異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~

タカノ

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第62話:成層圏の死闘! 魔王と勇者の宇宙遊泳

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「……紫雲。説明しておくれ」

コガネ・タワー最上階。 窓の外には、見渡す限りの星空と、蠢くエイリアンの群れ。 そして私の目の前には、紫雲博士が自信満々に差し出した「それ」があった。

「はい! 『コガネ式・船外活動用宇宙服(プロトタイプ)』です!」

それはどう見ても、「厚手のポリ袋(透明)」をガムテープで繋ぎ合わせ、頭部に「金魚鉢」を被せただけの代物だった。

「……これを着て、あの真空へ出ろと言うのかい?」

「安心してください! 金魚鉢には『空気生成の魔法陣』が、ポリ袋には『絶対零度耐性エンチャント』が施されています! 原価わずか三千円! コスパ最強です!」

「……ふざけるなッ!!」 レオナルドが叫んだ。 「勇者がゴミ袋を着て戦うなんて聞いたことないぞ!」

「文句を言うんじゃないよ、レオくん!」 私はレオナルドの背中を叩いた。

「NASAの宇宙服は一着十億円するんだ! ……ウチにはそんな予算はない! 死にたくなければ着な!」

「くっ……! 背に腹は代えられないか……!」

レオナルドが悔し涙を流しながらポリ袋に足を通す。 ルシファーも、渋い顔で着物を脱ぎ、ゴミ袋スーツ(Mサイズ)を装着する。

「……情けない。我の魔王としての威厳が、ポリ袋越しに透けて見えるわ」

「似合ってるよ、おじいちゃん。……リオ! 準備はいいかい?」

「いつでもいいよ!」 リオだけは、チャイナドレスの上から器用にポリ袋を着こなし、背中に「酸素ボンベ(溶接用)」を背負ってやる気満々だ。

「よし! ……エアロック(勝手口)開放! 総員、出撃(EVA)!!」

プシューッ!! 気圧差でハッチが開き、三人の戦士が漆黒の宇宙空間へと放り出された。

***

『……うおっと!?』

レオナルドの声がインカムから響く。 無重力空間。地上がない世界。 体が木の葉のように舞う。

『……落ち着け、小僧。宇宙(そら)は初めてか?』

ルシファーが優雅に宙を舞う。 ゴミ袋を着ていなければ、神々しい光景だ。

『……重力とは、星の鎖だ。……ここでは、我こそが「基準」となる』

ルシファーが指を振るう。 彼自身の重力操作魔法により、擬似的な「足場」が空間に形成される。

『……なるほど! 足場さえあれば!』

レオナルドが虚空を蹴った。

『ハァッ! 【流星歩行(シューティング・スター)】!』

勇者が光の矢となって加速する。 真空の宇宙空間では空気抵抗がない。その速度は地上での比ではない。

『……敵影多数! 来るぞ!』

タワーに取り付こうとする小型エイリアン――「スペース・リーチ(宇宙ヒル)」の群れが、三人に襲いかかる。

『……邪魔だッ!!』

レオナルドの聖剣が一閃。 真空斬りは衝撃波を生まないが、純粋な光の刃がエイリアンを無音で両断する。 切断面から緑色の体液が飛び散り、宇宙空間で瞬時に凍りついていく。

『……汚い花火だ』

ルシファーが両手を広げる。

『……潰れよ。【重力崩壊(グラビティ・コラプス)】』

数百匹のエイリアンが、見えない巨大な手に握りつぶされたように圧縮され、肉団子となって彼方へ弾き飛ばされた。 さすが魔王。宇宙適正SSSだ。

一方、リオは。

『オラオラオラァッ!!』

彼女は酸素ボンベをハンマーのように振り回し、エイリアンの頭蓋を物理的に粉砕していた。

『……ヒナ! こいつら硬いよ! ボンベが凹んじまう!』

『弁償もんだよ! 大事に使いな!』

私はタワーの管制室(リビング)から叫んだ。 戦況は優勢。だが、敵の数が多すぎる。

『……ヒナさん! キリがありません! タワーの外壁に取り付かれています!』

モニターを見ると、撃ち漏らしたエイリアンたちが、タワーの窓ガラスにへばりつき、強酸性の溶解液を吐きかけている。

「……私の! 特注強化ガラスがァァァ!!」

このままでは気密が破られ、タワー内の空気が抜けてしまう。

「アリス! 出番だよ! タワー全体をコーティングしな!」

「は、はい! ……でも、こんな巨大な建物を包むなんて……!」 アリスが青ざめる。

「やるんだよ! 酸素がなくなったら、あんたの肌もカピカピになるよ!」

「……それは嫌です! お肌の敵は許しません!」

アリスが杖をタワーの床に突き立てた。

(――広域防御術式。【聖女の抱擁(セイント・ラッピング)】!!)

カッ!!!!

タワーの中心から聖なる光が溢れ出し、外壁に沿って薄い光の膜が形成された。 サランラップのようにタワーを包み込み、エイリアンの溶解液を弾き返す。

「よし! これで空気漏れは防げる!」

私はガッツポーズをした。

だが。 本当の地獄はここからだった。

『……オ、オーナー……。レーダーに巨大な反応……』

鏡の声が震えている。

『……卵が……孵化します!』

宇宙空間に浮かぶ、巨大な紫色の卵。 その表面に、ピキピキと亀裂が入った。

『……ギョオオオオオオオオオオオッ!!!!』

音のないはずの宇宙空間に、直接脳に響くような絶叫が轟いた。

「ぐあっ!?」 「頭が……!」

タワー内の私たちが頭を抱えてうずくまる。 外にいるレオナルドたちも動きを止めた。

卵の殻を破り、現れたのは――全長数キロメートルに及ぶ、巨大な宇宙ドラゴンだった。 星々を飲み込む災厄、『星喰い(プラネット・イーター)』の幼体だ。

『……デ、デカすぎる……!』 レオナルドが絶句する。 人間と山ほどのサイズ差がある。

宇宙ドラゴンが、その巨大な眼球をギョロリと動かし、コガネ・タワーを睨んだ。

『……邪魔ダ……虫ケラドモ……』

ドラゴンの口が開き、高密度のエネルギーが収束していく。 ブレスだ。 あれを食らえば、アリスの結界ごとタワーは蒸発する。

「……まずい! 全員、回避しろォ!!」

私が叫んだ直後。 ドラゴンから放たれた極太のビームが、タワーの真横を掠めた。

ジュッ!!

タワーの避雷針(純金製)が蒸発して消えた。

「……私の金(きん)がァァァ!!」

直撃は免れたが、衝撃でタワーが激しく回転を始める。 遠心力で家具が飛び交う。

『……ヒナ! 手が出せん! 近づけぬ!』 ルシファーからの通信。 ドラゴンの周囲には強力な「精神汚染波(サイコ・ジャミング)」が展開されており、近づくだけで脳が破壊されそうになるらしい。

「精神攻撃だって!? ……どうすれば……」

物理攻撃も魔法も、近づけなければ意味がない。 敵の精神波を中和し、隙を作る方法は……。

その時。 回転するリビングの床で、一人の男が転がってきた。 善さん(パパ)だ。 彼は極限の恐怖で白目を剥き、口から泡を吹いている。

「……う、うう……。宇宙怖い……。帰りたい……。津軽へ帰りたい……」

彼のうわ言を聞いた瞬間。 私の脳内に閃きが走った。

「……これだ」

私は鏡の胸倉を掴んだ。

「鏡! タワーの全放送システムと、外部スピーカーを最大出力にしな!」

「えっ? 何をする気ですか?」

「……『ジャミング』だよ」

私はマイクをひっつかみ、気絶寸前の善さんの口元に突きつけた。

「……パパ! 起きな! カラオケの時間だよ!」

「……へ? カラオケ? ……ここはスナック?」

「そうだよ! 歌いな! あんたの十八番を! ……全宇宙に向けて!!」

敵が「精神汚染波」で来るなら。 こっちは「情念(ソウル)の波動」で対抗するまでだ。

「……ミュージック、スタート!!」

私がスマホで再生ボタンを押した。 タワー全体に、ド演歌の前奏(イントロ)が鳴り響く。 宇宙空間に漂う魔王と勇者が、ギョッとして振り返る。

『……まさか、あれをやる気か!?』

さあ、善さん。 その喉で、銀河を震わせておくれ!
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