第四天 ゼブル。 第五天 マオン。 第六天 マコン。 それらはかつて天界を構成していた七つの天国を再現したものだ。 気付けば明星は、玉座に座っていた。 そこは天の最高位。 第七天 アラボト。 そして玉座の前には、明星に絶対の忠誠を誓う超常なる存在《七元徳の守護天使たち》が膝をついていたのだった。 ――これは異世界で神なる権能と無敵の天使軍団を手にした明星が、調子に乗ったエセ強者を相手に無双したり、のんびりスローライフを満喫したりする物語。

捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~

荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
 ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。  それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。 「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」 『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。  しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。  家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。  メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。  努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。 『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』 ※別サイトにも掲載しています。

辻ヒーラー、謎のもふもふを拾う。社畜俺、ダンジョンから出てきたソレに懐かれたので配信をはじめます。

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
 ブラック企業で働く社畜の辻風ハヤテは、ある日超人気ダンジョン配信者のひかるんがイレギュラーモンスターに襲われているところに遭遇する。  ひかるんに辻ヒールをして助けたハヤテは、偶然にもひかるんの配信に顔が映り込んでしまう。  ひかるんを助けた英雄であるハヤテは、辻ヒールのおじさんとして有名になってしまう。  ダンジョンから帰宅したハヤテは、後ろから謎のもふもふがついてきていることに気づく。  なんと、謎のもふもふの正体はダンジョンから出てきたモンスターだった。  もふもふは怪我をしていて、ハヤテに助けを求めてきた。  もふもふの怪我を治すと、懐いてきたので飼うことに。  モンスターをペットにしている動画を配信するハヤテ。  なんとペット動画に自分の顔が映り込んでしまう。  顔バレしたことで、世間に辻ヒールのおじさんだとバレてしまい……。  辻ヒールのおじさんがペット動画を出しているということで、またたくまに動画はバズっていくのだった。 他のサイトにも掲載 なろう日間1位 カクヨムブクマ7000  

出来損ないと追放された俺、神様から貰った『絶対農域』スキルで農業始めたら、奇跡の作物が育ちすぎて聖女様や女騎士、王族まで押しかけてきた

黒崎隼人
ファンタジー
★☆★完結保証★☆☆ 毎日朝7時更新! 「お前のような魔力無しの出来損ないは、もはや我が家の者ではない!」 過労死した俺が転生したのは、魔力が全ての貴族社会で『出来損ない』と蔑まれる三男、カイ。実家から追放され、与えられたのは魔物も寄り付かない不毛の荒れ地だった。 絶望の淵で手にしたのは、神様からの贈り物『絶対農域(ゴッド・フィールド)』というチートスキル! どんな作物も一瞬で育ち、その実は奇跡の効果を発揮する!? 伝説のもふもふ聖獣を相棒に、気ままな農業スローライフを始めようとしただけなのに…「このトマト、聖水以上の治癒効果が!?」「彼の作る小麦を食べたらレベルが上がった!」なんて噂が広まって、聖女様や女騎士、果ては王族までが俺の畑に押しかけてきて――!? 追放した実家が手のひらを返してきても、もう遅い! 最強農業スキルで辺境から世界を救う!? 爽快成り上がりファンタジー、ここに開幕!

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

『ゴミ掃除』が役立たずと追放されたが、実は『存在抹消』級のチートだった。勇者一行がゴミで溺れているが、俺は辺境で美少女と温泉宿を経営中なので

eringi
ファンタジー
「悪いが、お前のスキル『ゴミ掃除』は魔王討伐の役には立たない。クビだ」 勇者パーティの雑用係だったアレクは、戦闘の役に立たないという理由で、ダンジョンの最深部手前で追放されてしまう。 しかし、勇者たちは気づいていなかった。 彼らの装備が常に新品同様だったのも、野営地が快適だったのも、襲い来る高レベルモンスターの死体が跡形もなく消えていたのも、すべてアレクが『掃除』していたからだということに。 アレクのスキルは単なる掃除ではない。対象を空間ごと削り取る『存在抹消』レベルの規格外チートだったのだ。 一人になったアレクは、気ままに生こうと辺境の廃村にたどり着く。 そこでボロボロになっていた伝説のフェンリル(美少女化)を『洗浄』して懐かれたり、呪われたエルフの姫君を『シミ抜き』して救ったりしているうちに、いつの間にかそこは世界最高峰の温泉宿になっていて……? 一方、アレクを失った勇者パーティは、武器は錆びつき、悪臭にまみれ、雑魚モンスターの処理すら追いつかず破滅の一途をたどっていた。 「今さら戻ってきてくれと言われても、俺はお客さん(美少女)の背中を流すのに忙しいんで」 これは、掃除屋の少年が無自覚に最強の座に君臨し、幸せなスローライフを送る物語。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...