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37 夜会への招待
「ヒューバートから三ヶ月後の夜会の招待状が届いた。
国内の貴族は原則全員参加だから、俺達も王都に出なければならない」
「それって、もしかして……」
ふと気付けば私がこの地へ来てから、既に半年以上が経過している。
「ああ、ヒューバートの即位を祝う夜会だよ」
とうとう王太子殿下が国王になられるのだ。
病気療養と言う名の幽閉をされている現国王陛下は、良くも悪くも慎重派で、大きな変革を嫌う方だった。
それによって我が国の国力は、ここ数年緩やかに低下してしまっている。
しかし、ヒューバート殿下は既に国を発展させる画期的な政策を次々と発表しており、次の治世は安泰だと期待されているのだ。
彼の即位は非常にお目出度い事である。
だけど……。
「私も王都へ行かねばならないのですね」
「心配か?」
「少しだけ」
婚約解消してかなりの月日が経っているのだから、もうジェフリーが絡んでくる事は無いと思いたいのだけれど……。
「あの……、フェリシア……」
「…?」
コールドウェル様が珍しく口籠もっていらっしゃる。
次の言葉を待つ沈黙が、妙に長く感じた。
「…俺と、結婚しないか?」
待った挙句に出て来た言葉は、私にとってはごく当たり前の事の様に思えて…。
「しますよ。婚約者ですもの」
「いや、そうではなく。
直ぐに結婚しないかって事なんだけど」
「えぇっ!?」
貴族の婚姻は、通常ニ年以上の婚約期間が設けられる。
その間に婚家のしきたりを学んだり、盛大な挙式の準備がなされるのだ。
私達の婚約期間は、まだ一年にも満たない上に、こちらの生活に慣れる事ばかりを考えていて、挙式の準備などは何もしていない。
なのに、直ぐに結婚とは……。
「同居も入籍も挙式も、順番がバラバラになってしまうが、義父上との手紙のやり取りで、『先に入籍を済ませてしまった方が良いのではないか』という話が出た。
そうすれば、ファーガソン侯爵令息に対しても少しは抑止力になるんじゃ無いかって。
勿論、入籍と同時には無理だが、後日改めて挙式はちゃんと行うつもりなのだけど。
だが、フェリシアが嫌ならば、無理にとは………」
コールドウェル様の声は少しづつ小さくなって行き、最後はとうとう聞こえなくなった。
「嫌ではないですよ。
コールドウェル様さえ、それで宜しければ」
私の答えを聞いたコールドウェル様の顔がパッと明るくなった様に見えた。
拒絶されると思っていたのだろうか?
私を護ってくれる為の提案なのだから、異論などあろうはずも無いのに。
寧ろ、有難くもあり、申し訳なくもある。
「では、コレにサインを」
コールドウェル様がいそいそと取り出した婚姻誓約書は、必要事項が全て記入済みで、後は私がサインをするだけの状態だった。
(もしかして、外堀埋められてる?)
いやいや、そんな訳無いよね?
だってこの結婚を必要としているのは私の方で、コールドウェル様は王太子殿下の顔を立てているだけだもの。
その時は、そう思っていたのだけど───。
後日、私の元に大きな箱が届けられた。
「これは?」
「ドレスですよ。旦那様がフェリシア様に、即位の夜会で着て欲しいって…」
ミアが嬉しそうに、他の侍女達とその箱を私の部屋へと運び込む。
「聞いてないわ」
「事前にフェリシア様に言うと、絶対に遠慮されてしまうからって、勝手に用意したそうです。
旦那様、とても時間を掛けてかけて楽しそうに選んでいらっしゃいましたよ」
その箱を開けた私は、大いに困惑した。
深い青色のそのドレスは、どう見てもコールドウェル様の瞳の色をイメージした物だったから。
国内の貴族は原則全員参加だから、俺達も王都に出なければならない」
「それって、もしかして……」
ふと気付けば私がこの地へ来てから、既に半年以上が経過している。
「ああ、ヒューバートの即位を祝う夜会だよ」
とうとう王太子殿下が国王になられるのだ。
病気療養と言う名の幽閉をされている現国王陛下は、良くも悪くも慎重派で、大きな変革を嫌う方だった。
それによって我が国の国力は、ここ数年緩やかに低下してしまっている。
しかし、ヒューバート殿下は既に国を発展させる画期的な政策を次々と発表しており、次の治世は安泰だと期待されているのだ。
彼の即位は非常にお目出度い事である。
だけど……。
「私も王都へ行かねばならないのですね」
「心配か?」
「少しだけ」
婚約解消してかなりの月日が経っているのだから、もうジェフリーが絡んでくる事は無いと思いたいのだけれど……。
「あの……、フェリシア……」
「…?」
コールドウェル様が珍しく口籠もっていらっしゃる。
次の言葉を待つ沈黙が、妙に長く感じた。
「…俺と、結婚しないか?」
待った挙句に出て来た言葉は、私にとってはごく当たり前の事の様に思えて…。
「しますよ。婚約者ですもの」
「いや、そうではなく。
直ぐに結婚しないかって事なんだけど」
「えぇっ!?」
貴族の婚姻は、通常ニ年以上の婚約期間が設けられる。
その間に婚家のしきたりを学んだり、盛大な挙式の準備がなされるのだ。
私達の婚約期間は、まだ一年にも満たない上に、こちらの生活に慣れる事ばかりを考えていて、挙式の準備などは何もしていない。
なのに、直ぐに結婚とは……。
「同居も入籍も挙式も、順番がバラバラになってしまうが、義父上との手紙のやり取りで、『先に入籍を済ませてしまった方が良いのではないか』という話が出た。
そうすれば、ファーガソン侯爵令息に対しても少しは抑止力になるんじゃ無いかって。
勿論、入籍と同時には無理だが、後日改めて挙式はちゃんと行うつもりなのだけど。
だが、フェリシアが嫌ならば、無理にとは………」
コールドウェル様の声は少しづつ小さくなって行き、最後はとうとう聞こえなくなった。
「嫌ではないですよ。
コールドウェル様さえ、それで宜しければ」
私の答えを聞いたコールドウェル様の顔がパッと明るくなった様に見えた。
拒絶されると思っていたのだろうか?
私を護ってくれる為の提案なのだから、異論などあろうはずも無いのに。
寧ろ、有難くもあり、申し訳なくもある。
「では、コレにサインを」
コールドウェル様がいそいそと取り出した婚姻誓約書は、必要事項が全て記入済みで、後は私がサインをするだけの状態だった。
(もしかして、外堀埋められてる?)
いやいや、そんな訳無いよね?
だってこの結婚を必要としているのは私の方で、コールドウェル様は王太子殿下の顔を立てているだけだもの。
その時は、そう思っていたのだけど───。
後日、私の元に大きな箱が届けられた。
「これは?」
「ドレスですよ。旦那様がフェリシア様に、即位の夜会で着て欲しいって…」
ミアが嬉しそうに、他の侍女達とその箱を私の部屋へと運び込む。
「聞いてないわ」
「事前にフェリシア様に言うと、絶対に遠慮されてしまうからって、勝手に用意したそうです。
旦那様、とても時間を掛けてかけて楽しそうに選んでいらっしゃいましたよ」
その箱を開けた私は、大いに困惑した。
深い青色のそのドレスは、どう見てもコールドウェル様の瞳の色をイメージした物だったから。
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