【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko

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14 弟の懸念

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 見知らぬご令嬢の背中が見えなくなった頃、笑いを堪えきれないと言った感じでプハッと吹き出したのは、私の唯一の親友コリンナだ。

「いつ援護射撃しようかとタイミングを見計らってたのに、私達が口を出すまでも無かったわね」

 コリンナの言葉に深く頷いているのは、弟の婚約者のミラベル。

「ですが、とんでもなく失礼な方でしたわ。
 どこの家のご令嬢か私がお調べましすので、後日正式に抗議をする事をお勧めします」

「もう良いわよ。面倒臭いから」

 私は王太子殿下の紹介という裏技を使って彼と婚約した事に、若干の罪悪感を持っている。
 だから、今回だけは彼女の愚行を見逃そうと思うのだ。

「ですが……」

「ご自分が狙っていた殿方がポッと出の私に奪われたのが、よっぽど悔しかったのでしょう。
 これくらいで抗議してたらキリが無いわ。
 ジェフリーと婚約していた頃も酷かったもの」

 元婚約者の名前を出すと、二人の顔が益々険しくなった。
 二人ともジェフリーの事を以前から嫌っていたのだ。

『恋愛に関して悩んだ時は、信頼出来る女友達の意見を参考にするべきだ』とよく聞くけれど、どうやら本当らしい。
 恋に盲目になっている本人よりも、客観的に見ている周囲の意見の方が、きっと正しいのだ。

「あの男、クズではありましたが、見目だけは良かったですものねぇ。
 本当に過去のお義姉様も、あの男に群がるご令嬢達も見る目が無いですわ!
 まったく、あんな優柔不断男のどこが良いんだか…」

 ミラベルは可愛らしい見た目に反してとても辛辣な物言いをする。
 こういう好戦的な所はマーヴィンと似ていて、お似合いのカップルだなぁと思う。ブレーキ役の従者は必須だとも思うが。

「まあまあ、終わった事はもう良いじゃ無いの。
 やっとフェリシアの目が覚めてくれて、私はホッとしているわ。
 ところで、辺境伯様はどんな方なの?」

 コリンナが苦笑しながらフォローしてくれた。

「コールドウェル様はちょっと私と同じ匂いがするの。
 少し厳めしいお顔立ちだけど、本当は優しい方なんじゃないかと思うわ」

 新しい婚約者の話をする私を、二人の友人は微笑ましそうに見ていた。

「それなら、フェリシアの気持ちもよく理解してくれそうよね。
 今度私達にも紹介してくれるでしょう?」

「勿論……と、言いたい所なんだけど、コールドウェル様は国境を護る為にあんまり領地から出られないらしいの。
 だから、私もまだ一度だけしかお会い出来てないのよね。
 もしかしたら、結婚式まで紹介出来る機会が無いかも」

「確かに、西の辺境は遠いものね。仕方が無いわ。
 でも、一度しかお会い出来ていないのでは、フェリシアも不安じゃない?」

「その点はマーヴィンもとても心配してましたわ。
 お二人が殆ど交流も出来ないままに結婚してしまって大丈夫なのだろうか、と。
 ただでさえ、お義姉様はご自分のお気持ちを表現するのが苦手ですし、辺境伯様も同じ様な性格をしていらっしゃるのでしたら余計に……ねぇ」

 マーヴィンがそんな風に私を心配して、ミラベルに相談をしていたなんて、知らなかった。
 この優しい友人達や家族に余計な心配をさせたくはない。
 円満な結婚生活を送る為に、少しは私もコミュニケーション能力を身に付けるべきかも知れないわね。


 表情が作れないなら、たくさん言葉にして伝えるとか……?

 ……ちょっと難易度が高そうだ。

 では、行動で示すのはどうだろう?
 夫に好意を伝える代わりに、ハグをするとか、頬にキスを贈るとか?

 ……いや、もっと難易度が高そうだ。

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